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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE72 失った仲間達、消えぬ憎しみ

ただでさえ、ギルドホームを買えるかどうか、危うい状況隊になっているという状況に、一人の女性プレイヤーがこんな事を言いだしていた。

「突然だけど、そのホーム。私達も買い取りに名乗りを上げさせてもらおうかしらね?」

「って、何勝手に名乗り出てるんだお前……!」

三人組の男女だった。いずれも私達と同年代の男女―――けれど、三人とも私とは比較にならない美男美女の三人組だった。
それも多少は私の苛立ちを刺激したのかもしれないけど、私はギルドホームを買う計画を邪魔する輩が増えたと考えると、更に怒りがこみ上げて声を荒げる。

私「ちょっと何なのよアンタ!?さっきの連中と言い―――アタシ達の邪魔しないで!」

「買わねーよ!俺達は別にギルドホーム買う予定何て何時そんな話をしたんだ!?」

どうやら、金髪の細剣を持った女の子が勝手に話に割り込んだような形だった。ところが彼女は右手を広げて彼を制止するような動作を見せてから、楽しげな表情で更に勝手に話を続ける。

「はいはい、私の話はまだこれから―――それでね、お二人さん。貴方達にはホームの購入権を掛けたデュエルを辞退してもらえるかしら?」

ケイタ「そ、そんな―――」

私「冗談じゃないわよ!いきなりしゃしゃり出て来て、辞退しろなんて!」

そして――彼女は私たち二人を交互に見渡して、ニヤッと不敵な笑みを浮かべてから口を開く。

「ねぇ、君達。アタシらのギルドがデュエルで勝って、ギルドホームを購入したらさ――購入額+何かしらのレアアイテムでホームをアタシ達から買ってくれないかしら?」



※ ※ ※



その女性プレイヤー、エルダの提案はこうだった。
自分達のギルドもホームを購入する権利を掛けてデュエルに参加する事。そして更に、私達二人にはデュエルを辞退し、自分達が勝利した場合、ホームの購入に掛かった代金+特定のアイテムを幾つかで買い取ると言う提案、つまり……これは私達が適当なお金をアイテムを報酬にして、実質この三人の誰かにデュエルの代役を頼むような事だった。

正直、彼らにこんな事を頼んでいいのか不安だった、代役を請け負っておきながら負けてしまっては、私達はこれで本当にギルドホームの購入を諦めなければならなくなってしまうのだから。
けれどケイタはこう言った。

ケイタ「止めようマオ。どっちにしろ、僕たちじゃ勝てる可能性はかなり低いんだからさ。それならここは、この人たちに僕らの希望を託すのも選択肢の一つなんだと思うんだ」

リーダーのケイタがそこまで言うのならと、私もそれ以上は何も言わずに、突然現れた連中が重装戦士達とのデュエルに勝利してくれることを願った。
三人の中でデュエルを引き受ける事になったのは、リーダー格らしきイケメンの片手直剣使いの少年のオズマだった。
イケメンだったけど、微妙にダメ人間オーラを放っているように見える彼に不信感を拭えないまま、私とケイタは群衆にまぐれて姿を隠していた。

そして、間もなくオズマと重装戦士のデュエルが行われて―――オズマは呆気なく、勝利を収めた。私達が見たことの無いようなソードスキルを駆使し、中層のプレイヤー達の間では修得者が殆ど存在しない納刀術と呼ばれる、剣を鞘に納めたまま攻撃できるエクストラスキルの持ち主であったオズマは、ソードスキルの4連続コンボという離れ業を披露してみせたのだった。

その光景を見て、私はオズマの実力を少しでも疑った事を思わず謝っていたのだった。

ケイタはオズマ達に何度も、何度も嬉しくてお礼の言葉を口にしていた。そんな矢先奴らが姿を現した。

ガチャモン「くすす、ケイタ君ったら手に入れたばかりのマイホームを見て、感傷に浸っちゃってる。本当におじさん臭いな~」

モック「家の内装の事でしたら、内装に軽くハマってる私、コーディネーターモックにお任せくださいですぞ――――!!料金は後払いのローン支払いでも結構ですからな~」

せっかくの晴れ晴れとした気分に水を差されて腹に立った私は、コーディネーターを勝手に自称したモックを罵り、睨み付ける。
そしたらモックは、まるで理不尽だとでも言いたいばかりに地団太を踏みながら喚きだす。

モック「し、し、失礼なぁ!私のセンスを先入観でバカにするなんて聞き捨てなりませんぞ!」

ガチャモン「ああ、それに関しては僕もぶっちゃけ、向いてないと思うんだよね」

モック「が、ガチャモン!?」

ガチャモン「だってさ、家の玄関の前にサボテンとか、天井にむさ苦しいgiant馬場の上半身裸体のポスターとか貼ってるんだよ~、むしろ迷惑料を取りたくなるくらいだよありゃ~」

モック「とほほ……こ、ここまでボロクソに言われると、もう、本当に内装コーディネーターの看板は下ろそうかと思っちゃうじゃないですか~」

悲し気に床に顔を向けるモックだけど、別に誰も奴の事を内装コーディネーターだなんて思ってない。

ガチャモン「そんな事よりもモック!ついにケイタ君がギルドメンバー達の協力もあって、ギルドホームを買ったんだから、お祝いしてあげなくっちゃ!」

モック「おお、それはおめでたいですな!マイホームのご購入、おめでとうございます!何かコメントはございますでしょうか?」

モックはすぐに立ち直ると、まるで取材でもしているかのように、マイクをケイタに向けるが、ケイタは当然迷惑そうな表情でマイクを押し返していた。

ケイタ「お前たちに祝ってもらっても嬉しくないよ……それとコメントもノーコメントで」

私「せっかく最高の気分なんだから邪魔しないで!」

私は心底軽蔑する相手に対して向ける視線でにらみつけるけど、2人はまるで楽しそうに、お互いに顔を見合わせると―――

ガチャモン「くすくす、最高の気分だってさモック」

モック「ぐほほ、さぞ清々しい気分でしょうなガチャモ~ン」

気持ち悪くお互いに笑い合いながら、意味の分からない会話を始めていた。そんなガチャモンとモックに対してエルダが訝しむような表情で口を開く。

エルダ「なにが言いたいのかしらね?言いたい事があるなら、勿体ぶってないで言って見せたらどうなのよ?」

ガチャモン「いやいや、本当に喜ばしい事だと思ってるよ僕は。楽しみだよね~、これから迷宮区から戻って来る仲間達に念願のギルドホームが購入できたって報告してさ。買ったばかりのホームにみんなで一緒に入るんだよね~」

モック「いや~、仲間の力を合わせて手に入れた麗しの我が家……お仲間の皆さんが帰って来るのがもう待ち遠しくて待ち遠しくて仕方ないんじゃないですかね~」

再びガチャモンとモックは『くすす』『ぐほほ』と鬱陶しく笑い合っていた。そして、勝手にしばらくの間笑いあった後、2人とも同時に姿を消したのだった。

ケイタ「やれやれ、折角念願のホームを手に入れて、もうすぐ帰って来る仲間達に最高の報告が出来るってのに、邪魔な横槍が入ったもんだよ」

ケイタが額に手を当てながら、やれやれと言った様子で首を横に振りながらそう言った。

私「もう、あんな奴らどうだって良いわよ!そんな事よりも、転移門前で待とうよケイタ。テツオたちにホームを見せて、大騒ぎさせてやりましょう!」

オズマ「そうしてやれ、仲間たちで協力し合って、手に入れたホームだからな―――仲良くお前らのアジトとして使ってやれ」

ケイタは、何度も、オズマ達に感謝の気持ちを伝えた。そして私達はオズマ達に伝えた、いつか私達も攻略組に入って、オズマ達と一緒に戦うと。



※ ※ ※



私「あ、キリトじゃない!ケイタ、キリトが帰って来たわ」

ケイタ「ああ、なんかすごく待ち侘びたな―――って、他の皆は?」

私達は宿屋の中で待ち続けて、日が暮れる事になってようやくキリトが姿を見せて、やっとギルドホーム購入の知らせを出来ると思ったけど、キリト以外の皆がいない事に気が付き、妙な違和感を……薄ら寒さを感じた。

その時、私の脳裏をよぎったのは、ガチャモンとモックが薄気味悪い声での会話だった。

キリトはたった一人で、私達の顔を確認すると、まるで生気が完全に抜けきった表情のまま小さな声で『ただいま……』と呟いた。

ケイタも只ならぬ様子に不安を感じて、一体何があったのかと聞くと、キリトの口から言葉は―――私の、私達の今までのすべてを、何もかもをぶち壊しにする言葉だった。

キリト達は最前線に近い迷宮区に潜り、そこでトレジャーボックスの罠にかかり、モンスターの群れに襲われた。出入口は塞がれて、しかもその上、その部屋はクリスタル無効エリアで、脱出は出来ず、大量のモンスター達に次々と仲間達は死んでいき、最終的にキリトだけが生き残ったと。

キリトが生き残った理由は、キリトのレベルは私達に申告していたレベルよりずっと上だった事、今まで私達に隠していた上位のソードスキルを使って、大量に発生したモンスター達を全滅させて生き延びたと告白した。

それでも、この時の私はまだキリトに対して失望感を感じながらも、憎悪と呼べるほどの感情は抱いていなかったと思う。
けど―――

ケイタ「ビーターのお前が、僕たちに関わる資格なんて無かったんだ」

ケイタはそう一言だけ、キリトに言い放った直後、その足で街外れのアインクラッド外周部に向かい、追いかけたキリトと私の目の前で、呆気なく柵を乗り越えて、そのまま身を投げ出して消え去った。

目の前でケイタの死を目の当たりにした私は、それまで2カ月間、私達を欺き続けて、仲間のふりをしてきたビーターに対して許し難い、怒り、憎悪、嫌悪感が一気に爆発した。

私「そうだよ……アンタが、アンタが私達にレベルを隠しながら近づいたからこんな事になったんだわ!」

キリト「…………」

私の罵倒の言葉に対して、キリトは何も言い返さずに俯いたままで、それが更に私の怒りを掻き立てていた。

私「私にとって月夜の黒猫団の皆は……この世界で絶望しかけてきた私にとって希望だったのに……ケイタや、サチたちがいたから今までこの世界で生きてこれたのに……それをアンタが全部奪ったんだわ!!」

私は目から熱い涙が零れるのを感じながら、キリトに対してそれからしばらく喚き散らし続けて、キリトがそれを黙って聞き続けていた。
やがて、キリトに対する罵りの言葉を出し尽くした私は、別れの言葉も口にする事なく宿屋から出て、私もキリトもかつてと同じようにソロプレイヤーに戻った。
キリトは最前線で膨大なリソースを掻っ攫うソロプレイヤーのビーターとして、私は中層で一人細々と戦うソロプレイヤーとして。

それから翌年のクリスマスには蘇生アイテムの噂がアインクラッド全土で話題になり、私は僅かな望みをかけて、オズマ達のギルドの商人プレイヤーのミリオンを通じて、オズマ達に蘇生アイテムの獲得――それが出来なくとも、その真偽の確認を依頼した。

結果、最終的に蘇生アイテムを手に入れたのは……かつて私達を裏切り、私から全ての支えを奪ったキリトだと聞いた。
そして、キリトが得たその蘇生アイテムは対象プレイヤーが死亡してから10秒以内でなければ蘇生できないと言う事実を知ることになった。

キリトはその蘇生アイテムで、黒猫団の誰を生き返らせるつもりだったのか、それとも他の誰かを生き返らせようといたのか知らないけど、それを知ったキリトは、SAOでの友人であるプレイヤーにそれを渡して、どこかに去っていったと聞いた。

そして、私のキリトに対する憎しみの感情は薄れる事無く、2024年4月、私は攻略組の一員となり、第59層フロアボス戦に参戦する事になった。

二体で一組のフロアボスのラストアタックを決めたのはそれぞれオズマとレイナだった。私はキリトと共にオズマのパーティーに入っていたけど、結局キリトとは一言も会話をする事は無かった。 
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