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ねここい

作者:あちゃ
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第17話

 
前書き
体育祭が終わったら、次は中間テスト……
でもその前に…… 

 
体育祭が終わって三日後の昼休み……
蔵原が顔にアザを付けて戻ってきた。
これは体育祭での仕返しに違いない。

そう思い先生に報告しようとしたのだが、蔵原本人が『いいって! もう終わった事だから、何もしなくていいって』と大事(おおごと)にするのを拒否。
でも俺の所為で殴られたのだろうから、放って置くなんて出来ない!

何がしたかったか(何が出来るか)は分からないけど、兎も角あのヤンキー先輩が居る教室へ向かった。
いざ教室の前まで来たが、やっぱり怖いのでソッと教室内を確認する。
あのヤンキー先輩は何処か?

居ない……何処にも居ない。
困り果ててると同じ教室の他の先輩が『如何したの?』と話し掛けてきた。
あのヤンキー先輩とは違い優しそうだ。

もしかしたら体育館裏とかで教師にバレちゃダメな事(タバコとか)をしてるのかと思い、その先輩に聞いてみる事に……
すると……

『ああ、清水なら早退したよ。何か誰かと喧嘩したみたいで、ボッコボコになってた。聞いても誰にやられたか言わないし、もしかしたら下級生にやられたのかも(笑)』
との事。

も、もしかして蔵原か?
アイツが反撃(?)して、自分の怪我より酷い目に遭わせたのか??
もしかしてアイツって喧嘩強いのか!?

凄く気になったので、急ぎ1年生のフロアへ戻り、3組の真田さんを探す。
丁度トイレ(勿論女子)から出てきた所だったので、現状を説明して蔵原の事を聞いてみた。
すると少し顔を顰めて彼女は蔵原の事を話してくれた。

『リュー君はねぇ……喧嘩とか嫌いだけど、自らの信念的な物を貫く為になら喧嘩するのよ。そうそう無いけど、絶対に譲れない信念的な物があって、それを侵害された時だけは、誰に対してでも楯突くわね。でもね……自分の為に喧嘩する事はまず無いの。多分今回も、君が狙われたから立ち塞がったんだと思うわよ。凄く友達思いだから』

そう優しい口調で教えてくれた真田さん……
彼女は更に蔵原の事を教えてくれた。
アイツの独自ルールについて。

『それと私から大神君に言っておきたいんだけど、リュー君はこう言う事言われるのも言うのも嫌がるから私が言った事は秘密にしてよ。リュー君はねぇ……小林先生・渡辺さん・佐藤さん・白鳥さんが貴方に惚れてる事を解ってて、口説こうとしてないからね。リュー君の独自ルールで、他人(ひと)の女・明確に好きな男(女もあり)が居る女には手を出さないってのがあるの。もしそのルールが無ければ、リュー君の話術で4人中3人は口説き落とされてるわね。あれほどの美人、放置しておかないもの』

あの4人が俺に惚れている!?
何かの間違いだろうと思うが、それにしても蔵原の独自ルールが凄い。
俺なんかそんなルール持ってる余裕無いのに。

大好きなリュー君の凄い所を俺に知らしめた所で、昼休み終了のチャイムが鳴り真田さんは教室へと戻っていく。
俺も自分の教室へ戻るのだが……
最低一発は殴られてるのであろう蔵原の顔を見るのが辛い。

俺の所為で蔵原が殴られてしまった……
その倍以上をやり返したのかもしれないが、本来なら蔵原は殴られる必要は無かったのだ。
でも奴は、その事で何も言ってこない。

それに真田さんから凄く気になる事を言われたし……
蔵原が俺に気を遣って4人を口説かない……
もしかしたら俺に気を遣ってるのじゃ無く、4人の意思を尊重してるのかもしれない。

にしても、直ぐ側に居る美女に何の行動もしないなんて……
アイツ……(すげ)ーな。(すげ)ー意思が強いな!
でも俺は、至極良い友達を持ってるのかもしれない!

……アイツの好意に甘えてばかりで良いのだろうか?
独自のルールとは言え、アイツは俺が結婚出来る候補の女性に手を出さないで居る。
もう10月も半ばだし、俺もそろそろ答えを出さねばならない。

俺は決心した!
直ぐさまスマホを取り出して、LINEを使ってメッセージを送る。
『大切な話があるから、放課後……体育館裏に来て下さい』と……

まだ午後の授業が始まったばかり。
でも俺は授業を受けてる精神的余裕は無い。
心を落ち着かせる為にも、先に体育館裏へ行き、放課後まで待っていよう。

(ピロリ~ン)
俺のスマホに返事がきた。
『解りました。この授業が終わり次第、直ぐに行きます』

どうやら放課後まで心を落ち着かせる事は出来ないみたいだ。
それでも時間的余裕は出来た。
兎も角俺は体育館裏へと向かう。









体育館裏にある塀にもたれ座り、俺は考える。
如何言うか……どんな顔をするか……どんな態度で切り出すか……
時間があれば考えが纏まる、スマートに告白出来る……そう思っていた。

だが考えても考えても答えが見つからない。
それどころか、不安感だけが増大していく。
蔵原は如何やって女性を口説いてるんだろうか?
そう言えば口説いてる直接の場面には出会した事が無い……大事な時だと言うのに!

……いや違う!
俺は口説きたいのでは無い。
俺の気持ちを伝えたい……好きだという気持ちを解ってもらいたいだけなのだ!

そうだ……スマートさや格好良さなんて求めちゃダメなんだ。
俺は俺。
そんな俺に惚れてくれたのなら、きっと何とかなるさ。

そう俯きながら思い始めた頃……
俺に視線に女の子の足が映った。
極度の緊張と堂々巡りだった思考で、授業が終わったチャイムが聞こえなかったらしい。

そこに居る()は、授業が終わると同時に走ってここまで来たらしい。
“はぁはぁ”と言う息を切らした声と、女性特有の甘い香りを俺に届ける。
俺は緊張で顔を上げられないまま彼女の目の前に立ち上がる。そして……

「ごめん。急に呼び出して……でも、如何しても伝えたい事があったんだ!」
彼女の方から何か言ったら、ヘタレて恍けてしまう……そう思い、下腹に力を入れて話し始めた。だが彼女の顔を見る事が出来ない……

「な、何……」
彼女は今にも泣きそうな……湿った声で俺に問い返す。
な、何だ……この緊張は!?

こんなに緊張するものなのか?
彼女に断られたって、まだ3人候補が居る……
そう思った瞬間、反対の事も思い浮かぶ。

1人に告白したというのに、振られたからと言って直ぐさま残りの3人に告白なんてしたら、絶対に軽蔑される。
付き合ってくれれば誰でも良かった……そう考えてると思われる!

半年とか一年とか、ある程度の期間をおいて他の3人との仲を進展させてからなら問題無いだろうけど、振られて直ぐの告白は軽薄その物だ。
つまり俺には今日しか……今しか無い!

今この場で告白に成功しなければ、俺は一生彼女等の本当の姿を見る事が出来ない。
うぅ……緊張で吐きそうだ。
でも後には引けない。

目の前の女性は、まだ走ってきた事で動悸が治まってないのか、自分の胸に手を当てて肩で息をしている。
俺は走ってもいないのに、激しい動悸で胸を押さえている。

俯いてる俺の後頭部に、彼女の吐息が規則的にかかる。
これ以上は待たせられない……
言え! 言うんだ!!

「あの……す……す、好きです! 貴女の事が好きです!! 一人の女性として……俺は貴女が大好きです!!!」



 
 

 
後書き
そろそろ本当に決めないと。
誰と大神をくっつけるのかを……

でも難しいなぁ。

ここで
『俺達の冒険は始まったばかり!』
ってな感じで幕引きしたら怒る?  
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