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真田十勇士

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巻ノ百五十一 決していく戦その八

 望月にぶつかる、そして。
 望月はというと。その身体に。
 金剛石ではなくだ、砂を出した。そこにさらにだった。 
 金剛石とは別の何かしらの石に身体を変えた、その二つでだった。
 剛力とぶつかり合った、剛力は金剛石の身体で望月とぶつかり合うが望月の身体に付いた砂に動きを取られ。
 そのうえで望月と激しくぶつかり合う、しかし。
 徐々にだ、その砂と望月の今の身体の力にだった。
 押され遂に吹き飛ばされた、そうして何とか受け身を取ってだった。
 その後でだ、こう望月に言った。
「それは何の石じゃ」
「わしが修行の末に備えた金剛石のさらに上をいく石よ」
「その様な石があるのか」
「人の世にはないが六界にある」
 剛力に対して語った。
「わしは修行からそうした石のことを知りな」
「その石に身体を変える力を備えたか」
「そうだったのだ」
「そうか。金剛石も強いが」
「その石はそれ以上、しかもな」
「砂も出したな」
 剛力は望月のこのことも言った。
「そうしたが」
「左様、砂でお主の動きを少しでもな」
「絡め動きを遅くしたか」
「その少しがじゃ」
 まさにというのだ。
「勝負の分かれ目だからな」
「それで砂も出してか」
「お主の動きに影響を与えてじゃ」
「闘ったのじゃな」
「それがわしの秘術だった」
「わかった、わしの完敗だ」
 剛力は素直にこのことを認めた。
「首を取っていくがいい」
「首はよいわ」
 望月は剛力のその言葉に笑って返した。
「別にな」
「それはよいか」
「首を取らずとも勝った」
 このことは確かだというのだ。
「だからな」
「それでよいか」
「うむ、それに首なぞ取ってはじゃ」
 戦のこのしきたりを行ってはというのだ。
「重くて殿の御前にすぐに行けぬ」
「そのこともあってか」
「首はよい、勝ったというそのことを持ってな」
「真田殿のところに行くか」
「そうする」
「わかった、ならそうせよ」
 剛力は望月のその言葉を受けて笑って返した。
「そしてじゃ」
「そのうえでじゃな」
「真田殿を迎えに行くがよい」
「有り難く言葉、ではな」
「さらばじゃ」
「いい勝負であったわ」 
 二人で笑みを浮かべ合って話をしてだった、そのうえで。
 望月もまた最後の戦に勝った、そうして主のところに向かうのだった。
 根津と双刀の一騎打ちも佳境に入ろうとしていた、両者はそれぞれの刀で打ち合い切り合い激しい死闘を演じていたが。
 その中でだ、双刀は根津にこう言った。
「わしにここまで剣で渡り合った者はおらん」
「それはわしも同じこと」
「わしのこの二刀にな」
「その二刀まさに天下の腕」
 根津は双刀の刃を防ぎつつ彼に返した。
「わしでなければ今頃死んでおった」
「そうであるな」
「しかしじゃ、わしならばな」
 こうも言う根津だった。
「そのお主にな」
「勝てるというのじゃな」
「左様」
 その通りという返事だった。 
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