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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE71 偽りの仲間キリト

デスゲーム開始後、初めて圏外に出て、狩りに出た結果……山岳地帯の付近に出現する山賊Mobに殺されかけた私を助けてくれたのは、後にギルド、月夜の黒猫団を結成する事になる私と同年代の5人の人達だった。
5人のメンバーはリーダーで棍使いのケイタ、チームのまとめ役のテツオ、槍使いのササマル、シーフで短剣使いのダッカ―、そして紅一点のサチだった。

私を助けてくれた黒猫団のメンバーはひとまず、私を山岳地帯付近にある村まで送ってくれた。そこで私は彼らに、ガチャモンとモックに不安を煽られるがままに、圏外に単独で狩りに出て、初期装備、レベル1、ポーションもロクに持たない状態で初歩的なソードスキルを使って来る山賊Mobが出現する山岳地帯まで狩りに出向いてしまった事を話した。

自分でも呆れるほどの愚かさ、愚行を、彼らも呆れるかと思いきや、黒猫団の皆は、親身になって私に接してくれた。
唯一の同性のサチは私に寄り添ってこう言ってくれた。

サチ「怖かったよね……どうしようもなくなって不安だったよね……分かるよ、私も皆がいなかったら、今頃、ずっと怖くて何もできなかったから……」

ダッカーはガチャモンとモックに対して憤慨して、こう言っていた。

ダッカー「あのパチモン連中、出来る事なら俺がめった刺しにしてやりてぇ!」

そんなダッカーに対してテツオが半笑いで――

テツオ「そんな事したらお前、めった刺しにされる前に滅多打ちにされて、泣き喚くだろ?イテーイテーとか騒ぎながらさ」

ダッカー「泣かねーよ!あ……でも、イテーのはちょっとやだなぁ~……」

そんな彼らの様子を見ていたら、私は自然に久しぶりに笑みが零れるのを感じた。現実世界でも良いこと何ロクに無くて、笑う事なんて無くなっていたのに、黒猫団の皆が傍にいてくれるだけで、私の日常、世界はまるで違うものに感じされた。

それから、黒猫団の皆は当たり前のように私を仲間に加えてくれたばかりか、せめて装備くらいは整えようと言って、彼らも少ない資金をカンパしてくれて、私がある程度戦えるようにNPCショップの武器を買い与えてくれた。

後に攻略組と呼ばれるようになる最前線のプレイヤー達が第三層を開放した時点でギルドをシステム的に結成できるようになったのを皮切りに、私達は正式にギルド、月夜の黒猫団を立ち上げる事になった。
月夜の黒猫団は最前線のトッププレイヤー達に比べてギルドの規模は比較するまでも無く小規模で、一人一人の実力もとても、トッププレイヤー達の足許にも及ばなかったけど、それでも私は楽しかった。
リーダーのケイタはよく私に話してくれた。

ケイタ「僕らは今はまだ守ってもらう側だけど、気持ちじゃ負けてないつもりなんだ。だからさ……このまま頑張れば、何時かは彼らに追いつけるって、そう思うんだよ」

そんなリーダーの志に感銘を受けた私は、彼の力になるべく、尽力し、何時の日か月夜の黒猫団を攻略組の一員に入れるくらいのギルドにして見せようと奮い立つようになっていた。


※ ※ ※


あれは、ソードアート・オンラインが開始されてから5カ月が経過した2023年の4月の事だった。私達は中層を活動の拠点に置き、狩りに出ていたけど、大型の武装ゴブリンの一団に苦戦していて、撤退している最中だった。

「ちょっと前、支えましょうか?」

ケイタに声を掛けてきたのは、私と年の近そうな、童顔で小柄で細身の、そんな屈強な戦士とは程遠そうな外見に反して全身を黒衣の装束に身を纏ったプレイヤーだった。

ケイタ「すいません、お願いします。やばそうだったらすぐ逃げて良いですから」

そして、その黒衣の剣士、キリトはゴブリンたちを倒してくれた。その時はそれなりに時間をかけてゴブリンの一団を倒していたから、私達は全員がまさか、彼が攻略組の中でもトップクラスに名を連ねるソロプレイヤーにして悪名名高きビーターであるとは思いもよらなかった。

迷宮区から出て、主街区に戻った私達は高価なワインで祝杯をあげた。その時ケイタは、小声だけど私には聞こえる声で、キリトにレベルを聞いていた。

その時にキリトが私達に申告したレベルは私達の平均レベルよりも3程上の数値だった。今にして思えば実際にはあの時キリトは、自分のレベルを20くらいは下に申告していたのだろうけど。

そしてケイタは、キリトをギルドに誘った。当時ケイタは両手用の長槍を武器にしていたサチを片手剣士に転向させる計画を立てていた。

ケイタ「でも、中々修行の時間も取れないし、片手剣の勝手がよく分からないみたいでさ。良かったら、ちょっとコーチしてくれないかなあ」

サチ「何よ、人をみそっかすみたいに」

サチはぷうっと頬を膨らませてから、チラリと舌を出して笑った。

サチ「だってさー、私ずっと遠くから敵をちくちく突っつく役だったやん。それが急に前んでて接近戦やれって言われても、おっかないよ」

ケイタ「盾の陰に隠れてりゃいいんだって何度言えば解るのかなぁー。全くお前は昔っから怖がり過ぎるんだよ」

私「けど、怖いのは仕方ないよケイタ。私だって最初の頃、ブレンジー・ボアが目の前に突進してくるのを見ただけで、逃げ回ってたんだしさ……」

ふと、その時私は、私を見捨ててどこか消えてしまったコペルの事を思い出して、微かな感傷に浸っていたけど、すぐに過去の事として頭から降り去った。
そして、キリトはそのまま月夜の黒猫団の7人目のメンバーになった。それによって黒猫団の前衛のパーティーバランスは大幅に改善された。

メンバーのレベルは順調に上がり、キリトが加入してから一週間でメインの狩場を1フロア上にするほどだった。
それ以降も黒猫団の戦力は著しいペースで上がり続けていた。最も、当時戦場にしていたフィールドはキリトにしてみれば以前に攻略を終えた場所で、危険な場所や効率の良い稼ぎ場所も知っていたのだから、それとなく誘導して、私達を強くしていたんだろう。

ともかく、キリトが加入したばかりの頃には10もあった前線組との差は、短期間で5にまで縮まり、貯金額も増大し続けて、ギルドホーム購入も現実になりつつあった。

その一方でサチの盾剣士転向計画はあまり芳しくなかった。

サチ「マオって凄いよね、そんな短剣で怖いモンスターを相手に目の前で戦えるなんて……」

二人で軽く暇つぶしに、主街区の側での狩りに出ていた時に、私がモンスターを短剣で倒した直後にサチがそう弱々しい声で言った。

マオ「どうしたの急に?」

サチ「私もマオみたいに、勇敢に戦う勇気があったら……今頃キリトみたいに剣を持って積極的に接近戦でもやれてたのかなって―――自分でもなんとかしなくちゃとは思ってるんだけどさ、いざモンスターを目の前にすると、それが自分一人でも倒せる程度の相手でも、怖くてパニックになりそうで……」

それは無理も無いような気がした、後で聞いた話では、SAO開始直後には、接近戦でのパニックが原因で多くのプレイヤーが命を落としていたらしい。
私自身、黒猫団の皆と出会わなければ、あの山賊達によって呆気なく殺されていたと思うし。
それにサチはどちらかと言えば大人しい、怖がりな性格で、前衛に向いているとは思えなかった。

そしてその日の夜に、宿屋からサチが姿を消したのだった。

ギルドメンバーリストから居場所を確認できないのは、単独で迷宮区にいるせいだと思った。すぐにみんなで探しに行くことになったけど、キリトだけは一人で迷宮区外の場所を探しに行っていた。
その時キリトは、フィールドにも幾つか、追跡不能の場所があるからと言っていた。それも今思えば、キリトはその当時すでに、索敵スキルから派生する上位スキルの追跡を獲得していて、それを隠す為だったんだろう。

私達が迷宮区をひたすら探し回ってからだいぶ時間がたったところで、キリトからケイタ宛に『サチを見つけた』と書かれたメッセージが届いた。
私達が戻った頃には既にキリトもサチも先に宿屋に戻った頃で、サチは先に部屋で休んでいた。

キリトは一階の酒場で、帰って来た私達にこう告げた。

キリト「やっぱり、サチが盾剣士に転向するには時間がかかりそうなんだ。可能なら、今のまま槍戦士を続けた方が良いと思う、俺が前衛に出ての負担とかなら特に問題ないからさ」

私達はキリトとサチの間に何かしらのやり取りがあった事を察していた、けどひとまずここはキリトの提案を受け入れた。
そして、それから一ヶ月後のとある日の事だった。

ケイタ「ついに、目標額が溜まりました!」

ケイタのその発表に私も、ギルドの皆もそれまでの苦労がついに報われたと、沸き立っていた。その日はケイタと私がギルドハウス向けの小さな一軒家を売りに出していた不動産仲介プレイヤーの元に出かけた。
ところが、そこで厄介な事が起きてしまった。早速私達がギルドホームを買おうとしたところに、重装の戦士二人がこのホームは俺達が買わせてもらうなんて言い出したのだった。
この場合、仲介のプレイヤーとしてはオークション形式にして、より高い金額を出せる方にホームを売りたかったはずだけど、割り込んできた重装の戦士たちは我が物顔でこんな暴論を口にし始めていた。

重装戦士「ギルドホームを買うのに必要な金を持ったプレイヤーが二組……同時に同じホームを買いたいって希望してるってんなら、これはもうSAOプレイヤー同士、 決闘(デュエル)で蹴り付けるしかねーだろうが!!」

私達は当然反発した、私は久しぶりに頭に血が登り、装備からして自分よりも強そうなプレイヤー達を相手に声を荒げた。

私「ちょっと待ってよ!このホームは私達が前から目を付けてたんだよ!それをいきなり自分達が買うとか、買う権利を掛けてデュエルで決めようとか、そんな勝手許されると思ってるわけ!?」

ケイタ「勘弁してくださいよ~、僕達、このギルドホーム向けのハウスを買う為に苦労してお金を貯め続けて、ようやく目標額まで達したんですよ!それで、ギルドの他の仲間達に家を買って来るから、楽しみに待ってくれって言ったのに―――ここで横取りされちゃったら、仲間達に合わせる顔が無いんですよ」

けど、重装の戦士たちは聞く耳を持たずに、デュエルで決めるのが筋だとか、言い出し、肝心の仲介人のプレイヤーもその剣幕に圧倒されてしまって、自分の意見を言えず仕舞いだった。

私もケイタも、重装戦士たちが自分よりも格上のプレイヤーだと気が付いていただけに、デュエルで決めるなんて提案は実質、アイツらがホームを買う権利を一方的に得るも同然にしか思えず、連中も私達相手なら負ける事は無いと見抜いたうえでの申し出なのは明らかだった。

けど、私はどうしても許せなかった。苦労してお金をためて、ずっと買う事を夢見ていたホームをあんな横暴なやり口で横取りをされる事に。
だから私はもう、勝算とか考えずに勢いに任せるように啖呵を切っていた。

私「アイツら、アタシ達がずっと前から狙ってたホームを横取りしようなんて!そんなにデュエルで決着付けるって言うなら、アタシが倒すわよ!」

ケイタ「けど、マオ―――僕たちの腕前だと、どう考えたってアイツらには勝てないよ」

私「けど、ケイタ!折角必要な資金が溜まって、やっとギルドホームが手に入るところだって言うのに―――こんなところで買い逃しちゃっていいの!?」

冷静に考えれば、ケイタの言う通りだった。いくら悔しかろうが、ギルドホームに対する思いが強かろうが、レベルや装備で負けているであろう私があの二人のうちのどちらかとデュエルをしたら、返り討ちにされる可能性が高い事くらいは。

ケイタ「そりゃ、僕だってこのままじゃ納得できないよ!迷宮区に行ってるテツオ達が帰ってきたら、ギルドホームを見せてやりたいのに―――アイツらにホームが買えなかったなんて報告なんてしたくない!」

ケイタが悔しみが籠った声を上げると、彼は握り拳を震えさせて、私以上に悔しそうな声を上げていた。
そんなケイタの様子を見て、私は掛ける言葉が思い浮かばすに、歯を食いしばっていた時だった。

「突然だけど、そのホーム。私達も買い取りに名乗りを上げさせてもらおうかしらね?」

初めて聞く女性プレイヤーの声、そんな彼女の一言から、この時のギルドホームを巡る一件の流れは大きく変わる事になった。 
 

 
後書き
次回でマオ視点の話は終わると思います。早くお話を進めたいですしね(笑) 
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