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仮面ライダーディロード~MASKED RIDER DELOAD~

作者:紡ぐ風
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序章~全ての始まり、守護者の刃~
最終章 決着編
  第50話『ラブリーヒルズの悲劇』

ゆらりゆらりと棒の影。哀れな定め、迷い道。憎み憎まれひび割れた、合わせ鏡の二籠。時の交わる闇より来たりて、あなたの怨み、晴らします。

「雅の弟が…」
「ディケイドの正体?」
「ああ。海東は、盗みはやっても嘘はつかない。恐らく事実だ。それなら、僕を狙って僕の世界を攻撃した理由も解る。」
「でも、雅の弟なんだよね?どうして雅を殺そうとするの?」
「流夜は、僕のことを殺したいほど恨んでいたからね。」
「そんな…」
「とにかく、僕は凪風流の当主。闇風に手を染め、当主を殺めようとするならば、討たないといけない。そのためにも、この世界にワールドワープした。」
「それで、この世界は?」
「ここは、『地獄少女 二籠』の世界。ある区域の人々は、怨みのある相手を地獄に落とす、地獄流しというものを使い、一人の少年を苦しめている。」
「その子、何か悪いことでもしたの?」
「いいや、むしろ悪いことは駄目だと言っていた人の子供で、地獄流しをやろうとして、止まれるような子だ。」
「それなのに、どうして。」
「余所者だから。彼ら古参の住民には、余所者は悪魔だから、住民全員で苦しめていいという考えがある。」
「酷い話ね。」
「ああ。その子は、悪魔だと言われ地獄流しの理由をその子の所為にしている。」
「酷い話だ。悪魔はそんなことをするそいつらじゃないですか!」
「圭一の言うとおりだ。」
「それなら、そいつらを懲らしめましょう。」
「それは駄目だ。」
「どうして!」
「僕達チームディロードが出来ることは世界を正しく進ませること。それに、奴らはみんなのことを平気で地獄に流す。」
「なら、どうしてこの世界に来たんですか!」
「圭一、落ち着いて欲しい。僕がこの世界に来た理由が話せていない。ディケイドとの戦いは危険だ。たとえ僕が手加減しても、向こうは兄弟なんて気にせず殺しにくる。だから、僕はここで人と戦う術を磨きたい。」
「…わかりました。雅さんの好きにして下さい。俺達はここで待機していますから。」
「理解出来ないことは分かっている。済まない、圭一。僕が守るのは世界の秩序でないといけないんだ。」
雅は外へ出る。すると雅の服はライダーズジャケットに変わり外は夕暮れの丘、家族とは思えない四人組がいた。
「初めまして、私は閻魔あい。説明する必要は無いわね。」
中学生くらいの少女が雅に話しかける。
「それで、僕を呼んだ理由は?」
「俺達も人手が足りていないんだ。」
あいの共の一人、輪入道が話す。
「そこで、あんたに白羽の矢が立てられた。」
一目連が付け加える。
「あんた、私達に協力してくれるかい?この町の奴ら、私達のことも考えず、好き勝手に地獄流しをするから、そろそろ疲れてきてね。あんた、一瞬思っただろ。筋肉が無いのに疲れるのかって。私達だって魂があるの。疲労はくるわよ。」
骨女が説明の締めをくくる。
「どうする?」
「ここまで来て、ノーとは言いません。」
あいの質問に雅は答える。
「雅、早速だけど…」
あいが指を指すと地獄通信にアクセスした男性がいた。
「なあ、本当にあいつを消せるんだよな!?」
「可能よ。貴方が望みさえすれば。」
「なら早くしろよ!」
「雅、行って。」
あいは男性とある程度会話し、雅に指示する。
「…わかりました、お嬢。」
雅がジャケットを締めると、雅の体は深緑色の藁人形に変わる。
「その糸を引けば契約は完了。怨みの相手は速やかに地獄へ落ちるわ。ただし」
「そうか!この糸を引けば二股かけていたあいつは消えるんだな!犯人は悪魔の子になるし、一石二鳥だ!」
男性は赤い糸に手をのばす。
(駄目だ!そんな理由で人を殺してはいけない!)
雅は必死に説得しようとするが、藁人形であるため意思は届かず、男性は糸を引いた。
「怨み、聞き届けたり…」
契約は完了し、藁人形は消える。

「何がどうなっているのよ!」
怨みの相手となった女性は驚いていた。何故なら、今まで一緒にいた弟が骸骨となり、襲い掛かってきたからだ。
「ただ家族仲良くしていただけなのに、男って嫉妬深い生き物なんだな…」
遠くから雅は見つめている。そして…

女性が目を覚ますとあいが漕ぐ舟の上にいた。
「ねえ、これは夢よね?」
「いいえ、現実よ。貴方は地獄に落とされた。」
「何で、どうして私が!」
「さあ?男の人と一緒にいたから?」
「ふざけないで!」
「この怨み、地獄へ流します。」
女性は三途の川を渡ってしまう。

「どうだ、雅。今ならまだ戻れる。」
「いいえ、大丈夫です。」
心配する輪入道に雅が答える。
「これ、何時まで続くんすかね?」
「さあねえ。厄介なのは、私達は死ねないこと。それはここにいるみんながそうさ。」
一目連の質問に骨女は答える。彼女の言うように、輪入道は火車と同一視されることもある妖怪、一目連は刀の付喪神、骨女は地縛霊の一種であるように、それぞれ死ぬことが出来ぬ身であった。
「みんな、呼ばれたよ。」
束の間の休憩をしていた藁達だが、新たなアクセスによって活動する。
「怨み、聞き届けたり…」
「怨み、聞き届けたり…」
「怨み、聞き届けたり…」
「怨み、聞き届けたり…」
「怨み、聞き届けたり…」

夜が明ける頃、四人の疲労は限界にまで達していた。骨女が言っていたように彼らにも心はある。地獄流しと言えば聞こえはいいが、やっていることはただの人殺し。それを一晩で数十となれば三藁や、四百余年生きている雅とて限界はくる。
「雅、お前さんは休め。人間のお前に、これ以上は危険だ。身体を整えろ。」
輪入道の指示で雅は古手神社に帰る。

「…ただいま…」
玄関をくぐった雅はそのまま倒れる。
「雅、大丈夫!?みんな、雅を布団に!」
フェイトは圭一達に指示をし、雅を布団に寝かせる。
「…ありがとう、みんな。」
意識を取り戻した雅は圭一達に礼を言う。
「どうかしたのかしら、雅?」
梨花が質問する。
「流石に、疲労困憊なだけだ。」
「けど雅さん、凄い窶れていますよ。」
「そうか…心配してくれてありがとう。もう大丈夫だ、いろいろと。」
雅は立ち上がる。
「まだ駄目だよ、雅。もう少し休まないと。」
「フェイト、時間が無いんだ。今夜、悪魔の子と言われた少年、紅林拓真君が地獄流しによって殺される。」
「それじゃあ!」
「ああ、最後まで立ち会う。」
雅はそう言って、ワープのアタックライドで夕暮れの丘に向かう。

「どうした、雅。もう平気なのか?」
「お嬢、僕は藁であると同時に人間、つまり地獄通信を扱うことは出来ますか?」
「やろうと思えば可能よ。」
「わかりました。皆さん、このカードに、今叶えたいことを祈って下さい。」
雅は白紙のカードをあい達に渡すそして、
「集まれ、世界の怨み…」
普段とは異なる禍々しい光と共に、ワールドホープが完成する。
【WORLD HOPE-JIGOKU SYOUJO HUTAKOMORI-】
雅はワールドホープを発動する。
「雅。」
あいは雅と同じ深緑色の藁人形を雅に渡す。
「分かっていると思うけど、その糸を引けば契約は完了。怨みの相手は速やかに地獄へ落ちるわ。ただし、人を呪わば穴二つ。貴方自身も死後、地獄へ落ちるわ。それでもいい?」
「地獄へ落ちるか。今更な話です。」
雅は糸を引く。
「怨み、聞き届けたり…」
藁人形は消え、雅との契約は結ばれ、あいは禊ぎを行い、正装に着替える。そして、妖怪としての姿に変わった輪入道に乗り、ラブリーヒルズに向かう。

ラブリーヒルズでは、逃げた拓真を追って自警団が追いかけていた。が、十字路で見失ってしまう。
「悪魔の子め、どこへ行きやがった。」
自警団のリーダー、蓮江が悪態ついていると、お巡りさんに扮した雅が現れる。
「おお、お巡りさん。ここら辺で悪魔の子を見ませんでしたか!」
「悪魔ですか。それは退治しないといけませんね。」
雅はそう言うと、ロードスラスターの峰打ちで蓮江を攻撃する。
「お前、何のつもりだ!」
「ああ、帽子で解りませんでしたか。」
雅は帽子をとる。
「お前は、あの時の地獄少女の仲間!」
昨晩の男が驚く。
「よく鏡を見て見ろ。」
雅の言葉を聞き蓮江達はミラーを見ると、そこにはおぞましい異形の団体がいた。
「ここは真実の間。その人間の真実の姿が映し出される。己の身勝手な都合で人を殺め、それを一人の子供に着せる。悪魔はお前達だ!」
雅はロードスラスターを上手く扱い蓮江達を傷つけないように攻撃する。
「雅もエグいねぇ…」
「きっと、今まで抑圧されていた分が、この惨状にしているんだろう。」
一目連と輪入道は遠巻きに見ている。
「地獄少女の仲間だと思って黙っていればいい気になりやがって!」
ラブリーヒルズの住民達は雅に殴りかかるが、雅は無心で避ける。
「お前達、本当に自分達が悪事を犯したという自覚が無いんだな。」
雅は構わず攻撃をする。すると、
「お、俺達が悪かった!悪魔の子は見逃す!だから助けてくれ!」
蓮江は雅に交渉を持ちかける。しかし、
「断る!拓真君を悪魔の子と言っている時点で信用するわけにはいかない。それに、この地獄流しを依頼したのは僕自身だ。」
雅は交渉に耳を貸すこと無く蓮江を攻撃する。
「しかし、雅も案外大胆だな。まさか怨みの対象をこの地域で地獄流しをした奴ら全員にするとはな。」
「それも、あのワールドホープってやつの力か…」
輪入道の感想に一目連は意見を述べる。
「お嬢、そろそろ。」
「ええ。闇に惑いし哀れな影よ。」
「人を傷つけ貶めて。」
「罪に溺れし業の(たま)。」
雅とあいは片手を重ね、
「「いっぺん、死んでみる?」」
重ねていないもう片方を手をかざし、大量の花が舞い上がる。

そして、ラブリーヒルズの自警団達は舟に乗せられていた。
「おい!ここから降ろせ!」
「いいの?三途の川で溺れても。」
「何でだ!何で俺達が地獄に行かないといけないんだ!」
蓮江は騒ぐ。
「お前達がやってきたことは普通なら大罪だ。地獄流しを利用して悪事の限りを尽くしたお前達には相応しい場所だ。最も、地獄へ落ちるのが早まっただけだが。」
「俺達が地獄に?何のことだ!」
「お前達は遮って聞かなかったが、地獄流しを行う場合、契約した本人も死後、地獄へ落ちる。」
「あれ、本当のことだったのかよ!」
「そうだ。お嬢、後はお願いします。」
【ATTACK RIDE-WARP-】
雅はワープのアタックライドで現世に戻る。
「この怨み、地獄へ流します。」
あいによって、蓮江達は地獄へ流される。

「お前さんとも、お別れだな。」
「はい。僕のやるべきことも終えましたので。それに…」
雅は胸元を見る。そこに地獄少女との契約の印が現れるが、まるで弾けるかのように消えてしまう。
「おや、珍しいこともあったものだ。」
一目連は驚く。
「それでは、不協和音となる僕はここら辺で帰らせていただきます。」
雅は一礼して去る。
「さよなら。」
あいも普段と変わらぬ無機質な言葉をかけるが、その言葉には、どこか悲しさがこめられていた。
「でも可哀相に。あの子、死んでも地獄に落ちることすら許されないなんて。」
骨女は悲しげな表情を浮かべる。
「いくよ。」
あいと藁達はその場を去った。

「圭一、済まなかった。僕が間違っていた。」
帰ってきて雅は言う。
「どうしたんですか?」
「私情に呑み込まれ、あいつらを地獄へ流した。装填の守護者失格だ。」
「雅さんでもそんな風になることがあるなんて…」
「それにしても、随分と禍々しいカードね。」
梨花は地獄少女のワールドホープに反応する。すると、
【SOUL RIDE-JIGOKU SYOUJO HUTAKOMORI-】
世界との別れを告げる時間がやってくる。
『雅、一つ言い忘れていたけど、貴方は死後、地獄に落ちることすら許されないわ。それだけ。』
やけにあっさりと、その時間は終わり、世界はリセットされるが、ワールドホープは消えずに残っている。
「何故、このカードは消えないんだ?」
雅が疑問に思っていると、突然、絵巻が光りだす。
「どうしたんだ?」
雅が絵巻を広げると、大ショッカーに立ち向かう二人の少年少女が描かれていた。

続く

次回予告
「名前は?」

「凪風、雅…」

「どうして思い詰める?」

「全ては、僕から始まったんだ。あの世界も!」

「そこまで責める必要無いが。…望みは?」

「いや、これは僕が自分の手でやらなければならない。」

「それでいい。」

「次回、もう一人のミヤビ」 
 

 
後書き
新カード紹介
地獄少女 二籠(ワールドホープ):地獄少女 二籠のワールドホープで、雅の強い憎しみと怨みによって誕生。雅の契約により、ラブリーヒルズで地獄流しを行った全ての住民の地獄へ流す。このカードは通常と異なる条件でないと消滅しない。 
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