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こんなチートでもありですかい?そうですかい。

作者:わいわい
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第23話。死徒と使徒。

side シオン・エルトナム・アトラシア



シオンは異様な光景を目のあたりにしていた。

見た目12、13歳の少年が釘を打った黒塗りのバットと体術を駆使してで死徒二十七祖を圧倒している。

驚いている一方で、分割思考を働かせる。死徒が漏らした言葉。



アポストロス



確かそれは・・エルトナムの家で見た文献で・・・・



SIDE OUT



おほー。今日は調子いいわー。飛んでくる火の弾を避けながら接近する。

左手でバットを持ち、顔面目がけて振う。ガードされるが左の脇腹に神速の右ミドル一閃。スフィアの体がくの字に曲がる。

右ジャブで顔をあげさせ、左打席でフルスイング。ちなみに俺は右投げ両打ちです。

吹っ飛ぶスフィアに並列になって走り、左足で床に叩きつける。ドラゴンボールかっ!って感じですね。

再び顔面目がけてバットを振う。おっ、今度は刺さったか。

頬を貫いた釘を、右手を内にまげて口内で絡ませる。

「オイショッ!」
「グガッ・・・・」

勢いよく引っ張って強引に立ち上がらせる。右手を元に戻し、少々強引に釘を引っこ抜き、再びフルスイング。

クリティカルな手ごたえを感じながらのフォロースルー。スフィアは弾丸のように吹っ飛び、壁に激突。

壁は大きなクレーターの様な穴を開け、その振動は屋敷中に伝わる。この部屋に吊るされていたシャンデリアはユラユラと大きく揺らめき。

最後には落下した。

ガッシャーン!という大きな音をあげながら部屋の中央に落下。

電気でなくろうそくを使用していたためか、火が絨毯に燃え移り、炎は熱と光を与えてくれる。

ピクリとも動かない死徒。警戒しながら近づいて行く晋吾。

「晋吾!!」

シオンの呼ぶ声が聞こえるが、その前に晋吾は行動を開始していた。

不穏な空気を察知して横に身を投げる晋吾。元いた場所には、何故か部屋中央にあった炎があった。

「なんや?部屋中央にあった火が移動しとる?」
「彼は紅蓮皇帝。火の操作はお手の物です。」
「紅蓮皇帝・・グレンエンペラー。いやグレンカイザーやな。グレンダイザーみたいや。いやダイザ―版カイザー的な・・」
「晋吾?」
「えほぉん、えほぉん。なんでもあらへんよ。」

揺らめく炎を前にして死徒は立ちあがる。

「舐めていたのかもしれんな、所詮人であると・・・・」

スフィアが手をかざすと、炎を蛇の形をしたものに変え、晋吾を襲う。

晋吾は避けようととするが、蛇は首を常に晋吾の方を向き、追ってくる。

「ホーミング!?ならば・・・・ゴォオッドスラッシュタイフーーン!!」

晋吾は左腕とバットを持つ右腕を伸ばし、独楽のように回転する。

しかし、その回転速度は凄まじく、迫りくる炎をかき消し、足元に引いてあった絨毯に焦げ跡とともに穴を開ける。

「そのようなまやかしは効かんぞぉお!!」

シオンは唖然とし口をあけ、口内を晒しながら分割思考の一つを使って回転速度やらその回転からの遠心力やらそこから発生する全エネルギー値やらを計算し、そんな馬鹿なことが!と現実に怒った。

スフィアは気が狂ったかのように笑う。笑う。笑う。

「ハハハハハハハハハハハハッ!そうか!これが『使徒』か!混血でも人外でも英霊でもなく!ただ!ただ人の身で!!フヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

しばらく笑い続けた後、肩を上下させながら息を整える

「ふぅふぅ、すまない。下品に笑い過ぎた」
「律義なやっちゃなー」

フッ、っと笑いながら前髪を指で撥ねて取り繕う。

「全く持ってすまない。舐め切っていたよ、宇宙そらを相手にすると言うのにだ。」
「そら?」

シオンは死徒の言うことを理解できない。晋吾は確信した。コイツ、俺の正体、分かってるな。

「人類の最後の守護者ラスト・ガーディアンたるあなたには余の存在は認められないだろう。だが、余も黙ってやられる訳にないかんのだよ。これは種としての当然の行為だ。生きると言うね。」
「それはそうやろ。だが、『可能性』を摘むお前の様な存在は我慢ならんのや。」
「・・・・そうか。あなたは人類に可能性を見出しているのだな。」
「人はいつかは親離れしなければあかん。この母なる地球からも・・重力と言う名の手を借りずとも、人は歩かねばならんのや」
「それがあなたの想いか。」

スフィアは両手を広げ、宣言する。生への執着を。

「想いが相容れない種と種は争い、勝利しなければないない。だから、私は私の『可能性』賭けよう。あなたの想いを・・大いなる意思を超えると!!」

スフィアの体から魔力があふれ出す。晋吾ですらひるむ威圧感。彼の目は紅蓮に染まっていた。その魔力に共振するかのように屋敷が揺れ始める。

「っ!晋吾!させてはなりません!!」
「もう遅い!!」

シオンが何かに気づいて慌てて言おうとするが、それを塞ぐかのようにスフィアが叫ぶ。

晋吾は何が起こるか分からなかったが、咄嗟にシオンを抱きかかえた。

「固有結界―紅蓮なる地の獄イグニートプリズン・インフェルノ―」

そして世界は紅蓮に染まる。









そこは灼熱地獄さながらであった。

足を着く地面は無く、一面マグマ。空は黒く、まるで本当の地獄に居るようであった。

熱気が肌を焼き、開けている目や、息をするたびに気管が痛む。

そんな中で晋吾はいた。地面もない所に彼はいた。シオンを出来るだけ外気に当てないように抱きかかえながら、灼熱のマグマを『走っていた』

沈む前にマグマを蹴り、足を出す。水の上ですら走れる彼にとって粘性が高いマグマの方が容易であったが・・・・

靴は溶け、魔力に覆われた足は『炎症』をおこして痛みだす。ここまで来れば分かる。

落ちたらシオンは確実に死ぬ。おそらく、俺でも・・・・

魔力で覆っている晋吾にとってみればマグマは兎も角、この『紅蓮地獄』の熱気はどうということはないが、シオンにとっては致命傷になりかねない。

しかし、今だにシオンはその白い肌を保っている。これは晋吾が咄嗟に張り直した魔力によって『シオンごと』覆って守っているのだ。

だが、晋吾とシオンの表情は優れていない。この状況で襲われでもしたら・・・・

スフィアの姿は見えない。探す晋吾。それに答えるかのように

マグマの中から姿を現す。

白目まで紅蓮に染めた眼まなこはまさに化け物そのもので、マグマの中から来たにも関わらず、何も変わっていない服が異常感を漂わらせていた。

そんな彼が手をかざすとマグマから、5つの竜の頭を模したマグマの竜が首をもたげる。

「行け、熔解せし火竜よ!」

迫りくる火竜。避けようとするもマグマが地ではうまく動けない。

「晋吾!離してください!!このままでは二人ともっ!!」
「・・・・っ」

晋吾は一撃必殺の意を決して、シオンを高々と放り投げる。そして強く蹴りだし一撃を・・・・

ボコッ

そんな音が時が止める。シオン、晋吾ですら驚愕の表情。足場として使ってきたマグマが、音とともに気泡と化す。

それは地面がなくなったのと等しかった。

「ここは余の世界。勝手に地に足をつけてはならんぞ?」

スフィアの会心の笑みに「糞が。」と悪態をつきながら、晋吾は灼熱のマグマに身を抱かれる。

「晋吾――――――!」

シオンの絶望の声は晋吾には聞こえない。相棒は灰と化し、服は燃え、毛が焦げる。晋吾はただマグマに沈むだけでなく、スフィアが生んだ火竜の体当たりをうけ、体を痛めつけられる。

だが死ぬほどの痛みであるが『死』と言う言葉はリアリティにかけていた。

晋吾は『寿命』と言う言葉を信じている。病気、事故、老衰。死因は違えど死んだらそれが寿命であると。

かつて死んだ晋吾が冷静でいられたのは、晩年であったことも一つの理由にあるが、死んだと言うことは「寿命であった」それだけであった。

いままでの彼であったならば、この場は寿命が来たと言って諦めていただろう。

ここが死に場と言っても過言ではない状況。何故こんなにも死をイメージしない?いやイメージしたくないのか?





『シロちゃん。どうしてももうダメだーー死ぬわーーって時はどうする?』
『?うーん。諦めないかな?どうにかして足掻く。』
『ふーん。』
『お父さんとお母さんがさ、俺達が大人になる前に死んじゃったからさ。俺はそうならないようにするんだ。』
『・・・・シロちゃん。』
『まぁ、それ以前に、俺が諦めが悪いだけさ。俺はニイさんみたいに才能がないから、泥臭く生きるんだ。どんなことにでも、俺は簡単に諦めないよ。ニイさん。』





シロちゃん。・・・・士郎。そうさ。俺だってっ。

お前を残して・・・・死ねるもんかよ!!









テトラクテュス・グラマトン

そんな言葉が脳裏に浮かぶ。神の名を示した四つの子音。神の法の執行者。

何故この言葉が浮かぶか疑問に思うが、神が創ったものだからか、通過儀礼のものなのか知れない。



人から『使徒』へと変わる儀式。





「テトラクテュス・グラマトンッ!」





体から魔力があふれ出す。肉の器に内包されていた魔力は、歓喜に沸くかのように銀色の光を発する。

その光は自らの光を分散させ、プリズム光をところどころに彩らせる。

「っ!」

晋吾はシオンに向けて手をかざす。するとシオンのを囲む光の球体が出現する。

シオンは驚くが、先ほどまで肌を熱していた熱気を感じなくなったことを知り、この球体は自分を守ってくれるものだと理解した。

晋吾はさも当然がの如く宙に浮く。

「肉の器から解放したか!?アポストロスッ!!」

スフィアの声に答えマグマはうごめき、大津波を起す。

晋吾はその手に銀色に発光する魔力を集め、剣の様な形をなす。

「おぉおおおおおおお!!」

鞭のようなしなりをしながら振われる剣は、大津波をまるで『無かったかのように』かき消す。

「なんだと!?消された?いや・・排除された!」

驚くスフィアを尻目に、晋吾は両手を組んで真上にあげる。そして魔力をその腕ごと覆うように剣を練る。

そして・・・・伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。

シオンは、スフィアは、ただただ、その伸びる光の筋を見上げていた。

ピシリッ

そんな音が聞こえた。

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

ピキッ。ミシミシメキ・・・・・

そんな音を聞きながらスフィアは絶望していた。余が・・・・我が心象世界が、死ぬ?

何かが割れる音が、自らの心を割っている音のように幻想し、まさに天から降る神柱のような、銀色の光を眺めていた。

「星屑に抱かれて消えろ!スフィア・ヘリオポーズ!!」

その瞬間。世界は銀色に彩られる。









眼を開ける。体の痛みは消えていた。この体は回復力も凄いようだ。今まで怪我したことすらなかったから知らなかった。

元の屋敷に戻ってきた。魔力は再び体内に閉じたようだ。スフィアの存在は見当たらない。

「っ!そうだ!シオン!!」

急いでシオンを探す。少し遠くにだが存在を確認。

「良かった。無事・・・・うっ。」

シオンの姿は・・酷かった。数秒であるが、あの熱気の中にいたからであろう。

肌は真っ赤にただれ、全身水ぶくれ。全身に重度のやけどを負っていた。

「シオン・・クソッ!どうにかせんと・・・・」

こんなことになるなら、回復系の魔術でも習っておけばよかった。

しかし、自分に悪態ついてもどうにもならない。知識・記憶を総動員させ、解決策を探る。

「・・・・姉ちゃん達の所に運ぶににしても時間がない。その前にシオンが・・それに間に合ったとしても、姉ちゃん達が直せなかったら意味がない。」

俺に出来ることは・・・・

そう考え、ある出来事を思い出す。それはイリヤと話している時であった。

「なあなあ。ドラゴンの血を飲むと不老不死なるとか、なんでも効く霊薬だってほんとなん?」
「私は飲んだことないから知らないけど」
「のんでたらビックリやわ。」
「そうだって言われてるわね。いきなりどうしたの?」
「いやな。俺の血とかどうなんやろ?って思って。」
「・・・・そうね。極上の魔力が詰まってるんですもの。余裕じゃない?」

俺の・・・・血。

手段は決まった。後は方法だ。問題はどうやって『キズをつけるか』だ。

ひとまずガラスを割って持ってくる。そして右手にガラスの破片を握り、魔力を固める。

「まさか・・自分で矛盾したコトやることになるとわなっ」

勢いよく左手の掌に突き立てる。左手だけ解除。そんな器用なこと出来たら苦労しない。

魔力硬化で覆われた掌に、魔力硬化したガラスの破片で攻撃。なんてバカなことをしているのやら。

真剣な表情で掌を打ちつける晋吾の表情は、いつもの飄々とした顔と打って変って、鬼気迫るものがあった。

何度も何度も打ちつけ、諦めかけた時

「っ!」

痛みを感じた。

ツー・・ポタ

ごく少量であるが、掌からシオンの口に落ちる赤い雫。

晋吾は固唾を飲んで様子を見る。・・・・が

「はは、はははははっ」

見る見るうちに、治っていくシオンの顔を見て、苦笑いにも似た笑みを浮かべる晋吾。

「ホンマに、チートも大概にせーやって感じやな。シオン。」

ほっっと安心しながら、現在全裸である状況に、再び苦悩する晋吾であった。









ようやくホテルに戻ってきた晋吾です。シオンはベットで眠っております。

あのあとシオンを背負い、屋敷を出て、某蛇のようにスニークングするかと思いきや、途中で干してあった洗濯物を拝借。

普通に帰ってこれました。親父は「その子どうしたの?」と質問攻め。息子が朝まで帰らんかったのに女のことばかり聞きやがって。

アレ?朝まで帰らない?・・・・朝帰り。女づれ。・・・・おk。分かったよ親父。違うんだって、そうじゃないんだって。

しばらくしてシオンが目覚める。そして事情説明。・・・・めっちゃ怒られた。

すごく心配してくれてることが分かったので素直に謝った。ごめんな親父。

シオンはもう行くとのこと。体調を気遣ったのだが、最高に絶好調らしい。・・・・すげぇな俺の血。

「ありがとうございます晋吾。私一人ではどうなっていたことか・・・・」
「なに。俺はやりたいことをしたまでじゃ。」
「それでもありがとう。」

差し出された手を握る晋吾。

「おう。日本に来た時は、俺を呼んでくんろ。力になるさかい。」
「・・・・ええ。その時は、是非」

そうしてシオンと分かれた。今回の件はシオンが事後処理をしてくれるらしい。

なんでも教会とかに説明が必要だとか。シオンがいてくれてよかったわー。

ノリで力になるとか言ってしまったが、まぁいいだろう。

彼女とはまた会うことになる。今度も大変だろうが、任せろ。

友人が困ってるときぐらい、手を貸すのは、友人として当たり前だろ? 
 

 
後書き
実はアポストロスのコンセプトは、

人間版イデオン

だったりする。みんなイデオン知ってる?知ってるよね?
最後はほぼイデオンソード。ちなみに俺はイデオンガンよりソードの方が好き。

一応死徒戦はこれにて終了。次回もイタリア編。シオンの事後処理と、バチカン観光がメイン。それではまた次回。 
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