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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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おとこ

<アリアハン近郊>

ウルフは走る。
ひたすら走る。
逃げる様に走る。

いったい何から逃げているのか…
旅の仲間からか…
憧れの女性を寝取った男からか…
それとも憧れの女性の自由意志を蔑ろにした自分からか…

もう、何故走っているのか、何故逃げているのか分からないでいる。
そして…ここが何処かも…


気が付けばモンスターに囲まれていた!
大がらすや一角ウサギ、そしてオオアリクイに…
ウルフは慌ててメラを唱える!
メラは一角ウサギに命中!

しかし隙を突かれオオアリクイの爪がウルフの腕を切り裂く!
あまりの激痛にその場に倒れ込むウルフ…
そしてウルフ目掛け突撃してくる大がらす!
何とか身を捩り大がらすの攻撃をかわす!
直後、一角ウサギの角がウルフの太腿に突き刺さる!

ウルフは死の恐怖を憶えた。
自分一人では戦う事も逃げ出す事も出来ない…
大がらすが再度ウルフの瞳目掛けて突撃をしてくる!
今度は避けられない…
死ぬ!
そう思った瞬間!

「バギ」
強烈なつむじ風が巻き起こり真空の刃がモンスター達を切り裂いてゆく!
「ふぅ…間に合って良かった」
声のする方を見ると、優しい表情のリュカが近付いてくる。

「………今の…アンタがやったのか…?」
「まぁ、一応…」
リュカはウルフの側にしゃがみ込むと腕と足の傷の具合を確認する。
「リュカさんて魔法使えたんですか!?」
リュカの後ろから現れたアルルが驚き質問する。
「う~ん…まぁ、一応…」
ウルフはリュカから目が離せないでいた。
リュカのバギはウルフが知っている…見た事があるバギとは桁が違っていた…

「ベホイミ」
ウルフの傷が完全に治る。
痛みも跡も残らずに!
「ベ、ベホイミって高度な治癒魔法じゃないですか!?そんな魔法まで使えるんですか!?」
更に追いついたハツキも驚きを隠せないでいる。
「え~と…まぁ、一応…調子が良ければ…?」


森を出て街道に戻り一旦落ち着いた一行は一斉にリュカへ質問をぶつける!
「何であんなに威力のあるバギを使えるんだ!?」「何で魔法を使える事を黙ってたの!?」「僧侶でも相当修行を積まないと使えないベホイミを何で使えるんですか!?」
等々…

「落ち着いてみんな…一人ずつ答えるから」
若者の勢いに押されながら、リュカは応答する事に…
「じゃぁ俺の質問。リュカのバギは威力が凄すぎる!何で?」
「分かりません!次、アルル」

「何で魔法使える事黙ってたの?」
「言ったら戦闘に参加しろって言われるから!絶対参加したくないもん!次、ハツキ」

「ベホイミってかなり修行しないと使えないと思います。どうして使えるんですか?」
「気付いたら使えてた!以上、質問タイム終わり!!」
リュカは強制的に質問を打ち切る。

「ちょっと勝手「そんな事よりウルフ!!」
アルルの文句を遮り真剣な瞳に切り替わるリュカ。
「ウルフ!一人で町の外に出たら危ないだろ!アルルもハツキも心配したんだぞ!」
「う゛…そ、それは…だって…あの…」
リュカは少し屈みウルフと同じ目線で見つめ続ける。

「………ごめんなさい………」
「うん。良い子だ!」
リュカはウルフの頭を少し乱暴に撫でる。
本来ウルフは子供扱いをされるのが大嫌いであるのだが、相手がリュカだと何故か怒りが湧いてこないのである。

「ごめんな…ウルフ…ミカエルさんに惚れてるなんて知らなかったからさぁ…」
「い、いや…そ、そんな…惚れてるって言うか…その…」
ウルフは顔を真っ赤にして俯く…
そして、それを年上の女性二人がニヤけながら見守る。

「僕にも経験があるんだ…憧れてた女性の閨事を目撃しちゃった事が…」
「本当に!?」
若者3人は、思春期特有の興味心からリュカの話に耳を傾ける。
「僕が幼い頃住んでいた村に、フレアさんと言うものっそい美人のシスターが居たんだ。でもある日フレアさんと見知らぬ男が、物置小屋でエッチしている所を見ちゃってね…ショックだったなぁ…」
「それで…リュカさんはどうしたの?」
まさに同じシチュエーションのウルフは、心のモヤモヤを打ち払いたいが為に続きを急かす。

「うん。男の方に石でもぶつけてやろうと思って後を付けたんだけど、見失っちゃってさ…それ以来そのヤローには会った事ないよ」
「じゃぁ…そのシスターとはどうしたの?」
「最初は気まずくてさ…余所余所しくしちゃってさ…そうしたらフレアさん…涙目で僕に謝って来たんだ…『私リュー君に嫌われる様な事しちゃったかな?』『ごめんね。謝って許して貰えるか判らないけど…』って…」

「え!?シスターの方が謝っちゃったの?」
「そうなんだ。僕、最低だよね…こんなにも優しいフレアさんの心を傷つけてしまったんだ…フレアさんは何も悪くないのに…」
アルル、ハツキ、そしてウルフはリュカの切々と語る過去に胸が苦しくなる思いで聞き入っていた。

「だからウルフ!どんなに憤りを感じても、大好きな人にその感情を見せてはダメだよ」
《そうか…シスター・ミカエルはリュカさんの優しさを一目で見抜いたんだ…だから好きになっちゃたんだ…俺もリュカさんみたいな男になれる様頑張ろう!!》
ウルフは多少の誤解を脳内で補正し、リュカを目標の男へと昇華させてしまった。
果たしてウルフに幸せは訪れるのでしょうか………?




昨日とは違い、戦闘(リュカ抜き戦闘)にも慣れてきた一行は日が暮れてしまった事もあり、野営の準備を行っている。
戦闘以外の事となると俄然張り切る男リュカ…伊達に幼少期より旅慣れしてきた訳ではなく、テキパキと野営の準備を進めて行く。
野営などした事のない若者3人は、ただ呆然と見続ける事しか出来ず、アルルは思わず…
「戦闘も張り切って戦ってくれると助かるのだけど…」
まぁ…言うだけ無駄であるが…

全ての準備が整い、焚き火を囲い食事を始める。
そして今更ながらリュカが疑問を口にした。
「ところでさ…今、何処に向かってるの?」
「言ったでしょ!レーベよ」
「そこに何があるの?」
「………リュカさん…私達の旅の目的を理解してる?」

「う~ん…概ね…」
ほぼ理解してないリュカにアルルが優しく説明をしてくれた。
「私達は魔王バラモスが何処に居るのか分かってません。ですから、世界中を旅してバラモスの居場所を探し出そうと思ってます。その為にはこのアリアハン大陸から出なければなりません。そしてこの大陸の東に『いざないの洞窟』があります。そこの奥にはロマリア大陸に繋がる『旅の扉』があります。いま、そこを目指してます」

「へー…じゃ何でレーベに行くの?」
「アリアハン城からいざないの洞窟まで戦闘をしなくても1週間はかかります。その間ずっと野宿はイヤでしょう?だから立ち寄るんです」
「そっか…レーベには…美人が居るかな?」
《ここに居るじゃない!》
アルルは叫びそうになりながらも冷静な瞳で見据える事で大惨事を回避する事が出来た。
そして夜は更け、各々眠りの体勢に入る。
アルルとハツキはリュカが、寝ている自分の側に来るのではないかと期待を持って横になった為、この晩は一睡もする事が出来なかったらしい…
果たして二人の乙女が、女に変身する日は来るのであろうか…
そして、その担い手は…



 
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