| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

FILE114 果さねばならぬ約束・・・そしていつか本当に再会する為に!

オズマは埼玉県川越市の病院でディンゴこと石田淳平の弟の淳太への治療費1000万円と桐ケ谷兄妹に託してから数日後の事であった、ここは東京都台東区山谷にあるオズマの自宅アパートであった by立木ナレ


恭史郎「テメー倉崎ぃぃぃ!俺の原付にマジックで落書きしたのテメーかクソったれっ!修理代10万円寄こしやがれクズがぁ!」

倉崎「あ~ん?落書きじゃねーよ注意書きだよ!ちゃんと読んだのかよボケ爺!ちゃんと丁寧に書いてあったろうが?『飲酒運転はもうしません』ってなっ!ちょくちょく酒飲んで原付転がしてる爺に対する注意書きだっつーの!」

恭史郎「よけーな事してやがるんじゃねーぞ寄生虫野郎が!修理代寄こせ修理代!10万円だ!」

倉崎「バカ言ってんじゃねーよ!テメーの原付なんて中古で安く取り寄せた5万円もしねー安物じゃねーか!」

馬鹿馬鹿しい喧嘩だ。本当に現実世界に戻って来たんだと言う実感が湧いてくる。俺の祖父の小田桐恭史郎(おだぎりきょうしろう)が隣人の認知症気味の生活保護受給者の家に居候してる倉崎と大喧嘩…俺がSAOに囚われる前から何一つ変わらぬバカ丸出しの連中の喧嘩だった。

そんな時、俺の契約し直したばかりのプリペイド式携帯が通話を伝えるアラームを鳴らしていた。俺が現実世界に帰還してから連絡先を交換しなおした相手は身内である親父と祖父、それ以外に何人かの知り合いと、後はこの前病院で再会したキリトくらいだが―――

キリト「オズマ、俺なんだけどさ」

俺「なんだよ?もうリアルで会う用なんてないだろ?」

意外な通話の相手に対して俺は素っ気なくそう言っておいた。出来る事ならソードアート・オンラインでの――アインクラッドでの事に関して俺はもう関わりたくないと思っており、SAO時代に関する話ならなるべく早く話を打ち切るつもりだったがキリトの口から発せられた言葉はそれとはまったく別の話だった。

キリト「そうじゃなくて―――いや、もしかしたらまたリアルでもう一回会わなくちゃ行かないかもしれなくなってきたかもな」

電話の向こうのキリトの声は妙に深刻な出来事を伝えなくてはならなさそうな…そんな重苦しい感じがしてならず、俺はキリトが一体何のために…何を伝えに来たのかをじっと聞く事にする。

キリト「お前から預かった1000万円は淳太の母親に渡したよ」

俺「そうか、そいつは助かったが――何か問題でもあったのか?」

キリト「まあな、こんなこと…お前に話したからってどうこうなるってわけでもない事は分かってるんだけどな、実は淳太の治療費なんだけど…1000万円じゃ足りないらしい」

俺「っ―――――!?」

その言葉を聞いた途端、俺は一瞬言葉を何か発しようとしたがそれをのどに詰まらせてしまうほどの衝撃を感じていた。
一時的にどんな言葉を口にするかを思考したが、取りあえずまずは単純な質問から始める事にした。

俺「けど、ディンゴは言ってたはずだ……必要な治療費は1000万円近い金額だと」

ようするに1000万円あれば弟の治療費は足りているはずなのにそれが足りないとはどういうことだ?電話の向こうのキリトが言い辛そうな様子を感じさせる声で話の続きをする。

キリト「この2年間で容態が急変して、以前に見積もってた治療方法じゃ手に負えなくなったらしい――何でも今の淳太に必要な治療費は依然見積もった金額の倍近い2000万円近く掛かるそうだ」

俺「2000万円って――」


それはオズマにとって信じ難き…そしてあまりにも残酷に立ちはだかる現実の壁であった!2000万円!それはディンゴが命と引き換えにオズマに託した大金の倍の額!それはすなわち…ディンゴの命では弟の治療費の半分程度の治療費にしかならなかったと言う事を示しているような気がしてならず、どちらにせよこのままではディンゴから託された病気で苦しむ弟の救済が為されぬと言う事であった!オズマの脳裏に浮かぶのはガチャモンが死のロッククライミングの直前にオズマ達に言い放った言葉――『金は命よりも重い!』その一言だった、今がまさにそれを物語っているのではないだろうか?大手術に要する医療費と言うのは、ディンゴ一人の命よりも重い……まるで今でもガチャモンがどこかの仮想空間で、オズマの今の状況を高みの見物し、高笑いをしながら『金は命よりも重い!』そう言っているかのようであった……by立木ナレ


キリト「それじゃ、お前にはせめて伝えておかないとな……って思ったんだ。」

俺「ああ、伝言ご苦労さん……」

スマホから無機質な音がピー、ピー、と流れキリトとの通話は途絶えた。キリトも言っていたが、そんな事を俺が知ったところでどうにかなるわけでもないだろ。
残り更に1000万円だって?……無理だろ絶対に…そんな大金を右から左へとそう簡単に用意できるわけがない、ましてや俺みたいなロクすっぽ働く意欲の低い素寒貧の16歳にゃ絶対に無理…ディンゴには悪いが、こうなってしまった以上俺にはもう淳太を救う事は無理、不可能―――

俺「いや、なんとかしようと思えばできない事も無いが……」

そうだ、さっきから俺は言い訳の様に無理だ、不可能だ、どうにもならないなんて心の中で自問自答しているが、本当は淳太を救う手立てが今の俺にはあるんだ。
だが、それをやってしまえば俺はこれから手に入れようとしていた物―――叶えようとしていた欲望――それらを何一つ得る事も出来ず、何一つ満たす事が出来なくなってしまう。


ディンゴ『僕の代わりに弟を救ってほしいんだ!―――――僕の名前は石田淳平(いしだじゅんぺい)で弟の名前は石田淳太(いしだじゅんた)……埼玉県の川越市にある病院で入院生活を送ってるから―――きっと頻繁にお見舞いに行ってる母さんに会って、治療費を渡して……お願いだぁ!』


俺「クソッ……!こんな時にアイツの言葉を思い出しちまいやがって俺は……ッ!」


ディンゴ『勝つんだ、オズマ君!……僕はまた負けた……絶対に勝たなくちゃならないこの勝負にすら負けて―――まるで無意味で無価値な一生だった……けど、オズマ君はこんな風になっちゃダメだ。オズマ君は勝てるはずだから……勝つんだオズマ君……』


ダメだ、一向に俺の頭から奴の言葉がまるでループするように再生され続けている。これは何故か?俺の単純な思考回路で辿り着ける結論は一つ――俺自身が例え己の利を蹴ってでも…救いたいと言う思い、ディンゴとの約束を守りたいと言う思いが強いからだろう、


そして、オズマの中で結論は出されるのであった……!無論オズマとて、自らが損をしてまで他人に尽くすなど、普段であれば早々に出来ぬ事、あり得ぬ事なのは当然……ましてやそれが金銭の絡む事であれば猶更であった!! by立木ナレ


※ ※ ※


あれから更に数日が経過した、俺は再び埼玉県の川越市の病院に足を運んでいた。俺は既に淳太の病室を知っているが、俺が尋ねるのはキリトの病室であった。
都合よく淳太の母親に会える可能性の方が低い以上、未だに入院しているキリトの方に託した方が確実だと俺は判断して再びキリトの病室を訪れていた。

俺「相変わらず貧相な身体のままだなお前は、何時になったら退院できるんだよ?」

キリト「これでも死に物狂いでリハビリやってるんだよ俺だって、お前ほど丈夫な体に生まれついてないから回復に時間が掛かるだけだ」

相変わらず病院のベットで弱々しく布団に入っているキリトに対して皮肉をお見舞いしてやるとキリトは憎々しげな表情で眉をひそめて、言い返してくる。

直葉「小田桐さんってなんだかんだでお兄ちゃんのお見舞いに来てくれるんですね、やっぱりお兄ちゃんと友達なんじゃないですか?」

俺&キリト「「それは違う!」」

直葉「うわ、息ピッタリじゃないですか……」

丁度見舞いに来ていた桐ケ谷が微笑ましそうに俺とキリトを見ながら、見当違いの事を言ってくるので俺が否定したら、キリトまで同時に否定してくるとは―――なんて間が悪いんがこいつは!――ともかく俺は少し間を置き、真面目な表情を作り出してキリト達に話を切り出すのだった。

俺「俺がここに来たのは本当にお前への見舞いじゃない、ディンゴの弟の…淳太の事に関する事でだ―――」

俺がその話を始めると、キリトもキリっとした表情に変化し俺の話をじっと聞く。直葉もその話は聞いているらしく、複雑そうな表情になり、その目は悲痛な感情を感じさせる目付きだった。

俺「2年前までは1000万円でどうにかなるはずだった治療費が今となっちゃ容態の急変で倍近い2000万円弱だったか?」

キリト「そうだけど……お前それは?」

キリトの視線が向けられたのは俺が持ってきた紙袋だった。それは以前ディンゴの分の1000万円が入った紙袋と全く同じ紙袋である。

俺「前の同じ頼み事だよ―――この中に入ってる金を淳太の母親に渡してやってくれ」

キリト「お、おい……けどそれは―――お前の、お前が命懸けで手に入れた大金なんじゃないのか!?」

俺の申し出にキリトの表情は驚愕の色に満ちた。桐ケ谷も両手で口を押え、その手は小さく震えているのが目に見えて分かった。

俺「流石に全額じゃねぇ……ここに来る前に20万円ほど抜かせてもらった……俺は俺で必要な分とかがあるんでな。けど、残りは淳太の弟の治療費に使う」

そう言い放ち俺は金の入った紙袋を桐ケ谷に押し付けて半ば強引に持たせた。桐ケ谷は狼狽えつつも俺の勢いに競り負けるように紙袋を咄嗟に受け取っていた。

直葉「前と同じくらいの重さだ……小田桐さん、本当に良いんですか?」

俺「もう決めた事だ…正確にはずっと前から決まってたんだよ。あの命懸けの崖際のロッククライミングでディンゴから託された時点で俺はアイツの弟を救うってな―――」

直葉「…………」

俺「じゃ、俺は他に行くところがあるんでな」

桐ケ谷の目からは涙で目が潤み始めていた、キリトはもしかしたら俺がこうする事を薄々感じていたのかも知れず、既に無言で落ち着いた表情を俺に向けていた。
俺は自分の気が変わってしまう前にキリトの病室を後にした、未練が無いわけじゃないが断ち切らなくちゃならない。
そして、これから会いに行く相手に詫びなくちゃならない……



※ ※ ※


ここは東京都千代田区にある三井記念病院。オズマがここを訪れたのはSAOから帰還後何れ必ず会う約束を交わした少女と再会する為であった。

エルダ「久しぶりねオズマ君―――それともこっちでは弭間君って呼んだ方が良いかしら?」

病室の受付窓口の前で俺を出迎えたのはレイナの姉のエルダ――本名…沢井恵梨香(さわいえりか)だった。
俺が最後にこいつを見たのは消滅間際のSAOの中でガチャモンとモックによる公開処刑焼き土下座の直後だった。
生き地獄を耐え抜いたエルダは、最終的にガチャモンのペナルティを課せられ、公開処刑を強いられたプレイヤー達の中で唯一生き延びる形となったのだった。

俺「今更本名で呼び合わなくたっていいんじゃないか?呼び慣れた呼び方で充分だ」

エルダ「そうね――私もオズマ君のままの方が楽だし」

微笑を見せるエルダは綺麗な長髪をなびかせていた。エルダもほんの数日前にリハビリを終えて外出を許可されたばかりのようだが、その身体は既に健康的で2年間の寝たきり生活で衰弱した痕跡は既に殆ど感じられなかった。

俺「にしても茅場の共犯者が随分と自由を謳歌してやがるんだな」

エルダ「共犯者と言っても茅場先生が起こした事件の片棒を担いだわけじゃないわよ。あくまでゲーム内でヒースクリフとエルダがお互いの秘密を共有して内通していただけの事よ」

エルダの言う通り、コイツとヒースクリフはSAO内で一定の協力関係を気付いていたにすぎず、エルダ自身も茅場の計画の事には何も知らされていなかったので茅場晶彦の共犯者とは言い難く、他のSAO生還者たちと同じ被害者の扱いだ。

エルダ「玲奈に会いに来たんでしょ?姉として特別に許可してあげるわ。当然、病室の中ではしっかりと監視させてもらうけどね」

俺「さっさと案内してもらおうか」

まるで俺が寝たきりのレイナに何か仕出かすかのような物言いだった。ともかく俺はエルダに連れられてレイナの病室に案内される。
レイナの病室は2階の一人用の小さな部屋だった。エルダが言うには元々は自宅療養をしていたのだったがSAO被害者となってからは他のSAO被害者たちと同様に環境の整った病院に入院させられたとのことだった。

エルダ「さ、感動のご対面よオズマ君」

全く再会を祝う様子など無さそうな無機質な声色でエルダはレイナの病室をそっと開けるのだった。真っ白な小さな部屋の中に一人用のサイズのベットが一つ。そして――ベットの上で寝ているのは薄いピンク色の、丁度俺の記憶にあるのと同程度の長さのセミロングヘアの髪の少女だった。

エルダ「オズマ君の為ってわけじゃないけど、定期的にあの長さに切り揃えてるのよ。父さんと母さんは夫婦関係とっくに破綻状態で別居中でどっちも見舞いになんて滅多に来ないもんだから全く――」

俺「レイナなんだな……本当に?」

エルダの自虐的な身内話の最中に俺は独り言を口にしていた。それは二年近くを共にしたレイナと瓜二つの顔だった。
当然だ、今俺の目の前で眠っているこの少女は間違いなくあのレイナそのものなのだから。

俺「レイナに詫びなくちゃならない事があるんだよな……」

エルダ「何それ?内容によっては……ここで君を切り伏せる事になりそうなんだけど?」

俺はエルダにディンゴから託された1000万円と、俺自身の取り分となるはずだった1000万円のすべてを治療費に充てる事になった事をエルダに説明した。
冗談半分で物騒な事を言っていたエルダも俺の話を聞いて、半ば呆れたような、半ば納得したような表情で話を聞き続けていた。

俺「レイナが俺を現実世界に帰してくれたんだ……現実世界に帰っても1000万円って言う大金があるからオズマなら大丈夫だって言ってくれてな…なのに、その金を殆ど手放しちまったんだよな」

エルダ「ま、君がそうしちゃった理由を聞けば、レイナもオズマ君が自分の利を蹴っちゃった事も凡そ想像の範囲内だって感じるんじゃないかしら……ムカつくけどあの世界でオズマ君の事をレイナは誰よりも理解して信頼してたのは確か見たいだし」

俺「何時になるか分からねーが……レイナがこの世界で目を覚ましたらその時は改めて、俺の口から『済まなかった』て言わねぇとな……」

エルダ「お好きにどうぞ、レイナに変な事しない限りは私も口出ししたり邪魔したりしないから、レイナに会いたい時は事前に私に連絡して頂戴」

俺とエルダはお互いの電話番号を交換した。2年間にも及ぶデスゲームで最も長い時間を共有し、俺の命を繋ぎ、現実世界への帰還を叶えてくれたレイナ――余計な姉の監視付きとは言え俺はこれからも時折レイナに会いに来るだろう……何時になるか全く想像も付かないがまたレイナの言葉を交わし……出来れば身体でも交わることを想像していたのだった。 
 

 
後書き
長かったアインクラッド編はこれで終わり、次回からフェアリィ・ダンス編の開始です。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧