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小雨坊

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第二章

「だからね」
「そこはですね」
「しっかりとね」
「守ってですか」
「そう、仕事していってね」
「そうしないと本当に駄目ですよね」
「A新聞みたいに」
 麻耶はあえてある有名な新聞社の名前を出した。
「検証しない記事や捏造記事を載せていたら」
「何時かは信頼なくしますしね」
「あの新聞社の今の評判知ってるでしょ」
「ネットで有名ですね」
「最悪って言っていいわね」
「早く倒産しろって言われています」
 ネットではこうした言葉の大合唱になっているのだ。
「日本の害だからって」
「実際に害になってるしね」
「ですね、捏造した記事で」
「ああなったらね」
「終わりですね」
「そのうちもっと酷いことになるわ」
 ネットで倒産しろとの大合唱が常にある以上のことにというのだ。
「そしてそうなってもね」
「自業自得ですね」
「それだけね、記者はね」
「ちゃんと取材してですね」
「事実を書かないといけないのよ。うちの会社はそうでしょ」
「事実を書け、ですね」
「しっかりと検証してね」
 それが社訓となっている、過去捏造記事を書いた記者が懲戒免職になったこともある。
「そうしないと駄目なのよ」
「本当に絶対のことですよね」
「記者ならね、日本のマスメディアの信頼はもう全然ないけれど」
 そうした碌に検証しない記事や捏造記事のせいでだ、他には偏向報道もあるから余計に悪質なのだ。
「私達はそれに腐らず」
「真面目にですね」
「仕事していきましょう、じゃあ晴明神社に入って」
 阿倍野区のそこにというのだ。
「取材するわよ」
「わかりました」
「ここによく来るお爺さんがいて」
 麻耶は笑顔で仕事の話に戻った、二人は丁度その晴明神社に行く道を歩いている。大阪だが阿倍野区は少し違う。大阪独特の庶民っぽさよりも少し高級な感じがある。
 その阿倍野の中を歩きつつだ、麻耶は健児にその老人のことも話した。
「いつも一匹の柴犬と二匹の猫を連れててね」
「犬と猫ですか」
「お散歩してる若いファッションの人で」
「結構目立つ感じですか」
「気さくでお話しやすくて阿倍野区のことをよく知ってるの」
「そうなんですね」
「私和歌山出身だから」
 ここで少し苦笑いになった麻耶だった。
「大学は八条大だし」
「僕も八条大ですよ」
 健児は麻耶に笑って応えた。
「先輩後輩じゃないですか」
「けれど君大阪生まれじゃない」
「吹田ですから市内じゃないですよ」
「けれど大阪でしょ。大阪には入社するまで遊びに行く時以外はあまり行ってなかったから」
 それでとだ、苦笑いのまま話す麻耶だった。
「だからね」
「それで、ですか」
「大阪のこと知らなくて最初阿倍野区のことも知らなかったけれど」
「そのお爺さんと知り合ってですか」
「色々教えてもらってるのよ」
「そうですか」
「入社した時からね。阿倍野区以外のこともよく知ってるから」 
 それ故にというのだ。 
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