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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE86 キリトとマオ・・・交わらぬ心

2024年8月は怒涛!ラフィン・コフィン討伐戦により、殺人ギルドは壊滅したその数日後には第二回リアルマネーゲームが『地の底からのロッククライミング』が取り行われて――最終的に8人の参加者の内6人が命を落とし、生き残ったオズマとザザの二人がSAO生還後にオズマが2000万円、ザザが1000万円を獲得する権利を得たのであった!

そして、現在のアインクラッド最前線は第67層、迷宮区の攻略が進みフロアボス部屋の発見も近いと言われる中、攻略組内において、とあるソロプレイヤーとソロプレイヤーの微妙な関係は続いていた。

アスナ「そう言うわけだからオズマ君。また貴方のパーティーにキリト君とマオさんを加えて戦ってもらう事になりそうだわ……」

血盟騎士団副団長のアスナが、近々行われるであろうフロアボス戦での仮のパーティー編成での相談で、若干申し訳なさそうな表情でそう告げる。
アスナのこの表情の理由は言うまでも無く、ソロプレイヤーであるキリトとマオが同時に俺のパーティーに入る事だろう。

俺「どっちか一方なら別に何の問題も無いんだが、こいつら二人が同時に同じパーティーだと妙な空気になるんだよな、特にアイツら同士でな……」

キリトとマオ。かつては月夜の黒猫団という同じギルドに所属した仲でありながら、現在の二人の関係は良好とは程遠かった。

具体的に言えば、マオの方がキリトに対して一方的に嫌悪感を抱き続けて、キリトはそれに対して後ろめたさを感じ続けていると言う面倒な状態だった。

マオにとって黒猫団は自らの窮地を救っただけでなく、心の支えとなり、唯一の居場所となったギルドのわけだが、そこに偶然最前線から離れて採取に来ていたキリトがレベルを大幅に誤魔化したまま加入し、それが一因となり、ギルドは最終的に二人を残して全滅し、解散となった。

アスナ「オズマ君は―――知ってるのよね、キリト君とマオさんの間にある確執の原因について?」

俺「ああ、当人たちから聞いてるからな」

アスナも流石に、キリトとマオの間に漂う、一筋縄ではいかない確執を思わせる雰囲気を既に察しており、両者の間に因縁があるのだろうことは気が付いてるのは確かだ。
具体的な詳細を聞いたわけではないので、詳しくは知らないはずだが……頭の良いアスナならキリトが最前線を離れていた2カ月の間にその原因がある事くらいは理解してるだろう。

俺「前にも言ったけどさ、俺の口から勝手に話す事は出来ねぇ問題だからな、当人たちに確認を取ってから聞いてくれ」

俺の言葉に対してアスナは首を横に振りながら、断わりの合図を示す。

アスナ「それは止めておくわ。確かに攻略組を指揮する立場としては、プレイヤー間の溝や確執は可能な限り取り除いておきたいと思うのが本音よ。だけど……この問題に関しては私を含めて、誰かが踏み入れるような事じゃない気がするの……多分、当人同士で納得がいくまで話し合って、ぶつかりあって、解決策を模索するしかないのかもしれないって言うか――――」

俺「仰る通りだよ……俺等が間に入って話し合いの場を設けたりしたところで、あの二人の間にある確執や溝が埋まる事はまずないだろうな……」

キリトとマオ―――どちらも俺や他のプレイヤーと接するときは特にそれほど壁を感じさせるような接し方をする奴らじゃない。
だが、あの二人の間にだけ決定的な壁が……分厚い上にどちらもそれを取り除く事を避けてしまっている壁が存在してるんだ。
それが存在し続ける限り、マオはキリトを憎み続け、キリトはマオに対して後ろめたさを感じ続ける……そんな関係がこの先も続く事になるだろうな。


※ ※ ※


その日の午後の事だった、俺とレイナはマオを含めた3人で、A級食材が確定で一つ手に入るモンスター討伐クエストを受けていた。
クエスト受注条件はパーティーメンバーが3人以下である事が求められつつも、討伐対象となるモンスターはフィールドボス級の強さを誇り、マオは単独での討伐は不可能であると俺達に協力を申し出て、俺とレイナが引き受ける事にした。
A級食材にそれ程興味はなかったが、フィールドボスとだけあり得られる経験値とコルも中々の物である事が旨味に感じたからだ。

マオ「流石はオズマとレイナね……貴方たち二人だけで充分倒せたんじゃないかってくらいの戦いぶりだったわ!」

フィールドボスを討伐し、クエスト報酬であるA級食材を獲得したマオが、ごく自然な笑顔で俺達の戦いぶりを称えてくれる。

レイナ「……あの戦い方は、貴方の短剣スキルの手数重視の攻撃が入る事を前提とした戦いだったわ」

俺「そうだな、俺とレイナだけじゃ、あんなやり方であそこまで上手くは行かなかったと思うぞ」

マオ「え、そ、そう?古参の攻略ギルドの二人にそんなこと言ってもらえると、何かアタシもようやく戦力として一丁前になってきたのかもって自身付いちゃうわよ~」

マオがこうして、俺達に接する態度には何の壁を感じさせることも無い位に気さくで、過去にギルドの仲間達を失った悲壮感も感じさせないほどに明るかった。
そんな振る舞いのマオに対して水を差すような話をしたくはないが、ほぼ確定した事であり、何れは本人も知ることになるので、俺は敢えてここで告げる事にした。

俺「今度のフロアボス戦のパーティー編成だけどな……俺のパーティーにはMBTのトップ3(俺、レイナ、エルダ)に加えて、血盟騎士団から借りる事になる盾持ち剣士一人と……お前とキリトも入る事になったんだ」

レイナ「……ウチのパーティーには数合わせでソロプレイヤーや他ギルドからのゲストが入る事は毎回の事だから」

マオ「…………」

俺の言葉を聞いたマオは一瞬だけ押し黙ったかに見えたが、すぐに元の調子に戻り―――

マオ「分かったわ、またボス戦に参加させてもらえるなんて光栄ね。アスナ副団長さんの采配ってところかしら?」

俺「ご明察……なんだかんだでアスナの指揮や采配は大抵は理に適ってて的確だからな」

マオ「それなら文句の言いようなんて無いわね……心配しなくたっていいわよ。フロアボス戦に参加する以上は、例えそれが誰であれ、決して私情を挟んだ敵意を向けた行動なんて絶対にしないから信用して」

マオが言っているのは言うまでも無くキリトの事だろう。俺達が事情を知っているだけに、再び訪れたキリトと同じパーティーでのボス戦になる事に俺達が僅かながらの不安を抱いている事を察したようえで、それを拭い去る為だろうが、自らの口で私情を挟まずに戦う事を俺に約束するのだった。


※ ※ ※


俺のホームは第50層のアルゲートにあり、そしてキリトのホームも同じアルゲートにある為、俺は転移門で自分のホームに戻る途中に通りかかるキリトのホームを訪ねた。
夜遅い時間帯だった事も有り、キリトは既にホームで寛いでいた頃だった。そして、俺はキリトに直接、アスナの采配により今回も俺達と同じパーティーでフロアボス戦に参加する事が決まった事と、同じパーティーにマオが入っている事を伝えた。
一通り俺の話を聞き終えたキリトは、一瞬だけ気まずそうな表情を見せたが、すぐに表情を切り替えて、いつもと変わらぬ声質と声色で答えた。

キリト「分かったよ、態々伝えに来てくれてありがとうなオズマ」

俺「態々伝えに来るも何も、同じ50層にホームを構えてるんだから、家に帰るついでだよ」

俺がそう言い返すとキリトは苦笑いを浮かべて『それも、そうだよな』と答えた。これは余計かもしれないが、俺は今日の午後にマオとパーティーを組んでクエストを受けて、その際にキリトの事について少しだけ言及していた事をキリトに伝えることにした。

俺「そんなわけでだ、マオは今でもお前の事をはっきりと嫌ってるみて―だが――取りあえず、フロアボス戦の最中に背中から刺されるような事は無いみたいだから、安心して戦いに専念しろ」

キリト「ははは……そんな事聞いたら逆に物騒で薄ら寒くなってきたな―――けど、もし仮に本当に後ろから刺されたとしても……文句は言えないんだよな」

やはり、キリトは未だにマオに対して強い後ろめたさと罪悪感を抱き続けているのは明白だ。流石にあり得ないとは思うが、万が一にもマオがキリトを背後から刺し殺そうとした場合、キリトはその時は一切の抵抗もしないままに、自らの死を天誅(てんちゅう)として受け入れてしまいかねない様子だった。

レイナ「……キリト、マオに対して何か隠してる事とかはないの?」

キリト「え――――隠し……事?」

それまで無言で俺とキリトのやり取りを見ているだけだったレイナが唐突に、キリトに対してそんな事を問いただしていた。
そして、そんなレイナの不意打ち染みた問いに対して、反応に困ったように、目を大きく見開き、途中で途切れそうな細い声を漏らしていた。

キリト「なんで……そんな事―――」

レイナ「……私には、現実世界での記憶が無いの」

キリト「―――き、記憶が無い?」

受け答えに戸惑うキリトに対してレイナが更に告げたのは、今までギルドのメンバーの中でも、俺、ユッチ、エルダ、最古参組にしか話したことの無かった、現実世界での記憶を失っている事だった。
なぜ、レイナがこのタイミングでギルドメンバーですらないキリトにそんなことを告白したかは俺にも全く分からなかった。

キリトはレイナの言葉の真偽を探るように俺に視線を向けてきた、俺は少し考えたが、レイナ自身が自分から告げた以上俺が誤魔化す必要はないと考えて答える。

俺「やっぱ驚いたか?俺も最初に聞いた時に、そんな事が本当にあるか―――とか思ってたけどな……原因は未だに俺にはさっぱりわからねーし、レイナのリアルがどんなのかもまるで皆目見当つかずの状態だが……確かに言える事なんだよ……レイナが記憶喪失だって事はな。もしかしたら今のレイナの性格も、記憶喪失でこうなってるって事も有り得るとも考えられるしな」

キリト「……記憶を失う事で人格に影響が起きたか、確かに考えられなくもないな―――だけど、なぜ急に俺にそんな事を?」

レイナ「……記憶を持たない私の言葉として、これからいう事を聞いてもらうためよ」

レイナは表情こそ変わる事は無いのだが、明確に俺に分かる事として、第一層で初めて会った時に比べてレイナは―――明確に他人に対する興味とか、好感や反感、そう言った事をある程度は示すようになってきた気がしていた。

レイナ「……現実世界での記憶を持たず、今の人格すら本来の私の人格とは異なるかもしれない私が言っても、大した説得力はないかもしれないけど、今の私はこう考えてる」

レイナは、キリトの不安を思わせる目に視線を合わせて、その不安を射抜くような言葉を口にする。

レイナ「掛け替えのないギルドの仲間を失ったマオには、戦い続ける原動力……生き続ける原動力が必要になると貴方は考えた」

キリト「ああ……確かにそれはそうだな」

いつの間にかキリトはレイナから目を反らしていたが、レイナはそんなキリトをしっかりと見据えた状態のまま更に言葉を続ける。


レイナ「……そしてあなたは更にこう考えた。自分自身が憎まれ役、憎悪の対象になり続ける事でマオが強く生き続ける原動力の糧にしようと―――だから貴方は敢えてマオに対して一切の釈明も、対話も試みない」

キリト「…………」

レイナ「……だけど、心の奥底……深層心理では貴方はマオと以前のような関係に戻る――とまではいかなくても、彼女に対して伝えたい事が――伝えたい意思を抱いている、私にはそう感じたの」



そのレイナの言葉はキリトの図星を吐く、核心に迫る言葉だったのか―――或いは単なる戯言――想像の範疇を出ない言葉に過ぎなかったのか?
そのやり取りを見ていたオズマにはどちらかなど想像もつく事はなく、答えはおのずとキリトの反応に委ねられる事となる by立木ナレ



キリト「少し待っててくれ」

キリトはそう口にした後、その場でウインドウを操作し、アイテムストレージを開くと、その中から一つのアイテムをオブジェクト化し、それをレイナに手渡した。
それは、俺とレイナも第一層で入手し、キリトを含めたベータテスター達に対する強請りに使用した結晶アイテム、それは――

レイナ「……記録結晶ね」

キリト「その中には、ギルドのメンバーが俺に残したメッセージがまだ残ってるんだ。去年のクリスマスイブの日に俺もその内容を初めて聞いたんだ」

俺「あの蘇生アイテムの日の事か」

つまり、キリトはそのギルドメンバーが残したメッセージを聞いたことで、失意のうちから何とか今の状態に持ち直したのかもしれない。

レイナ「……これをマオに聞かせれば良いのね?」

キリト「その判断はお前たちに任せるよ、これを聞いてマオがどう思うか――俺に対してどういう風に思うか分からないけど……この仲間の意思は、俺以外で唯一生き残ったギルドメンバーのマオにも知ってほしいから」

俺達はキリトから、既に亡くなったギルドメンバーの意思の言葉が記録された結晶アイテムをキリトから託された。
この結晶アイテムがキリトとマオの関係に何をもたらすのか、俺達が逸れに干渉する事は出来ない。 
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