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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第五十話 出稽古

早朝訓練が終わり、アスカはエリオ、キャロと共にフェイトの捜査を手伝う筈だったが、シグナムに呼び止められてから話はおかしな方向に……





魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





アスカside

「えーと、本日の早朝訓練では目立ったミスも無く、いい感じと高町隊長に言われて、その後メシ食ってから砲撃事件の現場調査に行く筈だったんですけどねぇ……」

オレは前を歩くピンクポニーテールに話しかける。

何しろ、食堂でいきなり”来い”って捕まったんだが。

「現場検証なら、テスタロッサ隊長とエリオとキャロで充分だ。お前はまだまだ鍛え方が足りん」

サラッと振り返りもしないで言ってくれちゃってますよ。

この流れだと、訓練場に行ってなし崩し的に模擬戦か?

小さくため息をつくオレだったが、シグナム副隊長の答えは意外な物だった。

「私も外回りなのでな。残念だが今日はお前の相手ができん」

「え?そうなんですか?」

よし!今日はラッキーデイだ!

思わず声が弾むぜ!

「……なぜ、そんなに嬉しそうなんだ?」

振り返らないでの言葉にオレは震え上がる。この人、どこまで冗談か分からない時があるからな!

「えぇ?いや、嬉しくはないですよ、マジで!?」

考えてみたら、このパターンならシスターがこっちにきて稽古をつけるって事かもしれない。

ぬか喜びだったか?と思っていたら、

「シスターシャッハも、教会での訓練で来れないらしい」

オレを喜ばせる事を言ってくれる副隊長。

思わずガッツポーズ!

さすがオレ!日頃の行いが良いせいだな!

ところが、天にも舞い上がる気分を地獄に叩き落とすような事をシグナム副隊長は言ってくれた。

「そういう訳だから、今日は聖王教会へ出稽古だ。いいな?」

ズテッ!

大きくコケたよ!なに?今なんて言ったの!?

「で、出稽古?」

声がうわずっちゃうのはしょうがないよね?

「そうだ。向こうの訓練に参加させてくれるそうだ。良かったな」

本当に良かったって思ってます?なに、その淡々とした言い方!

マズイマズイマズイ!!

アウェーで訓練ってありえない!

「あ、あの!でも今日はティアナが八神部隊長のお供で本局行きですし、ライトニングは現地調査。そうなると六課に残るフォワードはスバルだけになりますよ?」

そう。

ティアナは今後の勉強と言う事で八神部隊長について行くし、エリオとキャロはハラオウン隊長と現地調査。本当ならオレもそれについて行く筈だったんだけど……

ヴィータ副隊長も、確か108部隊への教導で出張っているから、実質六課のフォワードはスバルしかいなくなる。

それじゃヤバイですよねぇ~って思っていたら、

「なのは隊長がいらっしゃるし、緊急時ならザフィーラも手を貸してくれる。そこにスバルもいれば、大概の事は大丈夫だ。しっかり稽古を付けてもらってこい」

シグナム副隊長の言葉に、なーんも反論できないオレ。

行くしかないのかよ~

と沈んでいたら、いつの間にかヘリポートについていた。

時間からして、もうエリオ達は乗り込んでいるな。

「ヴァイスにはもう言ってある。テスタロッサ隊長達を下ろしたら、お前を地上本部まで送れとな」

そのまま転送ポートで聖王教会へ行け、つー事だな。

つーか、食堂で言ってくれよ、そんな事!

なんで歩きながら話すんだ、副隊長は?

「ちなみに……「拒否権はない」あ、そーっすか」

最後の抵抗も空しく、オレは渋々ヘリに乗り込んだ。

「シスターによろしく伝えてくれ」

「へーい」

シグナム副隊長に見送られ、オレはヘリで運ばれる事になった。





outside

地上本部の転送ポートから、アスカはベルカ自治区のターミナルポートに転送された。

「えーと、ここから歩いて30分くらいか」

アスカは地図を頼りに、聖王教会に向かって歩き出した。

ちなみに今のアスカは、管理局の制服の上からフードの付いたマントをすっぽりと被っている。

ベルカ自治区で管理局の制服は目立ちすぎる為、不用意に住民を不安にさせない為の配慮だ。

「だいたい出先でまで痛い目にあわなきゃいけないなんて、オレはMじゃねぇぞ」

マントの男がブツブツと文句を垂れている姿は、怪しさしかない。

《まだ痛い目にあうと決まった訳では?》

グチるアスカにラピが話しかける。

「慰めありがとよ!今まで訓練で痛くなかった事あったか!?」

《……》

「なんか言えよ!」

ギャアギャア騒ぎながら歩いている時、アスカはふと横を流れる川に目をやった。

川辺に、まだ5、6歳くらいの少女が泣いている姿を発見したからだ。

「ヴィヴィオと同じくらいの子だな……何かあったのか?」

泣いている子供を見ると、放っておけないアスカ。

その少女のに声を掛ける。

「よお、どうしたんだい?川の近くは危ないぞ」

急に話しかけられた少女は驚いた顔をしたが、またすぐに泣き出してしまう。

「おいおい、何があったんだ?お兄ちゃんに言ってみな」

アスカは少女を撫でて、事情を聞く。

「ぐす……お誕生日にもらった、大事なペンダント、落としちゃったの……」

ベソをかきながら、少女が川を指さす。

「そうか、ちょっと待ってな」

アスカはそう言ってマントと制服の上着を脱ぎ、裸足になる。

「すぐにおにいちゃんが見つけてやるからな。待ってな!」

アスカはバシャバシャと川の中に入っていく。

「あっ!で、でも!」

「大丈夫、大丈夫!」

「その川、すぐに深くなってるの!」

ドボンッ!

少女の声が届いたと同時にアスカが川に沈む。

「それに、深い所は流れが早いってお父さんが……」

そのまま川下に流されるアスカ。だが、

「うおぉぉぉぉぉ!」

雄叫びと共にクロールで浅瀬まで戻ってくる。

アスカはゼェゼェと肩で息をする。

「そ、そりゃそうだよなぁ。安全な川だったら、お嬢ちゃん、自分で取りに行ってるよなぁ」

ずぶ濡れになったアスカが川を振り返る。

「危ないよぉ。ペンダントはいいから、早く上がって」

「大丈夫!こう見えてもお兄ちゃんは管理局の人だ。困っている人がいるなら助けないといけないからな!」

どやぁ!

完全に胸を張るタイミングを逃しているのにもかかわらず、アスカはドヤ顔をする。

「しかし、これじゃ流されたかもしれないな……」

《どうしますか?》

「とりあえず、近場の水中から、片っ端から探そう」

《……》

あまりに頭の悪い答えを聞いて、ラピッドガーディアンは絶句する。

(このマスター、大丈夫でしょうか?)

そう失礼な事を考えても、ラピッドガーディアンを責める事はできないだろう。

「行くぞ、ラピ!」

《ちょっ!マスター!?》

ラピッドガーディアンが答えるよりも早く、アスカは川に飛び込んだ。

(ダメだ、このマスター……早くなんとかしないと!)





流されては戻り、戻っては流される。

そんな事を小一時間ほど繰り返したアスカ。

「くっそー!川が広すぎる!一人じゃ無理だ!」

アスカはバタリと少女の横に倒れ込む。

意固地になって川に飛び込んでみたものの、結局ペンダントは見つからず、ただ体力を消費しただけだった。

「お兄ちゃん。もういいよ」

流れの早い川から戻ってきアスカに、少女は別の意味で涙目になる。

「……もうちょっとガンバロ」

少女の困った顔を見ると、何とかしてやりたくアスカ。

もっとも、今はアスカが川に飛び込むのをやめて欲しいと言う困り顔なのだが、当の本人はそれにまったく気づいてない。

アスカは、闇雲に飛び込むだけではダメなんじゃないかと思い始める。

「なんか良い手はないか、ラピ?」

限界を感じ始めていたアスカが、イヤーカフに助言を求める。

《……なぜ、私の広域スキャンを使用しないのですか?》

そう答えるラピッドガーディアンの声は、どこか呆れている感じがした。

「……」《……》

気まずい沈黙が流れる。

「そういうのは先に言えよ!」

《シャーリーさんが説明してくれていたでしょ!ちゃんと聞いていましたか!?》

マスターとデバイスが口げんかを始める始末になる。

「と、とにかく!現在地から川下に向けて広域スキャン!金属反応があったら教えろ、このバカデバイス!」

《了解しました!広域スキャンを開始します、うっかりマスター!》

お互いに罵り合いながらも、ラピッドガーディアンがスキャンを始める。

すると、すぐに反応があった。

《現在地より135メートル川下に、それらしき金属反応があります。川の流れが複雑に入り組んでいるので、気をつけてください》

ラピの報告に、もっと早くスキャンを使っておけば良かったと思うアスカだった。

「結構流されてるな。よし、お嬢ちゃん、移動だ!オレの服を持って来てくれ!」

目標の場所が分かった事で、アスカは俄然やる気が起きる。だが、少女はそうではないらしい。

「お兄ちゃん、もうやめようよ……危ないよ」

少女が止めるが、それを聞き入れるアスカではない。

「管理局の魔導師は、こんな事ぐらいじゃ怪我なんかしないよ。それに、一般の人の役に立つのがお仕事だ」

ニパッと笑うアスカ。

そんな話をしているうちに、ラピッドガーディアンが示した場所にたどり着いた。

「さて、と。ナビ頼むぜ、相棒!」

《了解です、マスター》

ドボン!

アスカは再び川に飛び込んだ。





聖王教会の騎士、カリム・グラシアは仕事が一区切りついたので休憩がてら散歩をしていた。

近くを流れる川を眺めつつ、時折すれ違う人達と話をしたりと、のんびりと散歩を楽しんでいた。

「あら、あれは?」

少しばかり歩いた時だった。

カリムは、川辺にたたずみ、心配そうな顔をしている少女を目にした。

「あの辺りの流れは複雑で、危険だとシャッハが言ってたわね」

事故があっては大変と、カリムは少女に近寄る。

「こんにちは。どうしたのかしら?こんな所で」

少女に優しく語りかけるカリム。

「え?あっ!騎士カリム!?こ、こんにちは!」

話しかけてきた人物がカリムと分かると、少女は驚いて頭を下げた。

「ここは危ないわ。別の所で遊ぼうね」

カリムは諭すように言う。

「は、はい……でも、お兄ちゃんが……」

そう言って、少女は川に目を向ける。

「え?」

カリムは少女の手にしている大きな布がマントだと気づいた。

少女が使うには大きすぎるマント。つまり、もう一人誰かがいて、そして川に入って……

(まさか、おぼれて?!)

カリムが青ざめる。その時、

ザバン!

何かが水面を跳ねた。

「え?」

カリムは音のした方へ顔を向ける。

すると魚にしては大きすぎる影が、ズズズイっとこちらに向かってきていた。

「え?えぇ!」

何かが迫ってきている。思わずカリムが少女を抱き寄せたその時……

「とったどおぉぉぉぉぉぉ!」

水中から髪の長い少年が何かを握りしめて飛び出してきた!

「???」

訳が分からず、唖然とするカリム。

「あ、ども」

カリムを見て、飛び出してきた少年、アスカはペコリと会釈した。

彼女が誰だかは、分かってはいないようだ。

「ほら、これだろ?」

ずぶ濡れのまま、アスカは少女に手にしていた物を見せる。

「あ!ペンダント!」

先ほどまで困り顔をしていた少女が、嬉しそうに声を上げた。

「大切な物なんだろ?もう落としちゃダメだぞ」

アスカは拾ってきたペンダントを、マントで拭いてから少女の首にかけてやった。

「うん!ありがとう、お兄ちゃん!」

パァッと明るく笑う少女。

「どういたしまして。やっぱり、笑ってる方がいいな」

アスカも笑って、少女の頭を撫でくりまわす。

「………」

突然の展開に、カリムはついて行けていない。呆然と、アスカと少女を見ている。

「いや~、いい事をした後は気持ちがいいな!」

そんなカリムをよそに、アスカは満足げに笑っている。

そのマスターを地に叩き落とすデバイスが一言。

《……ところで、約束の時間を、一時間以上も過ぎているのですが、大丈夫でしょうか?》

ラピッドガーディアンがポツリと呟く。

ピキッ!

空間に亀裂が入ったような音がして、アスカが真っ青になる。

カタカタと震えだし、オロオロとうろたえる。

「あ、あの、美人のお姉さん!この子、上流の135メートル先から来たんですけど、連れてってもらっていいですか!」

今にも泣き出しそうな顔で、アスカがカリムに頼み込む。

「え?は、はい」

「じゃあ、お願いします!」

言うなり、アスカは脱兎のごとく走り出した。

「ありがとうね!お兄ちゃん!」

少女に手を振り返す余裕もなく、アスカは走り去って行った。

「……いったい、何だったのでしょう?」

急展開に、カリムはただ首を傾げるばかりであった。





アスカside

ずぶ濡れのまま、オレは聖王騎士見習いに両脇を抱えられて修練場へと案内……連行されていた。

なに?何なの、この展開?

オレよりも遥かに背の高い見習い騎士にいきなり捕まるって?!

この二人、そこそこ美人で、結構な巨乳じゃない!

普段なら喜ぶ所だけど、今は何か違う!

「ザイオン二士!貴方が遅れたから、私たちにも被害が及んでいるのですよ!」

「早くシスターシャッハの怒りを収めてください!」

タンコブやら青タンやらを作った見習い騎士がうるさく叫ぶ。

何でオレがシスターの怒りを鎮めなきゃいけないんだよ!

「待て待て待て待て!オレはこれから生贄にされるのか?」

「否定はしません!私達の為に犠牲になってください!」

「つーか、生贄にされろ、コンチクショウ!」

「お前等それでも聖王騎士か!胸がでかいからっていい気になんなよぉぉぉ!」

「「むしろ殺られろ」」

バタン!

拘束されたまま修練場の扉が開く。

「「ザイオン二士がこられました、シスターシャッハ!」」

巨乳ツインタワーがポーンとオレを放りだす。

ドテッ!

「イテッ!なにしやが……」

地面に叩きつけられ、文句を言おうとしたけど……なに、この状況?

死屍累々

そんな言葉が頭を過ぎる。

修練場に転がる聖王騎士。

その中央に見える、シスターシャッハの背中。

「そう……ですか」

その静かな声に、オレは震え上がる。

マ、マジでこえぇぇぇ!!

なんか、シスターの背中から赤色のオーラが見えるよ!

「あ、あの、シスターシャッハ?」

「随分と時間がかかりましたね、アスカ」

ふ、振り返らないで言うシスターがマジで怖い。

「あ、あのですね?これには深~い訳が……」

「時間は守るもの。そうですね、アスカ?」

「は、はい……」

全然こっちの話を聞いてくれない……ヤバイ……

そして、シスターがユックリと振り返った。

あ……死んだな、オレ。

シスターの表情を見て、オレは、その、色々あきらめてしまった。

見た目は平静としているけど、にじみ出るのは怒りの感情。

まったくオレの話を聞こうとはしない。

怒りの大魔神と化したシスターシャッハ。

「……なぜ、そんなにびしょ濡れなのですか?」

訝しげにシスターが聞いてきた。

これは言い訳ができるチャンスかも!

「え…と、か、川で泳いでいたからです!」

ち、違う!言いたかった事と違う!そうじゃないだろ、オレ!

ピシッ!

平静な表情で青筋を立てるという、器用な事をするシスター。

「あ、あの!?」

「ラピッドガーディアンを構えなさい、アスカ」

感情を出さないように言ってくるシスターが怖い!

「シ、シスター!?オレの話を…「デバイス無しだと痛いですよ?」ラピ、ダブルソードモード!」

《りょ、了解!》

戦々恐々として、オレはラピを構える。

「……デバイスを前に、縦に構えなさい」

「こ、こうですか!?」

甲高い声で、オレは防御態勢をとる。何をするつもりだよ、あの人は!

「動かないように」

そう言って、シスターはヴィンテルシャフトを振り上げた。

「シ、シスター!?」

「ハァッ!!」

ガギン!

グフッ!

短い気合いの息吹と同時に、シスターはラピにヴィンテルシャフトを叩きつけた!

全身を駆け抜けるような衝撃が走る……

「……服も乾いたようですし、少しばかりお仕置きが必要ですね」

「服って……あれ?乾いている?」

さっきまでぐしょ濡れだった服が、いつの間にか乾いている。何で?

ん?

周りの聖王騎士が後ろ後ろと指をさしている。

オレがそっちを見ると、壁があった。

よーく見ると、その壁が濡れ……人型に濡れている?

え?

それってつまり……シスターの一撃の衝撃で、服とか髪とかに付いていた水分が全部壁に叩きつけられ……

ヘナヘナヘナ

やば……腰が抜けた。

「立ちなさい、アスカ」

シスターがオレを見下ろす。ちょ……

「シスター!ちょっと待って!お願い!」

「立ちなさい」

「あ、あの、オレの話を!」

「言い訳は聞きません」

「ひいぃぃぃぃぃぃぃ!」

目、目が据わってるよ、シスター!

腰を抜かしたまま後ずさるが、そんなの意味がない!

周りにいる聖王騎士に助けを求めようとしたけど、全員がサッと目を逸らした!それでも聖王騎士かぁぁ!

「ちょ~~~~~~~~!!!」

「覚悟はいいですね?」

よくないよくないよくない!

なに?聖王教会って遅刻したら即死刑なの?せめて遺書を!

「あらあら、ずいぶん賑やかね?」

オレがパニクっていたら、全然その場の雰囲気にそぐわない穏やかな声がした。

「騎士カリム!どうされたのですか?」

「へ?」

シスターが慌てたように声がした方を見る。それにオレも釣られてソッチを見る。

そこには……

「六課からお客様がいらっしゃると聞いたから、ご挨拶をと思ったのよ」

川辺にいたお姉さんがいた。

「あれ?さっきの美人のお姉さん?」

「あぁ、やはり貴方だったのね」

オレを見て、美人のお姉さんが微笑む。って、騎士カリム!?この人が!!

「騎士カリム、アスカと面識があるのですか?」

シスターが戸惑い気味に騎士カリムに尋ねている。

「さっき、川に入っていたのを見たのよ」

ちょっ!カリムさん!?その言い方だと誤解が!!!

ピキッ!

ほら、またシスターの額に青筋が追加されたじゃあーりませんか!

いや、シスター!聖職者がその”コイツ、殺っちまうか?”的な目はアカンですよ?!

あぁ!せめて最後にエリオとキャロを撫でくりたかった……

「川辺で、誕生日のプレゼントのペンダントを無くした女の子がいて、彼がそれを探すのに川に入っていたの」

「え?」

カリムさんがそう言ってくれて、空気が変わった。

「女の子に聞いたけど、アスカは何の躊躇もなく川に飛び込んだそうよ?」

何かいい流れになってきたような気がする!シスターから怒りの気配が消えた!

「我々聖王騎士は、人々の助けになる事が仕事です。でも、少女の無くしたアクセサリーを、流れの急な川に入ってまで探せる人がこの中に何人いるでしょうか?能力的には出来ても、実際に行動に移せますか?」

「……」

なんか、カリムさんの話に黙って聞き入っているシスター。いや、他の騎士連中もだ。

「彼はアクセサリーを探しただけではありません。女の子の思い出を救ったのです。そうですね、アスカ?」

何か話がおっきくなってる!

「そんな立派な事じゃないですよ。オレはただ……あの子がペンダントを無くして悲しいと思ってるから……それが嫌だから手伝っただけです」

浅瀬にあると思っていたらスッゲー流されていて、意地になってただけですけどね!そんなに美化されると、マジ心苦しい。

でも、シスターから完全に怒りの気配は無くなった。

「……それならそうと言いなさい、アスカ。余計に怒ってしまったではないですか」

そりゃないでしょ、シスター。

「だって話を聞かなかった…「何か?」ナンデモアリマセン」

シスターはオレの反論を一言で封じ込める。

まあ、助かったからいいか。っと、命の恩人にお礼を言っておかないと。

「え、と。騎士カリム、助かりました」

オレは何とか立ち上がって、騎士カリムに頭を下げた。

「どういたしまして。どうか、ユックリしていってくださいね」

ニコッと柔らかい微笑みを浮かべる騎士カリム。

あぁ……癒される。清楚な美人だ。

「では、私はこれで」

そう言って修練所からカリムさんは出て行ってしまった。残念。

はぁ~、美人で優しくて……騎士カリムは女神か。

と至福に包まれているオレを現実に戻す大魔神。

「ではアスカ。改めて訓練と行きましょう」

シスターがデバイスを構える。

……あれ?状況が変わってないよ?何でさ!

結局、オレはシスターにブチのめされる運命なの?





outside

お昼時の機動六課。

留守番組のスバルは、なのはに誘われてヴィヴィオと一緒に食事をする事になった。

その時に、なのはがヴィヴィオの保護責任者になる事を知ったスバルは、それをヴィヴィオに説明したが、少女には難しすぎる話だった。

「えーと、つまりしばらくは、なのはさんがヴィヴィオのママだよって事」

かいつまんで、と言うよりかいつまみすぎるスバルの説明は、結果としてヴィヴィオがなのはの事をママと呼ぶようになってしまった。

なのはも満更ではなさそうだったが……

「良かった……のかなぁ?」

首を捻るスバルであった。





日が落ち、それぞれが機動六課に帰ってきた。

グンニャリとしたアスカを、スバルが担いで食堂に入ってくる。

「アスカさん!」「どうしたんですか!?」

糸の切れた人形状態のアスカを見て、エリキャロが驚いた。

「びっくりしたよー。寮の入口でゾンビみたいにフラフラしていたんだから」

スバルが力の入っていないアスカをイスに座らせる。

「……一時間水泳した後、昼飯抜きでシスターシャッハとの訓練5時間休み無し……どうかするぜ……」

アスカはそのままテーブルに突っ伏す。

「ボ、ボク、ゴハンもらってきますね!」「あ、私も!」

大慌ててエリオとキャロが席を立つ。

「うーん、良い子だなぁ。エリオもキャロも」

その様子を呑気そうにスバルは見ていた。

「スバル。今度聖王教会に出稽古に行く時は、お前も来い」

突っ伏したままアスカが言う。

「え?なんで?」

「スバルを混ぜて、訓練の密度を薄める!」

「ちょっと!人を水割りみたいに言わないで!」





エリオとキャロが運んでくれた料理を食べて、アスカはようやく人心地つく事ができた。

「高町隊長が保護責任者で、ハラオウン隊長が後見人?」

話の流れで、スバルは昼食時の事をアスカ達に話していた。

「うん、そう言ってた。ヴィヴィオはよく分からないみたいだったから、なのはさんとフェイトさんがママだよって説明したら納得してくれたよ」

「………」

スバルの話に、アスカはジト目になる。

「なのはさんとフェイトさんがママって……」

「ヴィヴィオ、ものすごく無敵な感じ」

エリオとキャロがそんな感想を口にする。

「ママって、後になって身元引受人が出てきたらどうするんだよ。絶対、ヴィヴィオごねるぞ。完全にスバルの失言だろ、それ」

「う……」

アスカの指摘にスバルが言葉を詰まらせる。

「そ、そう言えば、フェイトさんって二人的にはお母さん、お姉さん、どっち?」

「ごまかしやがった」

「もう、いいの!アスカは黙ってて!」

アスカの突っ込みにスバルは逆ギレする。

「私は、優しいお姉さんですね」

キャロはそう答える。

「ボクは……どっちだろ?難しいかも」

エリオは、フェイト保護されてからの期間が長い。感覚的にどうちらかと言われてもピンとこないようだ。

「フェイトさんは、エリオ君が子供なのと弟なのと、どっちが嬉しいのかな?明日、聞いてみようか?」

天然無邪気なキャロの言葉に、エリオがむせかえる。

「ゴメン、キャロ!それはやめて!」

「え~?」

そんなやりとりを、アスカは穏やかな表情で見ていた。

少しして、

「あー。今日はヴィヴィオに会えなかったな……ヴィヴィオ分を補給し損ねた」

アスカがポツリと呟いた。

「ヴィヴィオ分って、水分じゃないんだからさ」

アスカの一言スバルが笑う。

「いいだろー、別にぃー」

アスカがブーたれた。

そして、本日一番の失言がスバルから飛び出た。

「前から思ってたんだけど、アスカってロリコ……」

バチン!

「イッター!!」

神速のデコピンがスバルに炸裂する!

「前からって、スッゲー失礼な事を言うな!どういう目でオレを見てたんだよ!」

さすがに笑えなかったのか、アスカはデコピンの体勢のまま大声を出す。

「だって、召喚士の女の子の時も妙に優しかったし、キャロにも優しいじゃない!私やティアはゾンザイな扱いなのに!」

スバルも負けじと言い返す。

さらにヒートアップしそうな二人の間に、エリオとキャロが割って入る。

「あ、あの、アスカさん、スバルさん!ここ、食堂ですよ!」

「そうですよ、やめてください!」

10歳コンビに注意され、周囲を見るアスカとスバル。

食堂にいた全員の視線が二人に集中していた。

「「す、すみませんでした」」

スゴスゴと引っ込む16歳と15歳。

「とりあえず……」

アスカは残っていた食べ物をかっこむと、

「ごちそうさま!アディオス!」

さっさとアスカは食堂から退散した。

「「あっ!待ってください!」」

「ちょっと!置いてかないでよ!」

エリキャロとスバルも、食器を片づけて、アスカの後を追うように食堂から出て行った。





ミッドチルダ地上 陸士108部隊隊舎 部隊長室

ギンガは父であり、部隊長であるゲンヤに砲撃事件の調査の経過を報告していた。その隣には、メガネをかけた、白衣の女性がいる。

「現場検証と合わせて、改めて六課からデータをいただきました」

モニターに映し出されたのは、監視カメラが捉えていたクアットロとディエチの映像。

その中で、ディエチの砲撃シーンが映し出される。

「この魔法陣状のテンプレート、使っている動力反応。これまでの物とけた違いに高精度です」

メガネの女性、マリエル・アテンザが、ガジェットと比較したデータを見る。

「間違いなさそうだな」

ゲンヤは表情を変えずにモニターを見ている。

「はい……この子達全員、最新技術で作り出された……”戦闘機人”です」

「「……」」

重苦しい空気が部隊長室に漂う。

少しの沈黙の後、ギンガが口を開いた。

「マリーさんの解析データを、六課とすり合わせないといけないのですが……」

「通信で済ます話じゃねぇな。俺が出向くとするか」

内容の重大さから、ゲンヤは直接はやてに伝える事を考えた

「はい。八神部隊長のお戻りは、20時過ぎになるそうです」

ゲンヤが出向くと読んでいたギンガが、はやてのスケジュールを伝えた。

「20時か、まだ時間があるな。マリエル技官はお忙しいかい?」

「私もご一緒します。最近、スバルの顔も見てないですし」

マリーが柔らかく答える。

「ありがとよ。じゃあ時間まで適当にやっててくれ。ギンガ」

「はい。マリーさん、休憩室に」

ギンガがマリーと共に部隊長室から出て行こうとする。そのギンガに、ゲンヤは声を掛けた。

「おう、そうだ。ギンガ、ついでにそのまま六課に出向だ。準備しておけよ」

「え?は、はい……って言うか父さん。ついでって酷くない?」

「はは、まあそう言うなって」

そんなやりとりをして、ギンガは出て行った。

一人残るゲンヤ。イスに深く身を預ける。

「やっぱりと言えば、やっぱりか」

そう呟き、机の上に飾ってある写真に目をやる。

そこには、エプロン姿で微笑んでいる女性が写っていた。

スバルとギンガによく似ている。

「まだ何も……終わっちゃいねぇんだな。なあ、クイント……」

寂しそうに、ゲンヤは呟いた。


機動六課 女子寮

「ただいまー」

ティアナが戻ってきたのは、夜の8時を過ぎてからだった。

「あ、お帰り~、ティア。どうだった?」

スバルがティアナを迎え入れる。

「とっても有意義だったわ。クロノ提督も気さくな方だったし、アコース捜査官とも顔見知りになれたし。すっごいやる気が出たって感じね。こっちはどうだったの?」

部屋着に着替えながら、ティアナはスバルに聞いた。

「平和そのものだったよー。あー、でもアスカは大変だったみたいだけど」

スバルの答えに、ティアナは、え?と首を傾げる。

「大変って、現場検証が?」

「違うよ。途中でシグナム副隊長に捕まって、聖王教会に出稽古に行かされたんだよ」

「出稽古?」

そこでスバルは、アスカから聞かされた事をティアナに話した。

「何ともアスカらしいと言えばそうだけど……大丈夫なの?アイツ」

「凄い疲れてたよ。今日はもう寝るって言ってたから、もう休んでいるんじゃないかな?」

「あ……そう」

少し残念そうにティアナが呟く。

「ねぇねぇ!本局ってどんなんだった?聞かせてよ!」

「ああ、はいはい。お風呂入ってからね」

ティアナはじゃれつくスバルを適当にあしらう。

(まあ、明日になれば話せるし……べ、別に話さなくてもいいけど!)

なぜか自分に言い訳をするティアナであった。 
 

 
後書き
相変わらずの長文で申し訳ありません。なかなか上手くまとめられません。
こんな文書でも読んでくださる方がいるので、なんとか頑張れます。

さて、今回はシスター大活躍ですね、鬼的な意味で。
まあ、約束の時間は守らないといけませんね。
シスターにロマンスはあるのか?シスターをヒロインにするのも面白いかもしれませんね~。

そしてスバルの失言。アスカは○リコンですか?まだ違います!

陸士108部隊のシーンは丸々アニメと一緒です。若干、ゲンヤさんのセリフが違うくらいかな?

んで、ティアナさん。もうちょっと素直になって積極的にアスカに絡んでください。
全然色気がないんです、この小説。 
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