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Fate/BBB ー血界戦線・英霊混交都市ー

作者:海戦型
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宝具の相性って概念を押し付ける形で決まるんだけど、じゃあ概念の押し付けが効かない敵はどうする?って話

 
前書き
この小説のパワーバランスなんですが、英霊はあくまで人類の亜種くらいのレベルにしています。型月世界では神秘は科学によって淘汰されるという先細りの世界ですが、血界戦線はどう見ても神秘も科学もあるんだよ状態ですから、一種サーヴァントの超えられない制約を超えた部分も生まれると思っています。つまり、英霊も成長すると。

※血界戦線の世界で「滅殺」は一度戦闘不能にした程度の意味なので死んでません。 

 
 
 英霊はもはや人間ではないのだが、れっきとした人類ではある。だから受肉したらメチャクチャ強いけどちゃんと人間になるし、基本的には生前以上の強さを得ることはないとされている。まぁ、グランドオーダーやその後を知るサーヴァントからは「ええー、本当にござるかー?」と大分疑問視されていたりもするのだが、それはさておき。

 英霊はかつての人間で、性質としては人類である。

 で、あるならば――『現在の人類では決して殺し得ない存在』は、英霊たちにも殺せないと言える。


 『血界の眷属』、と呼ばれる存在がこの世界にいる。
 いつ、誰が、何のために作り出したかもわからない『DNAに直接術式を書き込む』というキャスタークラスも頭を抱える出鱈目極まりない方法で製造された『改造人間』――。

 またの名を、吸血鬼。
 英霊たちも聞き慣れた、代表的な人類の敵である。

 当初、英霊たちはライブラから提供された情報を聞いた時に「やはりか」と思った。彼らの元いた世界でも、吸血鬼と言えば人類悪を除けば間違いなく人類最大の敵である。月のアルテミット・ワンこと朱い月のブリュンスタッドに端を発する――この件は長いので省略させてもらうが、とにかく死徒二十七祖に匹敵する敵がいるのだ、と彼らは思った。それこそが十三人の長老(エルダーズサーティーン)なのだと。

 とはいえ、死徒二十七祖は能力に大きなバラつきがあるものの決して英霊に勝てない類の存在ではない。一部怪しいのもいるが、13体なら何とかなるか、と英霊たちは当初思っていた。
 少なくともカルデアの顔であった実績から代表を務めさせられたダ・ヴィンチちゃんはブリッツ・T・エイブラムスの説明を聞いた際そういう認識だった。ちなみに彼が幸運EXの男であることは、さっきライブラに突入しようとした龍的な何かが隕石を三発喰らって墜落したところを見て把握している。

 ――この時の英霊たちは、事前情報が少なすぎることもあって、フェムトのゲームは人類史に残るレベルの激戦だったと思っていた。余りにもHLを低く見積もりすぎていたのである。

「だが、十三人というのはあくまで最初に確認できた分だけでしてな。実際にはもっといるのです」
「ふむふむ」
「前に一度、永遠の虚の下にある異界にどれぐらい眷属共がいるかレオくんの義眼で確かめてもらったのですが……」
「ほうほう。奇しくもこの私と同じ名前を持つレオくんが。それで結果は?」
「……『下は、長老級を含む吸血鬼共の巣窟である』。それが結論です」
「うんうん……うん?」

 ダ・ヴィンチちゃんは、十三体の筈の敵が急に百三十体くらいに増える瞬間を見た気がした。あとになって思えばこの見積もりでも甘い可能性もあるのだが。ともかく、情報である。

「長老級になると従来の吸血鬼の弱点とされる十字架や太陽、聖なる武器の類は無意味と考えていただきたい。また、レオ君のような例外を除けば吸血鬼と一般人の区別をつけることは、被害が出てからでないと分かりません。一般人にも出来る唯一の判別方法は『鏡に映らない』程度ですな」
(うわぁ、死徒二十七祖とは根本的に作りが違うだけあってある意味あっちより面倒な……)
「また、吸血鬼はチリ一つ残さない性質の攻撃を受けても瞬時に再生します。凍らせても燃やしても魔術でも科学でも、人類はあらゆる撃滅方法を模索しましたが、未だ決定的な力を持たずにいます」
(げぇ、なんという再生能力……こりゃ『最悪』直死でもいないと厳しそうだ)

 直死じゃないと死なないというのはサーヴァント的には凄いことだ。
 しかし、エイブラムスはその『最悪』を平気で踏み越えていった。

「空間ごと消滅させても当然無意味です。再生します」
「ふむ……?」
「DNAレベルで相手を破壊する技術も開発されていますが、奴らの再生能力を前には正直焼け石に水。活火山にジョウロで水を差すようなものです」
「ふ、ふむ……?」
「また、伝説の牙狩りにはチリも残さぬぐらいに破壊しつくす超人もいるのですが、その超人に滅殺された吸血鬼も時間が経てば世界のどこかで復活します」
「えっ」
「また、HLの世界では概念や因果、確率等を限定的に操作する兵器等もあるのですが、やはり駄目でしたな。連中には概念的な力さえ通じないので死の概念を押し付けても暖簾に腕押しです。そもそも相手にされてすらいないといった具合ですな」
「ちょ、ちょっと待った!それでは――勝ち目がないのではないかい?」

 その言葉に、エイブラムスはいたって真面目な顔でこう返した。

「先程の言葉通りです。『人類はあらゆる撃滅方法を模索したが、未だ決定的な力を持たずにいる』……唯一、クラウス君とレオ君の二人が揃っている場合に限って、激戦の末に『封印』するのがやっとといった状態ですな」

 この日、英霊は初めて自分たちが『現行の人類と同じ立ち位置に居る』ことに気付いた。


 さて、この強敵の打倒に真っ先に名乗りを挙げたのがオジマンディアスである。
 地上にあってファラオに不可能なし、と口にして憚らない彼は自分にそいつを殺せない訳がないといつも通りフハハハハハ!と大笑いしながら出陣し――そして、酷く不機嫌な顔で帰ってきた。奇しくもこの戦いで、サーヴァントはやっとこの世界の吸血鬼のヤバさを思い知ったのである。

 オジマンディアスは太陽の化身、本来ならば吸血鬼が絶対に会いたくない存在であり、彼の振るう全ての力が吸血鬼にとって致命傷になる。しかしこの世界の吸血鬼の中でも長老級というのは、「神性存在が弄りまくった存在」であり、言ってしまえば超神秘と超科学をごちゃ混ぜにしたような、製造過程からしてあちらの世界ではありえないものだ。

 科学と魔術の混合。それはすなわち、「より高い神秘を秘めた存在ほど強い」というパワーバランスに矛盾をねじ込んで崩壊させるということだ。だから宝具の性質――「吸血鬼殺し」のようなものも、吸血鬼破壊までの具体的なメカニズムがなければ一切効果はない。というかそもそも宝具に対して人類でも対策が取れる。
 例えばだが、クー・フーリンのゲイ・ボルグは因果を逆転させることで必殺を成立させているが、この世界だと因果絶縁の技術を使われるとこの必殺は成立しなくなり、唯の魔槍になる。エクスカリバーを不可視にする風王結界とて単なる屈折率の変化であるため高度な観測技術ではあっさり形状がバレる。この世界では、宝具の優位性を崩す方法が多すぎた。

 結果から言うと、オジマンディアスのあらゆる宝具、あらゆる武術を以てして、長老級の完全消滅は不可能であった。

 それでも流石と言うべきか、戦いの中で相手の性質をやっと理解したオジマンディアスは『DNAレベルで相手を破壊する技術』――すなわち血闘術や斗流血法に似た性質の呪いを生み出し『(とりあえず)(げきは)』までは至っているのだから大概である。ファラオの力ってスゲー。
 ……本人からすれば苦戦と呼んで差し支えない戦いであり、あり得ないレベルの失態だったのは言うまでもない。オジマンディアスに類まれなるキャスターの素養があったから何とかなったが、これがカルナなどの純粋な武人ならば更に苦しい戦いを強いられたか千日首だったろう。

 プライドを傷つけられて本気で眷属撃破の研究を始めたオジマンディアスとは違い、最初から猛烈に血界の眷属を嫌う者もいた。ヴラド三世は言わずもがなだが、自分の体に神の血が半分流れている癖に神が大嫌いなギルガメッシュがそれである。彼はこの血界の眷属がありとあらゆる意味で気に食わなかったらしく、なんと慢心せず自主的に滅殺して回っている。
 もちろん、彼の財宝を以てしても完全消滅は出来なかったらしく、「ティアマトとは別の性質で手に負えぬ」と呟くのを親友エルキドゥは聞いていた。
 とはいえその傍若無人な理不尽っぷりは健在で、一部HL市民からは「14人目の王」とか言われている。そんな彼の宝具だが、この世界に来たせいで余計に蔵の中身が増えているらしい。流石に世界崩壊幇助器具までは持っていないようだが――何気にこれによって世界崩壊幇助器具は人類の作ったものではにことが確定するという研究者しか喜ばない事が発生している――余計に手が付けられなくなったことは言うまでもない。

 なお、ギルガメッシュはこの町のことは神以外大変お気に召している様子で、時々ザップと一緒に酒場でバカ騒ぎしている光景が目撃されている。

 とまぁ長くなったが、つまりこの長老級血界の眷属とはかなり上位のサーヴァントでなければ対応が出来ないし、致命も不可能なほど出鱈目に強かった。





 ――その出鱈目に強い存在からも恐れられる例外、裸獣汁外衛賤厳(らじゅうじゅうげえしずよし)を以てして「やりおる」の一言を言わせたサーヴァントが一体。

『――首を出せ』
「ゴべっ……!?」

 その太刀筋、神速という言葉さえも生温く、血液の一欠けさえ微塵に切り裂く。
 国家さえ殲滅するレベルの吸血鬼を、ただ一本の剣のみで彼は『全てを』切り裂いた。

「……我が剣ですら、未だ『滅殺』の域を出ず。未熟を恥ずるばかりなり」

 DNAレベルで死なないならDNAまで細切れに切り裂けばいいじゃないとばかりに世界中を飛び回り、只管に血界の眷属を狩る者の名が牙狩りと眷属たちの間に轟くのに、そう時間はかからなかった。
 眷属を狩る為に死後もなお再び鍛え直した剣筋。暗殺者の冠位を得るに至った究極の『不意打ち』。そして何よりも妥協を許さぬその精神性は、彼の者を更なる高みへと導いた。

「しかし心せよ、死すべき者よ。人間の刃はいずれ必ず貴様らの致命を抉り、首を永劫に断つものである――それまでの間、幾度でも鐘の音を聞くがよい」


 ――初代ハサン・サッバーハ。別名、『山の翁』。
  
 

 
後書き
今回もツッコみ所は多分多い。ギルとかオジマンとかは個人的な印象に依る部分が大きいことは否めません。でも初代ハサンは書き終わったあと「お、なんかそれっぽい」とか思ってしまいました。

個人的には初代様はあんまり好きじゃないけど、あの人くらいになると純粋な戦闘能力でヴェネーノは軽く超えてそうです。

血界の眷属倒せるほど強いか?という疑問を指摘されたのですが、血界の眷属は不死身なせいでだいたい防御ガバガバなので攻撃叩き込む分には余裕だと思います。 
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