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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE84 託された決意

オズマはディンゴからSAOクリア後に現実世界で1000万円の金に化ける金の延べ棒を託された……ディンゴは自らを土壇場で臆する人間、そしてオズマを土壇場で奮い立てる人間と称し、既に何時落ち、自らの命が尽きるかも分からぬ状況下で、オズマの勝利を祈ったのであった。

そしてオズマは、そんなディンゴこそが賞賛されるべき人間である事を、消してクズでも負け犬でもなかった事を伝えるべく最後に下を振り向いたのだったが―――既にそこにディンゴの姿は無かった、完全なる消失! by立木ナレ


俺「お、落ちた……落ちた……落ちちまったんだ……!」

下を振り向き、既にディンゴの姿が消えていたのを知った俺の脳裏に浮かんだのは、絶叫を堪えて、恐怖心を無理やりねじ伏せて、悲鳴の欠片も漏らすことなくただ黙って落ちていったディンゴの姿だった。

あの気弱で泣きっぱなしで、真っ先に泣き喚きながら落ちても不思議じゃなかったあのディンゴが―――最後は俺に動揺を与えない為に黙って落ちたんだ!

俺「アイツは、最後の最後に示したんだ……自分の強さと矜持……生きた証を…!」

俺は再び上を見上げ、右手を近くの凸凹した部分に捕まり、更に左手を何とか指が掛かる程度の厚みのある岩に引っ掛け、そして足を上げて……登る!
俺は登り切らなくちゃならない……登り切って自分の人生に希望を照らす為の1000万円と、ディンゴに託された弟の治療費の1000万円を得る為にも登り切るしかないんだ!


再び己を奮い立たせ、頂点のゴールを目指し崖をロッククライミングで登り始めるオズマ、そしてその先を登るザザ。
既に8人の参加者の中、生き残っているのは立った二人!そして、その様子をガチャパットを通じてみているアインクラッド中のプレイヤー達の反応は様々であった! by立木ナレ


※ ※ ※


レイナ「……ディンゴの言う通りよオズマ。貴方は勝てる人間、どんな土壇場でも、窮地でも奮い立ってそして……今までだって活路を開き続けてきた、だから……今度も勝って、そしてあなた自身の未来に希望を照らして」

レイナは信じる!アインクラッドで最も長い時間を共にした最大のパートナーとでも言うべきオズマを、記憶を失い現実世界の自分を知らぬレイナにとって、オズマとは自身の事を最もよく知る男となっていた! by立木ナレ


※ ※ ※


POH「WAO……ザザの奴、見上げたスピリッツじゃねーか。アイツにそんなタフネスがあった事も意外だったが、どっちにしろ見物だぜ……あの討伐戦でキリトに負けて捕まっちまって、今は黒鉄宮でどんな思いで過ごしてるかしらねーが、少なくともスピリッツはちっとも萎えちゃいなかったわけだな……」

ラフコフのボスのPOHは自身が率いていた殺人ギルド、ラフィン・コフィンの右腕であったザザが自らの力で死と隣り合わせのゲームで未だに耐え続け、勝利をもぎ取ろうとする姿に感心、彼の行く末に僅かながらの興味を抱いたのであった! by立木ナレ


※ ※ ※


ユッチ「オズマさん頼むっすよぉ~!こ、これで勝てば1000万円……いや、それどころか2000万円が僕らの物なんっすから!はぁ~、2000万円かぁ~……!やっぱりオズマさんは何か持ってるんだよな~。あの人に付いてきてやっぱり正解だ、僕の目に狂いはなかったんだ!」

ユッチはオズマに付き、MBTのメンバーの座にしがみ付き続けてきたことをこの時になり、改めて良かったと痛感、こうしてはいられないと言わんばかりにオズマのホームがある第50層のアルゲートへと向かったのだった。
実際の所、幾度かアスナが副団長を務める血盟騎士団に何とかして転属できないかと幾度か目論んだ事も有るユッチであったが、2000万円と言う大金を得られるかもしれぬオズマはユッチにとって、決して離れてはならぬ金の塊のような存在となったのだった! by立木ナレ


※ ※ ※


???「見せてもらおうじゃない……私の妹を好き放題、抱いた上に現実世界じゃどうしようもないクズ人間の貴方が、この状況下で自分の生と希望の大金を掴む事が出来るのかどうか……」


※ ※ ※


しばらく順調に登り続けて行ったところで、俺よりも既に大分先に登っていたはずのザザの姿がハッキリと見えるようになり、明らかに俺とザザの距離が近くなっている事に気が付いた。
と言うか、ザザはとある地点から殆ど動かず、上をじっと見上げて行き詰っているかの様子だった。

ザザ「ざ、ざけんじゃねーぞ……こんなのありか……?クリアさせる気あるのか……あのパチモンコンビが……!」

俺「んだよ?いったいなに一人でブツブツと愚痴って―――そう言う事か!」

俺は目を凝らして上を見上げてみてみると、ザザの頭上、というよりその上の横一列をまるで俺達がその先に登るのを防ぐために設置されたと言わんばかりに黄色い棒が―――すなわち、触れば電流の流れる帽が並んでいたのだった。
そしてそのさらに上、数メートル程先に見えるのは崖の頂上、俺達が大金獲得のために目指し続けてきた希望のゴールだ。

なのに、それを目の前にしてあんな風に黄色い棒が並んでいるようじゃ、突破など不可能、無理ゲー、完全な手詰まりって事になってしまう!

だが――――

俺「いや、本当にそうなのか……?」

確かにガチャモンとモックはプレイヤー達を幾度も絶望に陥れる仕掛けやイベントを仕掛けてきた連中で信用ならないのだが、これは幾らなんでもあからさまに露悪的……ガチャパットを通いて大勢のプレイヤーが見ているリアルマネーゲームでこんな興覚めするような、100%一方的に確実に詰みになるような仕掛けを作るのか?

ザザ「どうすりゃ……どうすりゃ良い……ってんだ!?」

短い言葉を区切り区切りにしながらも、恐怖心以上に怒りが勝ったようなザザの声が俺の耳にまで届く。
無論こんな理不尽なやり口で最後の最後で勝ち筋を摘み取られれば、頭に来るのは無理も無いのだが……勝ち筋が本当に残されてないのかどうか、そこがキモな気がしてならなかった。

何時まで保てるか分からないか細い神経と、集中力を凝らし、俺は横一列にずらりと並んでいる黄色い電流の棒を一本、一本順に眺め、見比べ続ける。
すると、俺の目は確かに一瞬捉えた、横一列に並んでいる棒の違い、矛盾、仕掛けを!

俺「待て……い、行ける!突破できる!よく見れば突破できるんだ!」

ザザ「何を……どういう事……なんだ?」

俺「よく見てみれば黄色い棒だけじゃないぞ!―――橙色(だいだいいろ)が……黄色い棒に混じって、橙色の棒が何本も混じってるんだ!!」

ザザ「な、なに――――!?」

俺の言葉の真偽を一瞬ザザは疑ったようだが、すぐにそれを確認する為に俺よりもより、並んでいる棒の近くにいるザザは横から順番に、黄色い棒を見比べて見据えて、そして―――

ザザ「み、見える……!た、確かにそうだ……なんで、なんで……黄色に混じって橙色が混じってる事に……気が付かなかったんだ……!」

無理もない事だろう、俺も良く注視して初めて気が付いたことだ。もうあと数メートル先がゴールである事で俺達の気分は既に先急ぎたい気分で満ちており、それに加えていつ力が尽きて落ちるかも分からない状況下では、黄色い棒に混じって橙色の何本かある事に気が付く事など到底容易ではなかった。

ザザ「こ、この橙色なら……平気なのか……?」

が、それで完全に不安が物色できたわけでもないのも無理もない、電流の流れる棒は黄色い棒だと確かに連中は言っていたが、この橙色の棒だって単なる色彩の設定ミスで触れば黄色の棒と同じように、一瞬にして全身が感電して、最終的に落下―――針山地獄の餌食になる事だって可能性としては0ではない。
尻込みするのは当然だ、だが―――

ザザ「し、痺れねぇ……な、何ともねぇ……!」

ザザはいち早くここから脱し、1000万円の金の延べ棒を持ってせめて黒鉄宮へ戻りたいと言わんばかりに、橙色の棒に手を伸ばし、掴みやすいその棒をしっかりと掴んだのだった。

俺「やっぱりそう言う事だったか……黄色い棒の列に橙色を混ぜる事で、俺達には絶体絶命のラインと思わせつつ、実際には突破手段を残して、ゲームとしての体裁も守ってたって事か……!」

そうと分かった以上、最早俺達を止める障害など何もなかった!もう見えている、既に見えているゴールを目指し登り続ける、あと少し、あと少しで……ゴールすれば後はSAO生還まで生き延びれば、金の延べ棒は1本につき1000万円と言う現実世界での金に化けるんだ!


8人から始まり、6人が命を落としたリアルマネーゲーム、『地の底からのロッククライミング』は遂に終局!
そして、孤独なる戦いの果てについにザザが――――!by立木ナレ


ザザ「うわぁぁぁ……うわああああ―――――!!」

最後の気力を燃やし、全身全霊を込めた絶叫と共に、ザザの左足は自らの身体を跳ね上げて、ザザの身体は何十センチかの高さまで飛翔、ささやかなジャンプのような動作の直後―――ザザの右手は掴んだ……この残酷で非道なデスゲームの終着点である崖際を。
そして、ラフコフ討伐戦の時でも聞くことの無かった、激しい荒々しい息遣いをしながら、渾身の力を振り絞り、よじ登り、ザザの身体はついに断崖絶壁から解放されたのだった。

ザザ「やったぁ……やったんだ……勝った……1000万円だぁ!」


死の崖を登り切り、ザザ―――ついに生還!そして、後に続けるかオズマ!? by立木ナレ


俺「俺も、俺も登り切る……!ここで落ちる事があってたまるかぁ……!!」

最早直感で分かった、俺がこの崖にしがみ付いていられるのは一分と持たないだろう。その前に長点である崖際に手を付き、その手に力を込めて自分の身体を崖際まで登らせるんだ!

俺「つ、掴んだか?」

右手で掴んでいるのは今までと違う感触、崖際に捕まったんだ!もう、これ以上こんな状態を維持しているのも難しい――――ここで一気に登り切るんだ!

俺「ううおわぁぁぁぁ!!」

今までの人生で発したことの無いような唸り声をあげて、俺は右手の力だけで無理矢理、平均化されているステータスの出せる力の限界以上の力を出し切り、自分の身体を無理やり崖際まで上げて見せた。左手でも崖際を掴み、身体を安定させてついに得る、生還したと言う実感……そして得たんだ……1000万円の権利を!

俺「これで文句はあるまい……違うかお前らぁ!!」

まるで俺が荒げた声を待ってましたと言わんばかりに、俺とザザの目の前にガチャモンとモックが転移で姿を現した。
黒服のサングラスという全く似合わない格好で、白々しい拍手をしながら、奴らはほざき続ける。

ガチャモン「congratulation(コングラチュレーション)

モック「congratulation(コングラチュレーション)

congratulation(コングラチュレーション)……確か前にエギルがおめでとうって言う意味だとか言ってたっけな?
それを思い出した途端に、奴らに対する怒り、苛立ち、それらが噴き出すように腸が煮えくり返るのを俺は感じていた。
本当ならこの場で二人まとめて切り刻んでやりたい……だが、それをやれば俺はもれなく公開処刑で手に入れた1000万円――ディンゴの分も含めて2000万円が水の泡……そんな愚行はとても出来るわけがない。

俺「御託はいい……さっさと俺らを基の場所に戻しやがれ!」

ザザ「今回は……それに同意する……どんなキタねェ檻の中も……こんなところよりかは全然天国だったぜ……!」

ガチャモン「まーまー、最後に僕たちの説明を聞いてきなよ。そしたら強制転移でオズマ君は元居たアルゲートのホーム、ザザ君はお望み通り黒鉄宮に送ってあげるからさ」

全く気が進まないが、既に俺もザザも、奴らと口で言い合う気力もなく、永遠とガチャモンとモックの話を聞かされるだけだった。

モック「お二人が持っている、金の延べ棒は強制転移後にアイテムストレージに入れる事が出来るようになり―――一度ストレージに入れた後はいかなる手段をもってしても他のプレイヤーのアイテムストレージに移る事はありません」

ガチャモン「つまり、貸与も贈与も奪い合いも出来ないって事、まさに万全のセキュリティなのさ!このことは、既にアインクラッド中のプレイヤー達にガチャパットを通じて、伝達済みだから、多分金の延べ棒目当てのオレンジプレイヤー達に襲われる事も無いと思うから安心してね」

モック「ぐほほっ!案の定貴方方が手に入れた金の延べ棒を狙っている輩たちが悔しそうにしておりましたですな~……ですので我々の強制転移後は速やかにお二人が持っているそれぞれの金の延べ棒をアイテムストレージに入れる事を推奨しますですぞ~」

そうかい、ご丁寧な配慮はありがたいもんだ―――話が終わったならさっさと俺達を強制転移で元の場所に戻せ―――そう心の中で毒づいた時だった。

「素晴らしいね~、まさかこのマネーゲームを二人もクリアしてしまうなんて――現実世界じゃどうしようもない負け犬のヘビーゲーマー達もやっぱりゲームの世界じゃ変わるって事かな?」

ガチャモンの声でもなく、モックの声でもない。だが、明らかに俺達を軽んじ、尚且つ絶対的な後ろ盾でもあるかのような自身で歪んだ声が聞こえたのはその時だった――― 
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