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真田十勇士

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巻ノ百五十二 迎えに向かう者達その十三

「然るべき備えを置かれる」
「江戸のですか」
「おそらくそこは日光か」
 この地にというのだ。
「然るべき備えをもうけられてな」
「それを終えてからですか」
「おそらくご自身を祀らせてな」
 自身が死んだ後でというのだ。
「江戸の鬼門の備えとされるであろう」
「それがあの方の最後のされるべきことですか」
「うむ、それを果たされるまでな」
「あの方はお亡くなりになる訳にはいきませぬか」
「天下の為にな。もっともそなた達島津家と毛利家それに黒田家あとは伊達家か」
 秀頼はここでこうした家々の名前を挙げた。
「機会があればな」
「そのことはお気付きでしたか」
「言わなかったがな」
 それでもというのだ。
「そうであろう、しかしな」
「天下泰平の為に」
「あの方はそこまでお考えでじゃ」
「日光のことまでされて」
「そしてじゃ」
 そこまでしてというのだ。
「世を去られる、そしてな」
「その後で」
「あの方は去られるおつもりでな」
「去られるべきですか」
「真田達もそのことはわかっておる」
「では」
「あの方の御首を取らずな」
「帰って来られますか」
「そうなる」
 まさにというのだ。
「そしてな」
「その真田殿達を」
「迎えて欲しい」
「わかり申した、しかし右大臣様は」 
 家久は瞑目する様にして述べた。
「聡明な方ですな」
「そうであればよいがな」
「やはり無念です」
 死んだことになり薩摩に身を潜めている今はというのだ。
「どうしても」
「いや、やはり天下人はな」
「大御所様の方がですか」
「相応しい」
 家久にこう語った。
「まさにな」
「では」
「うむ、余は天下を望まずな」
「この薩摩において」
「一生を過ごそう、国松がそうしてくれるなら」
 幕府が黙認し木下家が大名にしてくれるならというのだ。
「その様にな」
「さすれば」
「うむ、余はそれでよい」
 秀頼自身はとだ、確かな声で答えてだった。
 彼は幸村達を待つことにした、勝って帰って来る彼等を。


巻ノ百五十二   完


                2018・4・23 
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