| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

FILE41 命の尊さとは・・・

第24層フロアボス『ザ・ジャンボ・スノーマン』が口から吐き出した冷気の攻撃によって、半数近くのレイドメンバーが氷漬けになり、行動不能となった!

オズマも下半身が氷漬け状態となり、身動きが取れないままになったものの、残ったレイドメンバー達の奮闘によりジャンボ・スノーマンを追い詰め―――ついに、レイナのとどめの一撃によりジャンボ・スノーマンは倒されたのであった! by立木ナレ




ジャンボ・スノーマンの身体が四散し、その場から完全に消え去ると、氷漬けになっていたプレイヤー達がその状態から解放されて、自由に動ける身となった。

そして、俺自身も氷漬けになった下半身の氷が消滅して、俺の身も完全に開放された形となった。

ユッチ「いやったぁ―――!!戻った!元に戻ったっす!いやぁ~、ボス部屋で動けなくなるってホント恐ろしかったっすよ~」

氷漬けから解放されたユッチが、解放された事に安堵していた。ユッチ以外の氷漬けになっていた者達も、ボスが倒された事を理解している様子だった。

俺「凍ってる間でも、意識はあったんだな?」

俺はその場で飛び跳ねて喜んでいるユッチに近づいて声を掛けると、ユッチは浮かれた笑顔のまま、こちらを振り向いて答えた。

ユッチ「あ、はい。凍ってからも皆が戦ってるのはちゃんと覚えてるっすよ。いや~、もしあのまま置いてかれたりでもしたら、完全に僕たちボスにやられちゃってましたからね~」

ボクスター「本当に助かりましたよ皆さん。皆さんがあの状況下で私達を守ってくれたおかげです―――カレラもよく頑張ってくれたね」

ボクスターは氷漬けにならずに戦っていたレイナやエルダに頭を下げて礼を言ってから、自分の身を挺して守ったカレラの頭を撫でて、褒めていた。

カレラ「べ、別に……同じパーティーで組んでるんだから……そんなの当たり前だし」

照れくさそうにボクスターの目から視線そそらして、普段の男勝りで粗っぽ性格が嘘のようにしおらしく口にするその姿を見ていると、やっぱりボクスターの妹なんだと俺は思っていた。



それぞれのパーティーがお互いの勝利、奮闘を称え合っていた。ボス部屋全体に勝利の余韻に浸り続けている最中だった―――奴らは約束通り現れるのである! by立木ナレ


ガチャモン「痛い!痛い!挟まっちゃったよモックなんとかしてぇ~!他の皆も何とかしてぇ~!」

モック「ちょっと、ちょっとガチャモン!あ、アンタ、なんで頭にバケツ何て被っちゃってるんですか!?それで完全に挟まって、抜けなくなるって中国の人じゃあるまいし―――あ、み、皆さん!皆さんもガチャモンの頭からバケツを引っこ抜くのを手伝ってくださいですぞ!この人ったら、頭にバケツ被って、完全に挟まって抜け無くなってるんですよ!」

キバオウ「知らんわボケェ!おんどれらだけでアホな事を何時までもやっとれやぁ!!」

まるで中国のニュースとかでよく見る、挟まり事故を演出しながらのガチャモンとモックだった。ガチャモンの頭には、その頭には明らかに小さいバケツが挟まっており、それをモックが引っこ抜こうと引っ張り続けていた。

そんな馬鹿げたやり取りに対してツッコミを入れるのは何時も通りキバオウの役目だった。

アスナ「本当に、馬鹿丸出しね……それで誰かが構ってくれるとか思ってるなら、むしろ哀れみしか感じないわよ」

キリト「ア、アスナさん……中々に厳しいコメントをするようになったな」

アスナがこの上ない軽蔑するような、冷たい目つきをガチャモンとモックに対して向けて、キリトがその鋭いアスナの視線を横目で見ながら、苦笑いをしていた。

モック「あ、アンタ達……まるで他人事じゃないですか!?困った人を助けようと言う精神を今の今まで学んでこなかったんですかね!?」

アスナ「まるで他人事じゃなくて、実際に他人事じゃない!困ってるですって―――どうせそんなのあんた達なら自力でどうにでも出来るんでしょ!?」

モックの糾弾に対して、アスナが猛反発の非難の言葉を送り返していたのだった。相変わらずガチャモンの頭にはバケツが挟まった状態のままで未だに抜ける状態が無かった。

モック「良いですよ良いですよ!もうアンタらの力なんか借りなくたって、私が自力でガチャモンを救って見せますですぞ!この私が―――ガチャモンを救って見せるのですぞぉ――――!!」

俺「救う相手が頭にバケツ挟まった奴じゃなかったら、素直に仲間想いな奴だって思われてたのかもな……」

エギル「てか、ボス部屋の扉が開かねぇみてーだぞ」

エギルが指摘して、俺もここで初めて気が付いた。第25層に続く階段の扉の前にALSやDKBのメンバーが数人集まっているが、ボスを倒した後も未だに開かず仕舞いの様子だった。

俺「まさかとは思うが、アイツらのこのやり取りが終わるまで、開かないとかじゃねーだろうな……?」

アスナ「全く迷惑極まりない話だわ!さっさと終わらせなさいよ!」

ユッチ「そーだそーだ!さっさと扉を開けろよお前ら!!」

アスナが眉間に皺を寄せて、声を荒げると、ユッチはそれに便乗するように同調していた。そして、アスナとユッチ、他にも数人のプレイヤーがガチャモンとモックに対してブーイングの声をぶつける中、モックは―――

モック「ぬおぉ―――!!ファイト、いっぷぁぁぁっつ!!」

モックが大声を上げてバケツを引っ張った時だった。ガチャモンの頭に挟まっていたバケツが、ポンッと間抜けな音を立てて引っこ抜けて、ようやくこれでボス部屋が開くと思った時だった。

ガチャモン?「いやぁ~、おかげさまで助かったでやんす~。興味本位でバケツを深く被って見ちゃったら、ガッチリハマって抜けなくなっちゃって困ってたんでやんすよ~」

俺「………………」

アスナ「………………」

キリト「………………」

ユッチ「って、誰だよお前!?」

そいつは、体型や体色はガチャモンと全く同じであったが、その顔は携帯などに使われる顔文字のような造りになっており、口調からして明らかにガチャモンとは別の誰かだった。

ガチャ之介「あ、オイラ――ガチャ之介(のすけ)って言うでやんす」

モック「ガ、ガチャ之介ですと……?私そんな人は知りませんですぞ!て、テイウカアンタはいったい何者なんですか!ガチャモンは一体全体、何処に行っちゃったんですか!?」

ガチャ之介と名乗るガチャモンの偽物は(ガチャモンもある意味では偽物みたいなもんだが)『いやぁ~』と呟いてから頭を掻きながら答える。

ガチャ之介「ガチャモンさんはリフレッシュ休暇を取って第64層に観光に行っちゃいましたでやんす。だからガチャモンさんが戻ってくるまで、オイラがガチャモンさんの代理人って事でよろしくでやんす~」

モック「ガチャモンがリフレッシュ休暇とか、代理人とか……私に何の一言も知らせないであの人ったら一体何してるんですかね全く……」

唐突に現れたガチャモンの代理人などと自称するガチャ之介の登場だったが、俺達からして見れば、そんな奴が現れた事などはまるでどうでもよかった。

アスナ「なにがリフレッシュ休暇よ……!普段から好き勝手してる癖に!」

エギル「もうコントは終わったんだろ?だったら第25層に続く扉を開けてもらえねーか?」

アスナがこの場にいないガチャモンに対して毒づき、エギルが扉の件で直接開けるように要求していた。

モック「あ、はいはい。もう何時でも開きますので、どーぞご勝手にお進みくださいですぞ~」

ガチャ之介「と言うわけで皆さん、ガチャモンさんがリフレッシュ休暇を終えるまでの間ですけど、
これからよろしくでやんす!」

俺達に挨拶をしてきたガチャ之介を相手にする者は誰もおらず、レイドパーティーのメンバーはそれぞれ、このまま第25層に進む者。一旦第24層の主街区に戻る者に分かれて移動を開始しようとしていた。

ボクスター「皆さん、今回はボス戦をご一緒に戦わせて頂きありがとうございました。僕は最後まで戦う事は叶いませんでしたけど、今回の戦いはこれからのボス戦を戦い抜くための貴重な経験になったと思います」

ボクスターはALSの一員として、一度主街区に戻る事を伝えてから、今回のボス戦の一件でのあいさつを俺達にしてきたのだった。

カレラ「相変わらず、兄貴は堅苦しいっつーの!こいつらがそんな事に気を使う連中じゃないって分かるっしょ?」

カレラがぶっきらぼうな態度でボクスターに対して呆れながらそう言い放つと、ボクスターが動揺しながら俺達に対して『本当にすみません……』とため息を付きながら言ったのだった。
そんなボクスターを見てエルダが微笑ましげに笑いながら最初に口を開いた。

エルダ「ま、それもそうね。これからもまた同じパーティーで戦う機会があるかもしれないからその時はよろしくね」

俺「そうだな、オタクらまだまだALSじゃ新戦力の扱いなんだろ?次の炙れるかもしれないから、その時は遠慮なく入ってくれ」

続けて俺が、軽い皮肉交じりにそう言うと、カレラは予想通りの反抗的な態度で『もー、世話にならねーよ!』と喚き散らしていたのだった。

そして、パーティーはその場で解散し、後はそれぞれ自分で25層に向かうか、主街区に戻るかを決めてから移動しようとしていた時だった。

レイナ「……どうして、あんなことしたの?」

俺「ん、なんだよ藪から棒に?」

俺はポーションでの回復を済ませた後、そのまま第25層に向かおうとしたのだったが、レイナが後ろから俺の防衣を掴んで、何時もに比べて弱々しく感じる声でそう呼び止めたのだった。

レイナ「……オズマはあの時、自分の身を挺して私を守ってくれた―――なんでそこまでするの?あのままだったら、オズマの方がボスにやられていたかもしれないのに」

俺「なんだ、またその話かよ」

それは既に俺の中ではとっくに終わった話――俺がレイナを助けようとして下半身が氷漬けになってしまった話の事だった。

俺「お前だってあのまま完全に凍ってたら、ボスにやられてた可能性が高いはずだろ?そう思ったら、何となく瞬間的になんとかしねーと、って思った程度の事だよ」

実際に、特に何かしら自分もレイナも両方助かる確証があっての行動ではなかった。あの時はとにかく、レイナが冷気を浴びそうになるのだけは理解し、瞬時にそれを自分に出来る方法で防ごうとしたらああなったと言うだけなんだ。

レイナ「……私には――」

レイナは数秒間の間を置いてから、俺の背中に額を押し付けた状態で話を続けた。

レイナ「……私には、人の命の重さ、尊さ、尊厳が分からない。――それが、現実世界での記憶が失われている事が原因なのかどうかは分からないけど……」

俺「やっぱり、記憶が戻ったらいいなとか思ったか?」

レイナ「…………」

俺は振り返らないままそう聞き返す。レイナの顔は見えていなかったが、レイナは無言で肯定したように俺は感じ取ったのだった。

そしてその後、レイナは俺にボスからドロップしたレアアイテムである結晶アイテムの『緊急回復結晶』を見せたのだった。
それは、所有者のHPが0になった時に自動発動し、所有者のHPを0の状態からHPの20%の状態で回復させると言う、HP0=死となるデスゲームのソードアート・オンラインでは一度きりながらも、死を回避させてくれる貴重な命を繋ぐアイテムだった。

レイナは命の尊さを理解していない自分が持っていても仕方ないと言って、俺に渡そうとしたが、俺はそれはレイナの物であると断っておいたのだった。




























西暦2023年3月31日。第25層攻略完了。アインクラッド解放隊は主力メンバーの大半を失う損害により、最前線から姿を消す事となった。

そして―――犠牲者の中の取るに足らない一人として、ボクスターの名前があったのであった……by立木ナレ 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧