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真田十勇士

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巻ノ百五十三 戦の終わりその七

「日光に入る用意をな」
「では」
「うむ、あと少しじゃ」
 まさにというのだ。
「わしは世を去る」
「だからですか」
「その用意に入ろう」
「日光にですな」
「東照宮を建ててな」
「そこにおいてですか」
「わしは祀られてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「そこから江戸の東北を守護しよう」
「鬼門を」
「うむ、そうする」
 まさにというのだ。
「その様にな」
「遂にこの時が来ましたか」
「このことが終わるとな」
 もう、とだ。家康は達観した顔になって述べた。
「わしは遂にじゃ」
「もうお命は」
「そうなるからな、あとお主にも言うが」
「はい、右大臣殿のことは」
「一切構わぬ様にな」
「そうさせて頂きます」
「そうせよ」
 まさにと言った家康だった。
「せよ、よいな」
「はい、それでは」
「そうさせて頂きます」
「その様にな、くれぐれも言うぞ」
「承知しております」
 正純も約束してだ、そうして。
 彼も秀頼には何も言うことはしなかった、それでだった。
 家康達は己の最後の仕事にかかった、だがもう戦はしなかった。
 戦を終えた幸村達はすぐに薩摩に戻った、そしてそこで家久が内密に用意した宴に参加した。その宴では。
 酒に様々な馳走が出た、家久は彼等にそれを出して言った。
「戦に勝たれましたな」
「はい」
 その通りだとだ、幸村は家久に答えた。
「見事」
「そうしてですな」
「この通りです」
 戦に加わった者達はというのだ、無論彼等も揃っている。
「無事に戻ってきています」
「そうですな、ではです」
「その戦の勝ちを祝って」
「飲んで食して」
 そうしてというのだ。
「楽しまれて下さい」
「有り難きお言葉」
 まさにと言った幸村だった。
「そうさせて頂きます」
「それでなのですが」
「これからですか」
「戦は終わりました」
 戦国の世だけでなく幸村達の戦はとだ、家久は述べた。
「それではです」
「これからのことは」
「はい、どうされるのでしょうか」
「もうそれは決めております」
 微笑んでだ、幸村は家久に答えた。
「これからのことは」
「そうなのですか」
「はい、武士道をこれからもです」
「歩いていかれますか」
「鍛錬と学問の双方に励んでいきます」
 その両方にというのだ。
「文武の修行に」
「そうされますか」
「はい、そしてです」
 そのうえでというのだ。
「武士道を最後まで、です」
「歩まれますか」
「その果てがあるかどうかはわかりませんが」
「それでもですか」
「文武の修行を続けて」 
 そうしてというのだ。 
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