| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

人徳?いいえモフ徳です。

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

二十三匹め

「ぅきゅ?」

パチ、とシラヌイが目を開けた。

体を起こすとパサと毛布が落ちる。

「ソファーの上…? どこだろここ…?」

シラヌイは辺りを見回した。

目が合った。

「シラヌイ!」

金髪金眼の少女じみた容姿の女がシラヌイに駆け寄り、ギュッと抱き締めた。

「心配したんですよ!」

「………ごめんなさい。おか……シェルムさん」

シェルム・フォン・シュリッセル、シラヌイの母だった。

「『母』とは、呼んでくれないのですか?」

抱擁を解いたシェルムがシラヌイと目を合わせる。

「…………………」

「お母様から聞いています。貴方には前世の記憶があると」

「はい。だから、僕はもう貴方の息子では居られないんです」

「それでも貴方にはあるのでしょう!この五年の記憶が!」

「でも…でも…僕…には…」

シラヌイがうつむく。

「なら! どうして貴方はそんなに辛そうなのです!」

「僕には貴方の息子だって記憶がある!
でも!もう僕は貴方の知る僕じゃない!」

そう捲し立てた。

「それでいいではないですか! 貴方はいったい何を恐れて私を母と呼ばぬのですか!」

「貴方が僕を!俺を嫌わないって証拠がどこにある! いつか貴方が僕を嫌って僕を殺さないって確証が!どこにあるんだ!」

シラヌイが頑なにシェルムを母と呼ばないのは、嫌われたくないからだ。

嫌われて、殺されたくないからだ。

「どこに息子を殺す母が居ますか!」

「だから僕はもう貴方の息子じゃないんだ! 僕はもう貴方が知ってるシラヌイとは別人だ!」

それがトドメだった。

「…………………ぅう」

「?」

「ふぇぇぇ…」

(お母様が泣いた!?)

「どうして私はだめなんですかぁ~! お母様やボーデンだけずるいです~!
私のこともお母様ってよんでください~!」

「えぇ…?」

突然駄々っ子のように泣き出したシェルムに呆然とするシラヌイだった。








所変わってシェルムの部屋。の扉の前。

そこでは四人の人間が聞き耳を立てていた。

「筆頭の駄々っ子モードだと…!?」

「あ、あんなシェルム見たことない…」

「マジかよシェルム先生」

「あ、あれが宮廷魔導師筆頭…?」

「おー…。五百年ぶりかのー…」

上からアルフレッド、ブライ、ボーデン、ルル、タマモ。

もしくは国王、師団長、国家錬金術師筆頭、宮廷付侍女、王宮相談役である。

「シェルムの奴そうとうキテおるな…」

「お義母さん、シラヌイは何故ああもシェルムを拒絶するのですか?」

「そーじゃのー…。考えられる理由はシラヌイの前世の死因かのぅ?」

「お義母さんは知っているのですか?」

「知らん」

「そうですか…」

「じゃが察するに何かしらの悪意によって殺められたのじゃろう。
さっきそのような事を言うておったからの」

『お、落ち着いてくださいシェルムさん』

『ぅぅぅうう……びえぇぇ~ん! 名前で呼ばないでくださ~い! 他人みたいでいやです~!』

『お、お母様…おちついて…。ほ、ほら、ね?』

『ぅぅ…………これからもお母様って呼んできれますか……?』

『はい。お母様』

『帰って来て、くれますか?』

『……………はい』

『ふえぇぇ~! しらぬい~!』

「勝ったのぅ」

「シラヌイ君根負け…」

「ちょっと今のシェルムの顔見てみたいかも…」

「ブライ君。君いい趣味してるね」

「シェルム先生に殴られるに一票」

「うわー…男って…」

「カカカカ! 変わらぬのぅ!」

タマモはそういいながら、ガチャ! と扉を開けた。

「おー。タマモ! 仲直りできたかのー?」

「「!?」」

いきなりの事で驚くシラヌイとシェルム。

「では今後の事をさっさと話すぞ。
ほれ、お前たちはよう入れ」





シェルムはむすぅっとしたままシラヌイを腕の中に抱き込みソファーに座っている。

ロの字型のソファーの奥にシラヌイとシェルム。

右手にブライとアルフレッド。

左にボーデンとルル。

タマモはテーブルを挟んでシェルムの正面だ。

「さーてではウチの娘と孫が仲直りした事じゃし今後の事を話すとしよう」

と切り出した。

「まず。シラヌイはシュリッセル家に帰るということで良いな?」

「はい。お婆様」

「ボーデン、お主も良いか?」

「構いません」

ボーデンが頷く。

「して次じゃ。シラヌイはこれから儂かシェルムかブライと必ず行動を共にする事」

「なんでですかー?」

「お主この数日で何回死にかけとるんじゃ。
さっきも魔力の吸いすぎで暴走しておったではないか。
ボーデンのエリクシールがなければ一月はベッドの上じゃぞ」

「………ごめんなさい」

「儂らがつけぬ時はボーデン、ルル。頼むぞ」

「「はい」」

そして最後にタマモはアルフレッドを見た。

「という事でシラヌイを王宮に連れてくるが良いか?国王」

「私に拒否権があるとでも?」

「じゃな」

シラヌイはタマモと国王の間で視線を往復させる。

「え? こくお…え?」

「そういえば会うのは初めてか。私が国王のアルフレッドだ」

「よっ宜しくおねがいしまひゅっ!」

「こんな老いぼれに固くならなくてもいい。
私なぞただの傀ら」

そこでタマモがアルフレッドの頭をはたいた。

「要らんことを言うなこのたわけっ!」

「ちょっ! お婆様そのひと王さま…!」

「はは。いいのだよ。フライハイトの実権を握るのは私ではなくタマモだからな」

「へ?」

「勘違いするなシラヌイ。このバカの戯言じゃ」

「まぁ、そういう事にしておこう。改めて、私がこの国の王だ! 頭がたかぁい!控えろぉぉ!」

「調子に乗るなうつけ!」

はたいた。二度目だ。

「と、まぁ、私とタマモはこのような関係だ」

「は、はぁ…そうですか」

シラヌイが生返事をする。

「では決まりじゃの。他に意見のある者は? 居らぬな? では終いじゃ!」

こうしてシラヌイの今後に関する事が決まった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧