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お父さん

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第二章

「戸籍もその様にです」
「してですね」
「本当の年齢はわからないですがお医者さんの診察を受けて」
「確か幼稚園からでしたね」
「その時から通わせています」
 教育の場、そこにというのだ。
「そうしています」
「そうですか」
「わしもあの子のことは知りません、わしのことはお爺ちゃんと呼ぶだけです」
「それだけですか」
「はい、本当に何も知りません。ですが」
 それでもと言うのだった。
「一緒に暮らしています。身寄りのない子なので」
「だからですか」
「この家にいてもらっています」
「いてもらって、ですか」
「わしは妻に先立たれて子供も海外に行って」
 そうしてというのだ。
「独り身なので」
「ヒナタさんは」
「家族ではないですが」
 それでもというのだ。
「一緒の家にいてくれる」
「そうした子だからですか」
「嬉しく思っています」
「そうですか」
「何を聞いてもああした調子ですが」
「こちらにはですね」
「毎日帰ってきてです」
 そうしてというのだ。
「五時に帰る様にいつも言ってますが」
「その五時にはですか」
「絶対に帰ってきて御飯を食べて風呂に入っています」
「そうですか」
「わしが食べさせて入らせていますが」
 子供なのでそうしているというのだ。
「そして同じ部屋で寝ています」
「親子の様にですね」
「孫よりも幼いですが」
 自分のそれよりもというのだ。
「そうして暮らしています」
「そうですか」
「あの子のことは本当に何もわかりませんが」
「一緒に住んでいて」
「育てています、この歳ですが」 
 老人は自分が高齢であることも述べた。
「ずっと。あの子がいいと言うまで」
「お二人で、ですね」
「暮らしていければと思っています」
「何でしたら」 
 先生は老人に一歩踏み出す様にして提案した。
「貴方が」
「役所に言ってですね」
「親御さんになられて」
 つまりヒナタを養子に迎えてというのだ。
「育てられては」
「そうも考えていますがあの子に聞くと」
「そうなれば」
「やはりいつもの様に言うでしょう」
 わからない、と言うというのだ。
「そうなるでしょう」
「だからですか」
「はい、ですから」
「聞かれませんか」
「今は。ただ」
「それでもですね」
「何時かはと考えてはいます」
 こう先生に述べた。 
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