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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE66 借金における誠意とは?

西暦2024年4月24日。デスゲーム、ソードアート・オンラインの開始から既に一年半……最前線は第59層となり、この日の午後の4時には、フロアボスの攻略会議が開かれようとしていた! by立木ナレ


第48層の主街区、リンダースはまるで職人の街と言った雰囲気だった。最前線から10層以上も下の、この氏主街区に俺がレイナを伴って訪れた理由はただ一つ、金の話をする為だった。

俺「アイツ、商売はそれなりに上手くいってるとか言ってやがったな……だとしたら払うもんは払ってもらわなきゃならねーよ」

レイナ「……単に失念してるだけだと思う」

俺「だとしたら猶更こっちから催促しねーと、忘れられたままだぞ」

巨大な水車が緩やかに回転する音が特徴的な工房に目を付けた俺はその建物に近づいた、決して広くはない職人クラスのプレイヤーホームだ。
店の扉を開けると、店の店主がこちらを向いて、挨拶をしようとして―――しなかったばかりか……

リズベット「げっ!?」

この鍛冶屋の工房の主、リズベットは俺の顔を見るなり、今は会いたくない男の顔でも見てしまったかのように、表情を引き攣らせたのだった。

俺「客が来たら『げっ』じゃなくて『いらっしゃいませ』だろが。接客業の基本だろ、コンビニ店員だって弁えてる事だ」

レイナ「……私達は、客じゃないけど」

レイナの言う通り、別に俺達は客としてこの店に来たわけじゃない。リズベットには、彼女がこの店を開く前から何度か武器の強化、製造を依頼している間柄だ。
俺が今、装備している防衣である『剣豪の防衣(けんごうのぼうい)(きわみ)』も彼女の鍛冶スキルによる防具製造で得た物だった。

俺が第二層のフロアボス戦でドロップした剣豪の防衣・兆はレベル35で装備できるようになり、そして、レベル50になった際にリズベットに剣豪の防衣・兆と様々な素材アイテムをリズベットに託して、『剣豪の防衣・覚』となった。
更に俺のレベルが70になった時には、剣豪の防衣・覚と決して安くはない総額の素材アイテムを揃えて、製造をしてもらい、今俺が装備している『剣豪の防衣・極』となったわけだった。

リズベット「い、いらっしゃ~い……あ、お茶でも飲んでく?それともコーヒーが良かったかしら~?」

俺「こんな、最前線の10層以上も下まで来て、態々、お茶だのコーヒーだの飲みに来たわけがねーだろ」

まるで、俺の目当てである本題を誤魔化し、速やかに俺をこの場から立ち去らせたいと言わんばかりの白々しい態度のリズベット……通称リズに対して俺はここに来た目的をハッキリと口にする。

俺「金返せ」

リズベット「うえ……やっぱり忘れてなかったわねアンタ」

俺「当然だ、10日おきに返済するって約束だったろうが」

第48層のリンダースが解放されたのは、既に去年の12月の初めの頃の事だった。俺はさしてこの、職人の街のリンダースには興味が無かったのだが、デスゲーム初期からの鍛冶職人だったリズベットは、リンダースの街開きでこの家を見つけた時に、「ここしかない!」と瞬間的に感じたらしく、値札を見て愕然としたものの、それでも自分の手にする事を諦められなかったようだった。

その気持ちは俺も痛く分かる。俺も小学生の頃に、アニメでユーノス・ロードスターを始めてみた時、俺が何時か手に入れる車はこれしかないと感じて、今もその考えは変わっていない。
最も、俺とリズの決定的な違いは、目標の代物を手に入れる為に長期間の努力、忍耐が出来るか否かだった。
言うまでも無く、それが出来るのはリズの方で、出来ないのは俺の方だ。どうしても欲しい……絶対的に欲しい……その気持ちは同じであるのだが、リズが目標の為に努力、忍耐が出来るのに対して、俺は全くの逆、目標が遠すぎると、その遥か先にある目標に到達するまで努力や忍耐を続ける事が馬鹿馬鹿しくて、やってられなくなり、その目標に至るまでのあらゆる行動を放棄して堕落する事を躊躇なく選ぶのだった。

だが、リズはこの家を手に入れる為、目標金額である300万コルを得る為に死に物狂いで働き、各方面から借金をしてまで、目標額の300万コルを2カ月で達成して、このホームを購入したわけだった。
そして、その各方面から金を借りた相手の一人に、俺がいたわけである。

リズベットから唐突に、高額なコルを貸してくれなどと言われた時は、即座に話を打ち切ってやりたい気分だったが、このホームをどうしても手に入れたい故の話を聞かされて、俺は現実世界で俺が手にいれたても、目標が遥か遠すぎる為に到底手に入らないと諦めきっている車の話と微妙の重ね合わせて、最終的にリズに金を貸したのだった。
それから約束通り10日おきに、リズからフレンドリストからのメッセージを通じて返金が続いているわけだが、どう言うわけか昨日は初めて、リズからの返金が滞っていたのだった。

そして、俺は自らリズに借金の返済を催促しにここに訪れていた。

リズベット「わ、悪かったわよ~、昨日は色々とバタバタし過ぎてて、すっかり忘れちゃってたのよね~」

リズは肩身の狭さを誤魔化すかのように、苦笑いを浮かべながらそう言った。

リズベット「昨日凄いお客さんが来たのよ!」

レイナ「……どんな人?」

レイナ、そんな事は別に聞かなくて良いから、金の催促だけを手伝ってくれと、今から言ったところで襲い。
リズベットは待ってましたと言わんばかりに話を始めるのだった。

リズベット「それが聞いてよ!全身フル装備の製造依頼よ!武器も防具も全部!何から何まで新規に武器製造を依頼されちゃったのよ!」

確かにそりゃ、大した依頼人だ。武器だけでなく、頭から下までの防具を全て新たに鍛冶職人に製造してもらうとなると、かなり高額なコルが必要となるのは目に見えている。

リズベット「何でも彼女、攻略組に入る為に、有り金をはたいてでも、新しい装備が必要なんだって言ってたわよ」

レイナ「……女性プレイヤーだったの?」

リズベット「そーなのよ!それもソロプレイヤーよ!珍しいのもいたもんよね~」

確かに珍しい奴もいたもんだ。ソロプレイヤーで攻略組なんて、俺が知り得る限りではキリトと、他はせいぜい数人程度しか俺は知らない。

リズベット「年齢は多分そうね~、アタシらと同年代くらいかしらね?短剣もった軽装の人でさ、折角同い年の同性のお客さんが来たんだから、軽い世間話でもしてみようかと思ったけど、なんて言うかあれなのよね――」

リズは眼を閉じて腕を組み、首を45度傾げながら言った。

リズベット「ヤバいのよ」

レイナ「……なにが?」

リズベット「もー、あれだわ。全身から人を寄せ付けないオーラって言うか、攻略の鬼のアスナだってさ、攻略の時以外の、普段はそこまで気負ってる雰囲気じゃないって言うのに、彼女は全く違ったわね。常時気を張ってそうな感じだったわよ」

俺「そーいや、一時のアイツもそんな感じだったな……」

思い返せば、キリトもそんな時期があった気がする。第25層の攻略からしばらくして、忽然と最前線で見かける事が殆ど無くなり、かと思いきや二ヶ月後には唐突に最前線に戻ったかと思うと、まるで死人の様な、全ての感情が消えうせたかのような虚ろな目付きをしていてて、正直俺は薄気味悪さを感じていた。

二か月間の間に何があったとか、そんな事を聞く気にもならず、取りあえずそれからはまた共に攻略組の一員同士でつかず離れずの関係。
だが、フロアボス戦になると一転し、まるで自らの死など恐れない―――そればかりか自らの死に場所を求めているとでも言わんばかりに軽装の身でありながら単独でボスの目の前に身をさらけ出し、守りを完全に捨てきった怒涛の攻撃を繰り出す姿は、同行したレイドパーティーの面々たちを呆然とさせ、血盟騎士団の副団長であるアスナからは幾度も叱責を受けていた。

最もそんなキリトも、去年のクリスマスイブの日のイベントで蘇生アイテムの一件以降は何か吹っ切れたのか、徐々に持ち直したのかもしれないと思うようにはなっていた。

と、まあ……今はキリトの話は置いておくとしよう。

リズベット「そう言えば、今日の午後の4時くらいからまた、攻略組の人達でフロアボスの攻略会議やるんだって聞いたわよ。彼女もそれに参加するついでに新参者として、攻略組の先輩たちに軽い自己紹介位はするらしいわ」

俺「なら、その女ソロプレイヤーとは今日の攻略会議で必然的に顔合わせしそうだな」

リズベット「そうなるわね、一応血盟騎士団の2トップには既に話は通してるって言ってたわね」

ヒースクリフとアスナが攻略組の一員として加わる事を認めているのであれば、実力は確かなのだろう。
フロアボス戦に参加するするかどうかまではまだ分からないが、ソロプレイヤーなら人数合わせに俺達MBT(未来は僕らの手の中に)のパーティーに加わることもあり得るだろう。

リズベット「そんじゃ、アンタ達も攻略組の先輩として格好の悪い所見せないように気を付けなさいよ!特に、未成年の癖に人前でお酒とかタバコとか!」

俺「この世界に飲酒や喫煙に年齢制限何て別にねぇんだから構うかよ」

現実世界では親父からのうるさい言いつけで、20歳になるまでは酒は一日にビール一缶分。タバコは一日3本までと言われて、俺は仕方なくそれを守ってやっているが、この世界においてはそんな事を規制する法律など無いし、そもそも酒にはアルコール成分が、タバコにはニコチン成分等が抜かれているので、実質的にノンアルコールの酒を飲んだり、電子タバコを吸っている気分だ。

リズベット「あ、いっけない!アタシこれから鍛冶職人のパーティーで素材アイテムの採取に行くことになってたんだわ!悪いけど、一旦店仕舞いするから、アンタ達も出てって貰うわよ」

リズは唐突に思い出したかのように、慌ただしくし始めていた。だが、この店を後にする前に俺は住ませなくてはならない用事があるのだった。

俺「その前に、一つ済ませなくちゃならない事があるんだよ」

リズベット「なに?強化、それとも製造?それ位ならまあ、時間あるでしょうけど――――」

俺「金返せ」

関係の無い話で煙に巻こうと目論んでいたようだったが、流石にそうは問屋が許さない。俺はきっちり、リズベットから10日おきに返済すると言う約束を守らせて、店を後にしたのだった。



※ ※ ※



第59層の主街区の中央広場は転移門広場を低い丘が囲み、チョウが飛んでいるような、のどかな場所だった。
午後の4時が近くなり、広場には攻略組のプレイヤー達がゾロゾロと集まり始めていた。

クライン「いや~、やっぱり男だらけで暑苦しい戦場に、癒しをもたらす存在が増えるってのはワクワクするもんだよな~」

俺「その、口振りと、緩み切った表情からして、アンタも聞いてるんだな。女ソロプレイヤーが攻略組に加わる話を」

風林火山を率いているバンダナ頭の刀使い、クラインは見るからに浮かれポンチと化した緩み過ぎな表情で、口元もVの字になっていた。

クライン「おうよ、色んなところでちょっとした話題になってる見てーだぜ。何せソロプレイヤーでしかも女が攻略組に参加して―なんてよ、しかも血盟騎士団の2トップ公認とくりゃ、きっと見女麗しい女戦士のご登場にちげぇねぇ!」

ユッチ「クラインさんも分かってるじゃないっすか!」

会う前から大はしゃぎしているクラインに対して、唯一激しく同意を示したのはユッチだった。

ユッチ「どう言うわけか、アスナさんにレイナさんにエルダさんと、攻略組で数少ない女性プレイヤーの大半は美少女揃いっすからね!これはきっと神様が選定して下さってるんすよ!美人じゃない女性プレイヤーは攻略組に加わるべきではないって」

俺「そいつは、随分と選民思想意識の強い神様なんだな……」

今のユッチの言葉を、記録結晶に保存し、アインクラッド中の女プレイヤーに聞かせたりでもした日には、こいつは瞬く間に取り囲まれて、HPが減らない圏内故に、いつ終わるかも分からぬ袋叩きの刑を受けるに違いない。

そんな、下らない事で思考を費やしていると、低い丘の上に、全てのプレイヤー達に姿が見えるように上がってきたのは、血盟騎士団の騎士団長であるヒースクリフと、副団長のアスナだった。
あの二人の登場により、瞬く間にその場の空気が引き締まったのだった。

ヒースクリフ「諸君、定刻通りの時間に集まってくれてありがとう。聞いてはいると思うが、本日はこの場を借りて、新たに我々の同志となる攻略組の一員を紹介したいと思う。ソロプレイヤーではあるが、ボス攻略の戦いにおいてはレイドパーティーの一員になる故に、戦闘外においても皆には親密な関係を築いてもらいたい」

ヒースクリフがそう言った直後、アスナの目配せで、2人に続いて低い丘に登り、その姿を現した、攻略組の新参者である女ソロプレイヤーを見て、俺は……正確には俺、レイナ、エルダはもう既に一年以上も前に出会った男女のプレイヤーの事を思い出していた。

マオ「始めまして、マオです……ソロプレイヤーですが、攻略組の力になれるように尽力させて頂きたいと思います」



それは再会!かつて、オズマ達がギルドホームを購入しようとしていた二人組の男女の内の女性プレイヤーのマオであった!

だが、彼女の隣にいた男性プレイヤーのケイタの姿は見当たらず、そもそもマオは小規模のギルドに所属していたにもかかわらず、ソロプレイヤーとして攻略組への参加を表明!―――これは一体どういうことなのか!? by立木ナレ



キリト「マ、マオ……まさか、君が……」 
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