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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE44 ギルドホームを賭けた話

西暦2023年6月12日。最前線は第29層となり、恐らく数日中にはフロアボス戦が開始されるであろうとの見立てが、攻略集団の中で噂されている中、オズマはレイナ、エルダと共に第一層のはじまりの街を訪れていた。 by立木ナレ



俺「ほら、ご所望の素材アイテム一式だ」

リズベット「は~い、ご苦労様でした~。いや~、これだけあれば高位の防具や武器を造り易くなるから助かるわよ~」

俺達はリズベットから数日前に、最前線でも通用する装備を製造するのに必要な素材アイテムを集めてほしいとの依頼を受けていた。
装備を製造する際に、依頼する側のプレイヤーが素材アイテムを持っている分には良いのだが、鍛冶屋側のプレイヤーが強化素材を持っている場合、依頼する側は素材アイテムを用意する手間が省けるので、高い金を払ってでも良いから、すぐに手に入れたいと思っているプレイヤーも中に入る為、リズベットの様に店側が強化素材をある程度ストックする鍛冶職のプレイヤーは少なくなかった。

リズベット「早速、アインクラッドのニュースに、鍛冶屋のリズベットが強化素材一式入荷って一面に載せてもらわなくちゃね~」

俺「一介の鍛冶屋が強化素材一式入荷したくらいで、一面に載るかよ……」

エルダ「でも、リズの作る装備には私も結構お世話になってるわよ。武器の強化の時も含めてね―――この前作ってくれたこの剣だって、使い勝手は抜群だわ」

俺の横で、エルダが以前にリズベットに製造を依頼して作ってもらったレイピアを握り締めてそうリズベットを褒め称えていた。
ちなみに、リズと言うのはリズベットの通称だった。
エルダがリズの製造したレイピアを褒め称えると、リズも気を良くして、大声で豪快に笑いながら言った。

リズベット「でっしょ~?アンタってやっぱり話が分かるわよエルダ~、アンタみたいに物の価値が分かる人がアタシの武器を使ってくれれば、アタシの鍛冶屋としての名前もあがるから期待してるわよ~」

エルダ「ええ、第28層のフロアボス戦ではこの剣でLAボーナスを決めて見せたから、リズベットの作る武器は凄いな~って、言ってる人もいるかもしれないわね」

リズとエルダは楽しげに笑いながら談笑していた、そんな中――二人の楽しげな談笑を一歩引いたところで、レイナが無言で眺めていた。

俺「ボーっと見てないで、お前もなんか話したらどうだよ?お前のその防具だって、リズベット製なんだろ?」

俺がそうレイナに促すと、レイナは首を小さく横に振って、小さな声で言った。

レイナ「……彼女は多分――私を怖がってると思うから止めておく」

俺「それって――あの事の事か?」

レイナ「…………」

レイナは首を小さく縦に振って頷ていた。以前に俺、レイナ、リズの依頼で、リズが探し求めていた『匠の木槌』を入手しに行った際に、レイナは帰り道で襲ってきたPK集団の一人を返り討ちにして逆にPKした。

確かにあの時のリズはレイナがまさか、襲ってきた相手を返り討ちでPKするなどとは思っておらず、相手がPK集団の一味とは言え、呆気なく相手の命を奪ったレイナに対して恐怖心を感じているように、俺も思えていた。

そして、リズベットがレイナに対して抱いた恐怖心は、そのままレイナに伝わったのは言うまでも無く、レイナはその事を配慮してか、こうして久々に再会したのだが、リズに一言も声を掛けていなかった。

俺「まあ、レイナは普段から自分らあんまり声を掛けたりしないけどな……」

エルダを連れてきたのは幸いだったな。知り合って日の浅い二人だったが、数少ない女性プレイヤー同士と言うだけでなく、比較的コミュ力が高い者同士で、2人はすぐに打ち解けて、会うたびに談笑する仲になってた。

その後、俺達はリズベットから依頼の報酬である結晶アイテムと、ある程度の(コル)を受け取って、はじまりの街から転移門を使って離れようとした時だった。

「ちょっと待ってよ!このホームは私達が前から目を付けてたんだよ!それをいきなり自分達が買うとか、買う権利を掛けてデュエルで決めようとか、そんな勝手許されると思ってるわけ!?」

そんな、女性プレイヤーの怒りを孕んだ様な声が響き渡ってきたのだった。別に俺とレイナだけなら、そんな事は特に気にも留めないのだが、今回は同行者の中にエルダもいたので―――

エルダ「何の騒ぎかしらね?ちょっと様子見に行きましょ」

俺「どーせ、大したことじゃねーだろ。それにここは圏内なんだから――って聞いちゃいねぇ……」

エルダはあっという間に騒ぎが起きたであろう方に走って行ってしまったのだった。仕方なく俺とレイナも後を追い、人込みを掻き分けて、そこに辿り着くと、そこは二組のプレイヤーが対峙しており、その間に他の一人のプレイヤーが困り果てた表情を浮かべていた。

「勘弁してくださいよ~、俺達、このギルドホーム向けのハウスを買う為に苦労してお金を貯め続けて、ようやく目標額まで達したんですよ!それで、ギルドの他の仲間達に家を買って来るから、楽しみに待ってくれって言ったのに―――ここで横取りされちゃったら、仲間達に合わせる顔が無いんですよ」

さっき大声をあげたであろう女性プレイヤーの隣に立っていた、高校生くらいと思わしき棍を武器にしている、少年プレイヤーが対峙する二人の重装備のプレイヤー二人に対して、そう懇願するが、2人の重戦士はそんな身の上話を聞いたくらいで譲らず、苛立たしげな怒声を上げて言い返す。

重戦士A「やかましい!俺等だって最近になって、ここをホームにして活動するって考えた所なんだよ!それに金だってちゃんと用意してるんだ!」

重戦士B「ギルドホームを買うのに必要な金を持ったプレイヤーが二組……同時に同じホームを買いたいって希望してるってんなら、これはもうSAOプレイヤー同士、決闘(デュエル)で蹴り付けるしかねーだろうが!!」

重戦士A「当然の事だな、オメーもそう思うだろ仲介人さんよぉ?」

重戦士はギルドホームの仲介人らしい男に対して、眉間に皺を寄せた、威圧的な表情で、恫喝するようにそう言った。
その迫力に対して仲介人の男は、縮こまった様子で『あ、ええ、ですね……』と押し切られるようにそう口ずさんでいたのだった。

仲介人としては、この場合はオークション形式にして、より高い金額を提示した方にホームを売りたいのだろうが、重戦士二人は、これ以上の金額をあのホームに出す事を惜しんでいるようで、無茶な暴論を押し通して、ホームの購入する権利を決闘(デュエル)の勝敗で決定しようと持ち掛けているわけだ。

つまり、デュエルを要請している重装戦士の二人は、相手側の二人の男女のプレイヤーを相手に勝てる自信があると言う事だろう。

エルダ「いるわよね、ああいう横柄な連中って―――何か取り合いになると、その決め方を自分の得意分野での勝負に持ち込もうとする奴って」

俺「運動の得意な奴は、スポーツでの勝負に持ち込もうとする―――勉強の得意な奴は、勉強での勝負に持ち込もうとするって感じにか?」

俺は、自分の小学校時代での経験上から、エルダの言いたいことを俺なりに予想して、そう聞いてみるとエルダはクスクスと苦笑しながら頷いた。

エルダ「そう、それよ!特に学校なんてのは、勉強とか部活動を重要視してるから、それ以外の特技はあるけど、勉強やスポーツが苦手な子にとっては一方的に不利益ばっかり被るじゃない?」

俺「はは……ほんっとだよな」

俺はエルダの言った事に対して、この上なく共感して、自嘲の意味も込めて笑いながらそう言った。そんな、他愛のない現実(リアル)での出来事の経験を話していた時に、レイナが口を開いた。

レイナ「……あの重装戦士たち、最前線で活動してる小規模ギルドのプレイヤー達だわ」

俺「あ~、やっぱりそうだったか。何度か見た事のある連中だとは思ったがな」

レイナの指摘で俺は、最前線のフィールドで狩りをしている重装戦士たちの集団を何度か目撃している事を思い出していた。

最も、活動場所こそ最前線の層で行われているが、フロアボス戦には参加していないので攻略集団の一員と言うわけでもないが、それでも中層のプレイヤー達に比べれば、レベル的にも技量的にも上回ているのは確かだろう。

エルダ「あっちの男の子と女の子の二人は、見ない子達ね……」

俺「中層のプレイヤー達だろ。重装戦士の奴らだって、相手が最前線のプレイヤーじゃない事くらいは気が付いてるだろ。まともにデュエルでやり合えば、勝てるって分かり切ってるからそんな決め方を持ち込んでやがるってわけだな」

しばらく口論が続くかと思ったが、ギルドホームの仲介人が結局、重装戦士たちに押し切られる形で、購入の権利をデュエルの勝敗で決定する事で了承してしまったので、両陣営は、30分後に、この場所で一対一のデュエルを行う事になったようだった。

レイナ「……話がまとまった―――の?」

俺「かなり強引な形だがな……」

重装戦士たちは自分たちが負けるわけがないと、自負しているだけあって、30分後のデュエルが楽しみだと笑いながら、一時的にその場から立ち去ると。
その光景を見ていた野次馬たちも、もはやデュエルの勝敗は見るまでも無いだろうと考えて、次々と散っていったのだった。

短剣使い少女「アイツら、アタシ達がずっと前から狙ってたホームを横取りしようなんて!そんなにデュエルで決着付けるって言うなら、アタシが倒すわよ!」

棍使い少年「けど、マオ―――僕たちの腕前だと、どう考えたってアイツらには勝てないよ」

マオ「けど、ケイタ!折角必要な資金が溜まって、やっとギルドホームが手に入るところだって言うのに―――こんなところで買い逃しちゃっていいの!?」

ケイタと言う少年プレイヤーに対してマオと呼ばれた少女プレイヤーが、悔しみが籠った声を上げると、ケイタは握り拳を震えさせて、マオ以上に悔しそうな声を上げる。

ケイタ「そりゃ、僕だってこのままじゃ納得できないよ!迷宮区に行ってるテツオ達が帰ってきたら、ギルドホームを見せてやりたいのに―――アイツらにホームが買えなかったなんて報告なんてしたくない!」

その会話からして、2人は中層の小規模なギルドを組んでいて、ギルドホームを買うために金を溜め続けて、ようやく買えるぞってところで、あの最前線の重装戦士たちによってその夢を絶たれようとしてるんだろうな。

レイナ「……オズマ、どうしたの?」

俺「なんでもねぇ、つーか、用はとっくに住んでるんだからもう始まりの街には用はないだろ」

元々リズベットの依頼を果たしに来ただけなのだが、エルダがここの騒ぎを聞きつけて、それでこのやり取りを見ただけに過ぎない。
なので、ここで見た事は記憶の中に留めておくとして、一介の野次馬に過ぎなかった俺達は黙ってこの場を離れるだけ―――

エルダ「突然だけど、そのホーム。私達も買い取りに名乗りを上げさせてもらおうかしらね?」

俺「って、何勝手に名乗り出てるんだお前……!」

エルダが勝手に、仲介人に対してそんな事を申し出ていた。ただでさえややこしい状況下に更に事態をややこしくしに現れたようなエルダの出現に仲介はやはり、動揺するばかりだったが、それに対して当然二人の男女の内の一人が声を荒げる。

マオ「ちょっと何なのよアンタ!?さっきの連中と言い―――アタシ達の邪魔しないで!」

俺「買わねーよ!俺達は別にギルドホーム買う予定何て何時そんな話をしたんだ!?」

俺は即座にエルダを止めて、一瞬触発の状況を止めようとしたが、エルダは右手を広げて俺を制止するような動作を見せてから、楽しげな表情で更に勝手に話を続ける。

エルダ「はいはい、私の話はまだこれから―――それでね、お二人さん。貴方達にはホームの購入権を掛けたデュエルを辞退してもらえるかしら?」

ケイタ「そ、そんな―――」

マオ「冗談じゃないわよ!いきなりしゃしゃり出て来て、辞退しろなんて!」

ケイタが困り果てた表情で動揺し、マオが血管がぶち切れ寸前ではないかと思えるような表情に変貌する。
一方的に割り込んできて、そんな事を言えば、怒りを買うのは当然の事だが、この時俺は何となく―――エルダには俺にとっても悪く無い案があると何となく思ったのだった。

そして――エルダはケイタとマオを交互に見渡して、ニヤッと不敵な笑みを浮かべてから口を開く。

エルダ「ねぇ、君達。アタシらのギルドがデュエルで勝って、ギルドホームを購入したらさ――購入額+何かしらのレアアイテムでホームをアタシ達から買ってくれないかしら?」



エルダの提案を聞かされたケイタとマオは呆気にとられた様に口を開けて呆然とする。そして、オズマもそんなエルダの提案を後ろから聞き、呆れ半分、感心交じりのため息をついていたのであった!by立木ナレ 
 

 
後書き
今回の話は、キリトが月夜の黒猫団に加入し、当時の最前線よりも二層下の迷宮区にケイタ以外のメンバーと共に行っていた頃の裏話的な話でした。 
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