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山奥の家

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第一章

                山奥の家
 海月真咲は学生だ、だが彼女がそう言っても彼女のことを知っている者は学校ではかなり少なかったりする。
 それでだ、友人の一人が真咲本人に尋ねた。
「真咲って何処に住んでるの?」
「山の中だよ」
 真咲はその友達に笑顔で答えた。
「今はお兄ちゃん、妹と一緒にね」
「山の中で暮らしてるの」
「三人でね」
 それでというのだ。
「お家に住んでるの」
「お家あるのね」
「あるよ」
 真咲は友人にまた笑顔で答えた。
「ちゃんとね」
「それでなのね」
「そう、幸せに暮らしてるよ」
「ううん、ただね」
「ただ?」
「いや、私真咲のお家に行ったことないから」
 今まで何処に住んでいたのかも知れなかった。
「だからね」
「それでなの」
「うん、真咲がよかったら」
 それならというのだ。
「あんたのお家に行っていい?」
「うん、いいよ」
 真咲は友達の申し出に笑顔で答えた。
「じゃあ今日にでも来る?」
「今日でいいの」
「いいよ、じゃあお家にね」
「案内してくれるの」
「そうさせてもらうね」
 真咲の方からの言葉だった。
「それじゃあね」
「ええ。それじゃあ」
 こうして話は決まった、その友人は真咲に案内してもらって彼女の家にお邪魔することになった。だが。
 学校を出てだ、真咲は友人にすぐにこう言った。
「学校の裏山に行くから」
「そこになのね」
「そう、私の家があるから」
 だからだというのだ。
「そこに行こうね」
「真咲のお家って裏山にあったのね」
「学校のね」
「それも知らなかったわ」
「いい場所だよ。自然も豊かで」
「そうなの」
「釣りも出来るし果物も多いし」
 それでというのだ。
「スーパーで買うこともあるけれど」
「山で調達することもなのね」
「私多いし」
 それでというのだ。
「そうしたことも困らないからね」
「いいのね」
「うん、じゃあ裏山に行こうね」
 こう言ってだ、真咲は友達をまず裏山の中に案内した、そこから山をどんどん登っていくがその山道は。
 結構険しくてだ、友人はこう先に進んで案内してくれる真咲に対して左右の木々や川を見ながら尋ねた。
「いつもこの道通ってるの」
「そうだよ」
 真咲は笑顔で答えた。
「学校に行く時もね」
「そうしてるのね」
「そうだよ。いい道だよね」
「結構険しいわよ」
 舗装されていない、本物の山道だ。だから友達は道の小石に躓きかけたりして歩くのにやや苦労している。 
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