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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE105 集まる勇者たち

西暦2024年11月7日。七十五層の主街区コリニアのゲート広場には、既に攻略組の、ハイレベルプレイヤーらの集団が出来ていた。
既に俺とレイナ、そしてエルダもその集団の中にいる。ここの集まった連中は第75層フロアボスの偵察戦の状況を聞かされた上で参戦を申し出た連中だった。

エルダ「まだ40人も集まってないわね、やっぱり今までと条件が違い過ぎるのね」

その場に集まっているメンツに人数をざっと数えて、エルダは厳しい表情でそう口にしていた。第75層のボス部屋で偵察隊のメンバーが半壊したと言う情報は攻略組を中心に瞬く間に広がり、あまりにも過酷な条件を前に普段であれば率先してボス戦参加を希望する攻略組のメンバーでも流石に尻込みする者が大多数のようだった。

俺「けど、お前らはこんなどんな危険が待ち構えてるか分からねぇ、初見同然のフロアボス戦に良く参加する気になれたな?」

同じギルドメンバーで、当然のようにこの場に来ているレイナとエルダに対して俺がそう言うと先に答えたのは、静かな口調のままのレイナだった。

レイナ「……ギルドのリーダーのオズマが行くって言うから、私も参加するだけよ」

俺「そう言われると、俺が付き合わせちまってるみたいだな……」

俺の返答に対してレイナは首を小さく横に振ってそれは違うと意思表示してくれていた。一方のエルダの方は、若干強張った表情のまま、こちらに視線を向けないまま答えた。

エルダ「一日でも早く……このデスゲームから解放してあげたいだけだわ」

レイナ「……自分が生きて現実世界に生還する為じゃないの?」

エルダの言葉に若干どういう意味か理解し損ねたレイナが小首を小さく傾げ、キョトンとした表情を浮かべる。
そんなレイナにエルダは数秒間じっと認めた後、レイナの頭を軽くポンと叩いて穏やかな口調で告げた。

エルダ「勿論、私だって現実世界に速く帰りたいんだからその為に戦うのよ……会いたい人だっているんだから……ちょっと他のギルドの人達と挨拶してくるわね」

それだけ言ってエルダはゆっくりと歩きだし、聖竜連合やら血盟騎士団の者達の所に声を掛けに行った。

俺「アイツ、別に普段はボス戦の前に挨拶なんてしてねーのにな」

最近のエルダは俺達とは別行動をとっている事が多いのだが、それに関しても妙な距離感的な物を俺は感じていた。
確か、第75層が解放されて間もなく――キリトとヒースクリフのデュエルの日以降からだな。

クライン「おす!さっきエルダが俺等の所に声掛けに来てたぜ。」

緊張した空気の中、陽気な表情で肩を叩いて声を掛けてきたのは風林火山のリーダーのクラインだった。
更にその隣には、今は商人プレイヤーでボス戦への参戦は減少している斧使いのエギルの姿もあった。

俺「俺の知り合いは命知らずが多いらしいな……別に今から逃げたって誰も悪くは言わねーと思うぞ?」

クライン「抜かせ!俺は偵察戦で前衛の奴らが扉一枚の先でやられちまったその場に居合わせてたんだぜ。ここで引き下がるわけには行かねーよ、ウチのギルドの連中も全員即答で参加するって言ってくれたからよぉ、猶更引き下がれねーなぁ!」

クラインは右手で握り拳を作って、まるで詳細の分からない第75層フロアボス戦に対する意気込みを露わにしていた。その隣のエギルは腕を組んだ状態で野太い声を出す。

エギル「猫の手も欲しい状況なんだろ?俺だって今は商人だが腕は落ちたつもりはねーんだ。意地悪なこと言って追い返そうなんて考えてんじゃねーよ」

どうやら、どちらも既に覚悟は決めている様子だった。この分ならボス部屋でどんなモンスターが出て来ても果敢に戦ってくれるだろう。
俺はクラインとエギルの勇敢さに感心している時だった――

レイナ「……キリトとアスナも来たわ」

俺「ああ、気やがったか……どこで休暇取ってたか知らねーが、それも急遽切り上げてってところみたいだな」

アスナは慣れた手つきで主に血盟騎士団の仲間達に右手でギルド式の敬礼を返礼しつつ、キリトの脇腹を小突いていた。
キリトは促されるようにぎこちない表情と仕草で敬礼をしていた。

クライン「ったく、攻略組の中でも最強格の二刀流使いが何を今さら緊張してやがるってんだよ――ちと、喝入れてくるか」

エギル「俺は普通に声かけるだけだぜ」

そして、まずはクラインがキリトの背後から肩を叩きながら声を掛ける事になる。

クライン「よう!」

声を掛けられたキリトが振り返ると、その目の前にはにやにやと笑っているクラインとその横にエギル、更に後方にいる俺とレイナを確認したキリトはつまらなさそうな表情で言った。

キリト「なんだ……お前らも参加するのか」

エギル「なんだってことはないだろう!」

エギルが憤慨したように声を出した。

エギル「今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売を投げ出して加勢しに来たんじゃねぇか。この無私無欲の精神を理解できないたぁ……」

身振りを大きくして喋り続けるエギルの腕をキリトがポンと叩く。

キリト「無私の精神はよーく解った。じゃあお前は戦利品の分配から除外していいのな」

俺「そうなのか?そいつは感心させられる無私無欲の精神だな」

キリトがそう言ってやり、俺が更に付け加えて言うと、エギルはスキンヘッドの頭に手を乗せて、眉を八の字に寄せる。

エギル「いや、そ、それはだなぁ!」

そんな口籠るエギルの語尾に、クラインとアスナの笑い声が重なった。笑い声は集まったプレイヤー達んも伝染するように、周囲の緊張が徐々に解れていった。

レイナ「……皆、さっきまで緊張していたのに、少しはリラックスしたのかしら?」

俺「バカなやり取りでも、こういう時はこんな感じに硬くなった連中を解す意味があるんだな」

そして、午後一時ちょうどに、転移ゲートから新たなる数名が出現した。巨大な十字盾を構えた血盟騎士団の団長のヒースクリフと、血盟騎士団の精鋭達だった。

レイナ「……なんだか、皆また緊張してしまったみたいだわ」

クライン「しかたねーさ。なんつっても連中の結束力の高さときたら、そりゃも~、大迫力よ」

そして、ヒースクリフと4人部下は、プレイヤーの集団を二つに割りながら俺達の方へ歩いてくる。

エルダ「どうやら、本格的に役者が揃ってみたようね」

俺「お、あいさつ回りはもう終わったのか?」

そこに丁度、他のギルドメンバー達に声を掛けていたエルダが戻ってきたのだった。エルダは小さく含み笑いを浮かべて口を開く。

エルダ「挨拶って言っても、少しばかし『今日はよろしくね』って言って来ただけよ、皆流石に今日は不安そうだったけど、声を返してくれるくらいの気力はあるみたいだったわね」

エルダがそう答える頃には、ヒースクリフは俺達の前に立ち止まっていた。そして、軽く俺達に頷きかけると、集団に向かって言葉を発した。

ヒースクリフ「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況は既に知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。――解放の日の為に!」

ヒースクリフの力強い叫びに、プレイヤー達は一斉にときの声で答えた。

俺「ホント、大したカリスマ性だよ騎士団長殿は、リアルじゃ一体何してる奴なんだろうな?やっぱり、職場とか学校とかでリーダーですって感じの役割や立場についてる奴なのかもな」

別に俺は誰かに対して言ったわけでもないが、俺のそんな独り言に対してエルダがこちらを振り向く事なく言葉を発した。

エルダ「どうかしらね?ここはあくまでソードアート・オンラインと言うゲームの世界よ。ゲームの世界で集団のトップに立ってる人が、実はリアルでは変わり者の人嫌いで、ボッチの人だったって事も有り得るじゃないのかしらね?実際に、ゲームをしてる時だけ現実とは全くの別人を演じる――ローカルプレイなんていくらでもあるわけだし」

俺「へぇ……妙に具体的な例をあげるんだな。ヒースクリフ騎士団長殿も、リアルじゃそんなコミュ障の変人かもしれないってか?」

俺が半笑いでそう聞き返すと、エルダはやはりこちらを振り返る事無く言葉を返す。

エルダ「別に……このゲームの世界で大活躍してくれるのなら、リアルでどんな人だったとしても気にする事は無いわよ」

俺「まぁ、それもそうだよな……」

エルダの返答を聞き、どうでもいい詮索だったと俺は考え直して、それ以上考えるのをやめたのだった。
すると丁度ヒースクリフはキリトに視線を合わせて、微かな笑みを浮かべて声を掛けていた。

ヒースクリフ「キリト君、今日は頼りにしているよ。『二刀流』を存分に振るってくれたまえ」

その低いソフトな声には一切の気負いや緊張感が感じられなかった。キリトが無言で頷くと、今度はヒースクリフは俺達の方にも視線を合わせてくる。

ヒースクリフ「オズマ君も無論、期待させてもらっているよ。特に『補足転移』の力を今まで通り出し惜しみする事無く使ってくれたまえ」

俺「ご期待に沿えるように、力の出し惜しみ話だな。だが、そんなのは当然だよ……お互いにな」

と言うか、この場に集まっている連中の中で最も周囲の期待を一身に背負っているのは言うまでも無く血盟騎士団の騎士団長にして最初のユニークスキル使いのヒースクリフだろう。

エルダ「…………」

ヒースクリフ「では、出発しよう。目標のボスモンスタールーム直前の場所までコリドーを開く」

集団の方を振り返り、片手を軽く上げた状態でそう言いながら、腰のパックから濃紺色の結晶アイテムを取り出すと、その場のプレイヤー達から『おお……』と声が漏れた。

エギル「ここで惜しみなく回廊結晶(コルドークリスタル)たぁな、血盟騎士団の騎士団長さんは本当に気前が良いもんだぜ」

キリト「ホントだな、どっかのぼったくり商店の主人にも見習ってほしいもんだよ」

エギル「お前って奴は本当にしつけぇっての……」

エギルはヒースクリフの気前の良さに感心するが、即座にキリトに皮肉で指摘されて、眉を再び歪ませていた。
アスナとクラインが笑い声を重ねるのもさっきと同じだった。

俺「けど、本当にあんなスゲーのをあっさりと使ってくれるもんだぜ。騎士団長殿があれを使うのも一度や二度じゃないだろうに」

回廊結晶は任意の地点を記録し、そこに向かって瞬間転移ゲートを開く事が出来る為、それ一個数十人規模の、レイドパーティーのメンバー全員を転移させる事が出来る極めて便利な代物であるがゆえに、出現率は極めて低く、NPCショップなどでは当然売っていない。

エルダ「さっきの皆の反応は、珍しい回廊結晶が見られたことに対する驚き以上に、それをすんなりと使う騎士団長さんに驚いたって感じかしらね?」

エルダの憶測通り、プレイヤー達の視線は回廊結晶ではなくヒースクリフに集まっているように見えていた。
しかしヒースクリフはそんな事はまるで意に介さぬように、『コリドー・オープン』と発生すると、奴の目前に青く揺らめく渦が出現した。

ヒースクリフ「では皆、ついてきてくれたまえ」

当然ヒースクリフが先頭で青い光の中に足を踏み入れると、その姿は瞬時に閃光に包まれて消滅する。間を置かずに4人の血盟騎士団んメンバーがそれに続いていた。
その時、俺はいつの間にか周囲にかなりの数のプレイヤーが集まっている事に気が付いた。

俺「どうやら、見送りに来た連中が思った以上に多いみたいだな」

エルダ「ボス戦の噂が一般のプレイヤー達にも広まってたのね、あの人たちのご期待に応えられるようにしないといけないわね」

そして、激励の声が飛び交う中、俺達は光のこるどーに飛び込んで転移していくのだった。軽い眩暈に似た転移感覚の後、そこはすでに迷宮区の中で、数日前に俺達が目の当たりにし、偵察隊の半数を失う羽目になったボス部屋の目の前に来ていたのだった。

俺「さて、またここに来たか……」

レイナ「……生き残るわ、オズマは私が生かして現実世界に帰すから!」

珍しくレイナの言葉は強い意志が籠った声であった。そして皇族から次々とプレイヤー達が青い渦から出現し、最後にキリトとアスナの二人が転移し、今回のフロアボス戦のメンバーがこの場に揃ったのだった。 
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