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駅にて

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第三章

「それでも」
「プラットホームやお店、通路に階段、改札口もだな」
「全部絵になりましたね」
「人々もな」
「何かを撮影するならな」
 それならというのだ。
「他の場所もだ」
「撮影することですね」
「折角駅に来たのに鉄道だけでは勿体ない、女の子もだ」
 ここで先輩はまた彼の浪漫を語った、決して撮影しないというそれを。
「顔だけはない、胸やウエストにお尻、腋、太腿、うなじ、膝の裏等もな」
「先輩またそれですか」
「そうだ、全体を見てだ」
「部室でお話したみたいにですね」
「浪漫はあらゆるところにあるのだからな」
「私女の子ですから」
 極めて冷めた目でだ、郁美は先輩をジト目で見つつ突っ込みを入れた。
「興味ないです、というか本当に撮影したら」
「その時はか」
「容赦なくです」
 それこそと言うのだった。
「警察に通報しますから」
「だから撮影しないから安心してくれ」
「だといいですけれど」
「とにかく今日は君も満足したな」
「心から。また撮影したいです」
「それはいいことだ、では次は私が一緒でないかも知れないが」
 それでもとだ、先輩は郁美に話した、これまでいた駅を遥かに過ぎた列車の中で。
「またあの駅なりな」
「他の駅にですね」
「鉄道が撮りたいなら行くといい」
「わかりました、また撮ります」
 確かな声でだ、郁美は先輩に答えた。そのうえでだった。
 郁美はまた鉄道を撮ろうと心に誓った、そうして今は帰路を電車で進んだ。どうにも困ったところもある先輩と一緒だったがそれでも今日は多くの場面を撮影出来たことに心から満足出来た。それ故の誓いでありその誓いを果たそうとも思いつつ今は帰るのだった。


駅にて   完


                 2018・9・19 
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