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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE99 二刀流スキルの話

キリトはヒースクリフ、オズマと同じく、ユニークスキルの使い手であった……!キリトは自身のユニークスキル『二刀流』を駆使し、第74層フロアボスモンスターをほぼ単身に近い形で討伐!そして、残りHPが既に1ドット程を残しキリトは、その場で意識を閉じたのであった。 by立木ナレ



キリトがグリームアイズを倒した頃には既にクラインの仲間達が生き残っていた軍のプレイヤー達を全てボス部屋の外の安全地帯に避難させた後だった。
そして、俺とアスナで倒れたキリトを運び出したのだった。

アスナ「キリトくん!キリト君ってば!!」

アスナは既に何十回もキリトの側でキリトの名前を読み続けていた。悲痛な声でキリトの名前を叫び続けるキリト……一時的に気を失っているだけで放っておけばそのうち目を覚ますだろう。アスナもそれは理解しているのだろうがそれでもキリトが早く目を覚ます事を願いアスナの悲痛な叫びは続いた。

そんな時に、キリトはようやく上体を起こして痛みを訴える声をあげるのだった。

キリト「いててて……」

俺「ようやくお目覚めのようだな。と言っても、気絶してたのはせいぜい1分にも満たないがな」

という俺の言葉にキリトが耳を貸している様子はなかった。キリトの目の前にはアスナがしゃがみこんで、今にも泣き出す寸前の表情だった。

アスナ「バカッ……!無茶して……!」

叫びながら同時にアスナはキリトの首にしがみ付いてきて、キリトの目は白黒とさせていた。

キリト「……あんまり締め付けると、俺のHPがなくなるぞ」

どうやら冗談を言えるくらいの余裕は生まれたようだった。だが、アスナの顔は割と真剣に怒り気味の表情だった。

レイナ「……取りあえず、ハイポーションを飲むべきね」

アスナ「貸して!」

レイナがオブジェクト化したハイ・ポーションをアスナが素早くひったくりのような速さで取ると、それをキリトの口の中に突っ込んでいた。

俺「全回復するまで大体5分くらいだから、それまでは大人してる事だな」

最も、HPが全回復したところで、体感的に感じている疲労感が抜ける事はないだろう。そして、アスナがハイ・ポーションを飲み干したのを確認すると、アスナは顔を歪めて、その表情を隠すようにキリトの肩に額を当てた。

レイナ「……なぜ、泣き顔を隠す必要があるの?」

アスナ「ち、違うわよ!泣いてるわけが―――な、ないじゃない!」

レイナの言葉を否定するように叫ぶが、もうその叫び声が泣き叫んでいるような声にしか聞こえなかった。
キリトが顔をあげると、クラインが遠慮がちに声を掛けるのだった。

クライン「生き残った軍の連中の回復は済ませたが、コーバッツと後二人死んだ……」

俺「ボス攻略戦で犠牲者が出たのはマオ―――――第67層以来だよな」

俺はマオの名前を出して、咄嗟に67層と言い直したが、別にそんな気遣いなど無意味だと後から思ったのだった。

クライン「こんなのが攻略って言えるのかよ。コーバッツの馬鹿野郎が……。死んじまっちゃ何にもなんねぇだろうが……」

吐き出す様なクラインの台詞。が、次にクラインは気分を切り替えるようにキリトに聞く。

クライン「そりゃあそうと、オメェなんだよさっきのは!?」

俺「ああ、そうだったな……あんな取っておきがあったとはな」

キリト「……言わなきゃダメか?」

クライン「ったりめぇだ!見た事ねぇぞあんなの!」

キリトは俺達の顔を一旦確認すると、渋々と言った様子で答える。

キリト「……エクストラスキルだよ。《二刀流》」

俺「正確にはユニークスキルなんだろ?ヒースクリフの神聖剣や俺の補足転移と同じな」

軍の生き残りやクライン達の間にどよめきの声が流れていた。当然のように興味を抱き、クラインが尋ねる。

クライン「しゅ、出現条件は」

キリト「解ってりゃもう公開してる」

首を横に振ったキリトに対してクラインも、まぁそうだろうなと答えた。

俺「俺の補足転移もそうだが、キリトの二刀流もいつの間にかスキルスロットに入ってたってところか?」

キリト「ああ、今年の初めごろにな……」

エクストラスキルとユニークスキルの大まかな違いは、エクストラスキルはその殆どが最低は10人以上が習得しているのに対して、ユニークスキルは所持者が現時点で一人しか確認されていないと言う違いだった。
例えば、クラインの刀スキルや俺の納刀術スキルもエクストラスキルに該当する。

クライン「ったく、水臭ぇなあキリト。そんなすげぇ裏技黙ってるなんてよう」

キリト「スキルの出し方が判ってれば隠したりなんてしないさ。でもさっぱり心当たりがないんだ」

レイナ「……けど、その二刀流を使う機会は今回に限らず、いくらでもあったはずだわ。それこそ修得後は今までのフロアボス戦の度にでも使えば良いと思うわ」

レイナの的確な指摘に対してキリトは指先で耳の当たりを掻きながらぼそぼそと言葉を続ける。

キリト「……こんなレアスキル持ってるなんて知られたら、しつこく聞かれたり……いろいろあるだろう、その……」

クライン「ネットゲーマーは嫉妬深いからな、オレは人間ができてるからともかく、嫉み嫉みはそりゃあるだろうな」

まあ、事実俺も補足転移を習得した直後は色々と聞かれたりして面倒に感じた事も有ったわけだが、それでも俺としては、自分だけ持っている特別な力を誇示できる快感と言うか、満喫間の方が逸れに勝っていたので、長らく自分がユニークスキルの所有者である事を隠していたキリトの気持ちは今一つ分からなかった。

レイナ「……どうして、ユニークスキルを持っていると嫉まれるの?」

俺「単純に自分より強い奴とか、恵まれてる奴に対する劣等感とかじゃないのか?ガチのネットゲーマーはリアルの世界じゃ仕事だとか勉強だとかで上手くいってない奴も多いからな」

おそらく、そう言ったリアルで溜まった劣等感による鬱憤を晴らしたくてゲームをしているのに、そのゲームの世界でも劣等感を感じていちゃ溜まらないと言う考えを持ってる奴が多くいるのだろう。

クライン「……まあ、苦労も修行の内と思って頑張りたまえ、若者よ」

キリト「勝手な事を……」

レイナ「……クラインもまだ24歳なら若者よ」

クラインはキリトの型をポンと叩き、レイナからボソリとツッコミを受けていた。俺は軍の連中の方を向いて声をあげる。

俺「アンタら、自力で本部まで戻れそうか?」

俺がそう言うと、おそらく、俺と年の近そうな10代と思わしきメンバーが頷いた。

俺「そっか、酷な報告になっちまうが、今回の事は上の連中にしっかりと報告してやるんだ。ついでに、こんな馬鹿げた真似はこれっきりにするようにもな」

「はい。……あ、あの……有難うございました」

俺「いや、礼はならこいつに言うべきだ」

俺がキリトの方を指差しながらそう言うと、軍のプレイヤー達はよろよろとした足取りで立ち上がると、座り込んだままのキリトとアスナに深々と頭を下げて、部屋から出ていったのだった。

クライン「オレ達はこのまま七十五層の転移門をアクティベートして行くけど、お前らはどうする?特にキリトは今日の立役者だし、お前がやるか?」

俺「俺もそれには付き合わせてもらうとするか―――レイナもそれで良いか?」

クラインが両手を腰に当てながらそう聞いてきたので俺がレイナに確認を取って見ると、レイナも小さく首を縦に振って同意した。

キリト「いや、任せるよ。俺はもうヘトヘトだ」

クライン「そうか。……気を付けて帰れよ」

クラインも流石にキリトのその答えは予想していたようで、頷いて仲間に合図していた。俺とレイナ共々8人で、部屋の奥にある大扉の方に向かって歩き出した時だった。

クライン「その……、キリトよ。おめぇがよ、軍の連中を助けに飛び込んでいった時な……」

キリト「……なんだよ?」

クライン「オレぁ……なんつうか、嬉しかったよ。そんだけだ、またな」

キリトにそれだけ言い残してクラインは俺達と共に、第75層へ続く階段の扉を開けたのだった。そして、階段を上っている最中にレイナがクラインに対してその事について尋ねた。

レイナ「……どうして、キリトが軍の人達を助けに行った時に、クラインが嬉しいって思ったの?」

レイナの唐突な問いかけに、クラインは目をきょとんとさせて、しばらく口も開けっ放しにしていた。まさかレイナからそんな質問がされるなんて思ってもみなかったんだろう。
だが、クラインは直ぐに穏やかな顔つきになると言葉を返す。

クライン「オレぁよう……アイツとはこのゲームのサービス開始直後のよぉ、茅場のチュートリアルの前からの付き合いなんだよ」

俺「確か、キリトがベータテスターである事を見抜いて、レクチャーを頼んだんだっけな?」

クライン「まあな。アイツよ、俺がいきなり不躾にレクチャーしてくれって頼んで来たってのに、なんだかんだでソードスキルの使い方とか、モンスターとの間合いの取り方とかぁ……丁寧に教えてくれたんだよ」

どちらかと言うと、クラインのペースにキリトが引き込まれたと言ったところだろうか?明らかに人付き合いが下手なキリトでもクラインの様に大抵の相手に対しては気さくに接する事が出来る奴が相手であれば、まあ―――人任せのような感じではあるが、そいつと位なら対等な関係を築けたのだろう。

クライン「けど―――アイツさ、最初に会った頃から何となく、妙に壁作ってる見てーなところがあったんだよな」

俺「やっぱり、薄々は解るんだなそう言うのって」

クラインもなんだかんだで相手のそういう態度に勘づいていながらも、それで気分を損ねたり、付き合いをぱったりと止めたりしない当たり、精神的には一丁前の大人なんだと俺は思っていた。

クライン「っつても、俺がこいつら―――ギルドの連中を紹介したいって言った時に、少しばかし困ったような顔で歯切れのわりー返事をしただけなんだけどな」

クラインは自分の後ろを歩く風林火山の仲間達を指差しながらそう苦笑いを作りながら言った。

レイナ「……多分、クラインの仲間たちと上手く付き合えなくて、それが原因で貴方とも気まずくなるんじゃないかとか―――考えていたと思う」

クライン「かもしれねーな―――ま、とりあえずだ。そんなキリトの奴でも今回は殆ど接点も何もねぇ、軍の連中に見返りも求めねぇで助けに行ったのを見てさ……アイツもあれで、冷たい奴なんじゃねぇって実感できて良かった気がするんだよな」

それに関しては俺の推測だが、真っ先に飛び込んでいったアスナを守る為にキリトもやむ終えず飛び込んでいったのではないかと俺は思っていた。
まあ――せっかくクラインがそれで感傷に浸っているのだからそれを指摘するのは野暮ってもんだろうがな。

レイナ「……多分あれは、軍の人達を助けに行ったと言うよりも、アスナの身を案じて居てもたってもいられなくなったと思われるわ」

呆気なくレイナは、俺が野暮だと思って言葉に出すのを留まっていた台詞をあっさりと淡々とした口調で言ってのけたのだった。
そして、レイナの言葉はそれにとどまる事無く、クラインにとっては恐らく―――あまり実感したくない様な事まで口にする。

レイナ「……けど、キリトがそうするのも無理もない事―――だってあの二人は第1層の頃から25層でアスナが血盟騎士団に入るまでの期間ずっと二人でコンビを組んできた間柄だから……キリトにとっても、アスナにとってもお互いがとても大切な存在で―――何を泣いているの?」

レイナがハッキリとアスナとキリトがお互いに大切な存在であると言い切った直後に、クラインは両眼から滝のような涙を流し続けており、それを見たレイナが自分に原因がある事など全く知る由もなく、ジト目気味の表情で「何を泣いているの?」等と聞くのだった。

俺「レイナ、お前今日は珍しく沢山喋ってるみたいだけど、取りあえずその辺にしておいてやれ」

レイナ「……?良く分からないけど―――オズマがそう言うのなら分かった」

それからはひたすら無言!一言の言葉も発する事無く俺達はやがて第75層の転移門をアクティベートするに至ったのであった。
そして、第75層解放から次の日には、早速二刀流のユニークスキル使いである事が知られたキリトと俺の他のもう一人のユニークスキル使いの間で決闘(デュエル)が行われる事になろうとは思いもしなかったのであった。 
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