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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE103 第75層偵察戦

2024年11月5日。第75層迷宮区のマッピングはかなりの苦労を要しながらも犠牲者を出すことなく最上層部まで進み、ついにボス部屋が発見されたのであった!
だが、問題はボス戦であった。これまで攻略してきた無数のフロアの内、二十五層と五十層のボスモンスターは不自然なほどに抜きんでた巨体と戦闘力を誇り、いずれの攻略においても多大な犠牲者を出してしまっているのであった。

二十五層の双頭巨人型ボスモンスターにはアインクラッド解放軍――旧・アインクラッド解放隊が壊滅的な被害を被り、最前線から遠退く結果となり、五十層においては金属製の仏像の多腕型ボスの猛攻に慄き、独断で敵前逃亡をする者が続出した事によって戦線が一時崩壊―――ヒースクリフ率いる援護部隊が遅れていればこちら側も全滅は必須であったともいわれるほどの状況下まで追い込まれていた。

そして、クォーターポイントごとに強力なボスモンスターが用意されている事から七十五層も同様である可能性が高いと推測されていた。

そこで攻略組は複数ギルド行動のパーティー20人が偵察隊として送り込む事になり、既にマッピング済みのボス部屋を目指していた! by立木ナレ


ユッチ「はぁ……アスナさん、何時になったらギルドに復帰するんだろうなぁ~」

俺「ボーっと天井見上げてどうすんだよ。ここには上空から奇襲してくる飛行型のモンスターなんていやしないんだから、上見てないで前を見ろ」

ぼんやりと上の空で天井を見上げているユッチを俺は軽く注意していた。複数ギルドから参加する事になった20人の偵察隊メンバーの中に俺達のギルドMBTから俺、レイナ、ユッチが偵察戦に参加する事になっていた。
だがユッチはギルドの活動を一定期間休んでいるが故に姿を見せないアスナの事ばかり考えて、常に上の空の様子だった。

アスナのギルド一時脱退を掛けたデュエルでキリトがヒースクリフに敗北したわずか三日後、丁度ユッチが再び俺とレイナのホームにシリカを連れてきた当日だった。
血盟騎士団に入ったばかりのキリトの身に事件が起きたのだった。それは、ギルドメンバーであるクラディールがキリトと他二名の同行者を麻痺毒によって動けなくした隙にまずはキリト以外の二人を殺害。どういう経緯かは知らないがクラディールは既に壊滅したはずの殺人ギルドラフィン・コフィンと繋がっていたとうだった。

クラディールは以前のデュエルの一件で因縁があるキリトにも剣を振り下ろし殺害寸前まで追いつめたのだったが、そこにキリトの危機を察したアスナが駆けつけてクラディールを追い詰めたわけだが、止めを刺す事は躊躇したアスナの隙を付いたクラディールを、麻痺から回復したキリトが体術スキルによって止めを刺し―――それからギルドへの不振を理由にアスナがキリト共々再度一時的な脱退を申請した結果、ヒースクリフはそれをあっさりと承諾してから既に3週間近くが経過していた。

ユッチ「ったくキリトの野郎!デュエルで無様に惨敗した癖に……!往生際悪くアスナさん言い包めてギルドから一時脱退なんてさせやがって!なんで騎士団長もあっさり認めちやうだよ~」

クライン「そう嘆くな少年。キリの字もそうだが、アスナさんも血盟騎士団で長い間ナンバー2として多忙だったんだろ?10代で思春期真っ只中の女の子なんだからよぉ、たまには色んなしがらみを忘れて思いっきり羽を飛ばしてぇ時だってあるもんじゃねぇか?」

ウダウダと愚痴を垂れているユッチに対して、クラインが肩を軽くポンと叩きながら諭すようにアスナのそれまでの苦労を引き合いにしてユッチに言い聞かせる。だが、それでもユッチは今一つ納得がいかない様な表情で口を開く。

ユッチ「けどさぁ~、キリトの野郎まで一緒に一時脱退ってのが胡散臭いんすよね~、野郎はギルドに入ったばっかりっしょ?幾らギルドに紛れ込んでたラフコフのメンバーに殺されそうにかったからって早々にアスナさんと一緒に一時脱退とか都合の良いにもほどがあるじゃないっすかぁ~」

レイナ「……うるさい」

ユッチ「え!?」

尚も無駄な不平不満をまき散らし続けるユッチだったが唐突にレイナから静かに一言、それも冷淡な口調で「うるさい」と普段のレイナがまず口にし無さそうな一言をお見舞いされて、その目は驚愕に満ちているのが目に見えて分かる。

さっきまでユッチを諭していたクラインも額から冷や汗をたらりと流し、引き攣った表情を浮かべているが、レイナは全く意に介する事無くユッチに対して更に厳しい言葉を浴びせ続けるのだった。

レイナ「……キリトとアスナの事なんて、貴方が口出しする事でもないしそもそも完全に無関係」

ユッチ「い、いや……け、けどアスナさんはぼ、僕にとっての最後の希望でして……そ、そんなアスナさんをキリトの野郎が―――」

レイナ「……それは貴方が一方的向けてる感情、アスナをストーキングしていたクラディールと根本的に大差ないわ」

ユッチ「そ、そんな!?」

あろう事か、アスナのストーカー男で狂人も同然であったクラディールと同一視されてしまうユッチ、そしてレイナの容赦のない毒舌は尚もおさまる事は無かった。

レイナ「……貴方がこんなところで愚痴を漏らしていても何も変わる事は無いし、ヘマをして部隊の足を引っ張り、迷惑をかける可能性が高いわ」

ユッチ「あ、いやいや……ちゃ、ちゃんと戦いになったらしっかりやるっすよ!こう見えても偵察戦を熟した回数は結構な数っすから!」

レイナ「……今はまだ偵察戦の前、ボス戦じゃない、迷宮区の回廊の方が一般のモンスターからの不意打ちを受ける可能性は高い、特に今の貴方みたいに関係の無い事で一喜一憂して、一人で騒いでいると注意力は散漫になるわ」

ユッチ「そ、それはそのぉ~……」

レイナの厳しくも的確な指摘を受けて、ユッチは言葉を詰まらせていき、あっと言う間に縮こまってゆくのだった。
そんなユッチの姿を見てレイナも、これ以上は何も言う必要も無いと判断したのか素っ気なく視線を逸らしたのだった。

ユッチ「はぁ……なんだよレイナさんまでぇ。僕の気も知らないでさぁ~」

俺「レイナが怒るなんて珍しいが、お前もいい加減キリトやアスナの事で一喜一憂してんなよ……自分には無関係だって割り切っちまった方が楽だぜ」

ユッチ「あ、もしかしたら―――!?」

唐突にユッチは、左手を広げた状態で握り拳の右手をポンと叩き、まるで何かいいことを閃いたと言わんばかりに清々しい表情と澄んだ目付きになるのだった。

ユッチ「レイナさんのあの態度ってもしかして、好意の裏返しじゃないっすか!?」

俺「…………」

ユッチ「あははっ!オズマさんってばハトが豆鉄砲食らったみたいな顔して見っとも無いっすよぉ~」

俺はこの時恐らく、ユッチの言うように表情がそんな間抜け面になってしまうのを、自分でも抑えられなかったようだ。
だが、今のユッチの前向き過ぎると言うか、見当はずれ極まりない楽観的でお気楽な言動を聞いたら、誰でもああなるだろう。

クライン「…………」

実際に、さっきまでユッチを諭していたクラインも、口をピッタリと四角い形に開けて、目も白目寸前の状態にまでなっていた。
普段は他人を呆れさせたりする側のクラインがこんな反応をする事自体が超レアな、S級食材を発見する事よりも珍しい事態と言えるだろう。

ユッチ「いやぁ~、最近レイナさんが僕に対して妙に手厳しいからまさかとは思ってたんっすけど―――そう考えるとレイナさんのあの冷たい態度もなんか可愛らしく思えてきちゃうっすよねぇ~」


まさに恐るべし……!圧倒的好都合極まりない自己解釈!ユッチの脳内ではレイナが自身に対して手厳しい態度を取りがちになっている事を有ろう事か、自身に対する行為の裏返しであると脳内変換――もはやユッチは自分の都合の良い解釈を一切疑う事無く、レイナが自身に対して気があるのだと言う妄想の世界へと圧倒的フルダイブ!! by立木ナレ


ユッチ「オズマさんには悪いっすけど、レイナさん貰っちゃうかもしれないっすねぇ~。レイナさんって現実(リアル)ではどこに住んでるんっすかね?年は多分僕らと同年代くらいですし、何の問題も無く付き合えそうっすね!」

俺「あいつは現実の記憶が無いんだって事は前にも散々説明しただろうが……」

ユッチ「あ、そー言えばそうです多っすね!ま、ちゃんとSAOをクリアして現実に帰還すればその辺りの問題もたぶんクリアされるでしょうし、そうしたら正式な交際は時間の問題ってところっすかねぇ~?」


一人浮かれポンチと化すユッチ!が、大きな声で自らの妄想話をしているがゆえにその声は当然、数メートルほど前を歩いているに過ぎないレイナには丸聞こえ!聞き耳スキルを使うまでも無く偵察隊メンバー全員に駄々洩れ! by立木ナレ


レイナ「……気持ち悪い」

俺は前方を歩くレイナが漏らした、ユッチに対する明確な悪寒を示す言葉を聞いてしまったのだった。こんな事でこのギルドはこれから大丈夫なのか少々不安にも思い、レイナとユッチの関係がこの先更に拗れてしまったらどうするべきかと俺は思ったが、やはりその場合はユッチの方にギルドを止めてもらうしかあるまいと言う結論に10秒で到達してしまった。
そんな時、俺達の目の先に何度も見てきた、迷宮区の主の部屋の扉がハッキリと見えて来て、クラインが意気込みを感じさせる声で言った。

クライン「おお、ボス部屋だな!なんか妙にたっぷり時間かけて歩いた気がするが、ようやくこれで偵察戦を始められそうじゃねーか」

レイナ「……偵察戦とはいえ、クォーター・ポイントだから慎重に行うべきよ」

それは、この場にいる者全員が同じ認識だろう。話し合いの結果、20人の偵察隊の内、10人が後衛としてボス部屋の入口で待機し、最初の10人が部屋の中を探り状況を確かめると言う方針が定められた。
そして、内訳としては前衛の10人は血盟騎士団から2名、天穹師団からは4名、聖竜連合からは2名、その他から2名のメンバーが前衛として先のボス部屋に入る事となり、MBTの俺達3人と、クライン率いる聖竜連合の3人、それ以外の4人(主に血盟騎士団と聖竜連合のメンバー)は後衛として待機する事が決定した。

「では、行ってくる……」

クライン「おう、十分気を付けて行って来いよ。少しでもヤバいと思ったらすぐに戻ってきな」

前衛のメンバーである聖竜連合のプレイヤーが緊張感を帯びた表情で仲間達を引き連れて、ボス部屋の入口を開けて、ゆっくりとした足取りで、周囲を見渡しながら部屋の中央に到達した時だった。

バタン!と音を立てた頃には既にボス部屋の入口の扉が勝手に閉じてしまったのだった。

クライン「っ―――ど、どぉなってんだこおりゃ!?なんでボス部屋が勝手にしまっちまうんだよ!!」

俺「落ち着け、入れないと決まったわけじゃない!」

俺はそう言ってみるが、内心は完全に前衛のメンバー達と分断されてしまった、これが第75層のボス部屋の罠であると考えていた。
俺はひとまずボス部屋の扉を開けようとするが、部屋の扉は頑なに閉ざされビクともしなかった。

俺「ユッチ、鍵開けスキル高めてたよな?」

ユッチ「あ、はい!今試してみるっす!」

流石にユッチもこの時は、馬鹿な浮かれた妄想を切り上げて鍵開けスキルで閉ざされたボス部屋の扉を開けようと作業を始める。
もしかしたら既にボス部屋の中ではボスモンスターがその姿を現している頃かもしれない―――だとすればたった10人しかいない偵察隊の前衛たちがどうなるか、想像するに容易くない結果になってしまうだろう。

ユッチ「ダメっす!何回やっても開かないっす!これは鍵開けスキルで開く扉じゃないっすよ!」

ユッチが喚き散らすように、鍵開けスキルが通用しない事を告げる。だとしたら後他にやる事は――――

レイナ「……いっそ、壊す?」

クライン「もうそれっきゃねぇ!やるぞオメーら!この扉を叩いて斬ってぶっ壊せぇ!」

それから俺達は最早ほかに有効な手立てなど思いつかなかったが為にそんな事を5分以上も続けていた。当然のことながらボス部屋の扉は破壊不能オブジェクトなのでどんな攻撃や技を浴びせようとボス部屋が壊れるわけが無いと思っていたが―――

クライン「お、開いたぜ!開いたじゃねーか!やれるだけやってみるもんだなぁ!」

扉は壊れはしなかったが、唐突に再び音を立てた勝手に開いたのだった。クラインは攻撃を加え続けた結果であるかのようにそう叫ぶが、果たして本当にそうなのだろうか?

レイナ「……中に誰もいないみたいね」

クライン「な―――!?マジかよぉ……」

それはこの扉が閉ざされてある程度時間が経過した時点でそれなりに予想していた展開だった。レイナの索敵スキルを使うまでも無く、前衛の10人も、ボスの姿も無く、念のため転移結晶で断っ述した可能性を確かめる為に、メッセージで10人の前衛に安否確認をして見たが誰一人として返答はなく。
それはすなわち、前衛の10人はボス部屋の扉が閉まっている間にボスモンスターによって一人残らず死んでしまった事を意味していたのだった。

レイナ「……74層と同じ、結晶無効化空間だったのね」 
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