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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE38 第24層フロアボス戦前。ニューフェイスたちとの挨拶


レイナがPK集団の一味を返り討ちにして、逆にPKしてしまった一件から数日が経過していた。攻略集団は第24層フロアボスが待ち構えるボス部屋を発見!――偵察戦が行われた結果、ボスモンスターの名前は『ザ ジャンボ スノーマン』通称『巨大な雪ダルマ』である事が判明したのであった。
そこで、攻略集団は改めてボス戦でのパーティーメンバーの編成が行われるのであった! by立木ナレ



エルダ「残りの二人はどうなるかしらね……」

俺「その辺りの事は、キバオウとかリンドが適当に話し合って決めるだろ」

俺達のパーティーメンバー6人中の4人はギルドメンバーである俺、レイナ、エルダ、ユッチでいつも通り決定した。
俺達が結成したギルド『MBT』のメンバーは10人になっていたが、実際にフロアボス戦で余裕を持って戦えるほどの腕前なのは創設時のメンバーである俺達だけ(ユッチは少々危ういが)なので、残りの二人は主にリンド率いるDKB(ドラゴンフリゲーツナイト)やキバオウ率いるALS(アインクラッド解放隊)から、正規の6人メンバーのパーティーから炙れたものを補充していた。

ユッチ「何って言うか、ALSやDKBの炙れ者の面倒を押し付けられるのも癪っすよね~、僕らの所に入れられるのって大抵は新顔だったり、ギルドの中で組む相手がいなかったとかの奴らじゃないっすか~」

両手を後頭部で組んでいるユッチが、半開きの目で欠伸をしながらそんな不平不満を漏らしていた。

エルダ「ユッチ君ったら、そんなこと言うもんじゃないわよ。アタシ達のギルドの中でボス戦に参加できるメンバーが4人だから、足りない分をALSとかDKBが補充してくれてるわけでもあるんだから」

エルダがユッチを軽く注意するが、ユッチは「えー」と幼い子供のようなごね方をする。

ユッチ「ですけどエルダさ~ん。ボス戦に慣れてない奴の世話係を担ってる状態なのも事実っしょ?今回はどんなひよっ子が入って来るのか知らないっすけど、足引っ張られちゃ溜まらな―――ぐへぇっ!!」

ユッチが減らず口を叩き続けていたが、その言葉は途中で横一直線の飛び蹴りにとって遮られたのだった。幸いにも、ここはまだ圏内でどれだけ攻撃を食らってもHPは減少しないのだが――豪快な跳び蹴りを食らったユッチは床に倒れて、ゴロンゴロンと音を立てながら転倒しその身体を転がらせていた。

「誰が足引っ張るんだよ!アンタ見てーなヘタレで虎の威を借りてるような奴に言われたくねーんだよ!」

エルダ「え、女の子……なの?」

たった今、ユッチに跳び蹴りを食らわせたその人物の姿を見てエルダがそう呟いていた。背丈は恐らくユッチと同じくらい小柄で、両手に腰を当てた態勢で、ユッチを怒鳴り付けたのは、生意気そうな目付きで腰まで届くほどのロングストレートの曲刀を装備した小娘だった。

レイナ「……もう一人もいるわ」

と、レイナが言った直後。そのもう一人が大慌てしている様子でこちらに駆け寄り、そして――ユッチを蹴り飛ばした少女にこう言い放った。

「ダメじゃないかカレラ!これからのボス戦でお世話になる人達に対して!すみません失礼な羽目をしてしまって!あの……大丈夫ですか?」

その青年プレイヤーは恐らく、もう一人のパーティーメンバーだろう。年齢はエルダより少し年上の、18歳程のメガネを掛けた穏やかそうな片手直剣を持ったプレイヤーだった。
その青年は仲間が仕出かしたことを即座に詫びると、ユッチを気遣い、安否を確かめていた。

俺「いや、大丈夫だろ。ここは圏内なんだからHPは減っちゃいない」

ユッチ「オズマさ~ん。そういう問題じゃないっすよぉ~」

ユッチはよろよろと立ち上がりながら、そう愚痴った後、自分に対して飛び蹴りを放った娘『カレラ』を睨みつけて喚き声をあげるのだった。

ユッチ「お前、いきなり何様だよ!?人様に向かって急に飛び蹴りしやがって!僕は攻略集団の先輩だぞ!つーか、僕の事をヘタレとか、虎の威を借りてるとか言いやがったな!」

いや、お前にとっては残念ながら、そこは大体割と的を射た発言だったな。

カレラ「うっせーんだよ!いっつもヘラヘラヘラヘラして、そのヤバくなったらそっちの強い奴らにすぐに頼って、アタシ等みたいに新顔のプレイヤーに対してはそうやって上から目線でウザいんだよ!分かってんのかああん!」

ユッチ「ひぃっ!!」

自分と同い年位の少女に恫喝されて、ユッチはあっさりと気圧されて、情けない声を上げていた。

「カレラ、止めなさいって言ってるだろ。それに女の子が何て言葉遣いするんだ!気を付けなくちゃいけないって何度も言ってるじゃないか」

まるで保護者のような振る舞いでカレラを注意する青年プレイヤーだった。するとカレラは不服そうな表情で口を尖らせて言った。

カレラ「だってコイツ、本当は大して強いわけでもねーんだよ。それなのにこっちの3人に便乗してボス戦に参加する常連の一員になっていい気になりやがってムカつくじゃん!」

「はあ……そうやってちょっとでも気に食わないと思った相手にはスグに喧嘩腰になる悪癖は困りものだな~――すみません皆さん、自己紹介がまだでしたね。僕は、ボクスターと言います」

ん?カレラにボクスターって―――こいつらのキャラクターネームの由来はまさか……?

エルダ「カレラちゃんにボクスターさんですね。私達はMBTの主力メンバーよ。今日は同じパーティーメンバーとしてよろしく頼むわね」

俺「ああ、お二人はその恰好からしてALSのメンバーか?」

俺は一旦施行を打ち切って、同じパーティーを組む事になった二人のメンバーに挨拶をする事にした。丁寧に俺達に応対をするのはやはり、ボクスターと名乗った青年プレイヤーだった。

ボクスター「はい、キバオウさんから今回初めて、フロアボス戦への参戦を認められましたけど、同じギルドメンバー同士で入れるパーティーが無くってですね。今回は皆さん4人とご一緒させてもらう形になりました」

カレラ「別に、アタシと兄貴の二人だけのパーティーでもよかったんだけどさ」

礼儀正しく会釈をするボクスターとは対照的にカレラはつまらなさそうな表情でそっけない事を言った。

ボクスター「すみません……カレラはこの通り、初対面の人に対しては余り素直になれないので……」

ユッチ「素直とかの問題じゃなくってさ、目上の人間に対する礼儀の問題じゃないっすかね~?」

カレラ「あーん!!何時テメーが目上の人間になったんだよ!?」

ユッチ「ほらほら!すぐにこんな風に睨み付けて、襲い掛かってきそうな勢いじゃないっすか!」

などとユッチは喚き散らすが、カレラでなくとも、ユッチの物言いだと相手の反感を多かれ少なかれ、買いそうなのも事実だがな。

エルダ「あの、カレラちゃんがボクスターさんの事をアニキって言ってたのは?」

ボクスター「あ、実は僕たち、リアルで兄妹なんですよ」

俺も少し気になっていた事を、エルダが直接訪ねると、ボクスターは眼鏡を左手で軽く整えてから、穏やかな笑みを浮かべながらそう答えた。

俺「だから、このゲームの世界でも一緒に行動して、同じギルドに入ったんだな?」

ボクスター「はい、このソードアート・オンラインが従来通りの普通のゲームであれば、何時までも僕が彼らの傍にいる必要も無かったんですが……今のソードアート・オンラインはただのゲームではありませんからね。兄として、カレラを一人にしておくわけにはいかなくなりました」

多少年齢の離れた兄妹と言うのは、上の方が下の方に対して、保護者代わりになりがちになったりするもんだろうか?
俺にも、一歳年上の姉がいて、親父と母親が離婚するまでは姉貴も同じ山谷のアパートに住んでいたが、確かに姉貴は小言はそれなりに多かったが、別に俺はアイツに世話されてるなんて思った事も、ましてやそれを望んたことなんで一度も無かったからな。

カレラ「別にアタシは一人でも全然余裕だったし!つーか、兄貴はあれこれやる事が消極的過ぎるんだよ。アタシの言う通りにしてれば、もっと早く攻略集団に入って、フロアボス戦に参加できたはずなんだよ!」

ボクスター「カレラはやる事が何もかも危う過ぎるんだよ。君のペースでやってたら、いくら早く強くなれたとしても、何れ足元をすくわれる事になるよ」

カレラ「まーた、そうやって小言言い出しやがるんだから兄貴は……」

カレラとボクスターの兄妹は恐らく現実(リアル)でもやっていそうな妹を心配して世話を焼く兄と、それを鬱陶しがる反抗的な妹のやり取りを始めていた。

エルダ「やっぱり、兄弟、姉妹の下の子ってどこもあんなのかしらね~?」

俺「なんだよ、まるでなんか心当たりでもあるような言い方して」

カレラとボクスターのやり取りを、妙に親近感を感じているかのような目付きのエルダの言葉を聞いて、俺は冗談交じりにそう聞く。

するとエルダは俺の方を振り返り、微妙にはにかんだような表情で答えた。

エルダ「まーね、私も2歳年下の妹がいるんだけど、これが中々言う事を聞かない子なのよね。アタシが姉として何か言って見せると、すぐに人の上げ足取るようなこと言って、アタシが言い返せなくなったり、おととしのクリスマスの時だって―――アタシの方からそっちに行くから大人しく待ってるように言ったのにあの子は……」

レイナ「……何かあったの?」

エルダ「え、れ、レイナちゃん?な、なんで……?」

エルダが現実世界で姉の目覚めを待ち侘びているのだろう、妹の話で僅かながら、しんみりとしていると、俺ではなくレイナが近くに来て、声を掛けてくるのでエルダは多少呆気に取られた様に驚いていた。
俺自身、まさかレイナの方が人の身の上話に興味を示して、自分から何かを聞いてくるような事がある等とは思っていなかった。

なにせ、現実世界での記憶が失われているとは言え。自分を襲ってきた相手を容赦なく返り討ちして、それがなぜダメなのか?と、まるで人の心や感情など分からないような反応をしたレイナだったのに。

エルダ「ああ、ちょっとね。一昨年のクリスマスに、あの子ったら慌てて出かけたもんだから買い物に必要なお財布忘れちゃって―――私が届けに行くって言ったのにあの子ったら『姉ちゃんにそんな事してもらわなくてもいい!』なんて言って自分で態々取りに戻って来るんだから……」

俺「兄弟姉妹の上の方って、どーして頼んでも無いのに、あれこれ言って来たりして来たりしやがるんだろうな。ウチの姉貴も『自分が学校で恥ずかしいから、宿題をやれだの、学校をサボるな』だのとうるさかったんだよな……」

俺はエルダやボクスターの妹に対する、心配性なんじゃないかと疑いたくなるような構いっぷりに、溜息を付いてそう呟いていた。

ボクスター「僕たちとしては、生まれた時から自分の側で守らなくちゃいけない存在だって思いがどうしても勝るんじゃないかと思ってます。確かに、年下と言うだけで、庇護下に置かれるのは下の兄妹の人達にとってはありがたくないのかも知れませんがね……」

ボクスターの言葉に対してエルダが、『全くそうですよね~』と同意した直後に、今回のレイドパーティーのリーダーであるALSリーダーのキバオウのだみ声が辺り一帯に響き渡る。

キバオウ「ほぉなら、そろそろ良くで――!!ちゃんと自分のパーティーで戦うんやで!会議で話しておいた、ボスとの戦い方、忘れたらあかんで――!!」

キバオウの言葉を合図に、攻略集団の各プレイヤー達は、パーティーメンバー毎に次々に移動を開始し始める。
俺達はG隊で、取り巻きのモンスターが出現している間は取り巻きのMob討伐を優先しつつ、取り巻きの数が少なくなったら、ボス本体への攻撃を優先する手筈だった。

レイナ「……兄弟…………・姉妹…………あの、身内動画が本物なら……私には、姉がいるはずだけど……私は知らない、思い出せない」

ユッチ「あの~、なにを独り言言ってるんっすかレイナさ~ん?G隊もそろそろ移動っすよ~」

レイナ「……何でもない、わ」



フロアボス戦前の自己紹介、そして戦闘の手筈などの話し合いはそこで終わり、レイドパーティーは第24層フロアボスが待ち構えるボス部屋へと一直線に進行する!―――レイナは、自らのリアルでの素性に僅かに疑問を感じたものの、自らの今の役目を果たす事を優先し、あらゆる私情を完全に排除!自らを戦闘マシーンであると頭に言い聞かせ、戦闘態勢を取ったのであった! by立木ナレ 
 

 
後書き
今回とこれからしばらくゲストで登場するカレラとボクスターの名前の由来は、とある自動車メーカーの車種から取っています。 
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