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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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71.気付かないよりは気付いた方が良い。例え手遅れでも…

<エビルマウンテン-魔王の間>
ティミーSIDE

「………うそ…だ…!」
僕は立ち上がり、お父さんを見つめていた。
ミルドラースに背中を向けて、ただお父さんの身体を見つめていた。

「クックックッ…でかい口を叩くだけはあったな。」
僕は振り返り奴を睨む!
アイツがお父さんを…アイツが…
イヤ…僕が…諦めたのがいけないんだ…
僕は勇者なんかじゃ無い!
勇気の欠片もない、弱虫だ!
だからお父さんを死なせてしまったんだ!

「どうした…次はお前か?伝説の勇者よ」
「…違う…僕は勇者じゃ無い!」
「ほう…では何だ?」
「僕は英雄リュカの息子、ティミーだ!勇者等というくだらない存在と一緒にするなぁ!!」
僕は腹の底から叫び、天空の剣を頭上高く掲げる!
すると、天空の剣から凍てつく波動が発せられ、ミルドラースを包み込む!

「ぬぅ!!その剣にその様な力があったとは…」
ミルドラースは驚いている。
僕も驚いている…
「小僧め!先に貴様を叩き潰してくれる!」
ミルドラースの拳が僕に迫る!
慌てて剣を振り切った!

(ザシュ!!)
!!
ミルドラースの腕に大きな傷を負わせる事が出来た!?
「どうやらさっきまでは『スカラ』で強化してあったようね!」
ポピーが立ち上がり怒りと悲しみを合わせた様な表情で呟いた。

「おのれ!!塵へと還るが良い!!メラゾーマ」
巨大な火球が僕へと迫る!
「マホカンタ」
ミルドラースのメラゾーマが僕を直撃する直前、お母さんのマホカンタが僕を包み守ってくれた。

「ぐおぉぉぉぉ!!!!」
弾かれたメラゾーマは、術者であるミルドラースへと跳ね返る。
自ら作り出した巨大な火球によって身体を焼かれるミルドラース!

「魔法も効く様になった様だな!」
ピエールの力強い声がみんなを立ち上がらせた!!
マーリンのベギラゴンから始まり、お母さんとサーラのメラゾーマがミルドラースを襲う!
スノウがマヒャドを唱えると、ポピーがイオナズンで追い打ちをかける!
連続の魔法で怯んだミルドラースに、プオーンが激しい炎をスラリンが灼熱の炎を浴びせ、プックルが稲妻を喰らわせる!
ザイルがミルドラースの肩に斧を食い込ませ!
サンチョのビックボウガンがミルドラースの胸に刺さると、ゴレムスが矢の刺さった部位をエグる様に殴る!
ドリスとピピンが華麗に連続攻撃を決め、ピエールの会心の一撃がミルドラースを追いつめた。

今しかない!
お父さんが命を賭けて作り出したこのチャンス!
今、全てをぶつけなければ僕はお父さんの息子では無くなってしまう!!
「みんな、僕に力を貸してくれ!!」
僕は両手をミルドラースに翳し、僕の使える最強の魔法を唱える!
「ミナデイン!!!!!」
みんなの魔力を借り受けて生み出された稲妻は、ミルドラースの額の瞳に突き刺さったドラゴンの杖目掛け迸る!
…それがトドメだった。
ミルドラースの身体を強力な稲妻が突き抜き、ミルドラースは力無く倒れ崩れる。

「…バ、バカな…我は…か、神を…も…超える…そ…ん…ざ…」



ミルドラースの身体が塵へと還り、跡には1本の杖が佇んでいる。
僕はドラゴンの杖を掴み胸が苦しくなった。
僕が諦めなければ…僕が怯まなければ…お父さんは…
お父さん………お父さん……

(パチパチパチ)
「いやぁ~…さっすが伝説の勇者!見事だね!」
!?
この場にそぐわない緊張感の欠落した声が拍手と共に響き渡る。
幻聴か!?
心が望むあまり幻聴が聞こえたのか?
僕はゆっくり振り返る…

そこには優しい表情で胡座をかいているお父さんが居た!!
驚きと嬉しさと不思議さとで混乱している僕等に、マーサ様が申し訳なさそうに説明してくれた。
「皆さんを騙す様な事をしてごめんなさい。ミルドラースとの戦闘直前にリュカから言われて…」
お父さんが!?

「『万が一戦う事を諦めてしまったら、僕は死んだフリをするから、母さんも話し合わせてね』って」
死んだフリ!!
「リューくーん!!良かった!!!生きてて良かった!! (エ~ン)」
「お父さ~ん!私…私… (グスッ)」
スノウとポピーが泣きながらお父さんに抱き付いた。
「馬鹿者!!この、馬鹿者!!二度とこんな真似はするな!!」
あのピエールが人目を憚らずお父さんに抱き付き泣いている。
お父さんは立ち上がりお母さんにキスをする。
「ビアンカは泣いてくれないのかな?」
「わ、私は…知ってたわ… (ヒック)アナタが私達を見捨てない事を (ヒック)」
肩を振るわせ泣くお母さんを抱き締め、お父さんは僕を手招きする。

「お、お父さん…ごめんなさい… (グスッ)」
僕はお父さんに近付きながら、嬉しさと後悔と謝罪の気持ちで泣いていた。
「何を謝る事がある?立派に魔王を倒したじゃないか!」
「お父さんが (グスッ)諦めちゃダメって言っていたのに (グスッ)…僕は (グスッ)諦めちゃったんだ」
「(クス)泣く必要は無い!ティミーは悪くないよ。こんな面倒事を子供に押し付ける大人が悪いんだ!」
お父さんは僕の頭をグシャグシャに撫で、優しく励ましてくれる。
「だから、最初からこうなるって思ってたんだ!」
え?
最初から!?

「ティミーやみんなが諦めちゃう事を念頭に置いていたのさ!」
「で、ではリュカ様は最初から我々が挫けるとお考えでしたんですか!?」
「悪いねピピン!全く持ってその通り!しかもさ、天空の剣にさ、あんな力があるなんて知らなかったしぃ~」
みんないつもの呆れ顔に戻っちゃた。
「…やっぱり…お父さんには…敵わないや…」

「さぁ!帰りましょうか!みんな無事ですかぁ?死んだ人は手を挙げて!」
いや…ムリだから…お父さん、それムリだから!
「………ところでさ、どうやって帰るの?」
『私が力を貸しましょう』
どこからともなくマスタードラゴン様の声が響く。
「あ!プサン!!」
僕達の身体を黄金の光が包み込む。
とても暖かく柔らかい光だ。
周囲全てが光に包まれた次の瞬間、視界が戻り目の前にマスタードラゴン様が佇んで居た。

ティミーSIDE END




 
 

 
後書き
次回
DQ5~友と絆と男と女
最終回!

でもリュカさんの物語は続きます。 
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