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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE113 託された想い・・・桐ケ谷兄妹との約束

ソードアート・オンラインの帰還から一月…リハビリを終えたオズマは、ディンゴこと石田淳平(いしだじゅんぺい)の弟の治療費である1000万円を渡す為に埼玉県川越市の病院を訪れていた。
だが、その病院で出会ったのはソードアート・オンラインの第75層最終決戦でヒースクリフと刺し違えて命を落としたと思われた黒の剣士キリトであったっ…!両者は思わぬ再会を果たした…!
そして、キリトこと桐ケ谷和人の妹である桐ケ谷直葉の案内でオズマは石田淳平の弟の淳太の病室を訪れるのであった。 by立木ナレ


直葉「ここですよ淳太君の病室は」

俺「ああ、態々済まないな」

直葉のおかげで階段を上り、スムーズに俺はディンゴの弟の淳太の病室に辿り着く事が出来ていた。だが――

直葉「お兄ちゃん、もっと頑張って!こっちだからっ!」

キリト「お、俺の事は別に良いから……お前ら先に入れば良いじゃないか」

相変わらずリハビリ中のキリトはたどたどしい歩きで、俺達よりも大分遅れてモタモタとようやく病室の前に辿り着いたのだった。

俺「これがあのSAOをクリアに導いた黒の剣士の姿とはな……今じゃブレンジー・ボアの一匹だって倒せそうに無さそうだ」

キリト「はぁ……ほ、ほっとけよ…俺はさっきまでリハビリしてたから本調子じゃないんだよ」

仮想世界とは打って変わって弱々しさ丸出しのキリトに対して俺が皮肉を口にすると、キリトは息を荒くして辛そうにしながら、愚痴をこぼしていたのだった。

直葉「それじゃ、入りますね…淳太君、いる~?」

直葉が病室を軽くノックして声を掛けると、数秒後に『いるよ、入ってよ』と声変わりもしていなさそうな声で病室の中から返事が聞こえてきたのだった。
直葉が先頭で病室に入り、続いて俺が、そしてノロノロとした動きのキリトが病室に入る。

俺「ディンゴの弟か……」

確かにその顔はディンゴと何となく面影を感じさせる似た顔つきだった。年齢はせいぜい12歳くらいと言ったところだろうか。
ふと弟のベットの隣を見てみると、近くは花が添えられた花瓶が置かれていた。おそらくこの淳太の隣のベットでSAOに捕らわれていた兄がナーヴギアを被った状態で眠っていたのだろう―――そして、弟が見ている前でディンゴは、俺が見ていない間に崖から落下し、弟が見ている目の前で脳を焼かれて命を絶たれたのだと俺は察した。

ディンゴの弟は直葉やキリトとは顔見知りのようで慣れた態度で言葉を交わし合った後、俺の方をきょとんとした顔で見て言った。

淳太「この兄ちゃんは…?」

直葉「ああ、このお兄さんはね――小田桐弭間さんって言ってね……」

直葉は俺の事をどう紹介し、説明するべきか言葉を選びかねている様子だった。俺はここは敢えて自分で何もかもいうべきだろうと思い、淳太の前に歩み出て自分の口から話をするのだった。

俺「俺は―――お前の兄ちゃんとあのゲームの中で知り合った間柄なんだ」

淳太「え……兄ちゃんの知り合いって、あのソードアート・オンラインで?」

俺が自分と兄との間柄を端的に説明すると、弟の淳太は呆気にとられた様に驚いた後、少し暗い表情を浮かべて床に顔を欝むせた状態で話を続ける。

淳太「そっか……って事はさ。俺の兄ちゃんがゲームの世界でも…失敗ばっかりで何やっても上手く行ってないのを見て来たって人だよね?」

俺「俺は、アイツの顔見知りと言っても一緒に行動したのは、何度かほんの一時の時間だけだったから全てを知ってるわけじゃないけど……あいつ自身は自分の事を何もやってもダメだとか、勉強も運動も趣味のゲームも上手く出来ないとか言ってけな」

俺の言葉を聞くと淳太は深いため息を付いて、数秒ほどの間を置いて口を開いた。直葉とキリトはそんな俺と淳太のやり取りを不安そうな様子で無言で眺めていた。

淳太「確かに、俺もそれは散々知ってるよ。何をやっても上手くいかない兄ちゃんでさ…周りの連中からしょっちゅうバカにされてて、弟の僕もそんな連中から嫌なこと言われた事は一度や二度じゃなかったよ……あいつらに『ダメな兄ちゃん持つと苦労するよな?』とか言われたのは今でもずっと覚えてるんだよ」

悔しそうに拳を握り締める淳太だった。ベットの上で座り込んでいる弱々しい身体にも関わらず、その拳は確かに力強く、意思の力が籠っていた。

淳太「けど……確かに傍から見たら取り得なんて何にもない兄ちゃんだったかもしれないけど……俺、知ってたんだよ……兄ちゃんが俺の治療費を稼ぐために、全然足りるわけないって分かってるはずなのに……年を誤魔化してアルバイトしてお金を少しずつ溜めてたんだよ」

俺「そっか、弟思いなんだな兄貴は」

その後も、淳太が語る兄のディンゴこと淳平の人物像は俺が出会い、俺が知る通りのディンゴだった。今なら納得がいく、あんな気弱そうで争いごとなどにはてんで無縁そうなあのディンゴが、自分の命を掛けてまで大金の掛かったマネーゲームに挑んだ理由が。
目標の金額まで気の遠くなるようなアルバイトを、根気よく続けていたディンゴは……例え自分が死ぬかもしれないと覚悟のうえで、負けた先に待ち受ける末路を分かっていたとしても、弟を救う為なら躊躇う理由など無かったのだろう。

俺「分かったよ、お前の兄貴の事がハッキリと……んで、話は変わるんだけどさ、お前の母親は今日は来てないのか?」

ここに来た本来の目的である、鐘の受け渡しの為に淳太に母親の事を訪ねると淳太はさっきまでと打って変わって、落ち着いた表情で受け答えをしてくれた。

淳太「ああ、母さんなら今日はもう帰ったよ……母さんになんかようでもあったの?」

俺「ああ、けどいないんなら仕方ないな。出直すからまた今度な」

若干12歳の淳太に大金を渡せば、それを見た病院の関係者の大人達が良からぬことを企んでかすめ取ってしまう可能性を危篤した俺は一旦病室を後にした。キリトと直葉も淳太に笑顔で挨拶を交わして、俺に続いて病室を後にした。

俺「お前らに頼みごとがある」

俺はキリトと直葉を交互に見渡して、本来ならすぐにでも淳太の母親に託したかった荷物をこの二人に、特にキリトになら預けても大丈夫だと何故だかそんな気持ちになっていた。
少なくとも、見ず知らずの奴らに渡すよりは余程マシのはずだと考えて俺は話を切り出した。

俺「コイツは、淳太の兄貴のディンゴが弟の為に命懸けで手に入れた、所謂命の対価ってやつなんだ」

俺は自分の手荷物である大きな紙袋を差し出した。流石に今のキリトに持たせるのは無理があるので、比較的健康そうな妹の直葉に持たせる。
直葉は訳の分からない様子でひとまず両手で紙袋を掴みと――

直葉「わっ…なんですかこの紙袋?見た目の割になんか重たいですよ――!!」

キリト「まさか――この中身って…?」

直葉は紙袋の中に途轍もない大金が入っているなどは思いも知らず、中身が分からぬまま紙袋の重さに驚いていた。
一方のキリトは俺の言葉と、紙袋の見た目にに使わぬ重さを知って中身が何か知ったようだった。

俺「その中に入ってる金―――1000万円を淳太の母親に渡してやってくれ…アイツの兄貴が自分の命と引き換えに、弟を救う為に得た金なんだ」

直葉「え……?こ、この中に……お金が、い、一千万!?」

直葉は俺が口にした途方もない金額の金が入っているとはすぐには流石に信じ難いのだろうが、足をガタガタと震えさせて驚きを露わにしていた。
キリトの方はやはりこの紙袋の中身が大金であることは既に察していたようで、納得した様子の表情で小さく溜息をついていた。

キリト「分かったよ、俺の病室でこいつは預からせてもらう……俺も淳太の母親の顔は知ってるからさ、次にお見舞いに来た時に渡しておくよ」

俺「ああ、任せたぞ……アイツに、最後の瞬間に託された掛け替えのない金だからな。必ず渡してくれ」

キリトのその表情は普段からよく見せる気だるい表情でも、人の顔まともに見ないで話しづらそうな表情でもなく、本気の戦いに赴くときの…黒の剣士として戦う時の表情だった。
このキリトになら託せるだろう―――俺は一安心してディンゴから託された弟の治療費を桐ケ谷兄妹に託して病院を後にしたのだった。

後は俺の手元にある1000万円をどう使うか、そんな少し想像するだけで笑いが止まらなくなるような事を考えながら家路に戻るだけだった。
取りあえず2024年度を持って普通自動車の運転免許の所得年齢が従来の18歳から16歳へと引き下げになったので、免許を手っ取り早く――それこそ金の力に物を言わせてでも手に入れてから、憧れの車であるロードスターのJリミテッドを手に入れるのは確定だな。


大金の使い道を想像し、その心中は舞い上がるオズマであった。だがしかし…!そんなオズマの元にまるで予期せぬ、不測の事態が起き、それが知らされたのは僅か数日後の出来事なのであった!! by立木ナレ 
 

 
後書き
次回でようやくアインクラッド編は完結の予定です。 
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