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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE93 そしてキリトだけが残される

第67層フロアボス、タダツシは自らのHPを消耗してゾンビを生み出し続けた事でついに力尽きた!そして、残るはボス部屋に残されたゾンビモンスターの殲滅のみ……タダツシが残した最後のゾンビモンスターの群れを倒せば今度こそ攻略組は第67層を突破となる―――そして、終局に現れたのは月夜の黒猫団の面々であった。
キリトとマオの動揺を誘い、かつての悪夢を再び記憶に刻む! by立木ナレ


俺とレイナで、月夜の黒猫団のメンバーだったらしい三体のゾンビモンスターを撃破した。キリトとマオがその光景を見ていない事を幸いと考えて、周囲を見渡してみるとボス部屋内のゾンビモンスター達は確実にその数を減らしていた。
そして、俺とレイナの目の前に更にもう一体、青髪のナイトのゾンビモンスターが現れる。

ディアベル「皆……勝とウゼ!」

それは第一層のフロアボス戦のレイドパーティーのリーダーを務めあげて、そして唯一の犠牲者となった男ディアベルだった。

レイナ「……近くに他のゾンビはいないわ」

俺「さっさと倒しちまおぜ……もう勝利は確かに目の前なんだ」


※ ※ ※


私「嘘……サチ―――サチだよね?」

キリト「…………っ!!」

オズマに回復するように言われてキリトと共に退避した私、マオの目の前に槍を持った女の子のゾンビが現れてた。彼女は、月夜の黒猫団で私と唯一の同性の仲間だったサチ。
とても怖がりで、死に怯えて、自分はいずれこのアインクラッドで命を落とす定めであると薄々感じながらもキリトと出会えた事を後悔する事無く、自らの意思を記録結晶に残し、私とキリトの関係に僅かながら変化の切っ掛けをくれた仲間のサチ。

そんなサチが私の目の前に現れて―――

サチ「怖かったヨネ……どうしようもなくなって不安ダッタよね……分かるよ、私も皆がイナカったら、今頃、ずっと怖くて何もでキナかったから……」

初めて私と出会ったあの日、私を助けてくれたその日に、彼女がかけてくれた言葉だった。彼女を含めた5人の仲間達の温かい雰囲気、和やかな空気は恐怖と絶望で精神的に憔悴しきっていた私にとって心の救いになった。

サチ「だってさー、私ズット遠くから敵をちくちく突っつく役だったやん。それが急に前んでて接近戦やれって言われても、オッカナいよ」

ああ、これはキリトが月夜野黒猫団に入る直前だったわね。この時はサチを盾持ちの片手剣剣士に転向させる計画があったんだけど、サチは接近戦に向いてなく、キリトが入った後も上手くいってなかったっけな……

キリト「マオ、逃げろ!」

私「え―――――――サ、サチ……!?」

キリトのその叫び声が私の意識を呼び覚ました時には、サチの槍が私の身体を鋭く貫いていた。そうか―――ゾンビモンスターになってるサチのソードスキルでやられたんだ!

キリト「クソ!抜け……抜けろぉぉぉ!!」

キリトがサチを後ろから引っ張り強引に槍を握る手を掴んで、そのまま引っ張り、私に刺さっていた槍を引っこ抜いていた。
それでわたしのHPの減少は止まったけど、ソードスキルで身体を貫かれたダメージは結構大きく、折角回復して前回になったHPバーが大きく削られてしまった。

私「戦わなくちゃ……あ、あれは――サチじゃないんだよね?」

キリト「クソっ!ガチャモン――モック――ふざけるなよ……!!」

キリトの怒りを孕んだ声を私は初めて聞いた気がする。きっとキリトも完全にサチを単なる姿を模したゾンビモンスターとして割り切る事に躊躇っているのが分かる。
第一さっきだって、態々私に刺さった槍を抜かなくても、サチを攻撃して倒せば持っている槍後と消えるのだからそうする方が得策だって事くらいはキリトも解ってるはずなのに、キリトはそれをやらなかった。

サチ「ネエ、なんでコンナことになっちゃったの?なんでゲームから出られないの?なんでゲームなのに、ホントに死ななきゃナラナイノ?あのカヤバって人は、こんなことして、何の得があるの?コンナ事に、何の意味がアルノ……?」

キリト「意味なんてないよ……得する奴なんて誰もいないんだ……こんな、こんな事はっ!!」

再びサチの槍が今度はキリトを狙い直進3連撃のソードスキルを放ってくる。キリトはそのソードスキル無しの剣技で捌きほぼノーダメージで受け流す事に成功したけど―――そこまでだった、ソードスキル発動後の硬直で動けないはずのサチへ反撃にするまでには至らず、そしてそれを見ていた私もサチを攻撃しなかった。

ガチャモン「おやおや、生きる事は戦いだって、最終回で教わらなかったのかな?」

モック「いや~、無理もありませんですぞガチャモン。今時の中高生でSEEDを見た事のある人なんて少数派でしょうからな~、なんせ2002年~2003年放送のアニメでしたからな~」

私「あ、アンタ達……」

キリト「貴様らぁ!!」

態々私達を嘲笑いに来たかのようにガチャモンとモックが現れて、意味の分からない事をほざきだしていた。
私はこんな事を仕組んだ張本人たちに対して虫の一匹くらいなら殺せるつもりの視線で睨みつけて、キリトはそれ以上に虫の一匹くらいは殺せそうな声をあげていた。

ガチャモン「おおっとぉ!戦う相手は僕たちじゃないよぉ~。そうだよね、サチさん?」

モック「さあ、バトル再会!かつて同じギルドで苦楽を共にした者達の対決ですな~」

そしてサチは、まるでガチャモンとモックの操り人形になってしまったかのように再び槍を構えて攻撃を仕掛けてくる。

サチ「真っ赤なお鼻の トナカイさんは…いつもみんなの笑いもの……デモその時の……クリスマスの日…サンタのおじさんは言いました……」

その歌は記録結晶でキリトに残した最後の遺言の歌だった。そしてそんな穏やかな歌とは裏腹にサチの槍が再びソードスキルの構えで私とキリトを貫かんと迫って来るのだった。そして――――そんなサチの眼前に瞬間移動で姿を現したのは私とキリトが属しているパーティーのリーダーのオズマだった。

オズマ「そっか、コイツがサチだったんだな――――」

オズマはそう呟いた後、鞘に収まった状態の剣でサチを殴りつけていた。あれは確か……納刀術ソードスキルの瞬突(しゅんとつ)。けどあれは、確かただ殴り付けるだけの技だけど発動直後の硬直が一切ないソードスキルでもあったはず。

更にオズマが続けて繰り出したのは3連撃の納刀術ソードスキルの双衝(そうしょう)は、膝蹴りで敵を打ち上げて鞘で殴り落としそのまま鞘で追撃する技だった。

そしてオズマは鞘に収まった状態のままの剣を、一気に引き抜くと同時にサチの身体を切り裂いた。あれは納刀術ソードスキルの抜刀(ばっとう)。この流れは、このオズマの攻撃パターンはかつて私とケイタの前で披露したソードスキルの4連続発動の3撃目!
そしてこの抜刀は直前に発動した納刀術ソードスキルの硬直をキャンセルして発動可能なのに加えて、発動直後は剣を鞘から抜いた状態になり、ソードスキル発動後の硬直も片手直剣を発動する事で更にキャンセルする事が出来る!

俺「これで―――お終いだっ!」

案の定、片手直剣ソードスキルを放とうとするオズマに、私はその瞬間に思わず目を閉じていた、そしてそれは隣のキリトも同じようだった。目の前でサチとそっくりの姿をしたゾンビが再び死ぬ―――それを見るのは恐らく私以上に、実際に目の前でサチの死を目の当たりにしたキリトの方が苦しいのかもしれない。


※ ※ ※


もう、目を開けても大丈夫だ。

俺、オズマが目の前で目を閉じたままのマオとキリトに対してそう言ったのは、槍使いの少女ゾンビ、サチをソードスキルの4連撃で倒した後だったからだ。

マオ「お、終わった……?」

俺「まだゾンビは多少残ってる程度だな」

ボス部屋を見渡すと、ゾンビモンスターは既に残り10体を切っていた。もうこの戦いが終わるのはあと数分程度の事だろう。

キリト「オズマ、なにから何まで済まないな……頭ではあのゾンビたちは黒猫団の皆が本当にゾンビ化してるわけじゃないって―――分かってるつもりなんだけどな」

キリトが左手を握り締めて、絞り出すような声でそう言った。俺はそれを聞きながらアイテムストレージを開き、既に結構減っていたHPバーを回復させるためにハイポーションをオブジェクト化しながら言葉を返す。

俺「俺も、リアルマネーゲームで死んだ連中が目の前にゾロゾロと雁首揃えて現れた時には自分もまだまだ甘いって思い知らされたな―――って、それは今までラフコフのPK集団相手に一人も自衛のためにPKしなかった時点で今更なわけだがな……」

まあ、それは関係ないのかもしれない。キリトはあのラフコフ討伐戦で俺が知り得る限りでは、最低一人のラフコフメンバーをPKしているが、かと言ってそれで殺しに慣れるとかそんなんじゃないんだろう。
俺が今回ゾンビ化したディンゴたちに攻撃出来たのは単にアイツらがもう生きてない―――そもそもプレイヤーですらない、姿を模しただけのモンスターだと割り切れたからであり、今一度ラフコフ討伐戦の時の様に、PKを厭わない連中と対峙したらやはり俺は敵を殺す事なんて出来ないんだろうな。

そんな事を考えながら俺はポーションを飲みながらキリトの方を向きなおした時だった―――

俺「あ、アイツは――――!?」

キリトの背後に迫っていたのは棍を振り上げたゾンビモンスター……それはかつて俺も一度だけ顔を合わせた事がある、月夜の黒猫団のリーダーだった―――

俺「キリト、後ろだっ!」

キリト「―――ッ!?け、ケイタ――――」

あのキリトが後ろを取られるほどに疲弊していた事にも驚きだが、キリトが直前でゾンビの不意打ちに気が付きつつも瞬時に対応しきれなかったのは言うまでも無く、この土壇場になって現れたゾンビモンスターがキリトの目の前で自殺したと言う月夜の黒猫団のリーダーのケイタであったことが最たる理由に違いないだろう。

ケイタが放った片手棍のソードスキルのダイアストロフィズムがキリトの側頭部に迫り、HPが減っていたキリトに容赦なく5連撃が浴びせられようとした時だった。

マオ「やらせない……ケイタにそんな事は!」

キリト「ま、マオっ!?」

俺「クソが……っ!オレとした事がボーっとし過ぎた!」

ケイタのソードスキルはキリトには当たる事無く、その全ての5連撃をマオがキリトに覆いかぶさるように庇い、マオの既にレッドゾーンの状態になっていたHPバーを容赦なく根こそぎ削り取るのだった。
俺はせめて最後の一撃が当たる前にと思いながら、ソードスキル発動中のケイタを飛び掛かりながら斬りつけた。
それで、何とかケイタのソードスキルは4連撃目で中断されて、体勢を立て直そうとしていたケイタをレイナが両手剣ソードスキルのアバランシュによって完全に止めを刺したのだった。



だが―――捨てに時は遅し!キリトを身を挺して庇ったマオのHPバーは完全に底を尽き、キリトの目の前で―――マオのその身体はHPを全損した事で青白く死に際の輝きを放った後、四散する! by立木ナレ


キリト「ま、待ってくれ……マオっ!な、何でこんな事を……俺の事をまだ憎んでるはずじゃなかったのか!?なのに―――なのに―――なんで俺なんかを……」

マオ「…………」

マオは何も言い残す事はなく、キリトの目の前で散った。

俺「遅かったか―――もうちょっと早くケイタを止めてればっ!」

レイナ「……あの状況じゃ無理だった。それに、あれはマオ自身が選択した事」

レイナの言う通り、マオのあの時の残りのHPバーではキリトを庇った時点で結末はどうなっても死である事は避けられなかったのかもしれない。

エルダ「まさか……フロアボス戦で戦死者が……しかも私達のパーティーから出てしまうなんて……。何で彼女はキリト君を庇ったの?」

俺「分からねーよ、キリトを庇う瞬間にケイタにそんな事はさせないとか叫んでたからな……」

エルダ「最後までゾンビモンスターを偽物と割り切れずに、ケイタ君にかつての仲間殺しなんてさせたくなかったって事かしら?」

どちらにせよ、マオが庇った事でゾンビのケイタは結局、マオと言うかつての仲間を殺してしまった事になってしまったわけだがな。
そして、たった今マオが死んだことにより、月夜の黒猫団のメンバーはついにキリト以外全滅と言う形になってしまったわけだ。

キリト「ダッカー……テツオ……ササマル……サチ……ケイタ……マオ……!」

そのキリトはマオが命を落とした直後のその場で立ち尽くしたまま、かつての仲間達の名前を一人ずつ口にしていたのだった。
それから、全てのゾンビモンスターが殲滅され、第67層が踏破されたのは間もなくの事だった。 
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