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空に星が輝く様に

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68部分:第六話 次第にその六


第六話 次第にその六

「それはいいから」
「御免なさい、だったら言わないわ」
「それは」
「そうして。ところでだけれど」
 その彼女達はそれぞれ屋上のフェンスのところにいる。そのうえであれこれと話をしているのである。椎名はそこに来て問うたのだった。
「西堀さんがクラス」
「あっ、聞いただけなの」
「私も」
 まずはこう返す彼女達だった。
「だから詳しくはないけれど」
「また聞きだし」
「確かな話じゃないけれど」
「いいから」
 それでもだというのだ。
「それでも。聞かせて」
「そう。そこまで言うんだったら」
「あのね。何か西堀さん」
「うん」
 当然本人は今ここにはいない。月美は昼食の後大抵学校の図書館に向かう。椎名もよく一緒に行くが今日はたまたま屋上に出たのである。
「四組で孤立してるっていうか」
「お友達いないみたいなの」
「それでちょっかいかけてくる相手もいるみたいだし」
 こう椎名に話すのだった。
「相手が誰もわからないけれど」
「何かそうらしいのよ」
「そういえば。椎名さんだったわよね」
「うん」
 名前を呼ばれた問いにはすぐに頷く。
「そう」
「西堀さんって四組のクラス委員だけれど椎名さんは三組のよね」
「だったら一緒になる時あるじゃない」
「本人に何処となく聞いたら?」
「それどうかしら」
「わかった」
 椎名はその言葉にこくりと頷いた。ここにいる誰も彼女が月美の親友だとは知らない。あくまで彼女だけが知っていることであった。
「それじゃあ」
「私達にとってはいい娘だけれどね」
「そうよね」
「椎名さんってね」
「西堀さんはいい娘なの」
 さりげなく月美の評判も聞いておくことにした。今後に役立てる為だ。
「とてもね」
「そう。いい娘なの」
 椎名はその評判を聞いてまずは内心喜んだ。親友の評判のよさを知ってそれで喜ばない人間はいない。そういうことであった。
「そんなに」
「優しいし気配りしてくれるし」
「落ち着いてるしね」
「気品もあるし」
 評判は確かに上々である。
「大和撫子って感じでね」
「居合も凄いし頭もいいし」
「ちょっとおっとりし過ぎてるけれどね」
「引っ込み思案だし」
「そうなの」
 椎名は月美の欠点を聞いても知っているとは言わなかった。これもあえてである。
「そういう娘なの」
「そうよ、いい娘だから」
「私達は意地悪とかしないからね」
「絶対にね」
「意地悪は駄目」
 許さないと言いそうになったがそれは心の中で留めた。代わりの言葉だった。
「そういうことは」
「そんなの私達だってわかってるし」
「ねえ」
「仮にも武道やってるし」
「そうそう」
 彼女達もそれはわきまえていた。
「そういうことはしないから」
「何があってもね」
「わかった」
 それを聞いて静かに頷く椎名だった。そのうえで今はその場を別れた。その日の午後の休み時間であった。彼女はすぐに動いたのだ。
 
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