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戦国異伝供書

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第十一話 退く中でその十三

 信長は本願寺もっと言えば寺社の勢力への政も進めていった。その中で伊勢神宮への寄進も行っていた。
 そうしてだ、寄進について帰蝶に話した。
「わしとてじゃ」
「神仏はですね」
「信じぬ訳ではない」
「左様ですね」
「左道や嘘を言う坊主が嫌いなだけでな」
「それで、ですか」
「神仏自体はな」
 決してというのだ。
「信じておらぬ訳ではない、どうもな」
「この世にはですね」
「そうしたものの力も感じる」
 こう己の妻に話すのだった。
「わしはな」
「殿の勘ですね」
「勘というか感じるのじゃ」
「そうしたものの存在を」
「うむ、人の他に畜生もおってな」
「そして神仏もですね」
「おる、無論修羅も餓鬼もおる」
 この世にはというのだ。
「だからあながち坊主達の言うことも間違いではない」
「そしてですね」
「もう一つある」
「もう一つとは」
「魔も感じる」
 こうもいうのだった。
「わしはな」
「魔もですか」
「先の猿夜叉の時もじゃが」
「魔をですか」
「感じてならぬ、気のせいならよいが」
「そういえば黄金の髑髏は」
「左道は左道でもな」
 信長が嫌うそのものの中でもというのだ。
「特にな」
「異様なものをですか」
「感じる」
 そうだというのだ。
「どうもな、それでな」
「感じてですか」
「若しやと思っておる。天下を統一してもな」
「魔をですか」
「祓わねばまことの天下統一とならぬのではないか」
「そうもお考えですか」
「近頃な」
 こう帰蝶に話すのだった。
「そうも思えてきたのじゃ」
「そういえば織田家は」
 ここで帰蝶は信長のその家のことで思い出したことがあった、それは一体どういったものであるかというと。
「元々は越前の神に仕える家でしたね」
「うむ、はじまりはな」
「それが武士に取り立てられ」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「今に至る」
「左様でしたね」
「そう思うとな、わしもな」
「魔を祓うことは」
「当家の務めやもな」
 天下統一の中でというのだ。
「そううあもな」
「やはりそうお考えですか」
「神仏はおってな」
「そして魔もですか」
「おる、それでじゃが」
 さらに言う信長だった。
「また言うが本願寺についてもな」
「決してですね」
「戦をしたい訳ではないのじゃ」
「穏便に済ませて」
「それで終わればよい」
「そうお考えですね」
「穏便に終わってな」
 そうしてというのだ。 
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