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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE87 届けられた意思

もう既に……何度目となるのだろうか……?誰も数えてなどいない、既にうんざりするほど聞き飽きたガチャモンの歌を! by立木ナレ


くっちゃうぞ くっちゃうぞ

いたずらするこは くっちゃうぞ

バターたっぷり ぬりつけて

おさとうパラパラ ふりかけて

おおきなおおきな くちあけて

たべるこどのこ どのこにしようか

ジャンケンポンよ

かったらたべろ まけたらにげろ♪


くっちゃうぞ くっちゃうぞ

おなべでゆでて くっちゃうぞ

あたまのほうから なげこんで

まだかなグラグラ グッツグツ

おいしいスープの できあがり

たべるこどのこ どのこにしようか

ジャンケンポンよ

かったらたべろ まけたらにげろ♪


くっちゃうぞ くっちゃうぞ

ねむってるまに くっちゃうぞ

おもちゃだいじに しないこは

こわれたじどうしゃ きしゃかいじゅう

しかえしやってくる ゆめのなか

たべるこどのこ どのこにしようか

ジャンケンポンよ

かったらたべろ まけたらにげろ♪


ジャンケンポンよ

かったらたべろ まけたらにげろ♪


リリース 1975年4月
歌    ガチャモン



ガチャモン「はぁ…はぁ……熱く熱唱した後は喉か乾くよねモック~」

モック「誰も貴方の歌を聞きたがってる人なんていないってのに喉が渇くほど熱唱しちゃってどうするんですかガチャモ~ン」

ガチャモン「まーまー、歌は人の心を清らかにするって言うでしょ?僕はね、こうしてたまに『くっちゃうぞ』の歌を歌う事で、血生臭い争いで荒み切ったプレイヤーの心を癒してるのさ」

モック「そうですかね~?どっちかと言うと、アンタの歌を聴くたびにプレイヤーの人達のストレスが増幅してるんじゃないかって私は思うんですよね~。」

ガチャモン「え!?ぼ、僕の歌でストレス……?」

モック「自覚してなかったんですか!?少なくともあんたの歌でプレイヤー達の心が癒されるとかおかしいじゃないですか!」

ガチャモン「やだやだ、ホントに全くもぉ~……こうなったらアンコールしちゃますか!」

モック「どういう流れでそうなるんですかね!?」

………

……



俺とレイナはキリトから記録結晶を託されて、それをマオに渡しに行くところだった。マオは俺やキリトの様にホームを購入しておらず、その活動拠点としている層の宿屋に泊っていると聞いた。
幸い既にマオとのフレンド登録は済ませてあるので、俺はメッセージを飛ばしマオの居場所を聞き、案の定宿屋で休んでいたマオの元を訪ねるのだった。

マオ「もう結構遅い時間帯なのに、二人揃って私に何の話なの?前にも言ったけど、フロアボス戦の最中に私情を挟んでキリトに剣を向けるなんて事はしないわ」

俺「そのキリトからこれを預かったんだ……レイナがな」

キリトが俺達に預けた記録結晶はレイナのアイテムストレージに入れてあった。キリトに話を付けたのも、キリトから記録結晶を預かったのも実質はレイナなので、これはつまり―――レイナがキリトから、今は亡きかつてのギルドの仲間達のメッセージが残された記録結晶を預かり、マオに渡しに来たことになる。

レイナ「……これを見て」

レイナはアイテムストレージから取り出した記録結晶をオブジェクト化しマオに見せる。マオもそれが記録結晶であり、誰かのプレイヤーの会話や言葉が再生されるアイテムである事は知っているようだった。

マオ「何の音声が入ってるのそれには?」

レイナ「……私達も聞いていない、これを私達に託した人から、貴方に渡すように言われたの」

マオ「誰に託された―――キリトかしら?」

レイナ「……そうよ」

俺「察しが良いんだな」

だが、俺達がこのタイミングでいきなり記録結晶を持ってきて、それを誰かに託されたなんて言えば、真っ先に思い浮かぶのはキリトの名前になるだろう。

マオ「キリトが私に何を言いたいのか知らないけど、自分の言葉で伝えないで、記録結晶を通してアンタ達にそれを届けさせるなんて……やっぱり私とまともに対話するつもりなんて無いって事ね」

マオはつまらなさそうな表情で呆れ気味な表情で吐き捨てるような、キリトに対する嫌悪感を剥き出しにしたような目付きを浮かべていた。

レイナ「……違うわ」

マオ「違う……何が?」

マオが少々誤解してるようだったのでレイナはそれを訂正する。

レイナ「……これを私達に託したのはキリトだけど、この記録結晶に記録されている音声はキリトのではなく、亡くなったギルドメンバーがキリトに対して残したメッセージが入っているそうよ」

マオ「亡くなったメンバーですって……?」

マオの表情は動揺を明確に感じさせるように変化した。無理もないだろう、マオにとって月夜の黒猫団と言うギルドのメンバーは俺達が唯一面識のあるリーダーのケイタに限らず、その誰もがマオの支えであり、生きる希望になっていたのだろうから。

俺「俺等はお前とキリト以外のメンバーで知ってるのはケイタだけだからな、その記録結晶に録音されてる声の主……キリトにメッセージを残した奴がケイタじゃなかったとしたらそれが誰なのかは全く分からねぇだろ。だから、それが分かるのは唯一唯一人なんだ」

レイナ「……それが貴方、キリトはこうも言ったわ、『聞いてマオがどう思うか――俺に対してどういう風に思うか分からないけど……この仲間の意思は、俺以外で唯一生き残ったギルドメンバーのマオにも知ってほしいから』そう言ったわ」

キリトの台詞をレイナは一字一句正確に記憶していたようだった。その記憶力にホトホト俺も驚嘆させられていた。
そしてレイナは、キリトがレイナに託した記録結晶を受け取り、一言こう言った。

マオ「分かったわ……キリトに何かのメッセージを託したのが誰かに関しては、薄々心当たりがあるの。彼女がキリトに何を遺したのか知らないけど……彼女は私にとっても友人だったから、彼女の意思は聞きたいから」

彼女と言う事は、キリトにメッセージを遺したのは、マオの心当たりによると女のプレイヤーと言う事になる。

俺「SAOの男女比率は8:2で男が圧倒的に多いはずなんだがな……」

この明確に分かれている男女比率をものともしないキリトの女プレイヤーとのエンカウント率はむしろ奴が狙って接近してるんじゃないかと疑いたくなる凄まじさだった。
そんな軽い嫉妬心染みた気分に浸っている中、マオは明滅するクリスタルをクリックすると、クリスタルからはマオの推測通り、女の声が聞こえた。


メリークリスマス、キリト。

君がこれを聞いてる時、私はもう死んでると思います。もし生きてたら、クリスマスの前の日にこのクリスタルは取り出して、自分の口で言うつもりだからです。

えっと……、最初に、なんでこんなメッセージを録音したのか、説明するね。
私は、たぶん、あんまり長い間生き延びられないと思います。もちろん、キリトを含めた黒猫団の力が足りないとか、そんなこと考えてるんじゃないよ。キリトはすごく強いし、ほかの皆もどんどん強くなってるもん。
えっとね、なんて説明したらいいかな……。このあいだね、長い間仲良くしてた、他のギルドの友達が死んじゃったんだ。私と同じくらい怖がりで、ぜんぜん安全なはずの場所でしか狩りをしなかった子なんだけど、それでも運悪く一人の時にモンスターに襲われて、死んじゃった。
それから、私すごくいろいろ考えて、それで思ったんです。この世界でずーっと生きてくためには、どんなに周りの仲間が強くても、本人に生きようっていう意思が、ぜったいに生き残るんだって気持ちが無ければだめなんだって。

私ね、ほんとのこと言うと、最初にフィールドに出た時からずっと怖かった。はじまりの街から出たくなかった。マオとキリト以外の黒猫団のみんなとは現実でもずっと仲良しだったし、一緒にいるのは楽しかったけど、でも狩りに出るのは嫌だった。そんな気持ちで戦ってたら、やっぱりいつか死んじゃうよね。それは、誰のせいでもない、私本人の問題なんです。


マオ「サチ……やっぱりアンタだったんだ……けど、まさかそこまで怖がってたなんて……気が付かなくてごめんなさい……」

その記録結晶から再生されているサチと言うプレイヤーはこの記録結晶にメッセージを録音していた時すでに、自らはSAO生還まで生き延びられない事を察していたのだろう―――すなわちこれは遺言。サチはキリトと何処までかは知らないが、共有のアイテムストレージを作る位の信頼関係はあったようだった。
最もそれをマオや他のギルドの連中が気が付いていたかは怪しいもんだが。そして、サチがキリトに残した遺言は続き、マオは目から涙を零しながらそれを聞き続ける、そして……その先の音声はマオにとって驚愕の内容となったのだった。


あのね……、私、、ほんとは、キリトがどれだけ強いか知ってるんです。キリトのベットで目を覚ました時、君が開いてるウインドウ、後ろから覗いちゃったの。


マオ「え……さ、サチが?き、気が付いてた……キリトの本当のレベルに?」

と言うか、サチがベットで目を覚ましたら、何故キリトがそのそばでウインドウを開いているシチュエーションになってるんだ!?
あの野郎……何時頃かは知らないが、そのサチと言う女と同じ部屋の同じベットで夜を過ごすような関係まで気が付いてやがったのか?
だが、これをマオに聞かせると言う事は、自分とサチとのそう言った秘密にしていた関係まで知られると言う事は奴も重々承知しているはずだと言うのに、それでもこれをマオに聞かせることにしたのは、それでもこのサチと言う娘の意思を―――彼女が知っていた事をマオにも伝えたかったんだろう。

マオがこれまでにない位に驚嘆し、足を震えさせている間にもサチが残した音声は続く。


キリトが、本当のレベルを隠して私達と一緒に戦ってくれるわけは、一生懸命考えたけどよくわかりませんでした。でも、いつか自分から話してくれると思って、他の皆には黙ってる事にしました。……私、君がすっごく強いんだって知って、嬉しかった。それを知ってから、君の隣でなら、怖がらずに眠る事が出来たよ。それに、もしかしたら、私と一緒にいる事が、君にとっても必要な事かもって思えた事も、凄く嬉しかった。なら、私みたいな怖がりが、無理して上の層に登ってきた意味もあった事になるよね。

えっと……えっとね、私が言いたいのは、もし私が死んでも、キリトは頑張って生きてね、って事です。生きて、この世界の最後を見届けて、この世界が生まれた意味、私みたいな弱虫がここに来ちゃった意味、そして君と私が出会った意味を見つけてください。それだけが、私の願いです。


そして、サチからキリトへと宛てられたメッセージは、記録結晶の録音時間が余った事で、クリスマスの日である事を理由に《赤鼻のトナカイ》の歌が―――サチがキリトへ送る歌が記録されていた。
そして、メッセージの最後にはこう残されていた。


……私にとって、君は、暗い道の向こうでいつも私を照らしてくれた星みたいなものだったよ。じゃあね、キリト。君と会えて、一緒にいられて、ほんとに良かった。

ありがとう。

さよなら。


そこで、記録結晶に録音されていたメッセージは全て終わったようだった。マオは視線を下に欝むせて、いま彼女がどんな表情を浮かべているのかは、俺達には見えなかった。
自分が裏切り者として憎み続けていたキリトだったが、ギルドの仲間であったサチはキリトを一切憎まず、キリトと会えて、一緒にいられて良かったとまで言っていたのだった。

レイナ「……せめて、キリトはこれをもっと早く――マオに渡すべきだったわね」

俺「それをやらなかったのはお前がキリトに対して指摘した通りなんだろうなきっと……」

自らがマオに憎まれ続ける事で、支えを失った彼女が生き続ける原動力になり得る事になる事を選んだキリトはそれ故にこのサチからの遺言、意思を―――マオに伝える事を躊躇い続けていたが、この日ついに、サチの意思はキリトを通じマオに届けられたのであった! 果たしてマオは今後、キリトどう向き合うのだろうか!? by立木ナレ
 
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