ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~
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FILE109 最終決戦
前書き
FILE61・62・63に登場したオズマの車をポルシェ356・スピードスターからユーノス・ロードスターJリミテッドに変更させて頂きました。
理由はやっぱりオズマに高級車は似合わない(笑)のと、自分がユーノス・ロードスターJリミテッドを購入しちゃったからです(*^-^*)
なので、ザザの車もポルシェ992からRFロードスターに変更しました。
正体を現したヒースクリフ、そしてエルダはそれぞれヒースクリフがキリトに―――エルダがオズマにデュエルを提案。
キリトがヒースクリフが勝てばその時点でゲームがクリアされる……そして更に、エルダが勝利した場合はゲームがクリアされるまでエルダの妹のレイナはエルダのホームから出られなくなり、実質死の危険が無くなると言う条件を…… by立木ナレ
キリト「ふざけるな……」
キリトの口からかすなか声が漏れていた。その言葉を漏らしたキリトの心中は俺には想像しきれないが、穏やかでいられないのは間違いないだろう。
キリトはこの世界でギルドの仲間達を殆どを失った。それだけではないだろう、ここに至るまで多くの死を目の当たりにし、時には自分が命を奪う側になる事すらあったんだ。
キリト「いいだろう。決着を付けよう」
俺「そうだな……そうそう思い通りにならねぇって事を教えてやるよ」
キリトはゆっくりと頷き、俺も覚悟を固めてデュエルを受け入れる事にした。
レイナ「……オズマっ!」
アスナ「キリト君っ……!」
アスナの悲痛な叫び声とレイナの絞り出したような声に、キリトは腕の中のアスナに視線を落とし、俺も一度レイナの方に歩み寄った。
俺「レイナ、俺とキリトの両方が勝ったらお前もこの世界から解放されるけど、目覚めたお前は現実世界で寝たきりの状態だ、それでも―――良いのか?」
レイナ「……当たり前…でしょう」
実際の所、現実世界では昏睡状態で寝たきりのレイナの事を考えると、せめてレイナはこの世界から目覚めた後も別の仮想世界にフルダイブしているままの方が良いのではないんじゃないかという俺の微かな心の揺らぎから、俺はレイナに確認するようにそう聞いていたが、レイナはそれを迷うことなく肯定した。
レイナ「……確かに私は…現実世界では寝たきりの昏睡状態で……例え目を覚ます事が出来たとしても……事故以前の記憶は戻らないのかもしれないわ」
レイナは言葉を一旦区切った後、麻痺状態で思うように動かない体を何とか動かし、俺の手を握り締めてから言葉を続ける。
レイナ「……だけどね…この世界での事……貴方と、オズマと出会った事……オズマと過ごした時間は間違いなく本物だから……私はオズマを失いたくない!―――例えそれで私が、再び現実世界で寝たきりの状態に戻ったとしても……そう言い切れるから」
俺「そうか……。なら、俺ももう迷わずに戦える」
レイナの手を離し、無言でこちらを見ているエルダの方を振り返り歩み寄る。キリトの方もアスナとの会話を終えてヒースクリフに歩み寄っていた。
エギル「キリト!オズマ!やめろ……っ!」
クライン「キリトーッ!」
その声はエギルとクラインが必死に身体を起こそうとしながらの叫び声だった。
キリト「エギル。今まで、剣士クラスのサポート、サンキューな。知ってたぜ、お前が儲けのほとんど全部、中層ゾーンのプレイヤーの育成につぎ込んでたこと」
キリトがエギルに向けて言った言葉は、俺も薄々気が付いていた事だった。エギルは目を見開き、それに対してキリトは微笑みをかけていた。
俺「クラインにも何か言ってやれよ、第一層の頃からの、お前の最初の仲間なんだろ?」
キリト「ああ、勿論だ」
キリトは大きく息を吸った。
キリト「クライン。…………あの時、お前を……置いて言って、悪かった。ずっと、後悔してた」
キリトがそれだけを言い終えた途端に、クラインの両目から涙が溢れていた。
クライン「て……てめぇ!キリト!謝ってんじゃねぇ!今謝るんじゃねぇよ!許さねぇぞ!ちゃんと向こうで、飯の一つも奢ってからじゃねぇよ、絶対許さねぇからな!!」
喉がはち切れそうな程に叫び、尚も喚き続けるクラインにキリトは頷きかけて答えた。
キリト「解った。約束するよ、次は向こう側でな」
そして、更にキリトはヒースクリフとのデュエルの前にとある頼みごとを要求した。それは、仮に自分が死んだらしばらくのあいだ、アスナが自殺出来ないように計らってほしいと言う内容であった。
ヒースクリフこと茅場晶彦はアスナがセルムブルグから出られないように設定する事でそれ了承―――アスナはそれに対して涙交じりの絶叫を響かせるがキリトは振り返る事はなかった…… by立木ナレ
エルダ「さて、それじゃあデュエルの準備は整ったみたいね……茅場先生の不死属性も解除されたようだし、私は何時でも良いわ」
俺とキリト、そしてヒースクリフとエルダのHPバーはレッドゾーンギリギリ手前、強攻撃のクリーンヒット一発で決着が付く量にまで調整されていた。
俺「ああ、こっちは容赦する気はねぇ……ユニークスキルの補足転移を遠慮なく使わせてもらうからな」
俺はこの4人の中で唯一ユニークスキルを持っていないエルダとデュエルする事になっている。エルダの腕前はかなりの物だが、その一転では俺はヒースクリフと戦うキリトに比べてだいぶ勝ち目の高い戦いになるだろうと俺は思っていたのだったが、そんな俺の甘い考えは一瞬にして崩れ去る事になった―――
エルダ「ええ、遠慮なくとっておきのユニークスキルを使うと良いわ―――私も使わせてもらうから」
微笑を浮かべながらエルダは言った――『私も使わせてもらうから』そう言った。一体何をだ?……俺がそれを聞く寸前に、エルダの細剣の刀身が……
俺「お前―――なんだよそりゃ?」
キリト「まさか……エルダもなのか?」
俺だけでなく、キリトもエルダの細剣が白い光と黒い闇に包まれていく光景に視線を釘付けにされていた。
エルダ「ご察しの通りよ、これが私のユニークスキルの【混沌剣】よ。ソードアート・オンラインの世界には本来存在しない魔法の力を……光と闇の魔力を帯びた剣技を発動可能にしたソードスキルよ」
俺「キリトだけじゃなくて、お前までユニークスキルを隠し持ってやがるとはな……どいつもこいつも力の出し惜しみしやがって」
するとヒースクリフが、俺の言葉に答えるように言葉を発する。
ヒースクリフ「無理もないさ、彼女がこのソードスキルを得たのはつい最近の事だ……何故ならユニークスキル【混沌剣】の習得条件は、この私――ヒースクリフの正体が茅場晶彦である事に最初に気が付く事だ」
つまり、エルダはユニークスキルの混沌剣をほんの最近修得したと言うわけないなる。
最も、キリトとヒースクリフのデュエルは既に数週間も前の事であり、その間俺達に隠し通していた事から、この先もヒースクリフから直々にユニークスキルを与えられたことは黙っているのだったろう。
エルダ「そう言えば、オズマ君のユニークスキルの補足転移は確か……全てのプレイヤーの中で最高の空間認識能力を持っている人に与えられるそうよ―――そうだったわね茅場先生?」
ヒースクリフはエルダにそう確認されて、無言で頷いた。
ヒースクリフ「残念ながらオズマ君は反射速度に関してはキリト君に一歩及ばなかったがね、空間認識能力は間違いなく全プレイヤーの中で最高と言える事から、補足転移の所有者としてシステムもそう認識したのだろう」
俺「またキリトより一歩劣るか……」
今までキリトと何かと比べられる事は何度かあったが、ここに至るまで今度は反射速度で劣っていると明言されるとはな。
これから命懸けのデュエルが始まると言うのに、俺はその事に対する苛立ちを無償に感じるが―――それでもいいさ、その苛立ちも今は力に変えてエルダを倒せばいい。
モック「どわわわぁ―――!た、大変ですぞガチャモン!ま、まだ第75層のボスが倒されたばかりだと言うのにどうなってんですかこりゃ一体!?」
ガチャモン「どうやら、展開次第ではこの世界が今日この日をもって終わるかもって事らしいね」
こんな時にまで、場の空気を読まずに現れやがったガチャモンとモックだが、もはや誰も奴らに声を掛けたり苛立ちをぶつけたりする者などいなかった。
ガチャモン「さてと、全員にシカトされた僕たちだけど……」
ガチャモンは言葉を区切り、茅場晶彦としての正体を現したヒースクリフの方を振り返り歩み寄る。ヒースクリフは相変わらずガチャモンには一切目もくれずに、キリトのみを見据えていた。
ガチャモン「ついに大暴露!黒幕の正体が暴かれちゃったね茅場せんせ~い。システムに守られてるからって油断しすぎちゃったみたいだね?」
モック「いや~、全プレイヤーの希望の象徴である貴方がまさか茅場晶彦とは……まさに大ドンどんでん返しとはこの事ですかなぁ~」
一方的にやかましくしゃべり続ける二人に対してヒースクリフは珍しく呆れ気味な表情を垣間見せて、視線だけをガチャモン達に向けて口を開いた。
ヒースクリフ「君達の方はどうだ?態々この世界に2年間も送り込まれ、カーディナルの監視を欺き続け、目的は果たせたのかね?」
ガチャモン「くすす、おかげさまでもう充分な位かな?本当はもっといろいろと調べたかったんだけど……これくらいやればきっとボスも満足するだろうしね。だからここで君が負けてSAOが終了しても僕らとしては問題ナッシングって感じかなぁ~」
ヒースクリフ「そうか、では君達のボスにそれなりに良い報告をしたまえ……彼はきっと私の事を今も嫌っているだろうから、私を利用したと考えてさぞ喜ぶだろう」
こいつらのこの会話、やはりガチャモンとモックは茅場晶彦の共犯者などではなく、奴らは第三者から何かしらの手段を用いてこのソードアート・オンラインの世界に送り込まれたイレギュラーな存在らしい。
しかもまるでヒースクリフはガチャモンとモックのボスとなる人物に心当たりがあるかのような言い方だが―――
エルダ「お喋りはもう沢山じゃないかしら?茅場先生も何時までこんなのを相手にしてるの?」
エルダが痺れを切らしたかのように、ガチャモンとモックとヒースクリフに対してそう冷たく言い放った。
俺「そりゃ最もだな、これから最後になるかもしれねぇ戦いの前だってのに興ざめしちまうような連中に口挟まれたくはないもんだからな」
俺もこの状況下でガチャモンとモックの相手などしていられないのでここはエルダの言う事に同調するようにそう言ってやった。
ガチャモンとモックは俺達を見渡した後、両手を後ろに組んで、
ガチャモン「ま、君達がいったいどんな顛末を辿るのか……高みの見物としゃれこませてもらうよ」
モック「私、なんだか貴方方に対して惨たらしいお仕置きをしてやりたい気分ですが、ここはグッと堪えてさしあげましょうじゃないですか……」
薄気味悪さも感じる怒気を孕んだ声でそう言い、2人は同時に黙り込んだ。これでもうこれから始まるデュエルを――いや、命を掛けた戦いを邪魔する者はいない!
キリト「殺す……ッ!!」
隣でキリトが鋭い声を吐き出しながら床を蹴った。キリトは恐らくこの戦いでヒースクリフを殺す事も厭わないのだろう―――そして俺も流石に今回は殺す事無くこの戦いを終わらせられる自信は無い、若しくはおれが死んで終わるかのどちらかだ――
エルダ「さあオズマ君……私は貴方を消して妹を……玲奈を救うわ!玲奈を守るのは貴方じゃない事を……貴方の死で証明してあげるわ!」
俺「来いよ……妹の前で大恥かかせてやるさ!」
ついに―――ついに二組のデュエルと言う名の殺し合いが始まる!ゲームクリアを掛けたキリトとヒースクリフ、そして……レイナの処遇を掛けたオズマとエルダの戦いが始まる!
後書き
前回といい今回といい、前置きが長くてすみません。次回からようやく最終決戦です
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