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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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フェアリィ・ダンス編
  FILE115 つまらぬ現実の続き・・・新たなるゲーム!

変化の無い世界……進歩の無い人間……! by立木ナレ


俺は決して後悔していないつもりだ…一週間前に俺はSAOのリアルマネーゲームで獲得した1000万円と言う大金の内の殆どに当たる980万円をディンゴの弟の淳太の治療費に充てて、手元に残ったのは僅か20万円となった。

1000万円、それは俺にとって――いや、大抵の奴にとっちゃ途轍もない巨額の大金だ。ましてや俺は気が向いた時に日雇いの労働や短期のバイトをしてるだけで定職に就こうなんて微塵も考えちゃいない。そんな俺だから月々の稼ぎはせいぜい10万円程度だった。

俺の親父と祖父は普段は大して仲が良くなく、憎まれ口を叩き合ってる癖にこういう時は口をそろえて同じ事を俺に言ってきやがった―――

『リハビリが終わったなら自分で稼げ』

それがほんの一ヶ月そこそこ前まで二年ほども寝たきりの生活を送っていた息子や孫に対する言葉か?……世間一般の真っ当な価値観の大人が聞けばそう思わざるを得ないだろうがこれが俺の親父と爺なのだ。ついでに言えば俺は前にも同じような事を言われたことがある。
あれは確か小学校を卒業するころの事だった。奴らはあの時も口をそろえて同じことを言ってきやがった。

『小学校を卒業したら自分で稼げ』

それが義務教育を後3年も残している息子や孫に対する言葉か?……世間一般の真っ当な価値観の――そうでなくとも多少常識外れな輩が聞いたとしてもそう思わざるを得ないだろうがこれが小田桐家だった。


非常識!……まさに小田桐家は非常識が横行する家であった!本来であれば子供に教育を受けさせることを望むはずの保護者が小田桐家ではそれを小学校を卒業した時点で不要と断言!中学校に通う事はおろか、高校や大学への進学などまるで眼中になし!……だが、オズマ自身も小学生時代よりすでに学校に通う事にウンザリしており、父と祖父の言葉を切っ掛けに半ばそれを言い訳にするようにして学校に登校する事をあっさりと止めていた。 by立木ナレ


※ ※ ※


俺の手元に残った20万円も普通に使っていたら2カ月ほどですべて使い果たされるだろう。まず一カ月おきに小田桐家が借りているアパートの一室の家賃の3分の1に相当する2万円と光熱費とネット代の3分の1を収めなくちゃならない。
それでもアパートを出て一人で家賃と光熱費・ネット代を支払うよりかは随分と楽なので俺は実家にこれからも留まざるを得ないだろう。

俺「何とかしてこの金を増やせねーかな……?」

以前の俺にとっちゃ手元に20万円もあると言う状況自体まずあり得ない事だった。パチンコにパチスロに麻雀に競馬、競艇、競輪その他諸々――賭け事はSAO前から色々と経験がある俺はひとまず今ある元手を使ってこれを手っ取り早く増やす事を考えていた。
親父から勝手に借りた原付を走らせながら(免許はまだ取ってない)山谷に比較的近い浅草の街中を見回っていた。
こち亀の主人公の故郷としても有名な下町繁華街は今日も人で賑わい、2020年代のこのご時世では山谷と同じく外国人の観光客や宿泊客も少なくなかった。

俺「ここは寿司屋ばっかりだな……とても上手い賭け事なんてありそうにねぇな」

雷門通りから六区興行街までの約100mの通りは通称『寿司屋通り』等と呼ばれており、食べもの屋、とりわけすし屋が多く、誰言うともなく『すし屋横丁』という名で親しまれている。
そこから俺は南に向かって突き進み、問屋街が広がる浅草地域南部へと向かった――2年前と同じならこの辺り一帯にまだあるはずだ、俺は原付のスピードを落としてゆっくりとあたりを見渡しながら2年前の記憶を頼りにその店を探しそして……それは見つかった。

俺「あったぜ……ロト6!」

2年前と変わらずその宝くじ屋はポツンと寂しく存在していた。


ロト6とは……日本において西暦2000年から実に20年以上にわたり発売されている数字選択式全国自治宝くじにおいて、5種類ある賭け式のうち1つの名称であった。
01から43までの43個の数字の中から異なる6個を選択するものであり、その数日の組み合わせは実に6096454通りあるのである!
特に当選確率が6096454分の1でしかない1等の賞金は実に約1億円!無論オズマとてそんな大当たりが易々と自分の元に舞い降りるなどとは思ってはいないものの、だが手元に20万円近い金額の金を持つオズマは意を決して1万円で50口購入を決意!
このうち一つでも4等が出ればそれだけで9500円となりほぼ元を取る事が出来、更にもう一つ……5等以上の当選が一つでも出ればその時点で500円の儲けとなるのであった!

俺「50口も買うんだ、大丈夫だろ……当てりゃいいんだよ。4等を一つ以上、5等を一つ以上な……!」

往々にして博奕打ちとは……これといって根拠など何もないにもかかわらず、次こそはイケる、今度こそは勝てるなどと、まるで奇妙な自己暗示にでも掛かっているかのような自身を抱く事が多いが……実際のところその大半がそんな幻想を打ち砕かれるように負けて散財する……!そして、それを何度でも繰り返すのが博奕打ちの悲しい性であり、一度負けて懲りるのではなく、一度負けたからこそ次の勝負で負けた分を取り戻そうと何度でも性懲りもなく考えて…考えて!…気が付けば負のスパイラルに直行!
そしてオズマは――― by立木ナレ


※ ※ ※


俺「今日はツキが無かったか……次は当たるかもしれねーけど今日は止めとくか……」


オズマ…惨敗!1万円で50口を購入しその殆どが掠りもせぬ大外れ!1万円で購入した50口で当選したのは5等が一枚、すなわちたったの1000円!元の僅か10分の1!…物の数分でオズマ、9000円の損失! by立木ナレ


俺「このままじゃ2カ月と持たねーよ……やっぱりそのうち働くっきゃねぇのかなぁ……」


そりゃそうだ!が、現時点でオズマは未だに考えていた、何かしらの賭け事で働かずとも今の生活をどうにかして維持出来ぬか―――そんな甘ったれた妄想を未だに頭で思い描く…救い難き堕落っ!! by立木ナレ


結局、その日はロト6で惨敗した空気に飲まれてか、他でも勝てる自信が起きず、酒とたばこを買って落としく家に帰ろうと原付を走らせていた矢先だった。
横を通りがかった古びた電化製品店の、店に飾ってある古いテレビに流されていた映像と音声がふと気になり俺は停まっていた。

『ソードアート・オンライン事件で生き残った被害者の方達が目を覚ましてから既に2カ月近くが経過しようとしていますが、その一方でALOの人気っぷりは凄まじいものを感じますですね~。まさにALOは今のVRMMOの人気を独走する人気ゲームとなったわけですねぇ~』

テレビに映っていたのはユーチューバーとしての活動で有名な人物だった。俺がこの男の言葉でふと気になったのはALOと言う三文字のアルファベットだった。一体何を意味する略語だろうか?
すると、もう一人画面に映っている20歳にも満たなさそうな、俺の知らないアイドルと思わしき女がきゃぴきゃぴとした声で応答する。

『もぉ~、私もドハマりしちゃってますですよぉ~。しかもサービス開始当初はSAO事件の発生から約一年後でVRゲームを危険視する世論から猛反発の中だったって言うのに信じられない快進撃でえすよねぇ~』

俺「俺達がSAOに捕らわれてる間にサービス開始だと……?」

そんな中で新たなるVRMMOのサービスが開始だなんて確かに、SAO被害者の家族以外にも頭ごなしにゲームを嫌ってる規制推進派の連中を中心に猛反発が起きるのは必然だろう。

『ALO……正式名称「アルヴヘイム・オンライン」はSAO事件で開発費と被害者への補償で莫大な負債を抱え事件発生後に解散したアーガスに事後処理とSAOサーバーの維持管理を託されたレクトの子会社であるレクト・プログレスが開発したVRMMORPGです』

ユーチューバーの男がテレビ越しからでも分かる位に鼻息を荒くして熱く語っており、隣の席のアイドル風の女は本番中だと言うにも拘らず、露骨に気持ち悪がるような表情を出していた。

『9種類の妖精種族のいずれかを選択し、その妖精となり…ALOの舞台となるアルヴヘイムを冒険するゲームですが空を飛んだり魔法を使えたりするのがやはり魅力的なんでしょうかねぇ~?』

『そうそう!空飛んだり魔法を使ったりなんて夢見たいですもんね~、だから私も夢中なんですよぉ~』

熱く語るユーチューバーを露骨に気持ち悪がっていたアイドル女だったが、ようやく話を合わせるように作り笑顔に戻り、キャピキャピとした、まるでアニメ声のような声色でそう便乗する。

『おお、ちなみにMyMy(マイマイ)ちゃんはALOではどんな種族でプレイしてるのかなぁ~?』

『え……?あ、あわわ……そ、そんなぁ~…お、おわりしゃちょーさんったら意地悪な事聞かないで下さいですぅ~』

『い、意地悪?な、なんでかなぁ……ただ俺はそのぉ~、ALOでどんな種族を使ってるかを聞いただけなんだけどぉ~?』

次の瞬間、アイドル女の目付きが露骨にユーチューバーに対して苛立たし気な目付きで睨みつけていたのが丸わかりだった。
要するにこの女はあれだ、テレビの宣伝番組だから仕方なくあたかも自分もALOと言うゲームにはまっているかのように振舞っているが実際にはそんなゲームには微塵も興味が無く、あたかもゲームを知っているふりをしていたら隣のユーチューバーがゲームの内容に関する話を振って来たので、余計な事を聞くなと言いたげなのだろう。

俺「ALO…アルヴヘイムオンラインか……」

テレビ画面の向こうでアイドル女が高飛車な本性丸出しでゲーマー達を貶す発言を連発して大騒ぎになっている光景など俺は最早、全く眼中にない位にALOと言うVRMMOに妙な関心を惹かれている感じだった。
SAOから帰還して以降、ナーヴギアは政府の手によって回収される事が決定していた。俺も特に躊躇う事なくそれを手放していた。
ナーヴギアの中に入ってデータはメモリに移して保存しているが、金輪際二度とSAO…アインクラッドには関わりたくないと思っている俺なのだが、どうにもゲーマーとしての真理ゆえかVRMMOまで辞めたいとまでは思っておらず、何か面白そうなVRMMOがあればそれをやって見ようかと思っていた所だった。

俺「確か、アミュスフィアってのが発売してたんだっけな?」


アミュスフィアとは……SAO事件から半年後に発売されたナーヴギアの後継機で、セキュリティシステムおよびセーフティ機構が強化されている他、形状は2つのリングが並んだ円冠状の器具となったものの規格はナーヴギアと同一であり、対応ソフトも同じであった。
SAO事件の反省を踏まえて電磁パルスの出力は大幅に弱められ、脳の破壊は物理的に不可能になっており。
また、一定以上の生理的反応や外部刺激で強制的にゲームを終了する機能を搭載している為、総じてナーヴギアに比べて安全性を高められており、ALOが世に広まったのも、このフルダイブマシンの登場のおかげであった。 by立木ナレ


俺「もうちょい……今日は散財しちまいそうだな」

其のまま俺は電化製品屋に足を踏み入れたのだった、俺が店で手に入れるのはアミュスフィアとアルヴヘイム・オンライン――通称ALOのゲームソフトだった。
幸いにも二つとも在庫があったようで両方を同時に入手した俺は、軽くなった財布を入手したアミュスフィアとALOを原付のヘルメットを収納するスペースにしまい、自宅アパートへと直行したのだった。 
 

 
後書き
SAOで様々な事を乗り越えたにもかかわらず、現実世界に帰還してしばらくした今となっては、すっかりダメ人間になったオズマに違和感も感じるかもしれませんが、オズマは平常な日常ではこんな奴です(笑) 
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