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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第百三十九話

一夏がロリsから解放され、昼食を取れたのはそれから三時間と少しの後だった。

もはや早めの夕食である。

「ひどいめにあった……」

もそもそと焼そばを食べながら一夏が呟く。

「その割には気持ち良さそうだったわよ?
私もやってみたいわ」

「シャオシンに頼んでなんか動物を憑依させて貰え。話はそれからだ」

「あら、アタシは円香達の方に回りたいのよ?」

「やめてくんない? マジでキツいんだけど」

「精神的に?」

「精神的に」

一夏は自分から束の膝の上にすわった。

「はふー…」

「あんた…自分の行動が完全に猫ってわかってる?」

束がゆったりと一夏を抱き締めた。

一夏はそれに身を任せている。

それは構われすぎた猫がそっけない人の近くに行くのに似ていた。

「だって束さんは悪戯しないもん」

(もんって…。いや似合ってるけども……)

束が一夏を抱き締めると、その豊満な胸がふにゅりと形を変える。

「束博士。ブラは?」

「ん?窮屈だからしてない。バンソーコー」

「貴女もですか…」

「『も』? あぁ、箒ちゃん巫女服だもんね…」

当の箒はロリsにキスのレクチャーをしていた。

「いいか、女同士のキスというのはそれだけで男を魅力するんだ。さぁやって…」

「いい加減にしなさい!この淫魔!」

ゴッ! と箒の頭に鈴の拳が落ちる。

「ん?どうした鈴?」

「あぁぁぁぁぁぁ!手が! アタシの手がぁ!」

「あー…。箒のやつ最近デフォルトで剛気功纏えるようになったからな…」

手を押さえ跳び跳ねる鈴。

「あんしんしろー。ヒビの一つもはいってないぞー」

「入ってたら大事よ!」

涙目の鈴をからかいたい一夏だったが、時計を見るとそうもしていられない。

「おい、箒。そろそろ4時だぞ」

「ん。そうだな。戻るか」

一夏と箒が立ち上がり、結界が解かれる。

「鈴。俺達ちょっと儀式とかあるから抜けるわ」

「お清め?」

「そうそう」

一夏と箒が抜けた後、束と鈴とロリsが残された。

「あの、束博士」

「なんだい鈴ちゃん?」

「その…一夏の事…なんですけど…」

「いっ君がどうかした?」

鈴は声を小さくして言った。

ロリsには絶対に聞こえないように。

「千冬さんを受け入れたってどういう…」

束はイノセントのCADを起動し、遮音フィールドを張った。

「いっ君はちーちゃんを抱いたんだよ」

「やっぱり、そういう意味なんですね…」

「男女の仲ってやつさ。ちーちゃんはずぅっと悩んでたんだ。血の繋がった弟に姉弟愛以上の物を抱いていた事を」

「千冬さんと一夏って、夫婦みたいですよね。
特に、一夏が千冬さんと暮らしはじめてから」

鈴は千冬が突然帰って来た所に居合わせた事があった。

鈴には、その時の一夏が夫を待つ妻に見えた。

「うん。ちーちゃんは何時からかいっ君と過ごせなくなっちゃったから、その反動だよ。
いっ君が自分の家に戻ってからも、ちーちゃんはあんまり帰ってやれなかったらしいし」

「そうですか…」

束が、鈴の頭を撫でる。

やさしく、慈しむように。

「悩んでるんだ? 自分がその間に入っていいのかって」

「なんでそれを…!」

「箒ちゃんから聞いてるんだよ。ハーレム計画については」

「箒が、貴女に話さないはず無いですもんね」

「うん。私も聞いた時には正気かって思っちゃった」

「束博士もそうなんですか?」

「そうだよ。私は稀代の天才。だけど人の心はわからない。わかるのはISだけ。
そのISだっていっ君にはかなわない。
鈴ちゃん。私だって一人の個人で、一人の女で…ただの人間なんだよ。
たしかにナノマシンで肉体は強くなったけど、心はただの人間…」

「…………」

「ふふ、以外?」

「はい。一夏や箒から聞いてた貴女は、弱音なんて吐きそうもないですから」

「うーん。鈴ちゃんくらいの関係の人になら話せる事ってあるんだよ。
家族や恋人には言えないけど、知り合いには言える事とかさ」

「そう、ですね」

「まぁ、その内鈴ちゃんも義理の妹になるんだろうけどね」

「一夏が他の人と恋仲になるのは、いいんですか?」

「ああ、そういえばそんな話だったね」

束がごめんごめんと言って、続ける。

「私はたしかにいっ君の恋人だ。
でもね、たぶんいっ君を一番わかってるのは私じゃない」

「橙、ですか?」

「そうそう。で、それに続くのが箒ちゃん、次にちーちゃん。三番目でようやく私」

束はクスッと笑った。

「それに、私達の中で魔法適性が一番高いのは箒ちゃんなんだ。
この意味、わかる?」

「一夏に並びうる?」

「近い。鈴ちゃん、いっ君の眼の事聞いてる?」

「【女神の瞳】でしたっけ」

「うん。それがいっ君だけが使える異能。
効果は視覚系統の超能力の全部乗せ。
いっ君はそれを使っていつだって私達を見守ってる。
個々人が持つ情報をオカルト的に見れるんだ」

その後、束は突然ニーチェの言葉を引用した。

乃ち、『深淵がお前を覗くとき』と。

「私と、ちーちゃんと箒ちゃん。この中でいっ君が見てるって知覚できるの、箒ちゃんだけなんだ。
だから箒ちゃんは知っている。自分に向けられる視線が減ることの意味を。
視線が減ることは、いっ君自身に危機が迫って、魔法力をそっちに割いている証拠だってね」

「箒って一夏が危ないときにはわかるって事ですか?」

「簡単に言えばね。箒ちゃんはきっといっ君が死にかけるのを何度も感じたんだと思う。
でもその感覚は私にはわかんないんだ」

「そんなの、わかる人なんていませんよ」

「普通はね」

暗に自分たちが普通ではない、と束は言った。

「箒ちゃんはいっ君に危ない事をして欲しくない。
きっと私達がいっ君に頼めば、いっ君はどこかで私達と静かに暮らしてくれる。
でも箒ちゃんが望んでるのは、そんな監禁じみた平和じゃない」

「だから、心を繋ぎ止めるんですね」

「そう。そのための鎖」

「箒にとっては、苦肉の策、なんでしょうか」

「うん。いっ君に自分だけを愛して欲しい。
でもいっ君に居なくなってほしくない。
箒ちゃんはそんなジレンマを私の存在で解決したんだよ」

「どういう事ですか?」

「いっ君が自分だけを愛してくれないのなら、それを楔や鎖としてもっと増やそうってね」

「でも、それって箒自身の気持ちはっ!」

「箒ちゃんはいっ君の事を誰よりもわかってる人間。だから、いっ君がどうして欲しいかわかる。私以上に。
箒ちゃんはね、いっ君を一人にさせたくないのさ。
今にも消えそうで弱々しい、そんないっ君の一面をしってるから」

「弱い? 『あの』一夏が?」

鈴にとっての一夏は、ヒーローだった。

異国の地で右も左もわからない自分を助けてくれた。

そして、自分と打ち解けてくれた。

そして、何かあれば守ってくれた。

その小さな小さな背中は、鈴にとって誰の背中よりも大きかった。

「いっ君だって、人間さ。支えてあげられる人が必要なんだ。
でも、いっ君を支えられる人ってすくないんだよ」

「アタシは、その少ない内の一人になれますか?」

「もうなってるよ。いっ君を好きでいてあげられたら、それだけでね」

束がエレンとリムを指差す。

「あの子達はいっ君と過ごした時間は君より少ない。でもいっ君はきっとあの姉妹の好意をうけいれるよ」

「…………」

鈴は隣のベンチでじゃれる子供達を見つめた。

彼女らが一夏を好いているのは、先の事を考えれば合点がいく。

「さぁ、鈴ちゃん。貴女の本音は?
いっ君とどうなりたいの?」

「アタシ、は。一夏と付き合いたいです!」

「ならそれが答えだよ鈴ちゃん」












「ふふ、『正史の私』が私を見たらなんて言うかな」

「束博士?」

「あ、ついでに教えとくさ、鈴ちゃん」

「はい」

「この世界って小説の世界なんだよ」

「はい?」

「ま、冗談だけど」

「アタシに天才ジョークを振らないでください」

(『正史』の私には恋人なんていない。
でも一人でISを作り上げた)

(私は一人ではISをつくれなかった。
でも、私にはいっ君が居る)


「ふふ。私は『私』より優れてなくっていい…いっ君が居てくれるから…」

「あのー。一人で納得しないでくれませんか束博士」

「ごめんごめん。じゃ、コイバナしよっか鈴ちゃん。
いやぁ、こういう話ってあんましたことなくてさー。
ちょっと付き合ってくれる?」

「はいっ!よろこんで!」
 
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