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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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提督、里帰りする。その7

 
前書き
※注意!※

 作中にお酒の味についての品評が書かれておりますが、あくまでも筆者の飲んでみての感想であり、特定のメーカーへの誹謗・中傷、また宣伝の意味合いはありません。悪しからずm(_ _)m 

 
 差し込む朝陽に顔を照らされ、その眩しさで目が覚める。……というより、ついさっき寝始めたのに睡眠を妨害された感じだ。流石に強かに酔った状態で夜戦(意味深)の手練れ3人相手はキツかった。が、どうにか3人共KOして倒れ込むように寝息を立て始めたのは空が白み始めてからだった。

「ん~……まだ眠いが、二度寝って気分じゃねぇな」

 立ち上がって背伸びをすると、ゴキゴキと音を立てて伸びた背骨の隙間から眠気が抜けていくような気さえするぜ。足元にはまだ気持ち良さそうに眠っている金剛達の姿がある。昨日着ていた浴衣はぐちゃぐちゃになってるし、新しい浴衣を羽織って朝風呂にでも行くとするか。

 大浴場に着いて、引き戸をガラリと開けると先客が湯船に浸かっていた。少し癖っ毛の緑の長髪が湯船に浸からないようにアップにしている彼女は

「あ……パパ、おはよう」

 俺の姿を見つけると、にへらっと笑って顔を崩した。

「よう、早い……ってワケでも無さそうだな」

 山風の顔を見ると、目の下にうっすらと隈が見える。

「うん……青葉さんと秋雲さんが五月蝿くて」

「あ~……そりゃすまんかったな。まぁ今日はほとんど車移動だから、車の中でぐっすり寝てくれ」

「うん、そうする……」

 そう返事する山風は、いかにも眠たそうにふわぁと欠伸をした。

それから1時間程経ってから漸く起きてきた金剛達と朝飯を食い、身支度を整えるのに更に2時間の時間を要した。遅くなった理由は……まぁ、あいつ等も汗だくの身体を洗いたかったからだ。そうしてようやく俺達は宿をチェックアウトした。

「darling、今日はこれからどうするの?」

「あぁ、今日はこのまま八戸に戻って皆への土産を買ったら新幹線で東京へ。そこから成田でブルネイへ飛ぶ」

「あら、一泊だけでいいの?もう少しゆっくりしても……」

「そうもいかねぇんだよ、陸奥。どうにも胸騒ぎがしてな」

 なんというか、虫の報せって奴なのかね。想定外の事が起きそうな時には胸がざわついてくる。昨日の晩もお陰で集中できなくて、少しモヤモヤしてたりする。こういう時の俺の勘ってのは外れてくれればいいのに良く当たってしまう。

「そう。それなら仕方無いわね」

 付き合いの長い加賀はその辺心得た物で、一も二も無く頷いていた。

「んじゃ、急ぐとすっか」

 俺は金剛達に声を掛け、レンタカーに乗り込んだ。




「そういえば、お土産は何を買うんデス?」

「そこなんだよなぁ。八戸は意外と名物が多くてな……」

※八戸市

 青森県の太平洋沿岸に面した都市。青森市・弘前市とならんで青森県の中核を担う都市である。新青森駅が出来るまでは東北新幹線の終着駅として青森の玄関口でもあった。タレントであり花畑牧場の経営者である田中義剛、『アイアムアヒーロー』の作者である花沢健吾など、有名人も多い。

 スポーツとしてはアイスホッケー、アマチュアレスリングが有名で、オリンピックメダリストの伊調姉妹や、吉田沙保里選手の父である栄勝さんも八戸市出身。高校野球でも巨人の坂本勇人選手の出身校である八戸学院光星が有名である。



※八戸の名産品

 八戸は太平洋に面している事もあり、新鮮な魚介が美味い。特にもイカとサバは有名で、イカは日本一の水揚げを函館等と毎年競っているし、サバは『八戸前沖サバ』とブランド化している。丸々と太ったサバはたっぷりと脂が乗っているがしつこくなく、塩焼きや〆さばにすると酒のアテにも飯のおかずにも最高である。他にもヒラメやホヤ、ウニ等も有名である。

 他にも南部煎餅や青森のりんごを作ったお菓子など、スイーツも密かに有名になりつつある。





「とりあえず、街をぐるっと回りながら土産を選ぶとすっか」

「まずは何を買うのがいいかしら……」

「お酒は確実に確保しないと、絶対不満が出ると思います!」

「そりゃそうだろ青葉。ウチの連中が青森の土産にりんごを貰って喜ぶと思うか?」

「……愚問でしたね、すいません」

 そりゃあ青森特産のりんごを買っていってもそれなりに喜ばれるとは思うが、絶対酒を買っていった方が喜びの度合いが強いだろう事は明白だ。

「しかし、どっちにすっかなんだよなぁ……」

 実は、八戸に居を構える酒造メーカーは2つある。『陸奥八仙』や『陸奥男山』で有名な㈱八戸酒造と、『八鶴』『如空』で有名な㈱八戸酒類だ。

※㈱八戸酒造

 八戸市に居を構える日本酒の酒造メーカー。メインブランドは芳醇でフルーティな飲み口の『陸奥八仙』と、ガツンとくる辛口ながら爽やかな後味の『陸奥男山』の2つ。八仙は飲み易く万人受けするが、男山の方は好みが別れる。最近は八仙のフルーティさを活かしてゼリーを作ったり、酒粕を練り込んだドーナツを商品化するなど、女性客へのアプローチが盛んになってきている。



※㈱八戸酒類

 江戸時代から続く八戸の酒造メーカー。現在は八戸市だけでなく、五戸町にも工場を構えている。メインブランドは端麗でふくよかな旨味のある『如空』と、伝統的な南部杜氏のこだわりの酒『八鶴』の2つ。特に『如空』は全国新酒鑑評会で2年連続金賞を受賞した(平成28・29年)程の美味しいお酒である。

 歴史ある酒蔵だけに伝統的な酒作りにこだわる一方、八鶴を使っての梅酒や青森特産のりんごを使って作った酵母を用いた酒を作るなど、新しい試みも多い。




「どっちも美味いんだよなぁ……」

「なら、どっちも買えばいいじゃない」

 しれっと言ってのける加賀。いや、そうは言っても土産を買う予算という物がだな……。

「ノープロブレムだよdarling!今よどっちに電話して、鎮守府の予算の使用許可貰ったヨー!」

「あら、それなら大丈夫ね♪」

「どうせなら、全種類制覇しちゃいましょう!」

「……そういう時の手際の良さは何なんだよお前ら」

「あははははは、そりゃあ誰しも欲しい物には全力出すでしょ~」

「パパ、どんまい」

 まぁいい、人間諦めが肝心だからな。鎮守府の予算が使えるのなら、たっぷりと買っていこうじゃないか。その後も日本酒を始め、名物のイカを使ったツマミになりそうなお菓子や地域限定の〇ッキーやハ〇チュウなど、欲しがる奴が居そうな土産を中心に買い漁っていく。

「さて、そろそろ新幹線の時間だ。お前ら、忘れ物はねぇよな?」


 全員が頷くのを確認して、レンタカーに乗り込む。八戸駅の前にも支店があるらしく、そちらに返してくれればいいとの事だったので気にせず使わせてもらう。

「荷物はまとめて先に送ったし、後は帰るだけネー」

「だな。またその内墓参りついでに帰ってきたいな」

「無理に墓参り等を理由にしなくてもいいのでは?」

「馬鹿ねぇ、加賀ったら。ただの照れ隠しでしょ?提督なりの」

「一言余計だぞ、陸奥」

 気恥ずかしいというのもあるが、今の俺は海軍の大将という立場にある。おいそれとは動けないという理由もあるから、何かしらの理由をつけたくなっちまう。

「それに、まだまだ忙しいしな。俺はとっとと隠居してお前らと面白おかしく生きたいんだがなぁ」

「当分は無理じゃないですか?司令より頼りになりそうな人なんて、海軍の中じゃあ数える程しかいないでしょうし」

「やれやれ、楽隠居の道遠しってか」

 そんな事をぼやきながら、提督はブルネイへの旅路を急ぐ。この数日後、後に『リバースドナイン事件』と呼ばれる騒動に巻き込まれる事になるのだが、それはまた別のお話。
 

 

  
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