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真田十勇士

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巻ノ百五十三 戦の終わりその九

「その様に」
「そうか。武士の道はか」
「人は至るところに青山がありともいいますし」
 志を遂げるべき場所、それがというのだ。
「薩摩でもです」
「武士の道を極められるか」
「そうしたものかと」
「そうなるか」
 そう聞いてだ、秀頼は唸って述べた。
「ではな」
「はい、それがしのですか」
「思う様にせよ」
 秀頼は自分の下に留まることもよしとした。
「その様にな」
「その様にさせて頂きます」
「余は何も言わぬ、そして今はな」
「はい、これよりですな」
「宴を楽しむのじゃ」
 酒に馳走がある、薩摩の馳走ばかりだ。
「そうしようぞ」
「わかり申した、それでは」
「それでなのですが」
 今度は治房が言ってきた。
「上様はこれより」
「うむ、この薩摩においてな」
「生きられますか」
「そうすると決めておる」
 既にというのだ。
「だからな」
「もうそのお考えはですな」
「変わらぬ」
 決してというのだった。
「もう天下も何もな」
「よいですか」
「そもそも余は天下人と思っておったのは確かだが」
「その天下はですか」
「余が治めるには大き過ぎた、だからな」
「もうですか」
「よい」
 そう考えているというのだ。
「折角助けてもらった命じゃ」
「ではそのお命を」
「大事にしよう、書を読みそして武芸もな」
 これまで然程していなかったそれもというのだ。
「励んでいく」
「そうしてですか」
「余も武士道を歩む」 
 そう考えていた、今の秀頼は。
「祖父上や父上に劣らぬ様にな」
「それでは拙者も」
「共にいてくれるか」
「それがしは豊臣家の家臣です」
 この立場は変わらなかった、治房にとっては永遠不変のことだった。
「それでは」
「その余にか」
「共にいさせて頂きます」
「頼むぞ」
「それでは」
 治房も頷いた、そうして彼も進むべき道を定めた、それは他の者達も同じことで十勇士達もだった。
 幸村に対して口々に言った。
「殿、ではです」
「我等もこのままです」
「殿にお仕えさせて頂きます」
「薩摩において」
 戦が終わってもだ、そうするというのだ。
「是非共」
「その様にお願いしたいのですが」
「宜しいでしょうか」
「無論じゃ」
 幸村は十勇士達に笑顔で答えた。
「我等は誓ったな」
「はい、生きる時も死ぬ時もです」
「同じと」
「死ぬ場所もまた」
「だからじゃ」
 そう誓ったからだというのだ。 
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