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空に星が輝く様に

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72部分:第六話 次第にその十


第六話 次第にその十

「どうしたの?」
「うん、何でもない」
 椎名はその赤瀬を後ろにやったまま言う。
「呼んだだけになったから。用事は終わったから」
「ああ、そうなんだ」
「有り難う、赤瀬」
 また言う彼女だった。
「お陰で助かった」
「何か知らないけれど助かったの」
「そう、助かった」
 今はこう言うだけだった。
「お陰で」
「うん、じゃあこのまま」
「このまま?」
「ここにいて」
「な、何よこの大きいのは」
「これがあれ?」
「そうみたいね」
 星華の後ろの三人は赤瀬を見ながらあれこれと話す。彼のその巨大な身体を見て完全に気圧されていた。椎名の完勝であった。
「三組の男のクラス委員」
「柔道部のホープらしいけれど」
「こんなにでかかったの」
「とにかく口では何でも言える」 
 椎名はこのことを三度言った。
「わかったわね」
「ふん、わかったわよ」
 星華はたまりかねた顔で返すしかなかった。
「それじゃあね」
「じゃあ赤瀬」
「何?」
「私はこのクラスに残るけれど」
 こう言うのだった。
「それじゃあね」
「うん、また」
 こうして赤瀬は自分のクラスに帰る。だがそれでもだ。椎名は残り月美のクラスに残った。そのうえでだ。彼女の傍に居続けるのだった。
 四人は苦々しい顔で黙るしかなかった。しかしそれでもだ。その鬱屈とした思いは残った。その顔で今はただ苦い顔でいるだけであった。
 そしてだ。その昼休みにだ。四人は校舎の屋上でだ。その苦々しい顔をそのままにして銘々椎名に対する不平を述べていくのだった。
「一体何だってのよ」
「全く」
「そうよ」
 こう話すのだった。
「急に出て来てどうなのよ」
「何?口では何でも言えるって」
「何様なのよ」
「そうよね」
 それについては星華も全く同じ考えだった。むしろ彼女こそが最も不平を抱いている人間だった。その不平をありのままに話す程だ。
「あいつだけでもあれなのに」
 星華はその忌々しげな顔で話す。
「何か近寄りにくいよね」
「全く。近寄りにくいっていうか」
「小さいのに視線が鋭いし」
「何も言えないのよね」
 彼女にも気圧されていたのである。
「しかもあのでかいのもいるし」
「そうそう、あいつね」
「化け物?あれって」
 こうまで言うのだった。
「あんなのがいたらどうしようもないじゃない」
「でかいのがね」
「二人がかりなんて」
「あの二人は絶対に避けないとね」
 星華はまた話す。
「それにしてもよ。あいつが西堀の横にいつもいたら」
「どうしようかしら」
「それじゃあ」
「どうしよう」
 また話す彼女達だった。
 
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