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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE102 シリカ再び、ユッチ玉砕!

2024年10月23日。キリトとヒースクリフのデュエルから三日が経過していた。デュエルはキリトの敗北により決し、キリトは血盟騎士団の一員となった。
一方そんな事とは関係なしにオズマらは―――― by立木ナレ


俺「エルダは今日も迷宮区には行かねーってよ」

レイナ「……そうなの」

あれ以降、攻略組の一員として迷宮区探索を続けているのだが、エルダは昨日も今日もそれには不参加である事をメッセージで伝えてきたのだった。
ギルメンの世話やミリオンの行商の護衛をしてるわけでもないらしく、一体何の用で別行動をしているのはか分からないが、俺は特にギルドのメンバー達の行動を逐一把握しようとしたり、強制するつもりなど毛頭なく、あくまで群れているだけでやりたい事は各々自由にするのが俺の方針なので特にその事で何か言おうなどとは思っていなかった。

ユッチ「オズマさ~ん!オズマさ~ん!」

これから迷宮区に向かおうとホームから出た矢先だった。声からして上機嫌で浮かれている様子が丸わかりのユッチが手を振りながらこちらに向かって駆け寄ってくる姿が視界に入ったのは。
そして奴が上機嫌である理由はその後ろから恥ずかしそうにしながら必死に付いてくる小柄な少女プレイヤーにしてアインクラッドではほぼ唯一に等しいビーストテイマーのシリカが理由である事は容易に想像がついたのだった。

俺「何の用か知らねーが、手短に――無理のない内容で頼むぞ」

おそらく、面倒な事を言ってきそうなユッチに対して俺はあらかじめそう釘をさしておくがユッチは自信満々に、絶対に断られるわけが無いと言わんばかりの様子で意気揚々よ言ったのだった。

ユッチ「このビーストテイマーのシリカちゃんを、最前線の迷宮区に連れて行って一気にレベルアップさせちゃおう思うんっすよ!丁度これから迷宮区に向かう所ですよね?」

俺「確かに迷宮区に向かう所だったがな―――」

俺は一瞬シリカの方に視線を向けると、シリカは恥ずかしそうな、やや警戒気味の様子で小さく俺に頭を下げて挨拶をする。

シリカ「お、お久しぶりです……」

シリカ自身はあまり乗り気ではなさそうだった。大方ユッチが無理に誘ったのだろう。軽々しく「僕に任せれば絶対に大丈夫だって」とか言ったのだろう。

ユッチ「シリカちゃん、一日でも早く最前線で活動できるプレイヤーになりたいみたいなんっすよ。この向上心の高さに僕は感激しちゃったっす!だから是非ともシリカちゃんの願いを叶えたくて、レベルを短期間でアップさせるためにも最前線で経験値をバリバリ稼ぐためにオズマさん達のお力を貸してあげてくださいっす!」

案の定、ユッチが何から何まで一人で説明を始めていた。俺は敢えて無言でシリカの方に視線を向けると、シリカは俺から目が合うのを逸らすように、顔を下に俯けていた。

レイナ「……どうして、私達にそんな事を頼むの?」

ユッチ「いやいや、ですからそれは僕がMBTとしてシリカちゃんの願いをかなえてあげたいと思いましてね。けど流石に僕だけじゃ最前線の迷宮区でシリカちゃんを守り切るのは難しいじゃないっすか?ですからここはお二人のお力を―――」

レイナ「……ユッチが一人で引き受けたんだから、ユッチが責任をもって護衛するか―――もしくはあなた自身がやっぱり無理だと認めて断るかのどちらかにするべきよ」

ユッチの他力本願な言い分に対してレイナが容赦なくユッチに対して、全て自分自身で解決するように言い放つのだった。
表情一つ変える事無く、手厳しく突っぱねられたユッチは今にも泣きそうな表情で狼狽えだすのだった。

ユッチ「ま、ま、待ってくださいよ!そりゃないっすよぉ~……ここで無理だとか言ったらシリカちゃんに格好が付かないっすし……」

シリカ「あの、やっぱり良いんですユッチさん。ユッチさんのギルドの方達にご迷惑を掛けたくありませんし、最前線の人達に追いつくと言う目標はやっぱり私自身がコツコツ努力して頑張るしかないんだと思うんです」

そんなユッチを気遣う様に、はにかんだ笑顔を向けるシリカだった。頭の上に乗っているシリカのフェザーリドラである通称『ピナ』がそれとシンクロするように「きゅう」と小さな鳴き声を上げていた。

レイナ「……可愛い」

俺「ん、どうかしたか?」

レイナ「……別に、なんでもない」

実際の所、レイナがハッキリと可愛いと口にしたのを俺は聞いたのだが、敢えて気が付かない振りをして見た。
それはともかく、何故十分な安全マージンを取って中層での活動をしていれば十分そうだったシリカが最前線に赴く事を望むようになったのか、俺はそれを聞くためにシリカに声を掛ける。

俺「なんか、攻略組にならなくちゃいけない理由でもあるのか?」

シリカ「えっとぉ……攻略組に必ずしも入らなくちゃいけないってわけじゃないんですけど、せめて最前線で活動できるくらいにはなりたくて―――」

俺に問いただされたシリカは、相変わらずモジモジと答えにくそうにしながらも、ゆっくりと自分の考えを口にし出していた。
そして、シリカの頭の上から肩の上にピョンと飛び乗ったピナを軽く撫でながら、言葉を続ける。

シリカ「実はこの子……ピナは一度だけ私を庇って死んじゃったんです。ちょうど半年くらい前の事でした」

俺「そうなのか……?」

シリカのその告白に俺やレイナよりもユッチの方が意外そうな表情を浮かべていた、ユッチ自身もその話を聞くのは初めてのようだった。
だが、シリカのペットモンスターのピナは今こうしてピンピンと生きていると言う事は、もしかしたら第47層の『プネウマの花』を手に入れに行ったのかもしれない。
あれをビーストテイマー本人が入手する事によって、死んだ使い魔を3日以内であれば蘇生させられると聞いたことがある。

シリカ「そんな時に、私を助けてくれた人がピナを生き返らせる方法を教えてくれたんです。その人――とても親切で優しくて強くて、その頃の私一人じゃ手に追えそうになかった第47層にある使い魔を蘇生させるアイテムを取りに行くまでの護衛を自分から引き受けてくれたんです」

やはり、第47層か。それにしてもシリカはその時の話を実に楽しそうに、よき思い出のように語っていた。
特に自分を助けてくれたその、とても親切で優しく強いプレイヤーの事を恩人である事を差し引いたとしても、まるで自分の中で特別な相手であるかのような様子だった。
そして、照れくさそうな、或いはその事を思い出して和やかな表情のままシリカは顔をあげる。

シリカ「もしかしたら、オズマさん達のお知り合いかもしれませんね」

俺「最前線で戦ってる攻略組のプレイヤーなら、知り合いでもおかしくはないな」

シリカ「別に、他の攻略組の人達を軽く見てるわけじゃないんですけどね。私が今まで見てきた強い人達の中でもあの人は―――キリトさんは別格なんです」

シリカは満面の笑みで、恩人の名前『キリト』の名を出したのだった。キリトの名前を呼ぶ瞬間が最も温かい笑みを浮かべたその様子から、このシリカがキリトに対して恩義以上の情を抱いているのは明白だった。

俺「ああ~、キリトだったのか……」

シリカ「あ、やっぱりオズマさんもご存じだったんですね!?」

俺がキリトの知り合いだと知るや否や、シリカは身を乗り出して目をキラキラとさせながら確認するように聞いてくる。
これはおそらく……いや、十中八九キリトの話を聞かせてくれと懇願してくるに違いないだろう。

シリカ「やっぱりキリトさんは攻略組の中でも強いんですよね!?他の皆からも凄く慕われてるんですか!?そ、それと―――お付き合いしている女の人とかもいたりして……?キリトさんほどの人なら、きっと周りの人達が放っておかないですよね……」


まさにすさまじいテンションのアップダウン!前半はキリトの事を知りたいがばかりに、意気揚々とした、速いテンポでの口調であったにもかかわらず、後半のキリトの女性関係の話を自分から切り出した際には一転!不安と焦りを感じさせ、しどろもどろな喋り方と化す!
その急激なハイテンションからのローテンションへの変化はまさにバブル景気崩壊!シリカのテンションは僅か数秒間の間にバブル絶頂期から90年代不景気へと急変化を遂げたのであった! by立木ナレ


さて、俺は何から答えるべきだろうか?確かにキリトは攻略組の中でもトップクラスの実力者だ。ユニークスキル使いである事が明らかになった事でそれは更に確固たるものとなった。
だが、奴は今に至るまでソロプレイヤーである事や、黒のビーターとしての汚名が尾を引いている事も有り、慕われる事は無くともむしろ疎まれる事の方が多い存在でもあった。
付き合っている女はいないのだろうが、近いうちに付き合ってもおかしくの無い相手なら既に存在する。
しかもそいつはこの2年間のSAOにおいて、キリトが最も長い時間を過ごした相手、更にはSAOでは知らぬ者など居ないと言えるほどの有名人でシリカを上回るアイドル的人気を誇るプレイヤーでもある。

だが、俺がシリカの問いにすべて答える前に、シリカがキリトの名前を出したことによって理性のタガが外れたかのように悲鳴をあげる者が現れるのは俺の予想通りだった。

ユッチ「う……うぅぅ……」

シリカ「え?ユッチさん、どうかしましたか?」

レイナ「……別に気にするような事ではないわね」

いきなり呻き声を挙げ始めるユッチをシリカが何事かと心配して声を掛けるが、レイナの言うとおりこれ気にするような事じゃないだろう。
そんな俺達の予想を裏切る事無く、ユッチは全てを奪われたかのような錯覚から呪怨の言葉を続けるのだった。

ユッチ「キリトォォ……ちくしょぉ……ちくしょおぉぉぉぉぉ!!」

シリカ「ふえぇ!?ゆ、ユッチさんってば何を言ってるんですか!?き、キリトさんに対してなんて事を!」

シリカは狼狽えつつもその言葉はキリトに味方寄りの言葉だった。そしてそれは同時に、勝手に傷心状態になっているユッチに止めを刺す、決めの一撃の言葉にもなった!

ユッチ「うわぁぁぁぁぁ!!お終いだ!お終いだぁぁぁぁぁぁ!僕のすべては奴によって何もかも奪われるんだぁぁぁァァァ!!」

腹の奥底から、絶望の雄叫びを轟かせながらユッチはホームを飛び出して一目散に走り去っていったのだった。
その目からは悲しみと憎しみが入り混じった感情によって涙が流れ続けていた。アスナ、そしてシリカ……ユッチがミーハー気分でアイドル的に慕ったり、好意を抱いた二人の女性プレイヤーの心はあろう事がユッチが嫌っているキリトに向けられていたと言う救われないオチであった。

シリカ「あ、あのぉ……ユ、ユッチさんは本当にどうしちゃったんでしょうか?私に何か原因があるのなら謝りたいんですけど……」

シリカは自分の言葉によってユッチがイカれたのではないかと心配そうな表情でそう慈悲深い言葉を口にしていた。それはユッチ自身が直接聞いていれば、正気に戻るどころか、今度は歓喜の涙を捲き散らしながら喜びまわっていた所だろう。

ある意味では、シリカが原因でユッチがイカれたのは間違ってはいないのだが、それは決してシリカに非があるわけではなく、そもそもの原因はキリトに対してしつこいくらいの敵愾心と奴自身のメンタルの弱さが問題なんだ。

俺「お前が気にしたり謝る事もねぇんだよ。どうせしばらくすればケロッと立ち直るんだろうからな」

レイナ「……オズマの言う通り」

シリカ「そ、そうでしょうか?それじゃあ、オズマさん達がそうおっしゃるのなら大丈夫だと信じてみますね」

結局、シリカを最前線を連れて行くのは、そこまでの危険に付き合わせて守り切れなかったらこっちも困ると言ってやんわりと断る事にした、
シリカもそれにはあっさりと承諾して、俺達に丁寧なあいさつをしてからホームから去ったのだった。 
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