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八条学園騒動記

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第四百八十六話 双子の閃きその十一

「ゼウスの兄弟姉妹をね」
「しかし末っ子のゼウスだけはな」
「母親に助けられてね」
 飲み込まれずに済んだのだ、クロノスはその代わりに石を飲み込んだのだ。
「そうして助かったのよ」
「そうだったな」
「ええ、無事にね」
 そしてゼウスは父と戦い神々の王になったのだ、厳密に言うと兄弟で世界を三等分しているので彼は天空の主となる。
「その場面の絵だけれど」
「怖いからか」
「好きじゃないの、あの絵以外にもね」
「怖い絵が多いか」
「何か地面に足が根みたいに生えている人達が殺し合ってる絵とか」
 スペインでのナポレオンとの戦いを描いた絵である。
「フランス軍の虐殺の場面とか」
「そうした絵が多くてか」
「画風も不気味だし」
「あの人食いの絵もな」
「不気味で怖いから」
 それでというのだ。
「私はね」
「ゴヤは苦手か」
「どうしてもよ、舞台も色々だけれど」
 ギリシア劇や前衛劇、二人が先程話したそうしたものである。
「絵はね」
「よりだな」
「色々でね」
 それでというのだ。
「主観に基づくものだし」
「わからない絵があってもか」
「当然よ、私はゴヤが駄目だし」
「俺はシャガールがわからない」
「それも人それぞれで」
「いいんだな」
「ええ、冗談抜きで私には落書きにしか思えない絵でも」
 そうしたものでもというのだ。
「凄い芸術性とかね」
「評価を受けたりするか」
「中には落書きどころか」
 ビアンカはさらに話した。
「描いた人の心理というか精神状況を疑う様な」
「そんな絵もあるな、確かに」
「あるでしょ、もう観ているだけでね」 
 その絵をだ。
「気持ち悪くなる」
「そんな絵は確かにあるな」
「何これっていうね」
「しかしそうした絵もか」
「芸術性があるってね」
「評価されることもか」
「あるし」
 そうしたケースもというのだ。
「だからね」
「とにかく難しいか」
「そう、哲学みたいなものでしょ」
「哲学か」
「哲学はね」
 それはともだ、ビアンカはアルフレドに話した。
「私はよくわからないけれど」
「本も読まないか」
「だって哲学の本を読んでもね」
「わからないか」
「小説派だから、私」
 読む本はそちらだというのだ。
「哲学の本は読んでも」
「それでもか」
「一回高等部の図書館の一つでサルトル読んだけれど」
 二十世紀のフランスの実存主義の哲学者だ、この時代でも名前が残り影響が及んでいる。 
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