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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE62 訪れしラストチャンス

悪魔的なトラップ!本来、参加者たちの操縦する車によって追われる側であるはずのパックちゃんは、餌をゲットした事により一定時間無敵!―――追われる側から追う側となり、参加者たちに襲い掛かった!曲がり角で散り散りになる、参加者たちの車たち!そんな中、パックちゃんにまるでマークされているかの如く、執拗に追われたのはサンバーストイエローのユーノス・ロードスターJリミテッド……オズマだった! by立木ナレ



俺「くそ……もう無敵時間は終わったってのに、背後から付かれてるんじゃ、逃げるしかねーよ」

巨大な口をパクパクとさせながら、俺が疾走させるJリミテッドを追い続けるパックちゃん。あの口で食らい付かれれば、車は瞬く間に大破する。
それだけならまだしも、乗っている俺も脱出が遅れれば、巻き添えで命を散らす羽目になる!

俺は一度ナビマックを確認し、次の右側の曲がり角をスルーして、更にもう5メートルほど先にある左右上下の分かれ道の内の左側に曲がり、更に曲がった先で右のカーブに入り込んで、パックちゃんの視界から身を隠そうと考えた。

俺「まずは、あそこを突破するぞ!」

変速機のギアを4に上げた俺は、アクセルを限界にまで踏み込み、各車が発する事が出来る最大スピードを目指して加速させる。
あっという間に右側の曲がり角をスルーしたその瞬間、俺は右側に一瞬、青いシボレーの姿を垣間見た次の瞬間だった。

俺「まさか―――俺を利用して!!」

俺を追い続けていたパックちゃんは、右側の曲がり角で待機していた蒼いシボレーの急発進による横からの体当たりを食らい、四散し消滅したのだった。

その直後に、青いシボレーの運転席から、歓喜に満ちた叫び声がここまで聞こえてくることになった。

「うおっしゃ―――――――!やった、成功だ!上手くやったぜぇ―――――!!」

ガチャモン「おめでとぉ~!№18のオズマ君を追っていたパックちゃんでしたけど、横から№7のシボレット君が文字通り横から掻っ攫う形でパックちゃんを撃破!見事に100万円の権利獲得でーす!」

俺「―――――!!」

俺は無言のまま、ハンドルを握る手に力を込めていた。


オズマ、またしても失敗!そればかりか、自らが必死になり逃げ続けているのを、まるで狡猾に利用される形で、横からの体当たりにより目の前でパックちゃんが撃破される事態!
当初の単独で200万以上を獲得すると言う願望は既に破綻!残るパックちゃんはあと1体となり、オズマはこれを自力で倒さねば、このゲームで一銭も得る事が出来ぬまま終わりを迎えてしまうのである!


勝ちたい―――金が欲しい―――だが、そんなオズマを嘲笑うかのように、まるで、オズマには敢えて何も渡すまいと言わんばかりに、オズマは尽く逃し続ける―――大金獲得のチャンスを!by立木ナレ


ガチャモン「は~い、3体目のパックちゃんが出現しました!相変わらず食欲旺盛に道路を爆走してるから、食われないように気を付けてねぇ~」

俺「今度こそ……今度こそ俺が――――!」

何処かに出現したパックちゃんを今度こそ俺が、倒すべく、再びギアを上げてアクセルを踏み込む俺。これがラストチャンス!ここで、勝たねば、俺はまたしても何も得る事無く終わる事になる。

俺はそれからしばらく、Jリミテッドを走らせ続けて、いろんな場所をしらみつぶしに探し回るが、一方にパックちゃんを発見する事も、ナビマップに表示すらされず、他のプレイヤーが発見して追跡している様子も伺えない状態だった。

一体どこに―――奴は何処にいるんだ?そんな焦燥感を身に感じながらも、俺はその直後の轟音を無視する事までは出来なかった。

ズガッシャン!!と、思いっきり車と車がぶつかったかのような音が響き渡り、俺はその音が比較的近い場所からだと思い、パックちゃんと関係がある事故かもしれない事に希望を託して、その場所に全速力で向かったのだったが、そこで俺が見たのは俺にとっては望むような結果ではなかった。

キバオウ「ボケェ――!邪魔しおってからに!どーしてくれんるんじゃ自分はのぉ!?」

それは、キバオウの赤いエスティマが№20のプレートナンバーを付けた軽自動車のコペンに真横から衝突、そのまま壁に突っ込んだのであろう事故の有様だった。

そして、突っ込んだ張本人と思わしき、キバオウはと言うと、怒りの矛先を事故の巻き添えになった№20の参加者でコペンの運転手にぶつけていたのだった。

№20「そ、そんなぁ~、僕は何度もクラクションを鳴らして、危ないから止まるようにって意味で伝えたって言うのに―――」

キバオウ「おどれが邪魔やっちゅんじゃ!なんではよー避けへんかったんや!?」

関西弁の濁声で喚き散らすキバオウに対して、相手のコペンの運転手は眼鏡をかけた童顔で、俺と同年代と思わしき男のプレイヤーだった。
キバオウの気圧に完全に押され気味で、アタフタとしている様子だったが、今は他のプレイヤー同士の争いごとなんかに口出ししている場合じゃない。
結局、ここは外れだったようで、一体どこにパックちゃんがいるのか、探さなければならない時だ。

再びナビマップを確認するが、相変わらず位置情報に表示されているのは俺のJリミテッドの位置だけで、何処にいるのかと途方に暮れかけた時だった。

№20「き、きた……きたぁ!!」

キバオウ「ああん!?わけわからへんことゆーとるんちやうでジブン!」

俺「違う……マジで来やがったんだ――――」

俺がそう口にすると、キバオウも怒りで真っ赤に染まったままの顔を№20のプレイヤーが指さす方を振り返ると、その真っ赤な顔が一瞬にして青ざめた表情に変化していた。
無理もない、車を大破してしまったこのタイミングで、パックちゃんが狙いすましたように大口をパクパクとさせながら真正面から向かってきたのだから。

俺「誰か追ってやがるのか!?」



パックちゃんをすぐ後ろから追う車の№は1!それは赤眼のザザが運転する車であった。そして、その車はオズマの車ユーノスメーカーエンブレムの親会社であるマツダのであったが、オズマのユーノスロードスターような、四半世紀以上も前に生産終了となった旧車とは違う。

1997年に生産が終了したユーノス・ロードスターの後継機であるマツダ・ロードスターでも最新機として知られている2015年に生産された4代目――通称、ND・ロードスターの改良機とも言える……ロードスターRFであった! by立木ナレ



キバオウ「じょ、冗談やあらへん!このままやと食われてもーてまうわ!!」

キバオウはザザが運転するRFに追われてこちらに向かってくるパックちゃんが迫ってくる前に、大慌てで大破して動かないエスティマから降りて、その場から疾走して逃げる、だが――もう一人のコペンの運転手である№20はそうはいかなかった。

№20「そ、そんな……で、出られない……出られないよぉ!!」

そう、真横からキバオウのエスティマに突っ込まれた上に、その勢いで壁に突っ込まれたコペンは両サイドのドアを完全に塞がれた状態となってしまい、このままでは無抵抗に車ごとパックちゃんにやられてしまう可能性が高いのだ。

俺「…………」

俺の目の前で間近に迫りつつある死への恐怖に泣き、怯える、№20の少年参加者、そして赤眼のザザのRFに追われる最後の一体のパックちゃん。
あれを逃してしまえば、俺はこのゲームで本当に何も得られないまま終わってしまう、元の目標が300万円だったと言うのに、獲得賞金は0と言う結果になる。

「ぎゃははっ!アイツもう終わりだなぁ!どーしようもねー人生だったな№20よぉ!!」

「たかだか数百万円如きの賞金に命を掛けられるクズの末路なんて所詮あの程度って事かしらね~?」

「せめて死ぬ前に車に乗れてよかったなぁ?仮想世界の車だけどよぉ!!」

俺「ったく―――とんだ二択じゃねーか!」

死を間近にして怯える、№20の姿を見て、まるでNPCとは思えぬような、侮蔑の視線、言葉を次々とぶつける、建物の屋上の上の連中を見た俺は、何かが吹っ切れるような――激しい激情に駆られたかのように自分でも、馬鹿げてるとしか思えないような行動を実行するのだった。

俺はJリミテッドをバックさせて、距離を取り、既にパックちゃんが俺のナビマップに表示されているのを一瞬目の当たりにしたが、構わずそのままアクセル全開、変速ギアを4速の状態で突っ走った。

俺が突っ走る先には運転手を閉じ込めているコペン――に突っ込んだままの状態の、キバオウの赤いエスティマだった。

俺「これで、結局何もかもパーだ!」

俺は自分のバカな行動に対して自分で毒づきながら、キバオウのエスティマに突っ込んだ。そして、エスティマを勢いに任せて押し進んだまま、衝突したのはさっきまで№20を嘲笑っていた連中が屋上にこぞって突っ立っていた建物だった。

「うわあぁぁ――――――!!」

「た、助けてくれぇ――――!!」

NPC達はまるで、感情の籠った人間であるかのような、恐怖心を剥き出しにしたような情けない喚き声をあげて、その内の2人が、衝撃に耐えきれずに屋上から落下していたが、俺は構わず、コペンに閉じ込められていた№20に向かって大声で叫んだ。

俺「逃げろ!今なら出られるだろ!さっさと逃げろぉ―――!!」

俺の声にはっと気が付いたのか、コペンの中に閉じ込められていた№20は、さっきまでキバオウのエスティマによって塞がれていた扉をこじ開けると、そこから死に物狂いの脱出を果たし、直後にパックちゃんが操縦車のいなくなったコペンを木っ端微塵に粉砕していた。

ザザ「俺の……勝ちだ!」

そして、パックちゃんが角を曲がる為に方向転換をしていた矢先に、背後から追跡し続けていたザザのロードスターRFがパックちゃんを倒し、ついに最後のパックちゃんが消えて、三人目の賞金獲得の権利者が決定したのだった。

俺「……あの連中、どうなった?」

ふと俺は、さっきまでバカ騒ぎしていた、NPC連中がいつの間にか全員、忽然と消滅し、それによって車道フィールドが急に静かになっている事に気が付いたのだった。

ガチャモン「決定しましたぁ――――!三体目のパックちゃんを撃破して、見事100万円の権利を得たのはザザ君でーす!」

モック「いやぁ~、エンジンの音が響き渡る、リアルマネーゲーム、パックハント・ドライブ!白熱のサバイバルレースとまさにこの事ですな~」

そんな俺の疑問を他所に、ガチャモンとモックが嬉々とした声で、ゲームの終了を知らせるアナウンスをし始めていた。
奴らの場違いに明るい声を聞いていると、俺はその時になってようやく、自分が最終的に最後のチャンスをフイにしてしまった事を痛感し始めていた。

今となっては後の祭りだが、あの時俺は№20を助ける事を諦めて、パックちゃんへの追跡を優先していれば、ザザではなく、俺が100万円の権利を得ていた可能性もまだあり得たと言うのに―――気が付けば、俺はそれを自ら放棄していた。
生粋の甘さの他にも、人が死ぬ光景を嬉々として眺めている、単なるNPC共に対する言い知れぬ苛立ちから、冷静さを欠いた行動でチャンスを捨てる結果となったのだった。

№20「あ、ありがとう!本当にありがとうございます!あ、貴方が―――貴方が助けてくれたおかげで、ぼ、僕は命拾いしました!!」

気が付くと、俺の側でさっき助けた№20の、同年代と思わしき少年参加者が目から大粒の涙をこぼしながら、俺に対してただひたすら、繰り返すように感謝と礼の言葉をひたすら述べ続けていた。

俺「ああ、もー、馬鹿なゲームで命を粗末にするなよな……」

№20「はいっ!貴方のおかげで助かったこの命を――無駄には決してしません!」

今のは、俺が最後のチャンスを逃す結果となったコイツに対する多少の皮肉も込めて言ったつもりだったが、№20はそんな俺の言葉を受け止めて、相変わらず頭を下げ続けていたのだった。



結局、三名の100万円獲得者の中に、オズマは入る事無く、オズマの獲得賞金は――0円!さらに、今回参加した20名中の8人はゲーム中にパックちゃんによって捕食!
永遠にこのアインクラッドからも、そして現実世界からも帰らぬ存在となったのであった! by立木ナレ 
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