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空に星が輝く様に

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5部分:第一話 最初の出会いその五


第一話 最初の出会いその五

 そしてだ。その執念が篭った言葉で言うのであった。
「絶対に受かるからね」
「その志望校になのね」
「受かるつもりなのね」
「ええ、受かるわ」
 あくまでそうするというのだった。
「何があってもね。受かるから」
「わかったわよ。そこまで言うのならいいわ」
「何処受験するのかわからないけれど」
「それは言わないし」
 誰にも言わないのだった。絶対に。それは最後の最後まで明かすことはしないと心に決めていたのだ。彼女にも考えあってだ。
「じゃあ頑張ってね」
「それでその志望校ね」
「受かりなさいよ」
「受かるわよ、いえ」
 ここで言葉を訂正させた。そして言うのは。
「受かってみせるわ」
「よし、じゃあね」
「吉報待ってるからね」
「是非ね」
「待っててよ。何があっても」
 その気力だけで立っている面持ちで見るのだった。
 そこには彼がいた。しかし星華のその目には気付いていなかった。ただ自分の席で笑っている、それだけであった。しかし彼女は見ていた。
「高校だって。絶対に」
 そうして尚も必死に受験勉強を続けるのだった。 
 休み時間も昼休みもなく家に帰れば食事と風呂以外は全部勉強だった。殆ど寝ない。家族も心配するが彼女は必死であった。
 両親もだ。そんな彼女を心配しだしていた。父もちゃぶ台のところで母に言う。
「あいつ、どうなんだよ」
「今日もよ」
「今日もか」
「そうなのよ。自分の部屋に入ったっきりね」
「凄いな」
 父はその話を聞いて思わず唸った。
「俺そんなにしなかったぞ」
「ってあんたは別でしょ」
「御前もな」
「高校は何処でもよかったから」
「俺もな」
 二人にとってはそういうものだったらしい。
「だから普通に商業高校に入ったんだよ」
「そうそう、私もね」
「まさかそこで御前と会うなんてな」
「ふふふ、奇遇だったわね」
「全くだ」
 二人はついついのろけ話もした。
「それでも。あいつは絶対にそこか」
「八条高校ね」
 家族だけが知っている話だった。その志望校は。
「とにかく絶対ってね」
「合格するつもりか」
「みたいね」
「本気なんだな」
 父はあらためて思ったのだった。
「あいつは」
「それでどうするの?」
「どうするって?」
「だから。星華の為によ」
 このことを夫に問うたのだ。
「あんたどうするの?」
「そんなの決まってるだろうがよ」
 彼はこう妻に返した。
「子供が頑張ってると親はな」
「親は?」
「力になる、それだろうが」
「じゃあまずは」
「おい、明日からな」
 早速妻に対して言う。
「栄養のある食い物どんどん作れ」
「食べ物ね」
「俺は願掛けするからな」
 そして彼はそれだというのだ。
 
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