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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE97 軍の連中との乖離

オズマとレイナは第74層迷宮区のボス部屋を探し探索を続けて、クライン率いる風林火山の面々と遭遇……8人で安全地帯まで進んだところで発見したのはキリトとアスナの二人であった!
キリトとアスナ、ソードアート・オンライン初期においてコンビを組んでいた二人!そして、アスナの血盟騎士団入りを機に一度はコンビを解散した二人!そして今その二人が久方ぶりに、2人だけで迷宮区に探索しているのは珍しい光景であった…… by立木ナレ

レイナ「……キリトとアスナだわ」

キリトとアスナも俺達に気が付いたようで、肩の力を抜く様にキリトの表情が安堵したように見えていた。

クライン「おお、キリト!しばらくだな」

キリト「まだ生きてたか、クライン―――オズマとレイナも、元気そうだな」

レイナ「……別に元気でも、弱ってもいないわ」

クライン「相変わらず愛想のねえ野郎だ。珍しくつれがいるの……か……」

キリトがこんな感じに軽口や皮肉を交えた会話を出来る相手は少なく、クラインもその数少ない一人だった。
クラインはキリトの隣の、立ち上がったアスナを見て、バンダナの下の目を丸くしていた。

キリト「あー……っと、ボス戦で顔は合わせてるだろうけど、一応紹介するよ。こいつはギルド風林火山(ふうりんかざん)のクライン。で、こっちは血盟騎士団のアスナ」

俺「自己紹介とか本当に今更過ぎるだろ、お前と違ってクラインもアスナも他の攻略組の連中とはそこそこ付き合いしてるんだからな」

キリト「わ、悪かったな……どうせ人付き合いが下手なコミュ障だよ俺は……」

キリトが眉をひそめて、余計なお世話だと言わんばかりにそう言い返してきた。一方でキリトの紹介にアスナは小さく頭を下げたが、クラインは目だけでなく口までなく開けて完全停止状態だった。

キリト「おい、何とか言え。ラグってんのか?」

レイナ「……ラグだったとしても、ここは安全地帯だから、まだ幸いね」

キリトが肘でわき腹をつつくとクラインは口を閉じて、凄まじい勢いで敬礼気味の挨拶をし始めた。

クライン「こっ、こんにちわ!!くくクラインと言う者です24歳独身」

年齢だけならともかく、独身である事を態々公表してどうする?どさくさに紛れて妙な事を口走っていたクラインに対してキリトはまた容赦なく脇腹をもう一度強めにどやしつけていた。

レイナ「……その接し方を、他の人達にも出来るようになればいいのに」

俺「キリトがあんなこと出来る相手は気心が知れた連中限定なんだろうな―――主に身内とかな」

一方でクラインの台詞が終わる前に、後ろに下がっていた5人の風林火山の仲間達が駆け寄って来て、次から次へとキリトとアスナ―――主にアスナに対してのみ、自己紹介を始めていた。

キリト「……ま、まあ、悪い連中じゃないから。リーダーの顔はともかく」

今度はキリトの足をクラインが踏みつけていた。そんな馬鹿丸出しのやり取りを見ていたアスナが、身体を縦に折ると、くすくすと笑い始めた。

レイナ「……今のが面白かったの?」

アスナ「ええ、キリト君がこんなこと言い合える相手がいたんだって思うとおかしくなっちゃたわ」

俺「まあ、確かに珍しい光景でもあるわな」

レイナの疑問に対して、アスナがくすくすと笑いながら答えていた。俺もアスナの言葉には同意をせざるを得なかった。
アスナはキリトの傍らに歩み出て。

アスナ「こんにちわ。しばらくこの人とパーティー組むので、よろしく」

よく通る声で言ったのだった。その隣のキリトは何か想定外の事でもあったかのように仰天した表情を浮かべていた。
クラインの方はと言うと、キリトに殺意交じりの視線を向けて、歯切りしを乗せて唸った。

クライン「キリト、てんめぇ……」

俺「こうなったらタダで解放されなさそうだな」

俺も心当たりがある。クラインと知り合って間もない頃、俺のギルドメンバーにレイナがいる事、そのレイナが俺の隣で『……主な役目はオズマ(ギルドリーダー)の護衛』と淡々と説明した瞬間に、クラインは目から大粒の涙を零しながら俺に対して嫉妬心の混じった視線を向けてきやがったもんだ。

その時だった、俺達がついさっき来た方向から、新たな一団の訪問を告げる足音が響いてきたのだった。

レイナ「……全部で12人いるわ」

アスナが正確な人数を特定して、告げた直後にアスナが緊張した表情で囁く。

アスナ「キリト君、軍よ!」

入口を注視してみると、現れた一団は全員そろって重装の装備を身に纏った部隊だった。クラインが手を上げ、仲間の5人を壁際に下がらせる。

俺「連中、妙に疲弊してやがるみたいだぞ」

キリト「無理ないだろ、奴らのレベルでいきなり最前線なんて……」

ヘルメットから覗く軍の連中の表情からキリト達も最前線での戦いで披露気味である事には気が付ていたようだった。
安全エリアの、俺達とは反対側の端っこに部隊は停止して、先頭の男が「休め」と言った途端、残りの11人が倒れるように座り込んだ。
仲間の疲れ切った様子には目もくれずに、先頭の男はこちらに近づいてきた。そいつの装備は他のメンバーとは異なるようで、この12人の中のリーダーである事が伺える。

俺達の前で立ち止まった長身の男はヘルメットを外し、こちらを眺めると、一番先頭に立っていたキリトに向かって口を開いた。

コーバッツ「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」

軍はそもそもどこぞの輩が揶揄同然に付けたもんだと思ってたが、本当に正式名称になっていたようだった。
しかも中佐なんて言う軍の階級まで名乗ってやがるとはな。

キリト「キリト。ソロだ」

キリトは短く答えて名乗った。コーバッツは軽く頷き、横柄な口調で尋ねる。

コーバッツ「君等はもうこの先も攻略しているのか?」

キリト「……ああ。ボス部屋の手前まではマッピングしてある」

俺「なんだ、この先にボス部屋があるのか……」

既にキリトとアスナはボス部屋を発見して、もしかしたらボスの顔位は既に拝見してるのかもしれない。
そんな事を俺が思っていると、コーバッツはさも当然と言わんばかりにキリトに対して言い放つ。

コーバッツ「うむ。ではそのマップデータを提供してもらいたい」

俺「だとよ―――当然だって言い方だな」

余りのも堂々と無遠慮な言い方だったので俺は呆れる余り、軽く苦笑しながらキリトに対してそう言っていたが、キリトの後ろのクラインは笑ってられる様子ではないようだった。

クライン「な……て……提供しろだと!?手前ェ、マッピングする苦労が解って言ってんのか!?」

クラインの言う通り、マップデータは貴重な情報源であり、トレジャーボックス狙いの鍵開け屋の間では高値で取引される代物だ。

コーバッツ「我々は君ら一般プレイヤーの解放のために戦ってる!」

コーバッツはクラインの反論に対して大声を張り上げる、続けて、

コーバッツ「諸君が協力するのは当然の義務である!」

などと説得力皆無の事を喚きだしていた。

レイナ「……貴方達軍が、この一年以上、フロア攻略で実績をあげた試しは無いはずだけど……それに私達の方こそ攻略組よ」

レイナが至極真っ当な指摘をするのだったが、コーバッツはその言葉に対して耳を貸さずに高慢な態度を崩さなかった。

アスナ「ちょっと、あなたねぇ……」

クライン「て、てめぇなぁ……」

アスナとクラインが爆発寸前の声を出し掛けていたが、それをキリトは両手で制した。

キリト「どうせ街に戻ったら公開しようと思ってたデータだ、構わないさ」

クライン「おいおい、そりゃあ人が良すぎるぜキリト」

キリト「マップデータで商売する気はないよ」

レイナ「……けど、この人たちはキリトから貰ったマップデータを有料で配布する可能性があるわ」

キリト「一度公開したマップデータをどう使われようが知らないって」

そして、キリトはコーバッツに迷宮区のデータを送信したようだった。コーバッツは表情を変えずにそれを受信すると――

コーバッツ「協力感謝する」

と言ってはいるが、まるで感謝している様子など無く、相変わらず当然であると言った態度で言ってから、後ろを向いた。

キリト「ぼすにちょっかい出す気ならやめといたほうがいいぜ」

コーバッツ「……それは私が判断する」

キリト「さっきちょっとボス部屋を覗いてきたけど、生半可な人数でどうこうなる相手じゃないぜ。仲間も消耗してるみたいじゃないか」

コーバッツ「……私の部下はこの程度で音を上げるような軟弱者ではない!」

俺「こりゃ、俺等みたいな小規模ギルドや、ソロプレイヤーなんかの言う事なんて聞く耳なんざ無いみてーだな」

コーバッツはこの程度は屁でもないと豪語するが、当の部下の連中はそれに同意してるようには思えなかった。

コーバッツ「貴様らさっさと立て!」

コーバッツの怒鳴り声にのろのろと立ち上がり、二列縦隊に整列していた。何のためにそんな本物の軍隊染みた整列が必要なのかまるで理解し難い。
そのまま12人の軍のメンバー達は一斉に武器を構えて、ゾロゾロと行進を再開した。

クライン「……大丈夫なのかよあの連中……」

軍の連中の足音が聞こえなくなった頃に、クラインが気遣わしげな声で言った。さっきまであんだけ腹を立ててた連中の心配をする当たり中々人の良い奴だ。

アスナ「いくらなんでもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど……」

レイナ「……あのコーバッツが判断を僅かでも誤れば―――12人のプレイヤーの命が危機に晒されるわ」

俺「あの中佐殿。フロアボス戦に参加したことがあるのかどうか知らねぇが、その辺のフィールドボスと大差ねぇ敵だと勘違いしてやがるかもな」

キリト「……一応様子だけでも見に行くか……?」

気が付けば瞬く間に、全員が軍の連中の動向を念のため見に行くと言う流れになっていた。キリトの言葉にクラインとアスナは勿論、風林火山のメンバーも首を縦に振る。
かく言う俺も、このまま見て見ぬ振りして立ち去るのは簡単だとは思いつつも、その結果何人かの死人が出るかもと考えると、結局はキリト達に同行する事になり、レイナもそれに続く事になる。

手早く装備を確認し、真っ先にキリトが歩き出すと同時に―――クラインはボリュームの低めの声でアスナに話しかけていた。

クライン「あー、そのぉ、アスナさん。ええっとですな……アイツの、キリトの事、宜しく頼んます。口下手で、無愛想で、戦闘マニアのバカタレですが」

クラインがキリトの事を気遣い、的確な言葉を交えてアスナにキリトの世話を頼んでいると案の定、キリトが猛ダッシュで戻って来て、クラインのバンダナの尻尾を引っ張っていた。

キリト「な、何を言っとるんだお前は!」

クライン「だ、だってよう……おめえがまた誰かとコンビ組むなんてよう。たとえ美人の色香に惑ったにしても大した進歩だからよう……」

キリト「ま、惑ってない!」

キリトはヤケに必死に言い返すが、逆にその必死さはクラインとその仲間達、更にはアスナまでもがニヤニヤとキリトを見るようになり、俺も密かに目を反らしつつも笑みが止まらなかった。
結局キリトは諦めて、口をひん曲げたまま後ろを向いたのだった。

アスナ「はい、任されました」

と、アスナは丁寧な口調でクラインの意図を尊重して答えたのだった。

 
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