| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

FILE74 ラフコフ討伐戦 激論!

2024年8月某日。攻略組によるラフィン・コフィン討伐会議が行われていた。討伐部隊の指揮を執るのは聖竜連合の幹部で、攻略組屈指の壁役(タンク)のシュミットであった。
既にこの時点でラフコフ結成から8カ月、犠牲者の数は推定100人以上。本来であればもっと初期にその手段が取られても不思議ではなかったが、それが八ヶ月も掛かってしまったのはラフコフのアジトがどうしても突き止められなかった事によることであった。 by立木ナレ



シュミット「事前に言った通りだ、ラフコフの連中のアジトの所在が判明した」

アスナ「シュミットさん、まずはアジトの所在に関する話から聞かせてもらえるかしら?」

討伐部隊の指揮を執るシュミットに対して、血盟騎士団副団長のアスナが詳細な説明を求めていた。その疑問は恐らく、この場に集まっている多くの者達が同時に感じた疑問だろう。
この場にはシュミットやアスナの他にも風林火山のリーダーのクラインとその仲間達、俺達MBTからは俺とレイナとエルダの主力3人が、そしてソロプレイヤーのキリトとマオも依頼を受けて参加が決まっていた。

アスナの申し出と言う事もありシュミットは首を縦に頷き、ラフコフのアジトがどのようにして、何処にあったのかを話し始めていた。

シュミット「奴らのアジトはとっくに攻略された低層フロアのダンジョンの――上層に繋がるタワーではなく、小洞窟の安全地帯を根城に使っていたんだ。それこそまるで、デザイナーが配置だけ忘れたんじゃないかって思うくらいのな……」

アスナ「道理で見つからないわけね……」

シュミットの説明を聞いたアスナは迂闊だったと、自分の見落としも責めている様子で歯を食いしばり、険しい表情を浮かべていた。

エルダ「見つからないのも無理ないわね、攻略組プレイや^は基本的に迷宮区タワーの攻略しかしないんだから」

マオ「中層のプレイヤーだって、人が多いダンジョンにしか潜らないわね……長い間中層プレイヤーに甘んじてた私なら大体その辺は理解できる」

俺「まあ、中には偶然にその洞窟を見つけて、立ち入っちまったプレイヤーもいただろうけど、それでも今までその情報が洩れなかったって事は――――」

レイナ「……彼らは、口封じに消されてしまった。ラフィン・コフィンの手によって」

まさに、その通りだろう。この場合はラフコフのアジトを偶然発見できたことは幸運どころか、とてつもない気の毒な不幸としか言いようがない。

そして、この巧妙に隠されたラフコフのアジトがなぜ、今になって発見されたのか問題になって来る。そして、その俺も感じていた疑問はアスナも即座にシュミットに対して説明を求める事となる。

アスナ「シュミットさん、何で今になってそんなところにラフィン・コフィンのアジトが隠されていた事が判明したの?攻略組から依頼されたアルゴさん達、情報屋の人達は第一層から始めて全ての大型家屋をしらみつぶしに調べて行っても見つかったのは幾つかの中小規模のオレンジギルドのアジト程度だったのに……」

シュミット「実は……な」

シュミットは固く緊張した面持ちの表情を浮かべながら、一息ついてからその先の予想外の理由を口にする。

シュミット「内部告発なんだ……」

アスナ「なんですって……!?それはつまり、連中の中の誰かが、私達に自分たちのアジトの場所の情報を流したって言う事!?」

シュミットの口から発せられた密告による情報の流出という、信じ難い理由を聞いたアスナがあり得ないと言いたいと言わんばかりの驚嘆の声を上げていた。そう思っているのはアスナだけではないだろう。

クライン「おいおいシュミットさんよぉ、その密告の情報ってガセの可能性とかじゃねぇんだろうな……?なんだって、今になって殺しを楽しんでた連中の仲間がそんな事仕出かしたってんだよぉ!?」

風林火山のリーダーのクラインもそれがガセ情報、或いは何かしらの罠であると疑い、シュミットに詰め寄ろうとしたが、その前にシュミットが口を開いて言葉を発する。

シュミット「殺人の罪悪感に耐えかねて、メンバーの一人が密告したようだ」

クライン「だからそれがぜってー怪しんだって!せめて本当にそこが連中のアジトなのかしっかりと確認をだな―――」

アルゴ「それなら間違いはないみたいだゼ」

興奮気味になっていたクラインの言葉が止まったのは、アルゴが唐突に話に割り込み、ラフコフのアジトがガセ情報ではないと断言したからだった。

キリト「アルゴ?そうか、お前、ラフコフのアジトの情報が正確かどうかを確認する為に偵察に行って来たんだな?」

キリトがそう見なして、問いかけるとアルゴは左手親指を立ててニッと笑みを浮かべながら答える。

アルゴ「こー言うのは、少数精鋭で隠密行動でやる事が肝心だからナ。それにあらかじめオレッちが行ってくるなんて言ったら、キー坊とかが反対したり付いてきちゃったりするかもしれないしナ~」

エルダ「けど、アルゴさんが調べて来て、間違いなくラフコフのアジトだって断定できるっていのなら、信頼できそうねその情報」

アスナ「そうね……密告者の心中は理解し難いけど、それなら私もその隠し場所が、ラフコフのアジトだったって話を信用するわ―――クラインさんもそれで良いわよね?」

クライン「あ、ああ……それなら俺も納得するぜ」

アインクラッドで一位、二位と言われる情報屋のアルゴからのお墨付きと言う事もあり、アスナもクラインもガセ情報ではなかった事を信じる事になった。

シュミット「出来る事なら、作戦実行は早急に行いたい。この討伐作戦も極秘に極秘を重ねて行っているつもりだが、万が一何かしらの拍子に情報が洩れて奴らに伝わりでもしたらと思うとどうなるか考えるだけでも恐ろしいからな……」

アスナ「そうね、考えられるのは速やかにアジトから姿を消してもぬけの殻になっているか、或いは私達を迎え撃つ準備をしているかになってしまうわ」

シュミット「そうならないように、奴らが戦闘の態勢を整える前に、一瞬にしてアジトを制圧して戦いに持ち込まれる前に全員を無血投降させるのが望ましいと俺は思う」

それは無論だった、いかに連中が大勢のプレイヤーを殺害した危険な殺人ギルドの者達だろうと、報復として皆殺しで殲滅なんて真似が許されるわけがない。


そんなオズマの考えは、おおむね当たり前で大前提……だが、いつの世にも……そして、どんな場所にも異端の考え、異端の意見、所謂……ずれた考えの者達は少なからず存在するのも事実であった!そしてそれは、このラフコフ討伐鍵の場においても例外ではない! by立木ナレ


「無血投降だと……生温いぞシュミット!!」

怒りを孕んだ声でそう、怒気を捲き散らしたのはシュミットと同じ聖竜連合の主力の両手剣使いのプレイヤーだった。
名前は確か、オックスだったはずだ。オックスは表情からして既に殺意で身を焦がしていそうな剣幕でシュミットを……そして、俺に対しても怒りに満ちた視線を向けて更に声を上げる。

オックス「他の連中もだぞ、そんな事で良いと本気で思っているのか……?奴らによって……殺された者達の事を考えろ!奴らの罪の重さを考えれば無血投降などあり得んだろ―――ラフコフは殲滅だ!根絶やしだ!一匹たりとも生かさん!」

シュミット「ま、待たないかオックス。皆殺しだって……?」

シュミットは怒りに身を任せて正気とは思えないような事を言ってのけるギルドメンバーを宥めようと、叱責しようとするのだったが、オックスの勢いは収まる事無く、更に殺意の籠った言葉は続く。

オックス「当然だろう!俺は奴らに対して慈悲など与えんぞ……!」

まただった、オックスの怒りと嫌悪の籠った視線が俺に向けられている。そして、オックスが俺に対して不快感や敵意を抱いている事が決定づけられる一言が当人の口から発せられる。

オックス「特に、そこのMBTのオズマ……貴様の様に幾度も連中と対峙しながら、不殺蓮千撃などと言う技で奴らの息の根を止める事を躊躇しているような貴様の様に俺は甘くないんだ!」

俺「まあ、俺がアイツらを尽く逃したことがあるってのは否定はしないがな……」

オックスが俺を名指しで非難すると、レイナが珍しく眉をひそめて反抗心を剥き出しにしそうになるが、先に俺が苦笑いを浮かべながらそう言い返して、レイナを制しておいた。
そんな俺に対してオックスは更に怒りに火が灯ったのか、『貴様ぁ……!』と唸り声をあげて喚き散らそうとした矢先に、今度は血盟騎士団の中から、オックスを叱責する女の声があがったのだった。

「いけません――――間違っているのは貴方ですよ、オックスさん!」

アスナ「イ、イオナさん?急に何を――――?」

女性の声ではあったが、その血盟騎士団のメンバーはアスナとは別の、数少ない女性メンバーだった。他のメンバーと同様に白と赤を基調とした騎士服だが、アスナのようなスカートタイプの衣装ではなく、まるでシスターを思わせるような修道如をイメージさせるデザインの姿をした、成人女性と思わしき血盟騎士団メンバーだった。

レイナ「……確か、あの人も納刀術スキルの持ち主だった」

俺「そうなのか?……納刀術スキルはユニークスキルじゃなくってエクストラスキルだから、俺以外にも持ってる奴がいても全然不思議じゃないが―――実際に俺以外の使い手を見るのは初めてかもな」

イオナと言う血盟騎士団の女性メンバーは何度か見た覚えはあるが、フロアボス戦に何度も参戦しているような人物ではないので、俺は詳しい事はあまり知らない相手だった。

オックス「なにをっ!?何者だ貴様!!」

そして、凛とした表情でオックスを間違っていると断じるイオナに対して必然的にオックスの敵意は彼女に向けられた。
しかし、イオナは全く引く事無く、芯の強さを感じさせる凛々しい面持ちのままオックスを見据えて口を開いた。

イオナ「ラフィン・コフィン、確かに彼らは罪深き存在です……多くの罪なき命を奪う事は、例えここが仮想現実の世界だからと言って、断じて許される事ではありません。この世界での死が現実世界での死に繋がるのであれば猶の事です!ですが―――だからこそ、命で償わせる事はあってはならないのです!」

オックス「馬鹿を言うな!命での償い以外などあり得るか!ならば奴らに他にどんな償いの手段があると言う……?何かあると言うのなら言ってみろ!!」

オックスから激しい反発を買い、反論を受けるイオナだったが、彼女はまるで―――慈愛に満ちた見た目通りの、シスターであると言わんばかりの雰囲気を纏い、俺ですら正気を疑う事を語り出すのだった。

イオナ「彼らが為すべき真の償い……それは、言うまでもなく心からの改心ですわ」

オックス「こ、心からの……改心だとぉ?」

アスナ「イオナさん……残念だけど流石にそれは―――」

アスナは『あり得ないでしょうと』言いかけたのだろうが、その先の言葉は何とか言い留まっていた。オックスに至ってはまるで救いようのない女でも見ているかのように、額から汗を流して目を大きく見開いて驚嘆する始末。
ラフコフの連中を何度も殺さずに逃したことのある俺ですら、イオナの言葉は現実離れした……例えばそう、陰湿な小学校の虐めの現場を目の当たりにしながら、子供は天使だとか本気で思い込んでいるような御目出度い思考の奴を見ているような気分にさせられたのだった。


ぶつかり合う者達――――ラフコフ討伐戦を巡り、殲滅か?無血投降か?はたまた、改心を信じるとでも言うのか!?
討伐戦開始前にして、ラフィン・コフィンを巡る騒動は混成を極めるのであった! by立木ナレ 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧