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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE53 神聖剣を持つ騎士団長

西暦2023年11月某日。――ついにデスゲーム、ソードアート・オンラインが始まり、全プレイヤー達がゲームの囚人と化してから一年以上の月日が経過していた!

だが、未だに最前線は第47層!アインクラッドの半分にも満たぬ状況!しかしながら、最初の第一層をクリアするのに約2000人の犠牲者と、一カ月の月日を要した事を考えれば、攻略のペース、及び生存率は向上しているのは確かであり、プレイヤー達の中にも僅かながら、このゲーム世界からの解放を現実的におぼろげながらも見えるようになってきていたのであった! by立木ナレ



俺達攻略組のプレイヤー達は第47層の転移門広場に集められていた。招集を掛けたのは、今となってはアインクラッドの中でも最強と称される攻略ギルドの血盟騎士団だった。

結成そのものは第25層フロアボス戦直後と、DKB(ドラゴンフリゲーツナイト)……今は他のギルドを吸収合併し、聖竜連合(せいりゅうれんごう)と呼ばれるようになった元DKBはおろか、俺達のギルドMBTなど、攻略初期の時点から結成されていた古参のギルドを差し置いて、攻略の主導権を最も強く握るギルドと化していた。

クライン「聞いたかオズの字よぉ」

俺「ああ、聞いたぞ。アンタがまたNPCの女に下手な事仕出かして、黒鉄宮送りになりかけたって事だよな?」

クライン「て、てきとーなこと言ってんじゃねーよ!つーかまだ、俺の話も聞いてねーじゃねーか!」

俺「テキトーな事を言われた割には、随分な慌てようだな」

俺に陽気に声を掛けてきたのは、ギルド『風林火山(ふうりんかざん)』のリーダーのクラインだった。無精ひげを生やした侍風の装備に身を纏い、頭に悪趣味なバンダナを捲きつけているこの男は、ソードアート・オンラインがデスゲーム化する前の時点で、ベータテスターのキリトにレクチャーを頼んだ男だった。

風林火山はKobよりも更に遅めの、攻略組参加ながらも、刀使いであるリーダーのクラインの実力は既に攻略組の中でも第一線級で、攻略組の一角を担うギルドになりつつあったのだった。

クライン「いやなぁ、俺が言いてーのはよぉ、今回のボス攻略会議の招集を掛けたのはKob――結盟騎士団なんだがよ。普段は副団長のアスナが呼び掛けてるから、俺等も大喜びで集まるわけなんだが―――」

俺「そこで、俺も同列扱いするな……」

クラインも、血盟騎士団の副団長で、アインクラッドではトップクラスのアイドル的人気を誇るアスナのファンの一人であり、前に俺はクラインがユッチと共に、アスナの魅力について嬉々として語り合っているのを見てしまったのを、一日でも早く記憶の中から消し去ろうと奮闘している最中でもあった。

クライン「今回は、ちげぇみてーでよ。―――なんと、あの騎士団長様からの直々の呼びかけだそうだぜ」

俺「へぇ~、確かにあのヒースクリフ騎士団長殿が直々とは、珍しい事も有るもんだな」

血盟騎士団団長のヒースクリフは、アスナを始めとした精鋭クラスのプレイヤー達を中心に構成される最強ギルドを結成した男だ。

そのカリスマ性もさることながら、ヒースクリフは全てのプレイヤーの中でたった一人、奴しか所有していない―――ユニークスキルと呼ばれる、スキルの『神聖剣』を習得したプレイヤーであった。
それによりヒースクリフは有り得ないほどに高い防御力を獲得しており、聖騎士ヒースクリフはアインクラッド最強の名を欲しいままにする存在となっていた。

最も、ヒースクリフ自身は戦闘外では静観している事が多く、ギルドの運営や作戦指揮は主に副団長のアスナが務めているとの事なので、こうしてヒースクリフから攻略組を招集するのは確かに珍しい事だった。

レイナ「……その騎士団長が来たみたい」

俺「ああ、相変わらず、歩いてるだけで存在感出しまくりだな」

転移門広場の前に真紅の騎士鎧を身に纏い姿を現したのは、血盟騎士団の団長のヒースクリフは、灰色の髪を後ろでくくり、真紅のロープを身に包んだ、20代半ばから後半程度の年齢の男だった。

クライン「おおっ!アスナさんもついに現れたか!相変わらず見女麗しゅうっ!!」

が、刀を腰に携えたバンダナ男は、ヒースクリフの一歩後ろを歩く副団長のアスナを見て、目を輝かせていた。

俺「あんましジロジロと見てると、他の血盟騎士団の連中に睨まれちまうぞ」

クライン「んなこと言われてもよぉ~、ただでさえSAOはよぉ、プレイヤーの7割以上が男のむさ苦しい世界なんだぜ!攻略組に至っちゃ、十何人かに一人くれーしかいねぇんだぜ!普段からレイナちゃんとエルダさんを侍らせてるオメーには分からねーかもしれねーがよぉ!」

俺「デカい声で、自分の惨めさを叫んでると、変に悪目立ちしちまうぞ」

と言うか既に、攻略会議の場に集まったプレイヤーの何人かがクラインに対して奇異の視線を向けていたり、微笑ましい生き物を見るような視線を向けていた。

クライン「キリの字よぉ……オメーはアスナさんとそれなりに付き合いがあるんだろ?今度俺をアスナさんに紹介して、少しばかしで良いからお喋りする機会とかつくってくれよ~」

キリト「……え?あ、えっとぉ―――」

クラインは、自分のすぐ前にいたキリトの肩を掴み、声を掛けたが、キリトはいきなり声を掛けたらたことで、とっさにどんな反応をしていいのか分からないと言った様子で狼狽えていた。
そして、そのキリトの視線は、かつてのコンビのパートナーであり、今では自分とは全く違う立場となったアスナに向けられている気がした。

ヒースクリフ「さて、待たせてすまないね諸君」

転移門広場の中心にヒースクリフと、アスナを始めとした数人の血盟騎士団のプレイヤーが集まり、ヒースクリフが声を上げると、途端に静寂が辺り一帯を覆ったのだった。
さっきまで騒いでいたクラインも、この時ばかりは口を閉じて、静寂を保つ。

ヒースクリフは周囲のプレイヤー達が自分の話を聞く体勢が出来ている事を目で見ながら確認すると、落ち着いた物腰のまま話を再開する。

ヒースクリフ「本日、我ら血盟騎士団のパーティーは、第47層の迷宮区の最上階の階段を発見した」

そのヒースクリフの発表を聞いて、攻略会議の場に集まっているプレイヤー達の多くが息を呑んだり、『おお~』と言った、驚嘆の声を上げていた。

複雑な構図の第47層の迷宮区は多くのプレイヤー達が先に進むのを拒み、この調子ではボス部屋の発見はおろか、最上階に辿り着くのも当分先かと思われていただけに、ヒースクリフを筆頭とした血盟騎士団がまたしても功績をあげた事に何度も感心させられているのだった。

ヒースクリフ「我々のパーティーは明日の朝にでも18人のパーティーを結成し、最上段に必ず存在するフロアボス部屋を探し出し、発見次第出来ればそのまま偵察戦も行う計画も立てている。―――最も、偵察戦はボスの情報を事前に入手する為の重要な戦いでもあるが故に、各ギルド、是非自分のギルドからも参加させたいプレイヤーがいると言う希望は必ず出ると思うので、今のうちに希望を聞かせてもらいたいと思い、諸君らをここに呼んだわけだ」

それであれば、俺達のギルドからは、フロアボス戦の本戦からは既に遠退いているユッチと他数名のメンバーを送り込み、そいつらから直接フロアボス戦の話を聞かせてもらうと、俺にとっても好都合だ。




そして、攻略会議はヒースクリフ主導の元、順調に進み続けた。それぞれのギルドが明日の第47層迷宮区の最上階探索のメンバー、および、偵察戦に参戦させるメンバーを決定し、その日の攻略会議は終了となったのだった。 by立木ナレ



俺もレイナ、エルダを伴い、そのまま各自自由行動にしようとしていた矢先だった。今日の攻略会議を開いた血盟騎士団の団長から声を掛けられたのは。

ヒースクリフ「MBTの諸君。たまにはボス攻略戦以外の――私的な立ち話でもどうだろうか?」

俺「俺等みたいな、小規模ギルドと他愛のない会話で、騎士団長さんの身に役立つ話が出来るかどうか保証は出来ないんだけど―――」

俺としては別に、どちらでも構わない誘いなので、無難に適当な返事を返すと、ヒースクリフは僅かに苦笑してから言葉を返してくる。

ヒースクリフ「身に役立つかどうかは、この際は重要視する必要はないさ。同じ最前線に身を置く者同士として、たまには他愛のない会話で相手の事を少しでも知るのも悪くはないと思うのだがね」

エルダ「ええ、おっしゃる通りですね」

ヒースクリフの言葉に対してエルダが俺に対しては、絶対に見せることの無いような礼儀正しい言葉遣いと、気品に満ちた笑顔でそう答えた。

ヒースクリフ「そう言ってくれると嬉しいよ、なにせMBTは現攻略ギルドの中では聖竜連合に次ぐ古参ギルド、我々Kobにとっても先駆者に当たるからね。失礼のない様にしたいところだが、君達はギルドのリーダーであるオズマ君。サブリーダーのエルダ君―――そして、リーダーであるオズマ君の右腕とでも言うべきレイナ君と言う、3トップの君達は堅苦しい上下関係などに囚われない柔軟な若者たちのようだからね」

俺「先駆者だとか関係ねーよ。と言うか、実力に関して言えば、攻略組の中でも唯一のユニークスキル持ちの騎士団長さんに勝てる奴なんていないだろうしな」

おそらく、俺が納刀術スキルと片手直剣のスキルを臨機応変に使い分け、ソードスキルの4連続コンボを全て決めたとしても。
攻略組で群を抜いた防御力を誇るヒースクリフの鉄壁のガードを崩せる可能性は低いだろう。

ソロプレイヤーながら、攻略組最強格のキリトも以前に、あのユニークスキルはゲームバランスすら超えたスペックを秘めており、奴を超えるプレイヤーが現れるとしたら、十中八九、同じユニークスキルを持った者が、新たに現れない限りはあり得ないだろうと言っていた。
更に言えば、仮に他にユニークスキルを得たプレイヤーが現れたとしても、ヒースクリフはこのSAOと言うゲームに関して他のプレイヤー達と比較しても、極めて抜きんでた情報量、知識を有している為、その差を埋めて上回るのは至難の業だろうとも言っていたのを俺は覚えている。

レイナ「……どうして、どうやって、貴方はそのユニークスキルの『神聖剣』を獲得したの?」

ヒースクリフ「ふむ、なかなか難しい事を聞いて来るね君は……」

誰もが気になっている事だが、相手が血盟騎士団の団長であるヒースクリフと言う事も有り、中々恐れ多くて聞けない質問を、レイナは躊躇う事無く、ストレートに尋ねたのだった。

ヒースクリフは自身の最大の象徴であるユニークスキルの事を不躾に聞かれたにもかかわらず、まるで嫌な顔一つする事なく、腕を組み、数秒間の沈黙の後に口を開いた。

ヒースクリフ「私自身――なぜ私にだけこのスキルが得られたのかは分からない。血盟騎士団が結成されてからしばらくした後に、身に覚えのないままにこのスキルが獲得スキルの一覧に加わっていたから、私は空のあったスキルスロットにこれを習得させた結果、今に至るわけさ」

レイナ「……そんな事が、あり得るの?」

俺「まるで、神様の贈り物なんて――そんなおとぎ話染みた話だな」

ヒースクリフ「ふむ、実際に私も話していて、おかしなことを口走っているような気になるが、これが実際にあり得た話だからね」

そう言い切られれば、ヒースクリフの説明に対して、どこがどうこうで矛盾しているなどと俺達に指摘できるわけがない。
何せユニークスキルは今の時点ではヒースクリフが習得している神聖剣一種類だけであり、正規の習得方法など一切分かっていないのだから。

ヒースクリフ「オズマ君は、スキルスロットは現時点ではすでに全て使用済みの状態かな?」

俺「いや、最近になってレベルアップでスキルスロット欄が一個増えて、その空きにまだ何も習得させてない状態だな」

なので、俺はそろそろ新しく増えたスキルスロットにどんなスキルを習得させるべきかを決めようとしているところだった。
一度習得したスキルを外してしまった場合、スキルの熟練度は0になるが、習得したばかりで熟練度が0に近いスキルであれば、別に外すのも惜しくないので、物は試しと言う感じで、色々と代わり代わりに習得してみるのだって全然ありだった。

ヒースクリフ「オズマ君、君は攻略組の中でも最高峰の空間認識能力を持っているのではないかと私は考えていてね―――それを生かしたスキルを習得してみてはどうかと、思ってみたりもするんだよ」

俺「それはよく言われるんだが―――それを生かしたスキルは果たしてどれが適任なんだろうな」

エルダ「確かにオズマ君の空間認識能力は私も見てて、何度も驚かされたわよ。相手の攻撃の距離感を完璧に掴んで、ワザとギリギリの距離で回避して、即座に反撃とか――――何度も見せつけられてるわね~」

結局、気が付けばヒースクリフとの会話は攻略関係の話になりつつあったが、特に気にする事は無く、しばらくの間そんな話を続けたのち、ヒースクリフの方から、ギルドメンバーからの呼び出しを理由に立ち去ったのであった―――そして、俺の元にあのユニークスキルが出現したのはそれから程なくした時の事だった。 
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