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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE106 第75層フロアボス戦 スカルリーパ

ヒースクリフ「……戦闘、開始!」

完全に開き斬った扉の中に、ヒースクリフの号令を合図に全員が続いたのだった。内部はかなり広いドーム状の部屋だった。
今回のボス戦に参加しているのは48人のレイドメンバー上限に大きく足りない32人だが、その全員が部屋に走り込み、自然な陣形を作って立ち止まった直後――背後で轟音を立てて大扉が閉まったのだった。

俺「予想してた通りとは言え、これでいよいよ出られねーんだなって気がしてきやがった……」

レイナ「……次にあの扉が開くのは、ボスを倒すか、私達が全滅するかのどちらかよ」

それからしばらくの沈黙、ひたすら広い床の全面に注意を払うが、ボスは一向に出現しないまま、一秒、一秒と時間が過ぎる。

「おい―――」

誰か知らないが、耐えきれずに声をあげたその時だった。

アスナ「上よ!!」

アスナの鋭い叫び声が響き渡り、全員が頭上を見上げていた。

エルダ「あれは……百足(むかで)?」


それはドームの天頂部に貼り付いていた。エルダがムカデと表現した巨大で、とてつもなく長い、全長は10メートルくらいはありそうだった。
複数の体節に区切られたその身体は、無私と言うよりは人間の背骨を起こさせた。灰色白の円筒形をした体節一つ一つからは、骨剥き出しの鋭い足が伸びて、そしてその頭部は凶悪な形の頭蓋骨!これはもはや人間の物ではなかった! by立木ナレ


視線を集中すると、イエローのカーソルと共にボスの名前が表示されるが案の定、アルファベット表記なので俺には全く読めない。
だが、最早俺が全く英語が駄目である事を知っているレイナが、自然に何を言わずとも説明してくれるのだ。

レイナ「……ザ・スカル・リーパーよ。骸骨の刈り手と言う意味だわ」

ゆっくりとドームの天井を張っていたスカル・リーパーは、全員が度肝を抜かれて、驚愕する中、不意に全ての脚を大きく広げて――パーティーの頭上に落下してきた。

ヒースクリフ「固まるな!距離を取れ!」

ヒースクリフの鋭い叫び声が、氷つた空気を切り裂いた。全員が我に返ったように動き出し、俺も落下予測地点から大急ぎで飛び退く。

エルダ「逃げ遅れた人がいるわ!」

エルダの叫び声が響き渡り、その視線の先に俺も目を向けると、丁度スカル・リーパの真下にいた三人の動きが僅かに遅れていたようだった。

キリト「こっちだ!!」

慌てて叫んだのはキリトだった。その叫びの効果で三人が一斉に走り出した。だが―――その背後に、スカル・リーパが地響きを立てて落下した瞬間、床が大きく震えて、足をとられた人が振動でバランスを崩していた。

レイナ「……危ないっ!」

スカル・リーパの右腕が、巨大な骨の鎌が横薙ぎで振り下ろされた。そして、その三人は背後から同時に斬り飛ばされるのだった。
宙を吹き飛び舞う中で、そのHPバーは著しい勢いで減少し続けていき――――あっという間にゼロとなったのだった。

俺「一撃で、死亡かよ……!」

エルダ「今回のボス戦は攻略組の中でも特に高レベルのプレイヤーだけの集まりだったのに……!」

そう、ボスの攻撃でも最低数発程度なら辛うじて耐えられるよ言う見込みのはずだが、それは呆気なく覆り一撃で蹴散らされてしまった。

アスナ「こんなの……無茶苦茶だわ」

掠れた声でアスナが呟いていた。そして既に3人の命を奪ったスカル・リーパは、雄叫びを轟かせると、も売れるな勢いで新たなプレイヤーの一団を目掛けて突破してきた。

「わああ―――!!」

その方向にいたプレイヤー達の恐怖の悲鳴がこちらまで耳に届く。再び骨の鎌が大きく振り上げられていた。
だが、その真下にヒースクリフが飛び込み、巨大な盾を掲げて鎌を迎撃していた。

だが、鎌はあと一本ある。そして左腕の鎌でヒースクリフを攻撃しつつも、右の鎌で凍り付いているプレやーたちを狙おうとしたところをキリトが飛び出していた。
二刀の剣を使い鎌を受けるが、それでも鎌の勢いが収まる様子はなく、キリトが押し退けられるかと思った時だった。
純白の光芒を惹いて空を切り裂く様に、下から鎌に命中。その隙にキリトは骨の鎌を押し返していた。

無論、キリトを援護したのはアスナだった。

アスナ「二人同時に受ければ―――いける!わたしたちなら何でもできるよ!」

キリト「――よし、頼む!」

あの二人は最早、お互いが傍にいるだけで恐れるものなど何もないと言わんばかりの様子だった。キリトはプレイヤー達に対して大鎌は自分が引き受ける事、そして俺達に対して側面から攻撃するように声を振り絞り叫ぶと、全員が目覚めたように戦いを始めたのだった。

俺「俺等もボーっとしちゃいられねーな!」

スカル・リーパにタゲを取った俺は補足転移を発動し、キリトが指示に従うと言うわけでもないが、それが最適であると認めて側面に瞬間移動した。
補足転移での瞬間移動直後はまさに俺の眼前にはスカル・リーパの長い胴体の側面だった、剣を鞘に納めたままの俺は納刀術技で麻痺の阻害(デバフ)効果を持つ連続攻撃技の不殺蓮千撃(ふさつれっせんげき)による鞘に納めた状態の剣を使った連続の殴打と振り払いを繰り出す。

俺「クソ、固てぇなっ!」

顔面が骸骨で出来たスカル・リーパはよほど防御力が高いのだろうか、その固さスカル・リーパを殴りつけるたびにその頑丈さを実感する。
全ての打撃、殴打が決ったにもかかわらずHPバーの減少は微々たるもので、ボスモンスターは麻痺状態にもなっていない。
俺は更に続けて鞘から剣を引き抜いて斬り付ける納刀術ソードスキルの抜刀(ばっとう)を放つが、それでも与えられるダメージ量は僅かだった。

俺「そんならこれもついでに食らっとけ!」

抜刀の直後に片手直剣のソードスキルを発動する事で、抜刀の発動後の硬直はキャンセルして即座に発動可能だ。
俺は今度は高速5連突きからの斬り下ろし、斬り上げ、全力の上段斬りという計8連撃ソードスキルのハウリング・オクターブを発動するが、高速の5連突きを放った直後にスカル・リーパの長い胴体の先端の尻尾を振り回して俺の頭上に叩きつけてきた!

ソードスキルの発動中の俺には頭上から襲ってくるスカル・リーパの尻尾に対処する術は無かった。今からソードスキルをキャンセルしたところで発動後の硬直は避ける事も出来ない。

俺「―――――ッ!!」

レイナ「……させないわ!」

が、その巨大な尻尾の叩きつけから俺を守る様に、レイナの両手剣である『グラビティレイザー』が両手剣を突き立てるようにして防いでいた。
おかげで辛うじて直撃は免れて、俺のHPバーが著しく減少する事態は避けられた。だが、俺を守ったレイナは懸命に頭上に振り下ろされてくるスカル・リーパの尻尾を両手剣で受け堪え続けていた。

レイナ「―――ッ!」

いかにレイナの筋力ステータスが高いと言えどスカル・リーパの尻尾の重圧は凄まじさはレイナの歯を食いしばり、苦悶に満ちた表情からも伺えた。
俺は剣を鞘から抜いた状態でスカル・リーパの尻尾を斬り付け―――

エルダ「援護するわ!」

俺「いいタイミングだっ!」

俺がスカル・リーパの堅い尻尾を斬り付けるのと同じタイミングでエルダが細剣の6連突き技のクルーシフィクションで縦に3連突き、横に3連突きと十字を描くような突きをスカル・リーパの尻尾に放ち、ついにレイナを襲っていたスカル・リーパの尻尾はそのダメージにより、ボスモンスターの轟くような雄叫びと同時に振り払われたのだった。


全てのプレイヤー達はまさに限界ギリギリの死闘!オズマにとってもこの戦いは、第二回リアルマネーゲームの死のロッククライミングと双璧を為す死と隣り合わせの戦い!
息つく暇などまさにあり得ぬ死闘……!安息の時など一切なき死闘……!そして一人、また一人と失われ続ける精鋭プレイヤーの命!
それまるで、金は命よりも重いと言い放ったガチャモンの言葉が形を成したかのように軽々とプレイヤー達の命が散ってゆくのであった! by立木ナレ


※ ※ ※


そして、戦いは実に一時間に及んだ……!まさにそれは無限にも思えた激闘!その果てについにボスモンスターがその有り余る巨体を四散させたのだが、歓声の声をあげる者などは誰一人として皆無であった。
誰もが倒れるように床に座り込み、あるいは仰向けに転がる様に荒い息を繰り返すかであった……by立木ナレ


俺「レイナ……エルダもまだ生きてるか……?」

俺は床に腰を下ろした状態であたりを見渡し、同じギルドのメンバーであるレイナとエルダが取り合えずまだこの場にいる事にひとまずは安堵して、そんな消えそうな声を漏らしていた。

レイナ「……残りHP4割の状態で生存してるわ」

エルダ「お疲れ様……って自分に言いたい気分だわ……」

レイナもエルダも既に疲労困憊である事が目に見えて明らかだった。特にレイナが疲労感をハッキリと見せるのは殆ど無い事でもある。
そんなレイナですら両手剣を杖の様にして突き立てて、疲労の溜まった自分の身体を支えている状態だった。

俺達のギルドから参戦した3人は全員が生き残ったわけだが、到底手放しで喜べるわけが無かった。犠牲者の数は多数、ボス戦開始直後に三人が死に、そこから更にボス戦が続くにつれて犠牲者が増えていく光景は俺の脳裏に今も明確に焼き付いていた。

クライン「何人―――やられた……?」

がっくりとしゃがみこんでいるクラインが、顔をあげてかすれた声で口にした。

レイナ「……このフロアに残っているプレイヤーの数は18人よ。最初は32人だったから、14人が犠牲になった事になるわね」

真っ先に調べ上げて、レイナがその結果を報告する。

俺「どいつもこいつも、攻略組の中でも歴戦の上位プレイヤーだったってのにな……」

にわかには信じ難く、まるで悪夢が続いているかのような感覚だった。平均レベルから考えても、例え離脱や結晶アイテムによる瞬間転移、回復が不可能とはいえど、生き残りを優先した戦い方であればそう何人も死ぬはずが無かったと俺は思っていた。

エギル「……うそだろ……」

エルダ「エギルさん、随分と張りの無い声じゃないのよ……」

と、冗談めかすエルダの声も気の滅入った声だった。

俺「これからどーなるんだろうな……これでようやく残り四分の一か、残り二十五層をクリアするまでに何人がやられるんだ……」

レイナ「……最前線の攻略組プレイヤーの数はせいぜい数百人、一層毎に今回のような犠牲が出ていれば、最終の第百層に到達する頃には攻略組はほぼ全滅ね」

レイナがほぼ全滅と言う表現を使ったのは、精々最後のフロアボス背と対面できるプレイヤーが一人か二人位はいるだろうと予測しての言葉だろう。
そして、その一人として真っ先に名前が上がるとすれば、未だに余裕すら感じさせる毅然とした表情でしっかりと立っている騎士団長ヒースクリフだろう。

俺「マジかよ……涼しい顔してる上にHPもイエローにすらなってねぇ……」

エルダ「圧倒的防御力の神聖剣使いとはまさにこの事かしらね?」

俺はふと、アイテムストレージを確認すると、自分があの戦いで偶然LA(ラストアタック)ボーナスを決めて、ユニークアイテムをドロップしていた事に気が付いていた。
そのアイテム名は『第75層突破記念ボックス』と表記されたプレゼント箱のようなアイテムだった。

俺「14人の命と引き換えのお宝は何だろうな……」

プレゼント箱をオブジェクト化した俺はそれを軽く叩いて開封する、するとプレゼント箱は白い光を放ちながら消滅し、そこに残されたのは数種類の見覚えのあるアイテムだった。

俺「回廊結晶に装備強化奥義書にふしぎな飴か……」

回廊結晶は今回のボス戦の直前にも使われた、転移コリドーを作り出し、あらかじめ記録した地点に転移させてくれる超希少結晶アイテムだ。
そして、第一層でディアベルからキリトのLAを阻止したらくれると提示された装備強化奥義書、更に使えばその場でレベルが一つアップする――これも超希少アイテムのふしぎな飴だった。

俺「どれもこれも、かなりのレイアイテムなんだが、サーバーに一つのアイテムってのはさっきのプレゼント箱の事でその中身はあくまでかなりレアなアイテムの三点セットだったわけか……」


14人の死と引き換えに得たのは、レアアイテムではあるが14人の命にはあまりには代えがたいただの三つのアイテムであった!
だが、第75層フロアボス戦はこれで静かに終わるわけではなく、この直後に――とあるものの行動により急展開を迎えるのであった! by立木ナレ 
 

 
後書き
いよいよアインクラッド編もクライマックスです 
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