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9部分:第一話 最初の出会いその九


第一話 最初の出会いその九

「ねえ」
「何?」
「つきぴーも受けるのよね」
 こうその隣にいる娘に問うのだった。
「八条高校」
「ええ」
 返事はすぐに返って来た。
「そのつもりだけれど」
「そうなのね」
「確か一緒よね」
 彼女の方も椎名に言ってきた。黒い綺麗なロングヘアの小柄な女の子だ。目は垂れ目であるがかなり大きくはっきりとした目である。顔立ちはかなり整っていてまだ幼さが残る。だが表情は弱々しげだ。
 そして胸がかなり大きい。服の上からでもわかる。その彼女が椎名に言うのだ。
「愛ちゃんも」
「うん、一緒」
 その通りだと答える椎名だった。
「つきぴーとね」
「そうだったわよね。それにしても」
「どうしたの?」
「若し同じ八条高校になったら」
 彼女の方から言うのだった。
「また一緒に仲良くしようね」
「勿論」
 今の質問は椎名にとっては答えは一つしかないものだった。
「つきぴーとはずっと友達だよ」
「有り難う」
「御礼はいいから」
 そしてそれはいいというのだ。
「それにしても」
「それにしても?」
「私をつきぴーって言うのは愛ちゃんだけなのよ」
「そうだったの」
「今までね」
 こう前置きしてからの言葉だった。
「西堀月美っていうじゃない」
「ええ」
 それが彼女の名前だというのだ。そのロングヘアの女の子のだ。見れば眉はかなり細く流麗であるが表情と同じで儚げな感じだ。
「それでいつも西堀って呼ばれるだけだったの」
「名前では?」
「お父さんとお母さんだけ」
 両親だけだというのだ。
「名前を呼んでくれるのは」
「そうなの」
「仇名は今までなかったから」
「つきぴーって仇名も?」
「なかったわ」
 実際にそうだというのだ。月美は静かに話を続けていく。
「愛ちゃんが最初なの」
「私が最初」
「そしてお友達になってくれたのも」
「私がはじめてなの」
「うん、愛ちゃんが声をかけてくれて嬉しかった」
 こう椎名に言うのだ。
「私ずっと」
「そういえばつきぴーも」
 今度は椎名からの言葉だった。月美に顔を向ける。見れば月美はその整った顔を少し俯けさせてだ。そのうえで話をしていた。
「私と話す時は」
「お話する時は?」
「敬語じゃない」
 このことを言ったのだ。
「私の時だけ敬語じゃないね」
「だって愛ちゃんの方から言ってくれたから」
「敬語じゃなくていいって」
「ええ、だからなの」
「そうだったね」
 そう言われてだった。椎名の顔が微かだが笑ったものになった。
 
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