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神託

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第三章

「ですから」
「そうだな」
「アーレス神ならば」
「難しいな」
「何か不吉なことも感じる神託ですね」
「どうもな、いい神託であって欲しいが」
「どうなのでしょうか」
 神託の意味がわかりかねてだ、二人共困惑していた。そうして何日か深く考えていたがある夜のことだった。
 王宮の前庭の方が騒がしくなった、それでアドラストスは寝所から出て王宮を護っている兵達に問うた。
「何かあったか」
「はい、王宮の前庭で」 
 王宮のすぐ前にあるそこでというのだ。
「二人の戦士が争っています」
「二人のか」
「それでなのです」
「そなた達は止めなかったのか」
「止めてはいますが聞かず争いを続けています」
「ふむ、そなた達が止められぬか」
 アルゴスの兵達は強い、これまで幾多の戦いに正面から向かい勝ち続けてきた。その歴史と伝統があるのだ。
 それだけにアルゴスの兵は強いことで知られている、血筋だけでなく兵達は常に鍛えられている。しかも王宮の兵達となれば尚更だ。
 その彼等が止められない、アドラスロスはこのことわかった。
「その二人は相当に強いな」
「はい」
 兵士は王に一言で答えた。
「左様であります」
「わかった、ではだ」
「それではですか」
「余が行こう」
 王である自身がというのだ。
「そしてだ」
「そのお言葉で、ですか」
「必要なら力でな」
 アルゴスは兵達だけでなく彼自身も強い、戦も多く勝ってきている。だから彼もこう言ったのだ。
「止める」
「それでは」
「前庭に行こう」
 こう言ってだ、そしてだった。 
 あどらすとすは前庭に出た、するとそこでは王宮の兵達を遠巻きにして二人の戦士達が剣と盾を手に争っていた。
 その兵達にもだ、アドラストスは問うた。
「あの者達がか」
「はい、そうです」
「我等が止めるのも聞かず」
「ああして争っているのです」
「どうも下らぬ理由の様ですが」
「それでもです」
「その理由は後で聞こう、しかしな」 
 それでもと言うのだった。
「随分と激しく打ち合い続けているが」
「もうかなりこうしていますが」
「今もです」
「随分体力があるな、動きもいい」
 二人のそうしたところも見て言った。
「武勇は充分だな、それに相手に向かい続けている」
「これも先程からです」
「全く変わりません」
「まるで獅子か猪の様に」
「この様に」
「そうだな、勇気と武勇はあるな」
 二人共それは備えているというのだ。
「充分だ」
「といいますと」
「この二人は」
「若しかするとな」
 アドラストスは希望を見つつ兵達に話した。
「娘達にな」
「そうですか」
「この方々なら」
「後は家柄か」
 王族ともなればどうしてもこのことは意識にしなくてはならない、だからこの要素も忘れていなかった。そのうえで。 
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