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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE68 キリトの告白・・・嘘と罪

 
前書き
FILE66とFILE67で4月14日と表記していましたが、間違いだったので24日と訂正しました。 

 
第59層フロアボス戦のH隊のメンバーは、メンバーの一人となったエギルの雑貨店で攻略組新メンバーのマオの軽い歓迎会を兼ねての食事会!
他愛のない談笑、食事の品評、時折エギルが店の商品を勧め、それをオズマが断固拒否すると言う、ただの食事会!……そして、そんな空気に一石の意思を投じる事になったのはレイナの一言だった。



レイナ「……マオ」

マオ「なに、レイナ?」

レイナのその一言から、俺はレイナがついに本題に斬り出そうとしているのだと察した。俺とレイナはそれを聞く事を躊躇っていた事だが、確かに何時までも敢えて聞かないと言うのはかえって不自然故に、何れは聞く事になっていただろう。

レイナ「……ケイタは、ギルドの他の人達はどうしたの?」

マオ「あっちゃ~、やっぱり聞かれちゃうのねそれ……」

エギル「なんだ、マオは前はギルドに入ってたのか。けど、今はソロプレイヤーなんだよな?」

レイナについに、ギルドの事を聞かれたマオは、微笑を浮かべてそう口にした。流石に答えにくい事かもしれないと思ったが、マオがその先の答えを口にするのはすぐだった。

マオ「そうね、ギルドホームを買うのにお世話になった人たちもいる事だし、報告するわね」

そして、マオは虚ろな表情を浮かべて、自身が所属していたギルドがどうなったかを端的に説明するのだった。

マオ「私が所属してたギルド……『月夜の黒猫団』は―――」

この時俺達は初めて、ギルドの名前を聞いたことになった。そして、マオが所属していた月夜の黒猫団は。

マオ「メンバー7人中、5人が死んで、壊滅したわ……以上」

呆気なく、メンバーの殆どが死んだことを口にして、ギルドが解散したと言う事実を告げたのだった。

エギル「そ、そうか……」

エルダ「死んだって……ケイタ君も、なの?」

エギルが眉をひそめて、小さく呟き、エルダは心配そうに、リーダーであったケイタの事を聞く。

マオ「ケイタも死んだわ。それでギルドは壊滅」



そして、マオは語る!ギルド月夜の黒猫団の末路を!オズマ達がケイタ、マオと出会ったあの日。他の月夜の黒猫団のメンバー5人は最前線に近い第27層の迷宮区に向かい、トレジャーボックスの罠にかかり、大量のモンスターに囲まれた挙句、出入り口は封鎖され、結晶アイテムも使えない状況下での戦闘の末に、一人のメンバーを除き死亡。

唯一、生き残ったメンバーはオズマ達がいなくなった後に第一層のはじまりの街に戻り、生き残りのメンバーは自分以外が全て死んだと言う事実をケイタとマオに報告。
リーダーであるケイタは何故、彼だけが生き残ったのかと尋ねて、その生き残ったメンバーから、そのとある‘ 理由‘を聞いた直後、ケイタは生き残りのメンバーを罵った直後に投身自殺。

マオは生き残ったメンバーの裏切りとも言えるその行動にありったけの怒り、憎悪、怨嗟の言葉をぶちまけた後、その生き残りのメンバーはその場から去り、ギルドは事実上、壊滅となった事を! by立木ナレ



他愛のない談笑の食事会の場が静寂な空気に包まれていた。マオがソロプレイヤーとして攻略組に加わった理由。
それは、ギルドメンバーが二人を除いて命を散らし壊滅した事である事、そしてもう一人の生き残りのメンバーである人物が何かしらの裏切りをしていた事であった。

レイナ「……そうだったのね」

マオ「ええ、月夜の黒猫団は壊滅したの。まあ、今思えば攻略ギルドでもないのに、当時の最前線の2層下での狩りは流石に向こう知らずな行動だったのかもしれないわね」

マオはさして、悲しむ表情を浮かべる事も無く、懐かしんでいる様子もなく、単なる説明としてそう語り続けていた。

俺「もう一人の生き残りはそれっきりなのか?」

キリト「…………!」

俺の言葉の直後に、キリトが一瞬、強張らせたままの表情のまま、身体を震えさせたのを俺は見逃さなかった。
このキリトの今の妙な挙動―――いや、マオが攻略組の前に姿を現してからのキリトの不可思議な様子を見るからにこれは恐らく……

マオ「彼はまだ生きてるわよ、ある意味彼が唯一生き延びて、今も生き延びているのは必然なのよね、だって彼は飛び抜けて強かったんだから、中層の弱小ギルドのメンバーだった私達なんかとは比較にならない位にね」

エルダ「それってつまり、その生き残ったもう一人の人だけ、他のメンバー達よりレベルが高かったって事なの?」

俺もエルダと同じことを考えていた。

マオ「そうよ、私達なんかとは桁違い、彼はギルドのメンバーの中では一番の新入りで、私以外では唯一、立ち上げ時のメンバーじゃなかったわけだけど。当時の攻略組のプレイヤー達と比べてもトップクラスと言えるくらいのレベルだと思うわ」

エギル「攻略組のプレイヤー達と比べてもトップクラスってこたぁ、そいつはまさか攻略組のプレイヤーだったとかか?」

エギルの言う通り、そう考えるのが自然だろう。どんな理由があったかは知らないが、そのギルドの新メンバーとやらは攻略組内でもトップクラスを誇るレベルでありながら、最前線で活動する時間を割いてまで、中層の一介の小規模ギルドに加入したと言う事だ。

レイナ「……その、生き残った人の裏切りは何?」

核心に迫る質問をするのは、またしてもレイナだった。他の連中があまり聞きにくい事をレイナは比較的躊躇なく聞くのだが、この場においては話を進めるのに重要な役割を果たしているのも確かだろう。
そして、マオは特にその質問に対しての返答を拒む事も無く、口を開いた時だった。

キリト「マオ、もう良いよ」

マオの言葉を遮ったのはキリトだった。キリトが初対面の、知り合って間もない相手に対して、慣れたように呼び捨てで呼ぶのは人付き合いが苦手なコイツとしては少しばかし珍しい―――いや、初対面じゃないんだ……キリトとマオは!

マオ「良い?良いって……何が良いのキリト?」

キリト「この先は俺が全部――オズマ達に話すよ。これは……俺自身の義務だ」

悲壮な雰囲気を漂わせるキリトの申し出、既に俺だけでなく、この場にいる全ての者達が察していた。攻略組から2カ月ほどの間、姿を消していたキリトが何をしていたのかを。
そして、キリトがなぜマオを知っていたのかも。

マオ「そ、それじゃ、包み隠さず全部オズマ達に話してもらおうかしらね、私はここでお暇するから、エギルさん、ご飯ありがとう、ご馳走様でした」

エギル「あ、ああ……気をつけてな」

そう言いながらマオは席から立ち上がり、店の出入り口に向かって歩き出していた。そして、向かい側の席にいた、キリトの横を通り過ぎる間際にキリトに声を掛けた。

マオ「アンタがどれだけ思い悩んで、どれだけ苦悩したとしても、私はアンタを許さないから……」

マオがキリトに向けて放った言葉はまさに呪怨、マオもキリトがギルド壊滅の一件で罪悪感や苦悩を感じている事を理解しつつも、ハッキリと許さないと明言していた。
そして、キリトはそのマオの呪怨の言葉を受けても、一切言い返す事はなく、無言で顔を俯けたままだった。

マオはキリトに視線を一瞬だけ一瞥したが、なにもそれ以上の言葉を送る事無く、店を後にしたのだった。
そして、その場に残された5人の内、キリトを除く、俺を含めた4人の視線がキリトに向けられていた。重苦しい空気が店の中を包み込む。まるで、5人全員が沈黙状態のデバフを食らってしまったかのような圧倒的かつ驚異的な沈黙!
そして、やはりそんな空気を打ち砕くのはレイナである。

レイナ「……私達に話すんじゃなかったの?それが、貴方自身の義務じゃなかったの?」

エギル「おいおい、無理に聞き出すのは流石になぁ……」

エギルがレイナを止めようとするが、キリトは首を横に振り、静かに口を開くのだった。

キリト「いや、レイナの言う通りだよ。皆聞いてくれ―――俺がマオに対して、月夜の黒猫団に対して犯した、取り返しのつかない罪を――」

俺「お前が話してくれるって言うなら、聞かせてもらうさ―――それが、どんな内容だろうとな」



キリトは語った……キリトがかつて中層で細々と活動していた小規模ギルドである月夜の黒猫団に加わった経緯から、ギルドが壊滅するまでの顛末。
そして――ギルドの仲間達に対して常に隠し続けていた事を! by立木ナレ



※ ※ ※



エルダ「そう……だったのね。キリト君が去年の4月から6月の二ヶ月くらい、最前線で姿を殆ど見せなくなったのは、月夜の黒猫団に加わってたからなのね」

キリトから話の経緯を一通り聞いた俺達、エルダは神妙な表情で、キリトが一時、最前線から姿を消していた理由を理解し、複雑そうな様子でそう口にした。

キリトが言うには、月夜の黒猫団のメンバーはキリトと、マオ以外の5人は同じ高校の同じ部活の仲が良い友人同士だったらしい。
キリトはマオがギルドに加わった経緯は詳しく聞いたわけではなかったが、マオは比較的ゲーム初期の時点で月夜の黒猫団に加わっていたらしい。

キリトは去年の4月に、当時の最前線から十層以上も下のフロアの迷宮区に、武器の素材アイテムの収集を目的に潜っていた矢先に出会ったのが、ケイタやマオ達、月夜の黒猫団だったとの事だ。
その時の月夜の黒猫団はモンスターの群れとの戦いで苦戦していた所を助けたのだった――――だが、この時キリトは瞬時に殲滅できるゴブリンの群れをワザと時間をかけて倒したのだった。
恐らく、自分がビーターである事を知られて、冷たい目で見られる事を恐れていたのだろう。

その結果、月夜の黒猫団の面々は、キリトが自分よりも遥かにレベルの高いプレイヤーだとは思わぬままギルドに誘い、キリトも自分のレベルを大幅に低く自己申告して、そのまま月夜の黒猫団に加入してしまったとのこと。

キリトの加入により、月夜の黒猫団は急速にレベルアップして当時の最前線付近まで活動域を広げるまでになった。

俺「んで、ギルドが壊滅する切っ掛けになった事件が起きたのが、俺達がケイタとマオがギルドホームの購入を巡る他ギルドとの揉め事に出くわしてた頃だったのか……」

エギル「迷宮区で起きた事件ってのは、マオが話してた通りと解釈して良いのか?」

キリト「ああ、一人で生き残って、ケイタとマオの元に帰った俺が……二人にすべて話したんだ。俺以外が全滅した事、俺がレベルを隠していた事も全て」

キリトは震えるこぶしを握り締めながら、何処にぶつけて良いのかも分からぬような悔しさをにじませるような表情を浮かべて答えた。
おそらく、俺達が転移門ではじまりの街を去ってからそう時間が経たないうちに、キリトが入れ替わりに戻ってきたのだろう、そして、その後は―――

レイナ「……全てを知った、リーダーのケイタは絶望して、アインクラッド外周から投身自殺した、キリトとマオが見ている目の前で」

キリト「最後にケイタに言われたんだ、『ビーターのお前が、僕たちに関わる資格なんてなかったんだ』て。ホント……まさにそれが真実だよな。」

キリトは自嘲するように、表情を歪ませてそう口にした。話の経緯を一通り聞いて、俺はこう思っていた。
全ての責任がキリトにあるわけではないのは当然ではあるが、やはり責任が軽いとは言い難い。偶然出会った黒猫団の連中を助けるまでは良しとして、その後レベルを隠しながらギルドへの加入なんて事などしなければ、黒猫団のメンバー達は安全なミドルゾーンに留まり、無茶なトラップ解除に手を出す事も無かっただろうし、そもそも、キリトがその時点でレベルを偽っている事を白状して、第27層がトラップ多発地帯である事など、全てを告げていれば、全滅という最悪の事態を避けられていた可能性は充分あり得たのだから。

俺「ケイタが自殺して、お前とマオだけが生き残ったわけだが、お前は直ぐに最前線に戻って、マオもお前とはそれっきりだったわけだな?」

キリト「ああ、ケイタが自殺した後、マオは俺に対して泣きながら『何でレベルを偽ってたのよ!?』、『トラップの多発地帯だって知ってたなら何て止めてくれなかったの!』、『絶対に許さない!例えあんたがどこかで死んだとしても許さない!』って色々と言われたけど、彼女は最終的に俺の前から去って、それっきりだったんだ。今日になって再会するまでは……」



キリトは、自らの過ち、犯した罪、マオとの確執に付いてすべてを話したのであった!だが、オズマ達は誰一人として、キリトの事を責める事も無く、キリトとパーティーを組む事を拒む事無く、あくまでこれからもキリトを同じ攻略組の一員、戦友、同胞として付き合う事を暗黙の了解としたのであった。 
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