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猫鬼

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第二章

「しかしです」
「それは朕も思う、あの者の気質はな」
「邪ですね」
「そうしたものを感じる、目も気配も違う」
 普通の者とはというのだ。
「ああした輩は危ない、だからだ」
「国の政にはですか」
「深く関わらせていない、それならばだ」
「それだけでよいと」
「そうだ、しかしあの者が左道を使うという話はな」
 これはというと。
「朕は信じていない、だからな」
「不問にですか」
「そうする」
 こう言ってだ、皇帝は彼の呪術のことを信じないことにしてそのことで咎めないことにしていた。だが。
 その独孤陀の姉である皇后と彼の妻の姉が急に病に臥せった。皇帝はそのことを受け二人のところにすぐに医者をやった。そしてその病状を聞いたが。
 医者は剣呑な顔でだ、こう皇帝に話した。
「皇后様と独孤陀様の義姉様のご病気は同じものです」
「同じか」
「はい、そして普通の病ではありませぬ」
「?どういうことだ」
「左道の病であります」
 こう皇帝に話すのだった。
「呪いの。あれは蟲毒しかも猫鬼のものです」
「猫鬼か」
「そのことですが」
「待て、ではだ」
 皇帝は目を顰めさせそのうえで医者に問うた、思わず皇帝の座から立ち上がりそうになった程であった。
「猫鬼の術を使ったのは」
「はい、そして皇后様と義姉様に害を及ぼしているのは」
「あの者だというのか」
「あの噂は私も聞いていますが」
「そなたも有り得るというのか」
「恐れながら」
 こう皇帝に申し出るのだった。
「そうかと」
「まさかと思うが」
「万歳老、ここはです」
 医者は皇帝の尊称を出しさらに話した。
「調べてみるべきでは」
「あの者がまことに猫鬼を使ったのかをか」
「そうされるべきです」
「まさかと思うが」
 そう考えつつもだ、皇帝も疑念を払拭出来なくなっていた。医者のその話でこれまで信じていなかった噂を否定しきれなくなったのだ。
 それでだ、こう医者に答えた。
「わかった、ではな」
「はい、このことは」
「すぐにあの者を呼ぼう」
 こうしてだった、皇帝はすぐに独孤陀を呼んだ。すると独孤陀はその名家の生まれらしく風格があるがそれ以上に妖しくかつ尊大な気配をその身に満ちさせてそのうえで皇帝の前に参上した。その態度にだ。
 皇帝の周りの者達はすぐに顔を顰めさせてひそひそと話をした。
「万歳老の御前だぞ」
「そうだというのに何という態度だ」
「ふんぞり返っているではないか」
「幾ら皇后様の弟君でも無礼な」
「幾ら何でも」
 皇帝も不快に思った、だがそれでもその感情を抑えてだった。己の前に参上した独孤陀に問うたのだった。
「そなた、猫鬼は知っておるか」
「さて」
 惚けた返事での否定だった。
「何でありましょうか、それは」
「蟲毒の術の一つだが」
「知りませぬ」
 やはり惚けた返事であった。 
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